今回はVarious(オムニバス)もののアルバム

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「Darker Than Blue: Soul From Jamdown
1973-1980」です。

今回のアルバムは2001年にレゲエ・
リイシュー・レーベルBlood & Fireから
リリースされた、アメリカのソウルや
R&B、ファンクなどの楽曲をレゲエ・
アーティストがカヴァーした曲を集めた
コンピュレーション・アルバムです。
「Soul From Jamdown 1973-1980」という
タイトルからも解るように、1973年
から80年までのレゲエ・アーティストに
よるカヴァー曲が集められています。

レーベル特集 Blood & Fire (ブラッド・アンド・ファイア)

「Ain't No Sunshine」や「Gypsy Woman」、
「Get Ready」など、ジャマイカのレゲエ・
ミュージシャンが歌うソウルやR&B、
ファンクなどの名曲がこれでもかというほど
収められたアルバムで、この今は活動を休止
しているBlood & Fireというレーベルの
もっとも代表的なアルバムです。

手に入れたのはBlood & FireのCDの
中古盤でした。

全18曲で収録時間は約64分。

詳細なミュージシャンの表記はありません。

曲ごとの作曲者とプロデューサーの記述が
あります。

また手に入れたのが日本盤だったので、
表ジャケになっている小冊子に書かれて
いたPeter Daltonという人の英文の
ライナー・ノーツの4つ折りの和訳が付い
ていました。

印象的なジャケット・デザインはNima
Falatooriという人が担当しています。

今回のアルバムに収められている人は、
この1973~80年の間に活躍していた
The Boris Gardiner Happening、Leslie
Butler、The Chosen Few、Carl Bradney、
Ken Boothe、Freddie McGregor、Al Brown、
In-Crowd、Milton Henry、Junior Murvin、
John Holt、Alton Ellis、Jimmy London、
Delroy Wilson、Lloyd Charmers、Tinga
Stewart、The Tamlins、Welton Irieといった
人達です。

さて今回のアルバムですが、このBlood & Fire
というレーベルは今は活動を停止している
レーベルですが、このレーベルの残した多く
のアルバムの中でももっともこのレーベルの
残した功績と言えるアルバムのひとつが
このアルバムだと思います。
このアルバムにはレゲエ・ミュージシャン
の常に目標や手本となってきた、ソウルや
R&B、ファンクといったアメリカの
ブラック・ミュージックに対する敬意と尊敬
が詰まったアルバムなんですね。

聴き終わった後に感じるこの重く苦しいほど
の、心がヒリヒリするような感動は、他の
アルバムではなかなか味わう事が出来ません。
それほど凄いアルバムなんですね。

私はこうしたレゲエという音楽のブログを
書く時に、ひとつのルールとして、「名盤」
という言葉を使わないという事を決めて
います。
それはその「名盤」という言葉を使って
しまうと、読み手の側がその言葉に縛られて
自由な感想を無くしてしまうのを恐れるから
なんですね。
(ちなみに説明を簡単にするために、「名曲」
という言葉はよく使います。)
アルバムが良いか悪いかはその人が決める
こと。
私はなるべく自分が持つ情報を伝える事に
徹したいんですね。

ただ今回のアルバムは、その禁句にした言葉
をもっとも使いたくなってしまうアルバムの
ひとつではあります(笑)。

このアルバムの素晴らしさは、レゲエ博士
Steve Barrow氏をはじめとするBlood & Fire
のスタッフの選曲の素晴らしさにあるんです
ね。
今回のアルバムに収められている曲は、レゲエ
として聴いてもソウルやR&Bとして聴いても
充分なクウォリティを持った曲が収められて
いるんですね。
そのレゲエとソウルがバランス良くイコール
の関係に置かれているところが、このアルバム
の重要なところです。
これがレゲエとしてはイイけどソウルとして
はダメ、あるいはその逆でも酷くつまらない
アルバムになってしまうんですね。

カヴァーを歌うレゲエ・ミュージシャンから
漂うソウル・ミュージックに対する憧れや
尊敬は、このアルバムの最大の魅力になって
います。

もともとこうしたアメリカのブラック・
ミュージックは、アメリカという大国の中で、
奴隷からは解放されたもののいまだに差別や
貧困に苦しむ、アメリカの黒人層の心の支え
になっていた歌なんですね。
今回のアルバムには「Slipping Into
Darkness」や「Is It Because I'm Black?」、
「Ain't No Sunshine」、「I'm Your Puppet」
など、そのタイトルを聞いただけで彼らの
苦しい心情が歌われた曲だと解るタイトルが
並んでいます。
そうした黒人層の苦しみの中から生まれたの
が、これらの名曲なんですね。

いわば70年代のジャマイカのプロテスト・
ソングであるルーツ・レゲエの手本になった
のが、これらアメリカから生まれたブラック・
ミュージックであった事は間違いありません。
それらのソウルやR&B、ファンクの名曲は
レゲエの中でもたびたび歌われていたんです
ね。
それらをひとつひとつ掘り起こし、ひとつに
まとめたのが今回のアルバムという事になり
ます。
これは博学な知識のあるBlood & Fireだから
こそ成し得た、力仕事なんですね。

1曲目はThe Boris Gardiner Happening feat.
Leslie Butlerの「Ghetto Funk」です。
「俺は一度もレゲエ・シンガーだった事は
無い。ソウルマン、ソウル・シンガー、
バラディアーだ」そう語っていたとも言われる
Boris GardinerのバンドThe Boris Gardiner
Happeningとキーボード奏者Leslie Butler
との共演のファンキーなインスト・ナンバー
です。
ファンクを感じさせるハモンド・オルガンが
魅力的。

Boris Gardiner, featuring Leslie Butler - Ghetto Funk


アーティスト特集 Boris Gardiner (ボリス・ガーディナー)

2曲目はThe Chosen Fewの「Collie Stuff」
です。
原曲はKool & The Gangの「Funky Stuff」。
The Chosen Fewはこうしたファンキーな楽曲
を多く残した、レゲエではちょっと珍しい
グループです。

The Chosen Few (reggae group) - Wikipedia

3曲目はCarl Bradneyの「Slipping Into
Darkness」です。
原曲はWarの「Slipping Into Darkness」。
Carl Bradneyはあまり知名度のないアーティ
ストですが、解説文によると、75年に
Lee Perryのプロデュースでリリースされた
シングル盤との事です。
そのディープさにシビレる1曲。

Carl Bradney - Slipping into darkness


4曲目はKen Bootheの「Is It Because I'm
Black?」です。
原曲はSyl Johnsonの「Is It Because I'm
Black」。
ロックステディの時代から活躍した名シンガー
Ken Bootheの、心揺さぶるソウルフルな歌唱
の曲です。

Ken Boothe - Is It Because I'm Black


アーティスト特集 Ken Boothe (ケン・ブース)

5曲目はFreddie McGregorの「Get Involved」
です。
原曲は73年のGeorge 'Soule' Johnsonの
参政権問題を歌った同名曲なんだそうです。
名シンガーのファルセットも使った歌声が
冴える曲です。

アーティスト特集 Freddie McGregor (フレディー・マクレガー)

6曲目はAl Brownの「Ain't No Love In The
Heart Of The City」です。
原曲はベテランのブルース・マンBobby 'Blue'
Blandの同名曲です
Al Brownは70年代にアルバム1枚とシングル
を多数出している、カヴァー曲を得意とした
シンガーのようです。
哀愁のあるヴォーカルがグッと来る曲です。

Al Brown - Ain't no love in the heart of the city


7曲目はIn-Crowdの「Mango Walk」です。
原曲はMandrillの「Mango Meat」。
In-Crowdによるファンキーな空気感が面白い
1曲です。

The In Crowd (Jamaican band) - Wikipedia

8曲目はKen Bootheの「Ain't No Sunshine」
です。
原曲はソウル・シンガーBill Withersによる
同名ヒット曲です。
「お前が居ないと太陽さえ輝かない…」そう
嘆く、男の悲しみが歌われています。
Ken Bootheのヴォーカルが心に沁みる曲です。

KEN BOOTHE - Ain't no sunshine


9曲目はMilton Henryの「Gypsy Woman」
です。
原曲はThe Impressionsの61年の同名ヒット
曲です。
その名曲をWackiesなどに少ないながらも名曲
を残したMilton Henryが、ソウルフルに歌い
あげています。

10曲目はJunior Murvinの「Give Me Your
Love」です。
原曲はCurtis Mayfieldの同名曲です。
Junior Murvinらしいシッカリしたファル
セットを生かしたソウルフルな曲です。

アーティスト特集 Junior Murvin (ジュニア・マーヴィン)

11曲目はJohn Holtの「For The Love Of
You」です。
原曲はThe Isley Brothersの同名曲です。
名シンガーJohn Holtの通る歌声がとても
魅力的な、寂寥感のある1曲です。

アーティスト特集 John Holt (ジョン・ホルト)

12曲目はAlton Ellisの「It's A Shame」
です。
原曲はThe Spinnersの73年の同名ヒット曲
です。
ベテラン・シンガーAlton Ellisのの余裕
タップリのヴォーカルが魅力の1曲です。

アーティスト特集 Alton Ellis (アルトン・エリス)

13曲目はJimmy Londonの「I'm Your Puppet」
です。
解説文によるとDan Penn & Spooner Oldham
作曲の曲で、James and Bobby Purifyに
よって66年にソウル・ヒットした曲なんだ
そうです。
この曲のプロデュースはLoyd Campbellで、
バックはSkin Fresh & BonesのChannel One
で録音された曲なんだそうです。
ミディアム・テンポの楽し気なホーンに、
淡々と「私はあなたの玩具」と歌うJimmy
Londonのヴォーカルがイイ味を出しています。

Jimmy London ( I`m your Puppet )


Jimmy London (reggae singer) - Wikipedia

14曲目はDelroy Wilsonの「Get Ready
(12"mix)」です。
原曲はソウル・グループThe Temptationsに
よる、誰でも知っている同名大ヒット曲です。
スカの時代から活躍する、並みはずれた実力
を持つ名シンガーの素晴らしい1曲です。
後半がダブの(12"mix)で、このアルバムで
2番目に長い5分40秒の曲です。

アーティスト特集 Delroy Wilson (デルロイ・ウィルソン)

15曲目はLloyd Charmersの表題曲の
「Darker Than Blue」です。
原曲はCurtis Mayfieldの同名曲です。
Lloyd Charmersの魅力的なファルセットの
曲です。
魂が震えるような名曲。

Lloyd Charmers - "Darker Than Blue" (1975)


アーティスト特集 Lloyd Charmers (ロイド・チャーマーズ)

16曲目はTinga Stewartの「Why Can't We
Live Together? (extended)」です。
解説文によるとシンガーでオルガン・プレイ
ヤーのTimmy Thomasのモンスター・ヒット
なんだそうです。
オルガンの独特の空気感が魅力。
後半はダブの(extended)ミックスになって
おり、このアルバムで一番長い7分にも
及ぶ曲です。

Tinga Stewart - Wikipedia

17曲目はThe Tamlinsの「Baltimore」です。
シンガー・ソング・ライターのRandy Newman
の曲で、Nina Simoneが歌った事で知られる曲
です。
The Tamlinsの最大のヒット曲なんだそうです。

The Tamlins - Baltimore


The Tamlins - Wikipedia

18曲目はWelton Irieの「Hotter Reggae
Music」です。
こちらは17曲目「Baltimore」のWelton Irie
によるディージェイ・ヴァージョンです。
こうした名曲を紹介しつつ、レゲエ独特の
ディージェイというジャンルを盛り込んで
くる、そこがこのBlood & Fireというレーベル
のアルバム作りのウマさなんですね。

Welton Irie - Hotter Reggae Music


Welton Irie - Wikipedia

このアルバムを聴き終わって感じるのは、
足腰にまでズシッと疲労感を感じるほどの
アメリカのブラック・ミュージックの重さ
なんですね。
生半可な気持ちで聴くと食い殺されそうな
ほどのその重さこそ、このアルバムの最大
の魅力です。

このアメリカのブラック・ミュージックと
レゲエという音楽の持つ、ある意味の心の
暗さ…。
それは彼らが黒人という生い立ちで、心ならず
も背負ってしまったものなんですね。
ただ彼らはその生い立ちに負けず、一歩一歩
現実を変えて行った…まだその闘いは続いて
いるのかもしれませんが…。
その闘いにこうしたレベル・ミュージックは、
わずかな救いを与えたのかもしれません。

こうした歌を作ったミュージシャンは、彼ら
にとって間違いなく英雄であり、リスペクト
すべき存在なんですね。

歌というものは必ずしもラヴ・ソングだけ
が歌ではないんですね。
ラヴ・ソングしか歌が作られていない社会
は、もしかしたら「見えない権力者」に
「本当の歌」が封じられた社会なのかも
しれません。
人の苦しみを救う歌を作る、それも音楽を
作る者の大切な使命なんですね。

今回のアルバムにはそうした人の心を救う
「本当の歌」が、多く収められている気が
します。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Various
○アルバム: Darker Than Blue: Soul From Jamdown 1973-1980
○レーベル: Blood & Fire
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2001

○Various「Darker Than Blue: Soul From Jamdown 1973-1980」曲目
1. Ghetto Funk - The Boris Gardiner Happening feat. Leslie Butler
2. Collie Stuff - The Chosen Few
3. Slipping Into Darkness - Carl Bradney
4. Is It Because I'm Black? - Ken Boothe
5. Get Involved - Freddie McGregor
6. Ain't No Love In The Heart Of The City - Al Brown
7. Mango Walk - In-Crowd
8. Ain't No Sunshine - Ken Boothe
9. Gypsy Woman - Milton Henry
10. Give Me Your Love - Junior Murvin
11. For The Love Of You - John Holt
12. It's A Shame - Alton Ellis
13. I'm Your Puppet - Jimmy London
14. Get Ready (12"mix) - Delroy Wilson
15. Darker Than Blue - Lloyd Charmers
16. Why Can't We Live Together? (extended) - Tinga Stewart
17. Baltimore - The Tamlins
18. Hotter Reggae Music - Welton Irie