今回はTommy McCook & The Agrovatorsの
アルバム

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「King Tubby Meets The Agrovators At
Dub Station」です。

Tommy McCookはスカ→ロックステディ→
ルーツ・レゲエと、レゲエの歴史に偉大な
足跡を残したサックス・プレイヤーです。
ジャズのサックス・プレイヤーのJohn
Coltraneに憧れて音楽を始めた彼は、
60年代のスカの時代に伝説のバンドThe
Skatalitesで活躍します。
その後もロックステディの時代には
Treasure IsleレーベルでTreasure Isleの
専属バンドTommy McCook & The Supersonics
としてロックステディの時代に活躍し、多く
の名曲を演奏。
さらに70年代のルーツ・レゲエの時代に
なっても、自身のソロ・アルバムや数多くの
セッションに参加してレゲエという音楽を
支え、けん引する役割を果たすんですね。

1998年に亡くなっています。

アーティスト特集 Tommy McCook (トミー・マクック)

The Aggrovators(The Agrovators)は
70年代のルーツ・レゲエの時代に、プロ
デューサーのBunny Leeのハウス・バンド
として活躍したグループです。
数々の歌手のJohnny ClarkeやCornell Campbell
といったBunny Leeの元で活躍した歌手の
バック・バンドとして活躍したほか、ホーン
を中心とした素晴らしいダブ・アルバムを
多く残しています。

The Aggrovators - Wikipedia

King Tubbyはルーツの時代から活躍する
ダブのミキサーであり、プロデューサーで
ある人です。
もともと電気技師だった彼は、ルーツ・
レゲエの時代からミキサーとして活躍し、
自身のスタジオKing Tubby'sでダブの
創成期から多くのダブのミックスを手掛けた
人として知られています。

ダブはルーツ・レゲエが誕生した70年代
初め頃から徐々に作られるようになった音楽
で、エコーやリバーヴなどのエフェクト
を使用して原曲を全く別の曲に作り変えて
しまう手法を指します。

ダブ - Wikipedia

リミックスの元祖とも言われる音楽で、
誰が初めのダブを考案したかかはハッキリ
とは解っていないのですが、このKing Tubby
がダブという音楽を完成させたと言われて
います。

自身のスタジオKing Tubby'sで、助手の
Prince JammyやScientistなどとともに
70年代から80年代にかけて多くの
ダブのミックスを手掛けたのが、この
King Tubbyという人なんですね。

その後も活躍を続けたKing Tubbyでした
が、1989年に自宅前で何者かに射殺
されて亡くなっています。

アーティスト特集 King Tubby (キング・タビー)

今回のアルバムは1975年にUKの
Live and Loveからリリースされた
Tommy McCook & The Agrovators(Aggrovators)
のダブ・アルバムです。
この70年代半ば頃からThe Aggrovatorsは
数多くのダブ・アルバムを残すことになるん
ですが、今回のアルバムはテナー・サックス
のTommy McCookを前面に押し立てたホーン・
ダブのアルバムになっています。
このTommy McCook And The Aggrovatorsの
アルバムとしては、同75年に出した
「Brass Rockers」などが有名ですが、それ
と並ぶ代表作ともいえるのが今回のアルバム
なんですね。

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Bunny Lee & King Tubby Present Tommy McCook And The Aggrovators ‎– Brass Rockers (1975)

74年から75年という一時期だけ流行した
このThe Aggrovatorsの独占的なビートとも
いえる「フライング・シンバル」のビート
が使われたアルバムで、とても内容の良い
アルバムだと思います。

手に入れたのはUKのTrojan Recordsから
リリースされたCDでした。
オリジナルの12曲にCDボーナス・トラック
が何と12曲もプラスされた全24曲入りの
CDになっています。

全24曲で収録時間は約77分。
オリジナルは12曲で、残りの12曲はCD
ボーナス・トラックです。

詳細なミュージシャンの表記はありません。

Produced by B. Lee
A Total Sounds Production

という記載があります。

プロデュースがBunny Leeである事と、
テナー・サックスのTommy McCookが参加して
いる事、King Tubby(King Tubby's)が
ミックスを行っている事ぐらいしか解らない
んですね。

ちなみに同年に出された「Brass Rockers」
の、レゲエ・リイシュー・レーベルJamaican
RecordingsからリリシューされたCDには
The Aggrovatorsのメンバーとして、次の
ような名前が書かれています。

Musicians Include:
Drums: Carlton 'Santa' Davis
Bass: Robbie Shakespeare
Lead Guitar: Earl 'Chinna' Smith
Organ: Bernard 'Touter' Collins
Piano: Ansel Collins
Rhythm Guitar: Tony Chin
Trumpet: Bobby 'Bobbie' Ellis
Tenor Sax: Tommy McCook
Alto Sax: Lennox Brown
Trombone: Vin 'Trommie' Gordon

となっています。
オルガンがBernard 'Touter' Collinsとなって
いるのは、Bernard 'Touter' Harveyの誤りか
と思います。
当時は集まれるスタジオ・ミュージシャンが
集まって録音するプラスティック・バンドの
形式が一般的だったので、多少メンバーの違い
があるかもしれませんので、参考程度に見て
おいてください。

さて今回のアルバムですが、この時代の
The Aggrovatorsのブラスを中心としたダブ
はなかなか魅力的です。
またこの74~75年に流行ったという
フライング・シンバルが聴けるというのも、
このアルバムを魅力のひとつです。
独特のシャリシャリいうドラミングは、
このThe Aggrovators、この時代ならではの
ものなんですね。

ただ今回も「Bunny Lee音源」という事で、
調べるのに非常に苦労しました。
このBunny Leeという人は非常に「商売人」
で、同じアルバムを違う名前で発売したり、
曲のタイトルを別のタイトル変えて販売した
りという事をたくさんしているので、調べる
のに苦労する人なんですね。

例えば上に書いた「Brass Rockers」という
アルバムは、まったく同じ内容で「Cookin'」
というアルバムとしても発売されています。

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Tommy McCook and The Agrovators ‎– Cookin' (1975)

私も知らないで買ってしまいましたが(笑)、
そういう混同が起きるような売り方をして
いるのが、このBunny Leeという人なんです
ね。

他にも2002年シンコー・ミュージック
刊行の本「Roots Rock Reggae」には、Johnny
Clarkeのアルバムとして「Enter Into His
Gates With Praise」と「Sings In Fine Style」
という2枚のアルバムが並んで紹介されて
いますが、調べてみると曲順が違うぐらいで
ほぼ同内容の曲が収められたアルバムなん
ですね。

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Johnny Clarke ‎– Sings In Fine Style (1975)

こうしたプロの方でも別のアルバムとして紹介
してしまうほど、Bunny Lee関連のアルバムは
複雑で要注意なんですね(苦笑)。
今ちまたには「Bunny Lee音源」として多くの
アルバムが出回っていますが、違うアルバム
だと思って聴いてみると「あれ!?これ、
どこかで聴いたような…。」というのが多い
のが、この「Bunny Lee音源」です。

さて話がちょっと横道にそれましたが、今回
のアルバムではリディムが何か?調べるのに
苦労しました。
Riddimguideやネットの販売サイトの情報など
をいろいろ調べましたが、オリジナル12曲
はRiddimguideではヒットせず、1曲目
「A Creator Of Dub」のみBurning Spearの
「Creation(Rebel)」と書かれているサイト
があったので解りました。
このリディムを探すのは毎回苦労しますが、
今回は「あれ!?これ何だっけ?」という
のはあったものの、あまり特定出来ません
でした。

ただなんだかんだ言いながらも、このルーツ
の時代のホーン・ダブって、なかなかイイん
ですよね。
ミディアム・テンポのレゲエのリズムに
乗せた、サックスの音色は大人の色気があり
本当に魅力的です。
このルーツ・レゲエまではジャマイカの音楽
には、こうしたTommy McCookなどの活躍も
あって、ジャズの影響が残り続けるんですね。
そうした影響がレゲエという音楽を、より
魅力的にしていたのは事実だと思います。

今回のアルバムでもTommy McCookの縦横無尽
なテナー・サックスが、大きな魅力になって
います。

1曲目は「A Creator Of Dub」です。
書いたようにリディムはBurning Spearの
「Creation(Rebel)」です。
華やかなホーン・セクションのリズムを前面
に押し立てた、シャリシャリというフライン
グ・シンバルも印象に残る、いかにも
The Agrovatorsらしい個性の出た曲です。

2曲目は「A Happy Dub」です。
このリディムも聴き覚えがあるんですが、
何の曲か思い浮かびませんでした。
確かスカの時代のThe Wailersあたりの…。
軽快なリズに乗せたホーンとフライング・
シンバルが心地良い曲です。

Tommy McCook and the Aggrovators - A Happy Dub


3曲目は「A Collie Dub」です。
頭からバ~~ンとホーン・セクション全開
の曲です。
シブいベースとフライング・シンバルの
シャリシャリとしたサウンドが耳に残る、
The Agrovatorsの個性が出た曲です。

Tommy Mccook & The Agrovators - A Collie Dub.wmv


4曲目は「The Dub Station」です。
ちょっと思わせぶりのホーンの長いイントロ
から、さらに華やかなホーンと、ドラムと
ベースのズシッとした刻むリズム。
まるで映画のテーマ曲のような壮大な曲です。

DUB LP- KING TUBBY MEETS AGROVATORS DUB STATION - TOMMY McCOOK - The Dub Station


5曲目は「The Height Of Dub」です。
初めから圧倒するようなホーン・セクション
と、刻むようなフライング・シンバルの
リズム。
合間良く入って来るギターもグッド。

6曲目は「Inspiring Dub」です。
こちらは明るいホーン・セクションが魅力
の曲です。

7曲目は「Joy Soy Dub」です。
こちらはホーン・セクションにピアノの
リリカルなメロディがうまく絡んだ曲です。
パワフルだけれど、ちょっとムーディーな
味わいがあります。

8曲目は「Sprinkling Dub (King Tubby
mix)」です。
こちらは明るいホーン・セクションの刻む
メロディが楽しい曲です。

Sprinkling Dub - Tommy McCook - Aggrovators - King Tubby


9曲目は「An Aggravating Dub」です。
こちらはホーンだけでなく、ベースやドラム、
ギターなどの生き生きした演奏が冴える曲
です。

10曲目は「King Tubby Dub」です。
こちらはこの時代のソウル曲のメロディ・
ラインなどをうまく取り入れた、ちょっと
面白いホーン・ダブです。

11曲目は「Caretaker Dub」です。
こちらはホーンとズシッと来るベースの
サウンドを前面に押し立てたダブです。

King Tubby and The Aggrovators meets Tommy McCook Caretaker dub


12曲目は「At The Dub Market」です。
ベースとホーン・セクションの、まとまり
のあるサウンドが心地良いダブです。
いかにもフライング・シンバルらしいノリが
この曲にはあります。

Tommy McCook & The Aggrovators - At The Dub Market


ここまでがオリジナルで、以降の13~24
曲はCDボーナス・トラックです。
The Aggrovatorsの代表的なダブが、これでも
かと収められています。

13曲目は「Dance With Me」です。
リディムはDelano Stewartのロックステディ
のヒット曲「Dance With Me」です。
ここではTommy McCookのサックスが、大人の
魅力を醸し出しています。

Tommy McCook & The Aggrovators - Dance With Me


14曲目は「The Meducia」です。
リディムはBob Marley & The Wailersの
ヒット曲「No Woman, No Cry」です。
泣きのメロディがタマラない1曲。

15曲目は「The Dub Duke」です。
Cornell Campbellの「Duke Of Earl」のダブ
です。
こちらもTommy McCookの泣きのサックスが
タマラない曲です。

Tommy McCook & The Aggrovators - The Duke Of Earl Dub


16曲目は「Moving Out (aka Move Out)」
です。
こちらもTommy McCookのJazzyなサックスが
冴える曲です。

17曲目は「Canon (with Bobby Ellis)」
です。
(with Bobby Ellis)となっているように、
トランペット奏者Bobby Ellisとの共演
ナンバー。
このルーツの時代に数々の名演を残した
2人の、息の合ったプレイが堪能できます。

18曲目は「Kojak (with Bobby Ellis)」
です。
こちらも同じくBobby Ellisとの共演
ナンバー。
心地良いJazzyな雰囲気があります。

19曲目は「Midnight Special」です。
リズミカルなギターに、泣きのサックスが
乗った1曲。

20曲目は「Rock By Sir Dees Scorcher」
です。
こちらもムーディーなサックスの曲です。

21曲目は「Jah Love Rockers Dub」です。
リディムはジャズのDave Brubeckの名曲
「Take Five」。
Tommy McCookのフルートが冴える曲です。

22曲目は「Six Million Dollar Version」
です。
Leroy Smartの「Pride And Ambition」の
ディージェイ・ヴァージョンDennis Alcapone
の「Six Million Dollar Man」のヴァージョン
(ダブ)です。
心地良いホーン・ダブ。

23曲目は「African World Wide Version」
です。
Johnny Clarkeの「Roots Natty Congo」の
ディージェイ・ヴァージョン、Dillinger
の「African World Wide」のヴァージョン
(ダブ)です。

24曲目は「Don't Take Another Man's Life
Version」です。
こちらはDillingerの「Don't Take Another
Man's Life」のヴァージョン(ダブ)です。

ざっと追いかけて来ましたが、いかにもこの
ルーツの時代らしいフライング・シンバルと
ホーンのダブが魅力のアルバムです。
このフライング・シンバルは曲が似て聴こえて
しまうという欠点があり、それが長く流行が
続かなかった理由だと思いますが、今になると
その短い流行だった事がかえって魅力なんです
ね。
ほとんどこのThe Aggrovators専用のビートの
ようなところもあり、そこも面白いところです。

この時代のスタジオ・ミュージシャンは
プラスティック・バンドで、そのプロデュー
サーによって音を使い分けていたようなの
ですが、このThe Aggrovatorsではフライング・
シンバル、The Revolutionariesではミリタン
ト・ビートという風に、同じミュージシャン
が入っていたとしてもバンドごとに「色分け」
をしてサウンドを作り上げているんですね。
そのあたりも非常に面白いところです。

今回のアルバムはTommy McCookを中心とした
The Agrovatorsの代表的な作品で、ルーツ
好きとしては聴いておきたいアルバムだと
思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Tommy McCook & The Agrovators
○アルバム: King Tubby Meets The Agrovators At Dub Station
○レーベル: Trojan Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1975

○Tommy McCook & The Agrovators「King Tubby Meets The Agrovators At Dub Station」曲目
1. A Creator Of Dub
2. A Happy Dub
3. A Collie Dub
4. The Dub Station
5. The Height Of Dub
6. Inspiring Dub
7. Joy Soy Dub
8. Sprinkling Dub (King Tubby mix)
9. An Aggravating Dub
10. King Tubby Dub
11. Caretaker Dub
12. At The Dub Market
(Bonus Tracks)
13. Dance With Me
14. The Meducia
15. The Dub Duke
16. Moving Out (aka Move Out)
17. Canon (with Bobby Ellis)
18. Kojak (with Bobby Ellis)
19. Midnight Special
20. Rock By Sir Dees Scorcher
21. Jah Love Rockers Dub
22. Six Million Dollar Version
23. African World Wide Version
24. Don't Take Another Man's Life Version