今回はThe Revolutionariesのアルバム

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「Drum Sound The Revolutionaries:
More Gems From The Channel One Dub Room -
1974 to 1980」です。

The RevolutionariesはHookim兄弟のレーベル
Channel Oneで活躍した、ドラムのSly Dunbar
をリーダーとするバック・バンドです。

この時代のジャマイカのバック・バンドは、
その時集まれるミュージシャンが集まって
録るという「プラスティック・バンド」の
形式が当たり前だったんですね。
その為The RevolutionariesやThe Aggrovators、
The Professionalsなどと名前が違っても、
けっこう同じ人がいろいろなバンドで演奏
しているんですね。
メンバーが固定ではないので、バンド名
というのはどのレーベルで演奏したかという
事の色分けで使われているんですね。
例えばChannel Oneで演奏すればThe
Revolutionaries、Bunny Leeの元で演奏
すればThe Aggrovators、Joe Gibbsだった
らThe Professionalsといった感じです。

このThe Revolutionariesもドラマーの
Sly Dunbarを実質的なリーダーとし、
攻撃的なミリタント・ビートをウリにした
バック・バンドという事は決まっていても、
メンバーはある程度流動的だったんですね。
ただそのグループによって音の使い分けは
多少あったようで、このThe Revolutionaries
は70年代後半のルーツ・レゲエの時代に
ミリタント・ビートをウリに最も人気の
あったバック・バンドだったようです。

70年代半ば以降セッション・バンドと
して大活躍したThe Revolutionariesでした
が、Joseph Hookimがニューヨークに移り
住んだ事や、中心メンバーのSly & Robbie
がBlack UhuruやPeter Toshなどの海外公演
で忙しくなった為に、80年以降はほぼ
活動を停止しています。

The Revolutionaries - Wikipedia

今回のアルバムは2007年にレゲエ・
リイシュー・レーベルPressure Soundsから
リリースされた、そのThe Revolutionaries
のSly Dunbarのドラム・サウンドに焦点を
当てたダブ・アルバムです。
「1974 to 1980」とあるように、1974年
から80年までの楽曲が収められたアルバム
で、このThe Revolutionariesのトレード
マークのミリタント・ビートが楽しめる
アルバムになっています。

レーベル特集 Channel One (チャンネル・ワン)

全16曲で収録時間は約56分。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Musicians:
Drums: Carlton 'Santa' Davis, Lowell 'Sly' Dunbar
Bass: Bertram 'Ranchie' McLean, Robbie Shakespeare
Lead Guitar: Radcliffe 'Duggie' Bryan, Earl 'Chinna' Smith
Rhythm Guitar: Tony Chin, Robbie Shakespeare
Keyboards: Ansel 'Pinkie' Collins, Bernard 'Touter' Harvey, Ossie Hibbert
Percussion: Noel 'Scully' Simms, Uziah 'Sticky' Thompson
Alto Saxophone: Herman Marquis
Tenor Saxophone: Tommy McCook
Trombone: Vincent 'Don D Junior' Gordon

Recorded and Mixed at: Channel One Recording Studio, Kingston, Jamaica

Engineered by: Ernest Hookim, Barnabas
Produced by: Joseph 'Jo Jo' Hookim

Project Co-ordination: Pete Holdworth
Artwork & Design: Ben Bailey

となっています。

ミュージシャンはドラムにSanta DavisとSly
Dunbar、ベースにRanchieとRobbie Shakespeare、
リード・ギターにRadcliffe BryanとChinna
Smith、リズム・ギターにTony ChinとRobbie
Shakespeare、キーボードにAnsel Collinsと
Bernard 'Touter' Harvey、Ossie Hibbert、
パーカッションにScullyとSticky、アルト・
サックスにHerman Marquis、テナー・サックス
にTommy McCook、トロンボーンにVincent 'Don
D Junior' Gordonという布陣です。

今回はドラム・サウンドをテーマにした
アルバムですが、この時代のドラマーはビート
の開発意欲がすごくあって、Santa Davisは
74~75年の短期間流行したフライング・
シンバル、Sly Dunbarはミリタント・ビート
(別名ロッカーズ)とステッパーズというビート
を開発しています。

レゲエ - Wikipedia

レコーディングとミックスはChannel One
Recording Studioで行われています。
エンジニアはErnest HookimとBarnabas。
プロデュースはJoseph 'Jo Jo' Hookimと
なっています。

さて今回のアルバムですが、このアルバムに
収められた70年代中盤から後半という時代
は、まさにこのChannel Oneの全盛期で
The Revolutionariesの叩き出すミリタント・
ビートによる素晴らしいアルバムが次々に
生まれた時代だったんですね。
このChannel OneからはThe Mighty Diamonds
をはじめとする多くのアーティストが、この
ルーツ・レゲエの時代に巣立っています。

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The Mighty Diamonds ‎– When The Right Time Come (I Need A Roof) (1976)

またThe Revolutionaries自身も、代表作とも
いえる「Revolutionary Sounds」(通称白
ゲバラ)のほか、歴史に残る数々の素晴らしい
ダブ・アルバムを残しているんですね。

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The Revolutionaries ‎– Revolutionary Sounds (1976)

そういうThe Revolutionariesのダブを集めた
今回のアルバムは、やはりとても魅力的です。
この時代を制した最強のビートは、一聴の
価値あり!です。

1曲目は「Kunta Kinte Version One」です。
Creoleという人の「Beware Of Your Enemies」
という曲のダブのようです。
タイトルのKunta Kinte(クンタ・キンテ)は、
この70年代後半に流行ったアメリカのTV
ドラマ「ルーツ」に登場する主人公の名前
です。

ルーツ (テレビドラマ) - Wikipedia

アフリカから奴隷船に乗せて連れて来られる
黒人の3代にわたる苦悩を描いたドラマなん
ですが、それまで奴隷解放はされていたとは
いえ低い地位で苦しんでいた黒人層が、やっと
自分たちの地位が不当に低く抑えられている
事に、ものを言えるようになったのがこの
時代だったんですね。
この差別に抵抗するクンタ・キンテの姿は
多くの黒人層の共感を呼んだのですが、それ
を称える気持ちでタイトルに付けられたのだ
と思います。
印象的な鈴の音と(奴隷船の)汽笛から始まる、
ミリタント・ビートが効いた曲です。

The Revolutionaries - Kunta Kinte Version One [HD]


2曲目は「Hotter Fire Version」です。
Ranking Trevorの「Hotter Fire」のダブです
が、オリジナルはMighty Diamondsの「Them
Never Love Poor Marcus」です。
The RevolutionariesとMighty Diamondsの
コラボした名曲の、ディージェイ・ヴァー
ジョンのダブという事になります(笑)。
印象的なピアノにMighty Diamondsの美しい
コーラス、ディージェイのトースティング
がうまく絡み合ったダブです。

The Revolutionaries ft. Jah Berry - Hotter Fire Version.mp3.wmv


3曲目は「A Who Say Version Two」です。
こちらは出典の記載がありませんが、Sly
Dunbarの「A Who Say」という曲の「Version
Two」らしいです。
このオリジナルはErnest Wilsonの「I Know
Myself」。
オルガンとサックスのメロディ、心地良い
リズム、女性の掛け声が印象的な曲です。

4曲目は「Rootes Dub」です。
I-Royの「Move Up Roots Man」のダブ・
ヴァージョンで、オリジナルはJunior Byles
の名曲「Fade Away」です。
陰影のあるピアノのメロディからJunior Byles
の歌声、ダブワイズして行く演奏と、魅力的
なダブに仕上がっています。

The Revolutionaries - Roots dub


リズム特集 Fade Away/Peanie Peanie (フェイド・アウェイ/ピニ・ピニ)

5曲目は「Pride & Ambition Version」です。
Leroy Smartの「Pride And Ambition」の
ダブです。
心地良いミリタント・ビートとLeroy Smartの
節回しが魅力的なダブです。

6曲目は「Dunkirk」です。
こちらは出典も載っていないし、リディムも
調べたけれど解りませんでした。
ブザー音から始まる、ホーンのメロディを
中心としたダブ。

7曲目は「War Version」です。
Wailing Soulsの「War」という曲のダブ。
穏やかなオルガンのメロディのイントロから、
ベースを中心としたミリタントなビートが
心地良いダブです。

8曲目は「Thinking Version」です。
こちらはThe Tamlinsの曲「Thinking」のダブ
です。
オルガンの浮遊感のあるメロディにThe Tamlins
の通るヴォーカル、ベースを軸としたシブい
ダブです。

the revolutionaries - thinking version.wmv


9曲目は「Jah Creation Version」です。
こちらもCreoleという人の「Jah Creation」
という曲のダブです。
ベースを主体としたシブ目のダブ。

10曲目は「Ride On Marcus Version」です。
The Enforcersというグループの「Ride On
Marcus」という曲のダブです。
こちらもベースが効いたシブ目のダブです。

the revolutionaries - ride on marcus version.wmv


11曲目は「Swell Headed」です。
Burning SpearのStudio One時代の曲「Swell
Headed」のダブのようです。
重いベースを中心としたド・シブなダブ。

12曲目は「Catonine Version」です。
こちらは出典が不明のダブ。
ダブワイズするホーンと重いベースが魅力の
ダブです。

13曲目は「Girl A Love You Version」
です。
Horace Andyの「Girl A Love You」のダブ
です。
甲高いHorace Andyのヴォーカルから、ベース
のズシッと響くサウンドが魅力のダブ。

14曲目は「Tivoli Skank」です。
Tony Tuffの「Deliver Me」のダブで、オリジ
ナルはAlton Ellisのバック・コーラスで
Winston Jarrettの在籍した事で知られる
Righteous Flamesの「I Was Born To Be
Loved」。
ロックステディの時代のユッタリしたリズム
が魅力の、ベースが効いたダブです。

15曲目は「Plantation Heights Version」
です。
Dillingerの「Plantation Heights」のダブ
ですが、Mighty Diamondsの「I Need A Roof」
として知られている曲で、一番元の曲は
ロックステディの時代のStudio Oneのヒット
曲Larry Marshallの「Mean Girl」です。
ピアノとホーンのメロディからDillingerの
ダブワイズしたトースティングなどが楽しめる
ダブです。

the revolutionaries - plantation heights.wmv


16曲目は「Back Weh Version」です。
Mighty Diamondsの「マフィアのくそ野郎!
失せろ!」と歌う名曲「Back Weh Mafia」の
ダブです。
心地良いリズムとピアノのリリカルなメロディ、
Mighty Diamondsの素晴らしいコーラスと
彼らの代表曲の楽しいダブです。

ざっと追いかけて来ましたが、この時代の
彼らのビートの素晴らしさは、やはり心奪わ
れるものがあります。
特にキレのあるThe Revolutionariesの
ビートとMighty Diamondsの美しいコーラス・
ワークという組み合わせは、今の時代に聴い
ても一瞬手が止まるほど素晴らしいんですね。

この時代のChannel OneのErnest Hookimの
ミックスは、そうしたヘヴィーとメロウが
同居出来るという事を証明した、レゲエ
ならではの素晴らしいミックスなんですね。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: The Revolutionaries
○アルバム: Drum Sound The Revolutionaries: More Gems From The Channel One Dub Room - 1974 to 1980
○レーベル: Pressure Sounds
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2007

○The Revolutionaries「Drum Sound The Revolutionaries:
More Gems From The Channel One Dub Room - 1974 to 1980」曲目
1. Kunta Kinte Version One
2. Hotter Fire Version
3. A Who Say Version Two
4. Rootes Dub
5. Pride & Ambition Version
6. Dunkirk
7. War Version
8. Thinking Version
9. Jah Creation Version
10. Ride On Marcus Version
11. Swell Headed
12. Catonine Version
13. Girl A Love You Version
14. Tivoli Skank
15. Plantation Heights Version
16. Back Weh Version

●今までアップしたRevolutionaries関連の記事
〇Revolutionaries (G.G.'s All Stars)「Macca Rootsman Dub」
〇Revolutionaires「Jonkanoo Dub」
〇Revolutionaries「Channel One Maxfield Avenue Breakdown: Dubs And Instrumentals 1974-79」
〇Revolutionaries「Dub Out Her Blouse & Skirt Volume 1」
〇Revolutionaries「Earthquake Dub」
〇Revolutionaries「Goldmine Dub」
〇Revolutionaries「I Came, I Saw, I Conquered」
〇Revolutionaries「Musical Dub Attack」
〇Revolutionaries「Revolutionary Sounds」
〇Revolutionaries「Top Ranking Dub Volume 1」
〇Revolutionaries「Vital Dub: Well Charged」
〇Aggrovators, Revolutionaries「Guerilla Dub」
〇Various「Can't Stop The Dread」
〇Roy Francis (The Revolutionaries)「Phase One Dub-Wise Volume 1/2」
〇Various「Different Fashion: The High Note Dancehall Collection」