今回はUB40のアルバム

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「Live」です。

UB40はUKで結成された白人黒人の混成の
レゲエ・バンドです。
バンド名はUKの失業者給付金の申請書様式
名からとられたこのバンドは、デビュー・
アルバムが全英2位のヒット。
さらに83年のアルバム「Labour Of Love」
は、UKで1位と全米8位を記録し、人気
グループに成長して行きます。

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UB40 ‎– Labour Of Love (1983)

88年にはその「Labour Of Love」に収め
られていた、Neil Diamondのカヴァー曲
「Red Red Wine」が再リリースされ、全米
1位を獲得。
さらに93年には映画のテーマ曲に使われた
Elvis Presleyのカヴァー曲「Can't Help
Falling In Love(邦題:好きにならずには
いられない)」が、UKチャートの1位に
輝いています。

そうしたカヴァー曲などのヒットで知られる
のがこのUB40なんですね。

UB40 - Wikipedia

今回のアルバムは1983年にUB40が設立
したDEP Internationalというレーベルから
リリースされた彼らのライヴ・アルバム
です。
このアルバム以前にUB40は、80年にファー
ストの「Signing Off」、81年に「Present
Arms」、同年にそのダブ「Present Arms In
Dub」、82年に「UB44」という4枚の
アルバムをリリースしていて、その4枚から
セレクトされた曲のアイルランドでのライヴ
の模様が収められたアルバムになっています。

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UB40 ‎– Signing Off (1980)

ファーストに収められた「Tyler」や
「Burden Of Shame」、セカンドのタイトル曲
「Present Arms」など、当時の彼らの代表曲
のライヴ演奏が収められています。

手に入れたのは日本のVirgin Japanから発売
された日本盤のCDの中古盤でした。

ちなみにこのアルバムのLPも、私が初めに
レゲエを聴いていた20代の頃、おそらく
83年頃に購入していました。

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UB40 ‎– Live (LP)

当時けっこうお気に入りのライヴ盤でした。

全10曲で収録時間は約53分。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

All Titles by UB40

* Published by New Claims / ATV / Graduat,
Published by New Claims / ATV
Recorded on tour in Ireland, February 1982
by Manor Mobile
Remixed at Windmill Lane, Dublin and The Town House, London
Tape Op: Kevin Maloney
Engineer: Paul Thomas
Remix Engineer: Rafe McKenna
Remix Tape Op: Howard Gray

Produced by UB40 and Ray 'Pablo' Falconer

Illustration: Brian Travers

となっています。

1982年2月のアイルランドのツアーの
ライヴ録音のようです。

詳細なメンバーは気されていませんが、この
UB40はメンバー・チェンジのないバンドと
して知られているそうです。
なのでファーストの「Signing Off」に記され
たメンバーを見てみると、次のようになって
います。

Talk Over Vocal: Astro
Drums: Jim Brown
Lead Vocal, Rhythm Guitar: Ali Campbell
Vocal, Lead Guitar: Robin Campbell
Bass: Earl Falconer
Percussion, Congos: Norman Lamount Hassan
Tenor Saxophone: Brian Travers
Keyboards, Strings, Organ: Michael Virtue

一応参考程度に見ておいてください。

フランケンシュタインのなかなかイカす
ジャケットですが、Brian Traversという人が
描いているようです。

さて今回のアルバムですが、このUB40は
そのヒット曲からレゲエというよりはポップ
なグループという印象が強いグループだと
思います。
ただファーストの「Signing Off」あたりは
まだ思想的にレゲエの香りを残していて、
当時UKで流行っていたネオ・スカとレゲエ
の中間的なグループだったんですね。
本場ジャマイカのドップリしたルーツ・レゲエ
ではないけれど、白人黒人混成というUK
らしいレゲエを作り上げたグループのひとつ
と言えます。
実際にその少し軽めのレゲエ・サウンドは、
聴いてみるとなかなか悪くないんですね。

今回のアルバムはそうした彼らのライヴの
模様が収められたアルバムで、かなり聴き
心地も良く、内容は悪くないと思います。
ステージ・パフォーマンスの巧みさは、
かなり魅力的です。
また今聴くともうすでにこの頃から、彼ら
のポップ嗜好が透けて見えるのも面白い
ところです。

1曲目は「Food For Thought」です。
ライヴらしい観客の盛り上がりが楽しめる
1曲。
このグループの生命線は何といっても
サックスのメロディで、これがないとただ
のポップスになってしまうところを、うまく
レゲエ・テイストに仕上げています。

UB40 - Food For Thought


2曲目は「Sardonicus」です。
こちらもメインのサックスに加えて効果音など
をうまく使った、アレンジ力が光る1曲。

3曲目は「Don't Slow Down」です。
こちらもオープニングからサックスの、
気持ちの良いメロディが魅力の曲です。
彼ららしい個性の出た曲です。

4曲目は「Folitician」です。
こちらはちょっとトボケたムードのある1曲。

5曲目は「Tyler」です。
ファーストでも印象的だった、当時の彼らの
代表曲です。
ブロウするサックスの調べにギター、スッと
入って来るヴォーカル、当時の彼らの魅力が
凝縮された曲です。
日本語の解説文によると、無実の罪で囚われた
黒人タイラーを歌った歌なんだとか。
この時代にはまだラヴ・ソングだけではなく、
こういう歌も歌っていたんですね。
このアルバムで一番長い7分16秒の曲です。

UB40 - Tyler


6曲目は「Present Arms」です。
ダブワイズするようなホーン・セクション
を中心とした2分近い演奏、そこから
ヴォーカルが入り再び演奏という、かなり
インストに近い曲です。
重厚なホーンの演奏が聴きどころ。

7曲目は「Piper Calls The Tune」です。
ソフトなギターのメロディからホーン・
セクション、ヴォーカルと、どんどんサウンド
が厚みを増して行く曲です。

8曲目は「Love Is All Is Alright」です。
こちらもホーン・セクションからヴォーカル
と、彼らのサウンド作りのウマさを感じる曲
です。
気張らないソフトなヴォーカルが、イイ味
を出している曲です。

UB40 - Love Is All Is Alright (Live Album)


9曲目は「Burden Of Shame」です。
ヨット妖しい雰囲気のギターから、個性的な
ヴォーカルとコーラスが独特のムードを作り
上げている曲です。
この時代の彼らの代表曲のひとつで、この
アルバムで2番目に長い6分25秒の曲です。
途中までは抑え気味の曲が、最後の2分ぐらい
でグッとテンポ・アップして激しい演奏に
なるのが魅力。
ライヴ・パフォーマンスを考えた曲です。

UB40 - Burden Of Shame


10曲目は「One In Ten」です。
華やかなホーン・セクションからヴォーカル、
シンセの甲高いサウンドと、盛り上がる1曲。

ざっと追いかけて来ましたが、この80年代
前半のUKでは白人と黒人の混成グループ
The Specialsなどがネオ・スカのブーム、
いわゆる”トーン・ブームを起こしていた
時代で、その頃に登場したこの白人と黒人
の混成レゲエ・バンドUB40も非常に注目されて
いたんですね。

元々は本場ジャマイカからの刺激を受けて
登場したUKレゲエですが、この80年代
以降はかなりポップ寄りのサウンドに変化
したり、UK独特のラヴァーズロック・レゲエ
というスタイルが流行したりと、徐々に本場
ジャマイカとは違う音楽になって行くん
ですね。
このUB40も徐々にポップ寄りのスタイルに
なり、ポップ・ソングのレゲエ・カヴァーで
人気を博すバンドになって行くんですね。

ただ今の時代に聴くと、初期の少しサウンド
が軽めではあるけれどレゲエを意識していた
時代の演奏の方が、個性があって面白かった
気がしないでもありません。
結局UKの多くのグループがレゲエからポップ
へと転向して行きますが、その選択は今から
見るとちょっとビミョ~な印象です(笑)。

今回のアルバムはこの時代のUB40のライヴ・
パフォーマンスの素晴らしさが解る、なかなか
面白いアルバムだと思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。

UB40 Live @ Loreley 1982- Dont Slow (ROCKPALAST)



○アーティスト: UB40
○アルバム: Live
○レーベル: Virgin
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1983

○UB40「Live」曲目
1. Food For Thought *
2. Sardonicus
3. Don't Slow Down
4. Folitician
5. Tyler *
6. Present Arms
7. Piper Calls The Tune
8. Love Is All Is Alright
9. Burden Of Shame *
10. One In Ten

●今までアップしたUB40関連の記事
〇UB40「Signing Off」