今回はVarious(オムニバス)もののアルバム

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「Derrick Harriott Reggae Funk & Soul 1969-1975」です。

まずはこのアルバムに大きく関わった
Derrick Harriottについて説明しておき
ます。

Derrick Harriottはジャマイカで歌手と
して、またプロデューサーとして活躍した
人です。
スカの時代から人気シンガーとして活躍した
彼は、自身のレーベルCrystalを作り、
60年後半のロックステディの時代には
Keith & Texの「Stop That Train」など
多くのヒット曲を出し、人気レーベルへ
と成長させるんですね。
その後のルーツ・レゲエの時代でも、当時
流行したラスタファリズムのアフリカ回帰
を目指した音楽とは一線を画し、あくまで
アメリカのソウルやR&Bといった
ブラック・ミュージックに傾倒した音楽を
作り続けたというのがこの人です。

アーティスト特集 Derrick Harriott (デリック・ハリオット)

レーベル特集 Crystal (クリスタル)

今回のアルバムは2016年に日本のレゲエ・
リイシュー・レーベルDub Store Recordsから
リリースされたDerrick Harriottがプロデュー
スした楽曲を集めたコンピュレーション・
アルバムです。

タイトルに「Reggae Funk & Soul 1969-1975」
とあるように、初期レゲエからルーツ・レゲエ
が流行した1969年から75年の音源が
集められたアルバムです。
かなりソウル色の強い内容で、この時代に
これだけ「レゲエ・ソウル」とも言える
内容の楽曲が作られていた事に、ちょっと
驚く部分があります。

World Reggae News

手に入れたのはDub Store Recordsからリリース
されたCDでした。

全20曲で収録時間は約64分。

詳細なミュージシャンの表記はありません。

Compiled by: Naoki Ienaga

Produced by: Derrick Harriott
Licensed from: Derrick Harriott
Digital Transfer from original master tape by Derrick Harriott

Liner Notes by: Steve Barrow
Design by: Maya Saito, Tetsufumi Saito
Photo Courtesy of: Derrick Harriott
Thanks to: Noel Hawks, Chris Lane, Chikuma Tsuboi

という記述があります。

帯に日本語で説明がついているので日本盤
だと思うのですが、Steve Barrow氏の
ライナー・ノーツは英文のみで和訳は付いて
いませんでした。
ここはぜひ和訳を付けていただきたかった
ところ…。
ちなみに帯には、

「レゲエ・ソウルの第一人者による、70年代
初期のソウルフル・レゲエ・セット
ブラック・コンシャスネスの70年代、ラスタ・
ムーブメントではなくブラック・アメリカを
追及したデリック・ハリオット、アメリカ音楽
の影響が聴ける貴重な音源集」

という記述があります。

収められているアーティストはDerrick
Harriottの他に、The Preacher、The Chosen
Few、The Crystalites、Bongo Herman & Les、
Pat Satchmo、I-Roy、Crystal Generation、
amon & The Crystalites、Noel Brown、
Kingstonians、Kim Harriott、Junior Murvin
といった人達です。

さて今回のアルバムですが、ファルセット・
ヴォイスのヴォーカルやそのメロディにかなり
ソウルを感じるアルバムで、まさに「レゲエ・
ソウル」を感じる1枚です。
聴いている時には決して暗さを感じる音楽
ではないけれど、こうしてまとめて聴いた後
に感じるのは、彼らが黒人として持っていた
ズッシリとした心の暗さです。
その何とも言えない思いに、心が張り裂け
そうな思いがしました。
この暗いという表現が良いかは解りませんが、
軽快な音楽の中に秘められた、何か切ない
ほどの思いがあるんですね。
うまく表現が出来ませんが、すごく心を打た
れるアルバムだと思いました。

このアルバムを聴いて思い出した1枚の
アルバムがあります。
それはレゲエ・リイシュー・レーベル
Blood & Fireが2001年に残したアルバム
「Darker Than Blue: Soul From Jamdown」
です。

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Various ‎– Darker Than Blue: Soul From Jamdown 1973 - 1980 (2001)

こちらもジャマイカのミュージシャンが歌った
ソウルの名曲を収めたアルバムで、「Slipping
Into Darkness」や「Ain't No Sunshine」、
表題曲の「Darker Than Blue」など、ソウル
の名曲が収められたアルバムです。
シリアスな曲が多く、アルバムを聴き終わった
後にズシッとした感動のあるアルバムなん
ですね。
今は活動を停止しているBlood & Fireですが、
おそらくこのレーベルのリイシューした
アルバムの中でも、このアルバムはもっとも
聴いておくべき特別な1枚だと思います。

今回のアルバムはこのアルバムほどシリアス
な曲が収められている訳では無いのですが、
それでも聴き終わった後にはそれに似た、
ズシッとした感動のあるアルバムです。
このDerrick Harriottという人のアメリカの
ブラック・ミュージックに対する思いが、
痛いほどに伝わって来るなかなか良い内容
なんですね。

正直私自身も今回のアルバムは、「ブログを
書いているし、一応押さえておくか…。」
ぐらいの軽い気持ち(笑)で買ったアルバム
だったんですが、その手ごたえに完全に
ヤラレてしまいました。
よく「偽物のソウル」みたいに扱われたよう
ですが、このDerrick Harriottという人の
音楽に対する思いは、やはり本物なんですね。

おそらくあまり売れていないアルバムなん
じゃないかと思いますが(笑)、このアルバム
はレゲエ・ファンに限らずすべての音楽
ファンに聴いてもらいたい、それほど素晴ら
しい内容のアルバムだと思います。
ここのところ素晴らしいリイシューを多く
発表しているDub Store Recordsの中でも、
特に注目すべきリイシューだと思います。

1曲目はThe Preacherの「Black Moses」
です。
イントロは当時ヒットしたIsaac Hayesの
「Shaft(邦題:黒いジャガーのテーマ)」を
思わせるようなクールな始まりです。
そこからファルセットのヴォーカルにクール
な語りという曲です。

THE PREACHER - BLACK MOSES (REGGAY). FUNK - REGGAE - SOUL


2曲目はThe Chosen Fewの「People Make The
World Go Round」です。
原曲はThe Stylisticsが歌う超有名なソウル・
ナンバーです。
ゆったりしたベースのリズムに、すごく心地
良いファルセットのヴォーカルにコーラス・
ワーク。
これぞソウル!といった1曲です。

The Chosen Few - People Make The World Go Round


3曲目はDerrick Harriott & The Chosen Few
の「Psychedelic Train」です。
こちらはピアノのメロディを中心とした演奏
に乗せた、ファルセットなヴォーカルと
コーラスが楽しいきょくです。

4曲目はThe Crystalitesの「Stranger In
Town」です。
いびき、「Wake Up! Park!(起きろ!豚!)」
という声、馬車の音などのエフェクトから、
軽快なオルガンにギターのインスト・ナンバー
です。
初期レゲエの時代に流行った「スキンヘッド・
レゲエ」を思わせる1曲。

The Crystalites - Stranger in Town


5曲目はKarl Bryan & The Crystalitesの
「Slippery」です。
こちらはちょっと悲し気なサックスのメロディ
を中心としたインスト・ナンバーです。

6曲目はDerrick Harriottの「Message From
A Black Man」です。
ギターの奏でる陰のあるメロディに、Derrick
Harriottのファルセットのヴォーカルが良い味
を出している曲です。

Derrick Harriott & The Chosen Few - Message From A Black Man


7曲目はThe Chosen Fewの「Am I Black
Enough」です。
華やかなホーン・セクションから甲高い
ソウルフルなヴォーカルが心地良い1曲。

8曲目はBongo Herman & Lesの「Home Sweet
Home」です。
パーカッションとギターのインスト・ナンバー
です。
Jazzyなギターがグッド!

9曲目はBongo Herman & Lesの「Hail I」
です。
オルガンとピアノにパーカッションのイントロ
から、甲高いサックスのメロディが心地良い曲
です。
ナイヤビンギ色の強い1曲。

10曲目はPat Satchmoの「A Handful Of
Friends」です。
Pat Satchmoという名前の人ですが、
「サッチモ」と呼ばれたルイ・アームスト
ロングの物マネをしているような歌い方の
曲です。
明るくユーモラスな印象の曲ですが、不思議と
寂寥感を感じる1曲。

Pat Satchmo A Handful Of Friends - Move and Groove


11曲目はI-Royの「Tougher Than Tough」
です。
やはりディージェイというスタイルは、
バックがソウル調の曲でもレゲエの匂い
がします。
ノリノリのトースティングが心地良い
曲です。

12曲目はDerrick Harriottの「Brown Baby」
です。
こちらはエコーのかかったソウルフルな
ヴォーカルが、グッと来る曲です。
Derrick Harriottの「ソウル愛」を感じる
曲です。

Derrick Harriott - Brown Baby


13曲目はCrystal Generationの「Hell
Below」です。
ファルセットのコーラスの繰り返しが面白い
曲です。

14曲目はRamon & The Crystalitesの
「Golden Chickens」です。
スペイン語風(?)の語りから、ピアノ
を中心とした怪しげで危険な香りのする
メロディ…。
まるでBlack Ark時代のLee Perryのダブ・
アルバムにでも入っていそうな、不思議な
魅力を持った曲です。

Ramon & The Crystalites - Golden Chickens (1971)


15曲目はThe Chosen Fewの「Going Back
Home」です。
こちらもファルセットなヴォーカルが魅力の
ソウル色の強いナンバーです。

16曲目はNoel Brownの「Phoenix」です。
当時Glen Campbellで大ヒットしたポップス
曲「By The Time I Get To Phoenix」です。
レゲエ・テイストのリズムで、見事に歌い
あげています。

17曲目はKingstoniansの「Right From
Wrong」です。
心地良いギターのリズムに乗せた、スウィート
なヴォーカルとコーラス・ワークが魅力的な
曲です。

KINGSTONIANS "RIGHT FROM WRONG"


18曲目はThe Chosen Fewの「I'm Sorry」
です。
ファルセットなソフトなヴォーカルに、
コーラス・ワークが素晴らしい曲です。

19曲目はKim Harriottの「Just Want To Be
Your Joy」です。
こちらは女性ヴォーカリストの、透き通った
歌声が魅力の曲です。

Kim Harriott - Just Want To Be Your Joy


20曲目はJunior Murvinの「Rescue The
Children」です。
Lee Perryプロデュースの「Police & Thieves」
が有名なJunior Murvinの、ファルセットが
冴えわたった曲です。

ざっと追いかけて来ましたが、1曲1曲は
深刻な曲では無いけれど、聴き終わった後
にはかなりズシッとした聴きごたえが残る
アルバムです。
こうしてジャマイカでソウル色の強い楽曲を
やる事は批判される部分もあったようですが、
この時代にこれだけ完成度の高い音楽を作って
いるのは、やはりスゴイ事なんですね。

音楽はカテゴリーに捉われず、良い音楽か?
悪い音楽か?で聴くという事も大切です。

どこでレゲエをやろうが、どこでソウルを
やろうが、良い音楽は良い音楽。
それでイイんだと思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Various
○アルバム: Derrick Harriott Reggae Funk & Soul 1969-1975
○レーベル: Dub Store Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2016

○Various「Derrick Harriott Reggae Funk & Soul 1969-1975」曲目
1. Black Moses - The Preacher
2. People Make The World Go Round - The Chosen Few
3. Psychedelic Train - Derrick Harriott & The Chosen Few
4. Stranger In Town - The Crystalites
5. Slippery - Karl Bryan & The Crystalites
6. Message From A Black Man - Derrick Harriott
7. Am I Black Enough - The Chosen Few
8. Home Sweet Home - Bongo Herman & Les
9. Hail I - Bongo Herman & Les
10. A Handful Of Friends - Pat Satchmo
11. Tougher Than Tough - I-Roy
12. Brown Baby - Derrick Harriott
13. Hell Below - Crystal Generation
14. Golden Chickens - Ramon & The Crystalites
15. Going Back Home - The Chosen Few
16. Phoenix - Noel Brown
17. Right From Wrong - Kingstonians
18. I'm Sorry - The Chosen Few
19. Just Want To Be Your Joy - Kim Harriott
20. Rescue The Children - Junior Murvin