今回はTenor Sawのアルバム

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「Fever」です。

Tenor Sawは80年代後半のダンスホ-ル・
レゲエで活躍したシンガーです。
「Stalag」リディムを使った「Ring The
Alarm」などのヒット曲を持ち、「アウト・
オブ・キー」の使い手として活躍した人
なんですが、88年にアメリカのテキサス
で腐乱死体で発見されるというちょっと
不幸な亡くなり方をしています。
1984年から88年というわずか4年、
まだ22歳という活動歴だったそうです。

アーティスト特集 Tenor Saw (テナー・ソウ)

今回のアルバムは1985年にUKの
Sprint Recordsというレーベルから
リリースされたアルバムです。
ネットのDiscogsなどで調べた限りでは、
Tenor Sawの生前のソロ・アルバムはこの
1枚ぐらいしか無いんですね。
おそらくこれが彼のファースト・ソロ・
アルバムであることは、間違いなさそう
です。

ちなみにCocoa TeaやNitty Grittyなどの
アーティストとの共演盤(対決盤)は、何枚
か作られています。

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Tenor Saw & Nitty Gritty ‎– Tenor Saw Meets Nitty Gritty (1985)

手に入れたのはBlue Mountainというレーベル
からリリースされたLPの中古盤でした。

Side 1が5曲、Side 2が5曲の全10曲。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

All tracks written by Cleve Bright
Arranged by Steelie Johnson, Licoln 'Sugar' Minott, D. Thompson
Recorded at Channel One Studio, Music Mountain Studio, Dynamics Studio
Recording Engineer: Peter 'Chemist' Thompson
Mixed at Music Mountain Studio, Dynamics Studio
Produced by Peter 'Chemist' Thompson, Licoln 'Sugar' Minott
Executive Producer: Lloyd J. Evans

Vocals: Tenor Saw
Bass: D. Thompson, Robbie Shakespeare
Drums: Sly Dunbar, Barnabas, Orangutan
Guitar: Lascelles Beckford, Danny Thompson
Keyboards: Steelie Johnson, Robbie Lyn, Oshai
Percussion: Skully

Cover Design: Neil Harris

となっています。

作曲に名前のあるCleve Brightは、Tenor Saw
の本名です。

アレンジはSteelie JohnsonとLicoln 'Sugar'
Minott、D. Thompson、録音はChannel Oneと
Music Mountain、Dynamicsで行われ、エンジ
ニアはPeter 'Chemist' Thompson、ミックス
はMusic MountainとDynamics Studioで行われ
ています。
プロデューサーはPeter 'Chemist' Thompsonと
Licoln 'Sugar' Minottで、エグゼクティヴ・
プロデューサーとしてLloyd J. Evansという
名前があります。

ヴォーカルはTenor Saw、ベースはD. Thompson
とRobbie Shakespeare、ドラムはSly Dunbarと
Barnabas、Orangutan、ギターはLascelles
BeckfordとDanny Thompson、キーボードは
Steelie JohnsonとRobbie Lyn、Oshai、
パーカッションはSkullyとなっています。
ミュージシャンの多さから見て一度の録音
ではなく、シングル・リリースの曲をまとめた
アルバムではないかと推測されます。

Steely & Clevieで知られるSteelie Johnson
がアレンジとキーボードで参加しています。
今回のアルバムは85年のアルバムなので、
一見デジタルに見えますが実はほとんど
アナログの録音で、そこにこのSteelieの
キーボードを乗せる事で「疑似デジタル」を
作り出しているんですね。
そのあたりの一見デジタルに見えて曲に
「表情」があるところも、このアルバムの
魅力です。

また名シンガーとして知られるSugar Minott
がアレンジとプロデュースに名前があります。
彼は歌手としてだけではなく、多くの若い
歌手を育てた事でもよく知られていますが、
このTenor Sawも彼に目をかけられたシンガー
だった事が解ります。

カヴァー・デザインはNeil Harrisという人
が担当しています。

さて今回のアルバムですが、この80年代に
流行った「アウト・オブ・キー」といえば
真っ先に浮かぶのがこの人Tenor Sawで、
その魅力の詰まったのが今回のアルバム
と言えるでしょう。
私はLPはコンパクトな安物のプレイヤー
で聴いているんですが、そんな安物の
プレイヤーで聴いてもこの人の歌声は
ゾクゾクする快感が走ります。
アウト・オブ・キー独特の浮遊感のある歌声
に、彼の持つ危険な香り…。
この時代にはNitty GrittyやAnthony Red
Roseなど、魅力的なアウト・オブ・キーの
シンガーは数多くいるけれど、その中でも
このTenor Sawは頭一つ抜きん出た魅力が
あります。

今回のアルバムは代表曲「Ring The Alarm」
は収められていないものの、同じ「Stalag」
のリディムを使った表題曲「Fever」や、
ロックステディのヒット曲「Tonight」の
リディムを使った「Lots Of Sign」、この
時代の大ヒット曲「Sleng Teng」のリディム
を使った「Pumpkin Belly」など、「Ring
The Alarm」に次ぐ彼の代表曲が多く収めら
れた魅力的なアルバムに仕上がっています。
彼の生前のオリジナル・アルバムでもあり、
この時代のレゲエの好きな人にはぜひ聴いて
もらいたいアルバムだと思います。

ちなみに「アウト・オブ・キー」とは、わざ
とキーをハズして歌うこの時代に流行った
独特の歌唱法です。
それによって浮遊感のある、独特の感覚が
生まれるんですね。
よほど歌のウマい人でないと出来ない、
難しい歌唱法らしいです。
好きになると本当にハマります(笑)。

セレクターズチョイス:レゲエDJ HIBIKILLAが選ぶアウト・オブ・キー

ダンスホールレゲエ - Wikipedia

Side 1の1曲目は「Lots Of Sign」です。
リディムはロックステディの時代の
Keith & Texのヒット曲「Tonight」です。
陰影のあるメロディにTenor Sawの浮遊感の
あるヴォーカルがとても魅力的な、彼の
代表曲のひとつです。

Tenor Saw Lots Of Sign


リズム特集 Tonight/Lots Of Sign (トゥナイト/ロッツ・オブ・サイン)

2曲目は「Shirley Jones」です。
リディムはこちらもロックステディの時代の
ヒット曲Slim Smithの「Rougher Yet」。
明るいピアノのメロディに、Tenor Sawの
浮遊感のあるヴォーカルが良いです。

リズム特集 Rougher Yet (ラファー・イェット)

3曲目は「Pumpkin Belly」です。
リディムはこの80年代の半ばにPrince Jammy
のプロデュースで革命を起こしたWayne Smith
の「Under Me Sleng Teng」、通称「Sleng
Teng」のリディムです。
独特のデジタル・サウンドにTenor Sawの
フローが冴えます。

Pumpkin Belly - Tenor Saw


リズム特集 Sleng Teng (スレンテン)

4曲目は「Eni Meeni Mini Mo」です。
リディムはロックステディの時代のSound
Dimensionの「Real Rock」。
ロックステディのリディムにデジタル感を
うまく盛り込んだ1曲です。

リズム特集 Real Rock (リアル・ロック)

5曲目は「Roll Call」です。
リディムはロックステディの時代の
The Techniquesのヒット曲「Queen Majesty」。
こちらも古い曲にうまく自分のリリックを
盛り込んで、自分の持ち歌にした1曲。

Tenor Saw - Roll Call


リズム特集 Queen Majesty (クイーン・マジェスティ)

Side 2の1曲目は表題曲の「Fever」です。
リディムは代表曲「Ring The Alarm」と同じ
Techniquesレーベルのヒット・リディム
「Stalag」。
匂い立つような魅力的な歌唱の1曲。

Tenor Saw - Fever


リズム特集 Stalag (スタラグ)

2曲目は「Jah Guide And Protect Me」です。
リディムはロックステディの時代のStudio
Oneのヒット曲Joe Rileyの「You Should
Have Known」。
ピアノのメロディにTenor Sawの漂うような
ヴォーカルが印象的な曲です。

3曲目は「Rub-A-Dub Market」です。
こちらもピアノのメロディを中心に、丁寧
に歌うTenor Sawのヴォーカルが良い空気感
を出している曲です。

Tenor Saw - Rub A Dub Market


4曲目は「Run Come Call Me」です。
リディムはロックステディの時代のStudio
Oneのヒット曲Doreen Schafferの「Try A
Little Smile」です。
ちょっと初期のダンスホールの匂いを残した
魅力的な曲です。

Run Come Call Me-Tenor Saw


5曲目は「Who's Gonna Help Me Praise」
です。
アウト・オブ・キーやファルセットを駆使
したTenor Sawのヴォーカルが魅力的な曲
です。
その歌唱力で独特の空間を作り上げてい
ます。
ちょっとダブワイズの入った、イってる
ミックスも魅力的。

ざっと追いかけて来ましたが、やはりこの
時代のTenor Sawは聴き逃せない魅力があり
ます。
これだけすごいシンガーが活動歴4年、わずか
22歳という短い活躍しか出来なかったのは
本当に残念に思います。
ただこのTenor Sawの曲は今の時代に聴いても
けっして色褪せる事なく、その卓越したヴォー
カルは魅力的な輝きを放っています。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Tenor Saw - Ring The Alarm / Fever - Live 1985



○アーティスト: Tenor Saw
○アルバム: Fever
○レーベル: Blue Mountain
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1985

○Tenor Saw「Fever」曲目
Side 1
1. Lots Of Sign
2. Shirley Jones
3. Pumpkin Belly
4. Eni Meeni Mini Mo
5. Roll Call
Side 2
1. Fever
2. Jah Guide And Protect Me
3. Rub-A-Dub Market
4. Run Come Call Me
5. Who's Gonna Help Me Praise