今回はTapper Zukieのアルバム

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「Escape From Hell」です。

Tapper Zukie(Tappa Zukie)はRanking
Dreadなどとともに「第2世代」の
ディージェイとして知られている人です。
この「第2世代」のディージェイ特徴と
しては、U Royなどの「第1世代」の
ディージェイと較べて、より政治性が
強い事があげられます。
当時のジャマイカは極貧国のひとつで、
政治抗争も激しく、当時の2大政党
ジャマイカ労働党 (JLP)と人民国家党
(PNP) の間で銃撃戦が起きるほど荒れた
国だったんですね。
このTapper ZukieとRanking Dreadは、
ジャマイカ労働党 (JLP)の熱烈な支持者
として有名で、銃ではなく言葉(トース
ティング)で政治を変える主張をしていた
んですね。

その彼の思想性はジャマイカだけに留まら
ず、多くのパンクスなどの社会に不満を
持つ人々にも影響を与えました。
当時「ニューヨーク・パンクスの女王」と
呼ばれたPatti Smithも彼に影響を受けた
ひとりで、ツアーを共にした彼女は
Tapper Zukieを師と仰ぎ、トースティング
の手ほどきを受けたと言われています。
今回はそれだけパンクスにまで影響を与えた
Tapper Zukieという人の紹介です。

Tapper Zukie - Wikipedia

今回のアルバムは1978年にジャマイカ
のStarsというレーベルから発表された
Tapper Zukieがプロデュースしたダブ・
アルバムです。
このStarsはTapper Zukieのレーベルで、
彼はプロデューサーとしてHorace Andy
やJunior Ross & The Spearsなど、多くの
アーティストをプロデュースしています。
そうしたアーティストのダブをまとめた
のが、今回のアルバムなんですね。
ミックスはKing Tubby'sに在籍していた
頃の、Prince Jammyが担当しています。

手に入れたのは2016年にレゲエ・
リイシュー・レーベルJamaican Recordings
からリイシューされたCDでした。
オリジナルの10曲に加えてCDボーナス・
トラック6曲がプラスされた全16曲入り
のアルバムでした。

全16曲で収録時間は約59分。
オリジナルは10曲で、残りの6曲はCD
ボーナス・トラックです。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Drums: Carlton 'Santa' Davis, Sly Dunbar
Bass: Robbie Shakespeare
Rhythm Guitar: Tony Chin, Bingy Bunny
Lead Guitar: Earl 'Chinna' Smith
Organ: Ansell Collins
Piano: Gladstone 'Gladdy' Anderson
Percussion: Noel 'Skully' Sims
Trumpet: Bobby Ellis
Trombone: Vin Gordon
Saxophone: Deadly 'Headly' Bennett

Produced by Tapper Zukie
Recorded at: Channel One Studio
Mixed by: Prince Jammy at King Tubby's Studio
Design by: Gary@Voodoo London

となっています。

ネットの多くの販売サイトにはバック・バンド
はChannel Oneのバック・バンド
The Revolutionariesと書いてありました。
確かにメンバーを見るとSly & Robbieなども
入っていて、あながち間違ってはいないの
ですが、当時はバンド名は誰がプロデューサー
かで決まるので、プロデューサーがTapper
ZukieだとThe Musical Intimidatorsという
事になるのかもしれません。
このバンド名はTapper Zukieのいくつかの
アルバムに記載があります。

今回のアルバムにメンバーとして記載がある
のは、ドラムにCarlton 'Santa' DavisとSly
Dunbar、ベースにRobbie Shakespeare、
リズム・ギターにTony ChinとBingy Bunny、
リード・ギターにEarl 'Chinna' Smith、
オルガンにAnsell Collins、ピアノに
Gladstone 'Gladdy' Anderson、パーカッション
にNoel 'Skully' Sims、トランペットに
Bobby Ellis、トロンボーンにVin Gordon、
サックスにDeadly 'Headly' Bennettという
布陣です。

プロデュースはTapper Zukie、録音はChannel
One、ミックスはKing Tubby's時代のPrince
Jammyが手掛けています。

カヴァー・デザインはGary@Voodoo London
となっています。

さて今回のアルバムですが、正直なところ
ファースト・インプレッションは少し弱い
印象がありました。
それはなぜかというとPrince Jammyのミックス
の性格にあります。
同じKing Tubby'sのミックスでもKing Tubbyや
Scientistのミックスは切れ味のあるミックス
を作るのに対して、このPrince Jammyの
ミックスはグルーヴに重点を置かれたミックス
なんですね。
その分聴いているうちにジワジワとその良さ
が解って来るミックスなんですが、反面
初めの印象がちょっと弱く感じてしまうん
ですね。
彼Prince Jammyが一時期弟弟子のScientist
の後塵を拝したのも、このファースト・イン
プレッションの弱さにあります。
このPrince Jammyが本当の意味で輝きだすの
は、80年代のデジタルのダンスホール・
レゲエの時代になってからなんですね。

では今回のアルバムがあまり良くないかと
いうと、そんな事はまったく無くて、選曲
なども少し地味ですが、グルーヴを重視した
ミックスは聴けば聴くほどジワジワと沁みて
来る良いミックスなんですね。
内容はなかなか良いと思います。
やはりファースト・インプレッションで損
をしているのが、ちょっと惜しまれます。

1曲目は「Sidewalk Dub」です。
Tapper Zukieの「My God Is Real」のダブ
で、オリジナルはPato Blairという人の
「Dear God」という曲のようです。
ベースを中心とした渋めのダブです。

2曲目は「Masacra Dub」です。
Prince Allahの「Nah Go A Burial」という
曲のダブのようです。
オルガンのイントロからギター、トロンボーン
と入って来るダブです。
こちらの曲もベースが、全体をうまくシメて
いる印象。
トロンボーンの音色がシブいです。

Tappa Zukie - Masacra Dub


3曲目は「Dub Driver」です。
こちらもPrince Allahの「Slave Driver」が
オリジナルのダブのようです。
ホーンのイントロからギター、ベースと入って
来るダブです。

DUB DRIVER - Tappa Zukie


4曲目は「Population Dub」です。
リディムはジャズの名曲Dave Brubeckの
「Take Five」です。
ズシッと来るベースのイントロから、魅力的
なサックスの音色にダブワイズ…。
心地良いグルーヴ感のある曲です。

Tappa Zukie - Population Dub


5曲目は「Weather Umbrella」です。
リディムはTreasure Isleのロックステディ
の名リディムThree Topsの「It's Raining」。
使われている曲はRay Iの「Weatherman Skank」
のようです。
ピアノのリリカルなメロディと、ベースの
ズシッとドスの効いたサウンドを軸とした
ダブです。

6曲目は「King Alpha In School」です。
リディムはMoodiscの名曲Ebony Sistersの
「Let Me Tell You Boy」です。
そのリディムを使ったHorace Andyの「Stop
Your Brutality」という曲のダブのよう
です。
明るいホーンのメロディを中心に、浮遊感
のあるオルガンなども入ったダブ。

7曲目は「Experience Dub」です。
リディムはAlton Ellisの「Hurting Me」。
そのリディムを使ったHorace Andyの「Natty
Dread A Weh She Want」のダブのようです。
ホーンを中心としたダブです。

8曲目は「Marching To Zion」です。
Junior Ross & The Spearsの「Bow Down
Babylon」のダブです。
リリカルなピアノのイントロから、ホーンを
中心としたダブです。

Musically Intemidaters - Marching To Zion


9曲目は「Escape From Hell」です。
こちらはオリジナルのダブなのか?表ジャケ
の小冊子には、ソースとして「Escape From
Hell Rhythm」という記載のみがあります。
浮遊感のあるオルガンに、被さるように
乗って来るホーン・セクション、ズシッと
重いベースという、かなり渋いダブです。

Tappa Zukie - Escape From Hell


10曲目は「Squatters Dub」です。
リディムはDoreen Schafferという人の「Try
A Little Smile」という曲のようです。
そのリディムを使ったTapper Zukieの
「Revolution」のダブのようです。
ホーン・セクションの奏でる明るいメロディ
と、ベースを中心としたダブ。

11~16曲目まではCDボーナス・トラック
が収められていますが、ここでは省略します。

ざっと追いかけて来ましたが、全体に低音の
ベースを効果的に使った曲が多く、地味ながら
もすごく聴き心地の良いアルバムに仕上がって
います。

この時代のPrince Jammyはすでに完成された
力があり、他のミキサーと較べてもけっして
見劣りしない実力があるんですね。
ただそこからさらに飛躍していったのが、
この人のさらにスゴイところです。

演奏も無駄なものを削ぎ落した演奏で、この
70年代後半らしさが感じられます。
地味ながらキラリと光るものがあるダブ。
それが今回のアルバムだと思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Tapper Zukie
○アルバム: Escape From Hell
○レーベル: Jamaican Recordings
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1978

○Tappa Zukie「Escape From Hell」曲目
1. Sidewalk Dub
2. Masacra Dub
3. Dub Driver
4. Population Dub
5. Weather Umbrella
6. King Alpha In School
7. Experience Dub
8. Marching To Zion
9. Escape From Hell
10. Squatters Dub
(CD Bonus Tracks)
11. Sensimelia Dub
12. Mariguana Dub
13. She Want A Version
14. Broad Back Skank
15. Rub A Dub A Weh Them Want
16. Real Version