今回はHorace Andyのアルバム

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「Get Wise」です。

Horace Andyはルーツ・レゲエの時代から
活躍するシンガーです。
Horace Hindsという名前で生まれた彼は、
Studio Oneから歌手デビューする際に
レーベルの主催者C.S. Doddから、当時人気
だった歌手Bob Andyの名前からとった
Horace Andyという名前を与えられ、デビュー。
Studio Oneからは「Skylarking」などのヒット
曲を飛ばし、その後も独特のハイトーン・
ヴォイスを武器に、長く活躍を続け、ジャマ
イカの「国民的歌手」とまで呼ばれるほど
の実績を残した人なんですね。

アーティスト特集 Horace Andy (ホレス・アンディ)

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Horace Andy - Skylarking (1972)

今回のアルバムは1975年にPhil Pratt
のレーベルSunshotからリリースされた
アルバムです。
自身もロックステディの頃の名シンガーで
あり、天才プロデューサーと呼ばれた
Phil Prattですが、解説文によると
Horace Andyとの親交はデビュー当時から
あったそうで、彼がプロデュースした
「Get Wise」をはじめとするシングル盤を
まとめたのが今回のアルバムなんだそう
です。
のちにWackiesで再演され「Money Money」
の名前で知られる「Root Of All Evil」の
ほか、「Let Your Teardrops Fall」など
佳曲が揃ったアルバムになっています。

手に入れたのは2014年にレゲエ・
リイシュー・レーベルPressure Sounds
からリイシューされたCDでした。
オリジナルの10曲に加えて、「Root Of
All Evil」のJah Stitchによるディージェイ・
ヴァージョンやそのダブなど、6曲がプラス
された、計16曲入りのアルバムになって
います。

ちなみにこのリイシューが発売されるまでは、
ジャマイカのみの発売で枚数も少ない希少盤
だったとの事です。

全16曲で収録時間は約43分。
オリジナルは10曲で、残りの6曲はCD
ボーナス・トラックです。
また曲順もオリジナルとはずいぶん変更
されています。(最後にオリジナルの曲順
も表示しておきました。)

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Musicians:
Drums: Lowell 'Sly' Dunbar, Leroy 'Horsemouth' Wallace, Carlton 'Santa' Davis
Bass: Aston 'Familyman' Barrett, Robbie Shakespeare, George 'Fully' Fulwood
Guitar: Earl 'Chinna' Smith, Duggie Bryan, Eric 'Bingy Bunny' Lamont, Tony Chin
Keyboards: Bobby Kalphat, Ansel Collins, Bernard 'Touter' Harvey
Piano: Lloyd Willis
Backing Vocals: Jimmy London, Keith Poppin, Al Campbell, Phil Pratt
Lead Vocal: Horace Andy

Studios: Channel One, Black Ark, Dynamic Sounds, Randy's
Engineers: Ernest Hookim, Lee Perry, Carlton Lee, Errol Thompson
Special thanks to: Horace Andy, Phil Pratt, Frenchie, Martin Harrison, John Wardle, Peter Wight
Sound restoration: Andy La Vien
Mastered by Dave Blackman at Hiltongrove
Original artwork & design by Andell Forgie
restoration & layout by Teflon aka John Sims

となっています。

アルバムに付いていた解説によると、ほとんど
の録音は1972~74年に行わたそうです。

シングル盤を寄せ集めたアルバムのため、
ミュージシャンやスタジオの数は多くなって
います。

録音はChannel OneとBlack Ark、Dynamic
Sounds、Randy'sなどで行われ、エンジニア
はErnest Hookim(Channel One)とLee Perry
(Black Ark)、Carlton Lee(Dynamic)、
Errol Thompson(Randy's)が担当しています。
記載はありませんが、プロデュースは
Phil Prattで間違いありません。

ミュージシャンはドラムにSly Dunbarと
Horsemouth Wallace、Santa Davis、
ベースにAston 'Familyman' BarrettとRobbie
Shakespeare、George Fulwood、ギターに
Earl 'Chinna' SmithとDuggie Bryan、Bingy
Bunny、Tony Chin、キーボードにBobby Kalphat
とAnsel Collins、Bernard 'Touter' Harvey、
ピアノにLloyd Willis、バッキング・ヴォーカル
にJimmy LondonとKeith Poppin、Al Campbell、
Phil Pratt、そしてリード・ヴォーカルに
Horace Andyという布陣です。

販売サイトによってはバックはSoul Syndicate
と書いているところもありましたが、この場合
はPhil Prattのプロデュースなので、2曲に
名前のあるPhil Pratt Allstarsあるいは
Sunshot AllstarsかSunshot Bandという方
が正しいでしょう。

さて今回のアルバムですが、シングル盤を
寄せ集めたアルバムという事ですが、意外と
サウンドには統一感があり、聴き心地の良い
アルバムだと思いました。
この統一感はおそらくプロデューサーの
Phil Prattのイメージが明確な為だと思い
ます。
解説文などによると、当時のジャマイカは
保守的なラジオ局の力が強く、ラジオで放送
されるかされないかで売り上げに影響したと
いう事ですが、その為商業的な成功には恵まれ
なかったPhil Prattですが、彼の作る音楽には
確かなクウォリティがあり、内容はとても良い
んですね。

またHorace Andyの独特のファルセット・
ヴォーカルも素晴らしいですが、バックの
演奏の健闘も聴き逃せません。
72~74年という時代のまだ若いレゲエ
の、空気感がとても良いんですね。
ベースとドラムを軸としたリズム隊の、演奏
が素晴らしいです。
特に1曲目2曲目あたりで聴かれる、レゲエ
特有のドラムのゴロゴロっとしたサウンドは
すごく魅力的。
このあたりのドラムはHorsemouthあたりなん
でしょうか?
初めの頃のレゲエのザラッとした耳障りが、
本当にイイんですね。
また「Get Wise」などで聴かれるピアノの
メロディも、すごく良いアクセントになって
います。
バックのサウンドに耳を傾けて聴いていても、
すごく気持ちの良いアルバムなんですね。

あえて難を言えば、曲順はオリジナル通りに
して、最後にボーナストラックという方が
良かったのかもしれません。
アルバムをまとめて聴いた時に、もともと
シングルをまとめたアルバムという事もある
とは思いますが、どうもコンピュレーション
感が強いんですね。
まあそれもPressure Soundsというリイシュー・
レーベルらしさではありますが…。

1曲目は「Eighty Percent Badness」です。
オリジナルではB面の2曲目に収められて
いる曲です。
冒頭のゴロゴロっとしたドラミングに、
ヤラレちゃう曲です(笑)。
ギターのリズムに乗せたHorace Andyの
甲高いヴォーカルがすごく魅力的。

HORACE ANDY - Eighty percent badness


2曲目は「I Don't Want To Be Outside」
です。
オリジナルではB面の1曲目の曲です。
タラタラっと入るドラムにギターのメロディ、
Horace Andyのファルセットと、味わい深い
1曲です。

Horace Andy - I Don't Want To Be Outside


3曲目は「Feel Good」です。
オリジナルではB面最後の5曲目の曲です。
ギターの刻むようなリズムに乗せた、Horace
Andyのヴォーカルが魅力的な曲です。

4曲目は「Youths Of Today」です。
オリジナルではB面4曲目の曲です。
こちらもギターの刻むようなリズムに乗せた
曲です。

5曲目は「Today Youth (Horns Cut)」です。
こちらはオリジナルにはない、4曲目
「Youths Of Today」にホーンのメロディを
乗せたホーン・カット・ヴァージョンです。
ホーンが入るとグッと華やかさが増す印象
です。

6曲目は表題曲の「Get Wise」です。
オリジナルではB面の3曲目の曲です。
ズシッと重いベース、ピアノのリリカルな
メロディ、Horace Andyのファルセットと
揃った曲です。

HORACE ANDY - Get Wise


7曲目はPhil Pratt Allstarsの「Wise Dub」
です。
オリジナルにはない、6曲目「Get Wise」の
ダブ・ヴァージョン。
ピアノのリリカルなメロディを生かしたダブ
です。

HORACE ANDY "WISE DUB"


8曲目は「Holy Mount Zion」です。
オリジナルではA面の3曲目の曲です。
こちらはベースとピアノのメロディを中心と
した演奏に、Horace Andyのヴォーカルが
冴える曲です。

9曲目は「Let Your Teardrops Fall」です。
オリジナルではA面の5曲目の曲です。
こちらはバックの素晴らしいコーラス・ワーク
に乗せた、Horace Andyのヴォーカルがとても
魅力的な曲です。

Horace Andy - Let your teardrop fall


10曲目は「Sexy Jean」です。
オリジナルではA面の4曲目の曲です。
ギターの刻むようなメロディに、Horace Andy
の高音なヴォーカルが冴える曲です。

11曲目は「Root Of All Evil」です。
オリジナルではA面の2曲目に入っている、
「Money Money」として多くの人に知られて
いる彼の代表曲のひとつです。
合間良く入って来るピアノがグッド。

HORACE ANDY - Root of all evil


12曲目はJah Stitchの「Evilest Thing」
です。
オリジナルにはない、11曲目「Root Of All
Evil」のJah Stitchによるディージェイ・
ヴァージョンです。
こういう曲が入っているのも、いかにも
Pressure Soundsらしいところ。

13曲目はPhil Pratt Allstarsの「Evilest
Thing Version」です。
こちらは12曲目Jah Stitchの「Evilest
Thing」のダブ・ヴァージョンです。

14曲目は「I Will Forgive You」です。
オリジナルではA面の1曲目に収められて
いる曲です。
こちらは渋いベースとピアノのリリカルな
メロディ、それに乗せたHorace Andyのソフト
なヴォーカルといった曲です。

Horace Andy - I Will Forgive You


残りの2曲はボーナス・トラックなので、
ここでは割愛します。

ざっと追いかけて来ましたが、サウンドに
統一感があり、細部まで心が行き届いた
音作りで魅力的なアルバムだと思います。
Horace Andyのアルバムとしては比較的早い
時期の作品ですが、なぜこのアルバムが
ジャマイカのみの発売で留まり発売されて
いなかったのか?ちょっと不思議に思うほど
内容が良いんですね。
リイシュー・レーベルPressure Soundsに
よって多くの人の耳に届いたのは、本当に
良い事だったと思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Horace Andy
○アルバム: Get Wise
○レーベル: Pressure Sounds
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1975

○Horace Andy「Get Wise」曲目
1. Eighty Percent Badness - Horace Andy
2. I Don't Want To Be Outside - Horace Andy
3. Feel Good - Horace Andy
4. Youths Of Today - Horace Andy
5. Today Youth (Horns Cut) - Horace Andy
6. Get Wise - Horace Andy
7. Wise Dub - Phil Pratt Allstars
8. Holy Mount Zion - Horace Andy
9. Let Your Teardrops Fall - Horace Andy
10. Sexy Jean - Horace Andy
11. Root Of All Evil - Horace Andy
12. Evilest Thing - Jah Stitch
13. Evilest Thing Version - Phil Pratt Allstars
14. I Will Forgive You - Horace Andy
(CD Bonus Tracks)
15. Tag Along - Horace Andy
16. I May Never See My Baby - Horace Andy

(オリジナル・アルバム収録曲・曲順)
Side A
1. I Will Forgive You
2. Root Of All Evil
3. Holy Mount Zion
4. Sexy Jean
5. Let The Teardrops Fall
Side B
1. I Don't Want To Be Outside
2. Eighty Percent Badness
3. Get Wise
4. Youth Of Today
5. Feel Good

●今までアップしたHorace Andy関連の記事
〇Horace Andy, Naggo Morris, Wayne Jarrett「Horace Andy Meets Naggo Morris & Wayne Jarrett - Mini Showcase」
〇Horace Andy「Dance Hall Style」
〇Horace Andy「In The Light / In The Light Dub」
〇Horace Andy「Pure Ranking」
〇Horace Andy「Sings For You And I」
〇Horace Andy「Skylarking」
〇Horace Andy「You Are My Angel」
〇Various「When Jah Shall Come」
〇Horace Andy「Good Vibes」
〇Horace Andy & Errol Scorcher「Unity Showcase」