今回はPrince Far Iのアルバム

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「Cry Tuff Dub Encounter Chapter 3」です。

Prince Far Iはルーツ・レゲエの時代から活躍
したディージェイで、プロデューサーでもあった
人です。
自ら「チャンティング」と称した、独特の朗読
するようなトースティング・スタイルで知られ
ています。
またUKのパンクとレゲエを融合したような
レーベルOn U Soundsレーベルの白人の主催者
Adrian Sherwoodとも交流が深く、On U Sounds
のユニットSingers & Playersなどにも参加して
います。

A href="https://en.wikipedia.org/wiki/Prince_Far_I">Prince Far I - Wikipedia

1983年に銃により殺害されています。
ジャマイカでは多くのミュージシャンが銃に
よって殺害されているんですね。

ジャマイカ・レゲエ音楽史における銃事件に迫る…

今回のアルバムは1980年にUKの
Daddy Koolというレーベルからリリース
されたダブ・アルバムです。
このアルバムが発売された時の名義は
Prince Far-I And The Arabsとなっており、
タイトルも「Cry Tuff Dub Encounter Chapter
Ⅲ」と、「3」ではなく「Ⅲ」になって
います。

ネットの販売サイトなどの情報によると、
彼の80年のアルバム「Jamaican Heroes」
のダブと書かれているところがありました。
ただそのアルバムは私は持っていないので、
本当にそうなのかは確認できませんでした。

ちなみにこの「Cry Tuff Dub Encounter」
シリーズは全部で4作作られており、78年
にThe Arabs名義の「Chapter 1」、79年に
Prince Far I名義の「Part 2」、そして今回
の「Chapter Ⅲ」、81年に「Chapter IV」
が作成されています。

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The Arabs ‎– Crytuff Dub Encounter Chapter 1 (1978)

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Prince Far I & The Arabs ‎– Cry Tuff Dub Encounter Chapter Ⅳ (1981)

名義が変わっていたりタイトルやレーベル
がばらついているので、ちょっと解りづらい
ところがありますが、このPrince Far Iを
代表するダブのシリーズなんですね。

手に入れたのは96年にレゲエ・リイシュー・
レーベルPressure Soundsからリイシューされ
たCDでした。

全8曲で収録時間は約40分。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Musicians:
Drums: 'Style' Scott
Bass: Errol 'Flabba' Holt
Rhythm Guitar: Bingy Bunny, Earl Chinna
Lead Guitar: Sowell
Percussion: Prince Far I, 'Style' Scott

Very Special Thanks to Guest Musicians:
Toy Synthesizer, Melodica, Various Whistles: Steve Beresford
Flute: David Toop
Backing Vocals: Ari Up, Vivian, Elizabeth Archer

Recorded at Channel One Studios. Jamaica
Mixed and Overdubbed at Berry Street Studio, London,
by The Dub Syndicate
Produced by Prince Far I (Another Cry Tuff Production)

Mastered by Kevin Metcalee
Photos by Kishi Yamamoto, Beth Lesser
Prints by Jeb Nichols
Design & Layout by Rod Bloor

となっています。

バックを務めているのはPrince Far Iの
バック・バンドThe Arabsで、このアルバム
の時のメンバーは、ドラムに'Style' Scott、
ベースにFlabba Holt、リズム・ギターに
Bingy BunnyとEarl 'Chinna' Smith、リード・
ギターにSowell、パーカッションにPrince
Far Iと'Style' Scottという布陣です。
この時代のレゲエに詳しい人だと解ると思い
ますが、このメンバーはこの80年代前半の
ダンスホール・レゲエで活躍したRoots Radics
のメンバーとほぼ同じなんですね。
この頃くらいまではバック・バンドは雇い主
によって名前を使い分けていて、この
Roots Radicsもジャマイカで活動する時は
Roots Radicsで、UKのAdrian Sherwoodの
レーベルOn-U Soundsでプレイする時には
The Dub Syndicate、そして今回のPrince
Far Iの元でプレイする時にはThe Arabsと
名乗っていたようです。

他にゲスト・ミュージシャンとして、トイ・
シンセサイザーとメロディカ、いろいろな
ホイッスルでSteve Beresford、フルートで
David Toop、コーラスでAri UpとVivian、
Elizabeth Archerが参加しています。
これらのメンバーははOn-U Soundsで活躍
したNew Age Steppersのメンバーなどの
ようです。

録音はジャマイカのChannel One Studiosで
行われ、ミックスとオーヴァー・ダブは
ロンドンのBerry Street StudioでThe Dub
Syndicateによって行われ、プロデュースは
Prince Far I本人が行っています。
書いたようにThe Dub Syndicateは、Roots
RadicsがOn-U Soundsでプレイする時に
使ったバンド名です。
今回のクレジットにAdrian Sherwoodの記載
はありませんが、販売サイトなどによっては
ミックスがAdrian Sherwoodのと書いている
ところなどもあり、Prince Far IとAdrian
Sherwoodの関係の深さから見て、もしかしたら
彼が深くかかわったアルバムかもしれません。

さて今回のアルバムですが、このPrince Far I
という人はその個性的なダミ声とは裏腹に、
かなりスマートなサウンドを作る事を得意に
している人なんですね。
パンクとレゲエの中間的なレーベルOn-U Sounds
で活躍した事でも知られる彼ですが、その
On-U SoundsのAdrian Sherwoodとうまく付き
合えたのも、彼のそうしたロック寄りの音楽
センスがあったからなんですね。

そうした彼の作るダブはトビ音が満載で、
ジャマイカのダブとは一味聴き心地が特徴的
です。
今回のバック・バンドThe Arabsは、書いた
ようにこの時代にジャマイカのダンスホール・
レゲエで活躍したRoots Radicsとほぼ同じ
メンバーなんですが、ほぼ同じ時代にRoots
Radicsのサウンドから作られたScientistの
「漫画ジャケ」シリーズと較べても、サウンド
がかなり違っているのが面白いところです。

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Scientist ‎– Scientist Rids The World Of The Evil Curse Of The Vampires (1981)

ダブというのはミックスしている人によって、
色合いがかなり変わる音楽なんですね。
そこがダブという音楽の、面白いところでも
あります。
ダブが好きな人にとっては、このPrince Far I
の「Cry Tuff Dub Encounter」シリーズも
ぜひ聴いておきたいところです。

今回の「Chapter 3」は全8曲と曲数が少なく、
その分長い曲が多いのが特徴的です。
1曲目の「Plant Up」は8分10秒にも及ぶ
曲で、曲の前と後ろが別のダブが繋がっている
ような曲です。
6曲目「Homeward Bound」は2番目に長い
7分45秒の曲で、リディムはあのルーツ・
レゲエの名曲The Abyssiniansの「Satta
Massagana」です。
全体に凝ったエフェクトやフルート、シンセ
などが効果的に使われた曲が多く、音作りの
ウマさはすごく魅力的です。
彼のこのシリーズの中でも、聴きどころを
心得た良い作品だと思います。

1曲目は「Plant Up」です。
書いたようにこのアルバムの中でも一番長い
8分10秒にも及ぶ曲です。
前半はPrince Far Iのダミ声のトースティング
にエフェクトとドラムの演奏、後半はトビ音
からエコーの効いたThe Arabsの演奏と、
ちょっとディスコ・ミックスに近ような
スタイルです。
この1曲からもエフェクト使いのウマさが
感じられます。

Plant Up _ Prince Far I


2曲目は「Back Weh」です。
こちらも演奏に様々なトビ音が入った曲です。

prince far i back weh


3曲目は「The Conquest」です。
こちらは重いベースを中心とした曲です。
エフェクトがうまく曲にアクセントを付けて
います。

4曲目は「Final Chapter」です。
こちらはストリングスにフルート、ピアノと、
ベースを重いリズムを軸にしながら、うまく
アクセントを付けた曲です。

5曲目は「Shake The Nation」です。
シンセの甲高いメロディから女性コーラス、
ベースのドスの効いたリズムにピアノの
メロディと、音の出し入れが心地良い曲で
す。

Prince Far I - Shake the Nation


6曲目は「Homeward Bound」です。
書いたように、レゲエの名曲「Satta
Massagana」のリディムの曲です。
フルートやピアノ、エフェクトが効果的に
使われており、うまく原曲を崩した印象の
曲になっています。
数ある「Satta Massagana」のダブの中でも、
出色の出来。

Prince Far I - Homeward Bound


リズム特集 Satta Massa Ganna (サタ・マサ・ガナ)

7曲目は「Low Gravity」です。
こちらはシンセのメロディから、ダブワイズ
したギターが印象的な曲です。

8曲目は「Mansion Of Invention」です。
こちらはPrince Far Iのダミ声のトース
ティングから、浮遊感のあるシンセと
ピアノのメロディといった曲です。
合間に入るディストーションなギターが、
ロックでイイです(笑)。

Prince Far I - Mansion Of Invention


ざっと追いかけて来ましたが、Prince Far I
の音楽にはあまりレゲエを意識させないセンス
とカッコよさがあるんですね。
そのあたりは多少好き嫌いが分かれるところ
かもしれませんが、こうしたレゲエのセンター
ではないけれど聴き易いサウンドが、多くの
ロックなどのリスナーのレゲエの入り口に
なった事は否定が出来ません。

サウンドがカッコイイという事は、けっして
悪い事ではないんですね(笑)。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Prince Far I
○アルバム: Cry Tuff Dub Encounter Chapter 3
○レーベル: Pressure Sounds
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1980

○Prince Far I「Cry Tuff Dub Encounter Chapter 3」曲目
1. Plant Up
2. Back Weh
3. The Conquest
4. Final Chapter
5. Shake The Nation
6. Homeward Bound
7. Low Gravity
8. Mansion Of Invention