今回はDevon Russellのアルバム

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「Prison Life」です。

Devon Russellはロックステディの時代の
1968年にLloyd Robinsonとのデュオ・
グループLloyd and Devonとして「Red Bum
Ball」のヒット曲を持つ名シンガーです。

さらに2002年刊行の本「Roots Rock
Reggae」の記述によると、The Congosの
Cedric MytonとThe Royal RassesのPrince
Lincoln ThompsonとThe Tartansという
グループを組んでいた事もあるそうです。
Discogsで調べたところでは、おもに66~
70年頃に活躍したグループで、他に
The Congosにも参加したLindberg Lewisが
参加していたようです。
シングルの発売のみでアルバムのリリースは
なし。

80年代にはソロ・シンガーとして、数枚の
アルバムをリリースしています。
さらに1990年には80年代に活躍した
ルーツ・グループCultural Rootsに参加し
「Money, Sex & Violence」というアルバム
を残しています。

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Devon Russell & Cultural Roots ‎– Money, Sex & Violence (1990)

Devon Russell - Wikipedia

今回のアルバムは1983年にTamoki Wambesi
レーベルからリリースされた、Devon Russell
のソロ・アルバムです。
(「Roots Rock Reggae」のアルバム評には
サード・アルバムと書かれています。)

Discogのディスコグラフィを見ると、この時期
にDevon Russellは、Studio One,から「Roots
Music」(82年)、Freedom Soundsから
「Home Bound Train」(83年)、そして今回
のアルバムと、3枚のアルバムをリリースして
いるんですね。
この時代が彼にとっても、もっとも旬だった
時代かもしれません。

手に入れたのはTamoki-Wambesi-Doveから
リリースされたCDでした。

全12曲で収録時間は約45分。
オリジナルは10曲で、5曲目Jah Stitchの
「Give The Children What They Want」と
12曲目「The Bland」はCDボーナス・
トラックです。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Musicians:
Bass: Errol 'Flabba' Holt, Neville Morris, Jamal 'Dicky Rude' Lloyd
Drums: Rancei 'Rusty' Chambers, Licoln 'Style' Scott, 'Sticks' Kershaw
Keyboards: Jonathan 'Dr. John' Raisin, Michael Martin, Colin Nicholson,
Wycliffe 'Steely' Johnson, Paul 'Pablove Black' Dixon, Gladstone 'Gladdy' Anderson
Guitars: Karl Taylor, Alan Weeks, Gary 'G.G. Steel' Martin, Dwight Pinkney
Harmonica: Rudolph 'Ras' Bonito
Flute: Simon 'O' Grady
Percussion: Errol 'Johnny Pedal' Mullings

Credits:
Written,arranged and produced by Roy Anthony Cousins
Executive producer: Erwin Otto 'Ben' Cousins
Special Tanks to Norma Laul Lewis Cousins
Harmony: Nina Soul, Leonard 'Shoe Mark' Allen, Dovon Russell
Published by Water Yard-Ben Music

Productions:
Recorde at Harry J Recording Studio, Kingston, Jamaica
Engineer: Sylvan Morris
Recorded at Channel 1 Recording Studio, Kingston, Jamaica
Engineer: Overton 'Scientist' Brownie
Recorded and Voiced at Aquarius Recording Studio, Kingston, Jamaica
Engineer: Christopher Daley
Over Dub and Mix at Easy Street Recording Studio, London, England
Engineer: Jeff Chandler
Track 12 Recorded at The Pink Museum Recording Studio, Liverpool, England
Engineer: Colin McKay
Track 12 Mixed at Frog Studio, Warrington, England
Engineer: Mark Walker
Edit: At John Hassel Studio, London, England
Engineer: Felicity Hassel
Re-Edit & Mastered: At Glass Studio, Birkenhead, England
Engineer: Alan Lewis

となっています。

参加しているミュージシャンはErrol 'Flabba'
HoltやStyle' ScottといったRoots Radicsの
メンバーのほか、キーボードにPablove Black
やGladstone Andersonなど。
この頃になるとルーツ期とはだいぶメンバーが
入れ替わって来ています。
メンバーの多さから見ておそらく1度の録音
ではなく、シングル盤などをまとめたアルバム
なのかもしれません。

作曲とアレンジ、プロデュースはThe Royals
で知られるRoy Anthony Cousinsが務めて
います。

録音はHarry JとChannel 1、Aquariusで行わ
れ、声入れはAquarius。
エンジニアはHarry JがSylvan Morris、
Channel 1がScientist、Aquariusが
Christopher Daleyが担当しています。
オーヴァー・ダブとミックスはロンドンの
Easy Streetで行われ、エンジニアはJeff
Chandlerが担当しています。

ひとつ残念なのはジャケット・デザインが
あまり魅力的でないところです。
このアルバム内容が良さそうで購入したん
ですが、買ってしばらくはジャケットが
あまりにもダサくて(笑、しばらく聴く気が
しなかったほどでした(笑)。

パッケージ・デザインに興味がないのか、
このTamoki Wambesiのアルバムは、購入意欲
が失せるようなパッケージ・デザインを作る
のがウマいんですね(笑)。
例えばオーナーのRoy Cousins And The Royals
のアルバム「Pick Up The Pieces」などは、
素晴らしいアルバムと言われているのに、

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Roy Cousins And The Royals ‎– Pick Up The Pieces

…このデザインです(苦笑)。
内容が良いのにもったいないですよね。

さて今回のアルバムですが、購買意欲をそそ
られないジャケット・デザインが本当に惜し
まれるほど、内容が素晴らしいアルバムなん
ですね。
その最大の魅力はやはりDevon Russellの
歌声で、ファルセットなども駆使したその
ソウルフルな歌声は、聴いていて鳥肌が立つ
ほどです。

また販売サイトなどのアルバム評にはバック
が凝ったサウンドというような事が書いて
ありますが、オシャレ感があり小ジャレた
サウンドはソウルか何かと聴き間違えるほど
の洗練されたサウンドでとても魅力的。
この洗練されたソウルフルなレゲエは、この
80年代だから作れたサウンドではないか
と思います。

やはりこの洗練されたサウンドとジャケット
のダサさはすごく不調和で、このアルバム
の魅力を伝えていないのが、すごく残念に
感じます。

あともうひとつ難を言えば5曲目にボーナス・
トラックのJah Stitchの「Give The Children
What They Want」を入れていますが、4曲目の
「Prison Life」と同じリディムという事で
入れていると思うのですが、せめて最後に
ボーナス・トラックとして入れた方が良い
気がしました。
Devon Russellのヴォーカルはどれも魅力的
で、オリジナルの曲も粒が揃っているので、
ここに違うアーティストの曲を入れるのは
構成を壊していて、すごく蛇足感があるん
ですね(苦笑)。

ただいろいろ文句を言いましたが、このDevon
Russellの洗練されたソウルフルなヴォーカル
は必聴です。
内容的にすごくクウォリティが高く、レゲエ
という音楽を超えた魅力があります。
またオシャレな曲調に歌詞はラスタファリズム
という「同居」があるのも、この80年代初期
らしく面白いところです。

1曲目は「Thank You Jah」です。
フルートとピアノのイントロからミディアム・
テンポのユッタリとしたリズムに乗せた
Devon Russellのファルセット・ヴォーカル
がすごく魅力的な曲です。

Devon Russell // Thank You Jah


2曲目は「Let Sleeping Dogs Life」です。
ハーモニカのメロディに乗せた陰影のある曲
です。
まるでストーリーを語るような、説得力のある
歌いぶりが印象的。

3曲目は「Life Is」です。
シンセのメロディに乗せたファルセットな
コーラスに、落ち着いたヴォーカル。
まるでソウルの楽曲を思わせる、オシャレ感
のある曲です。

Devon Russell - Life Is


4曲目は表題曲の「Prison Life」です。
リディムはRoy Cousins And The Royals
の「Pick Up The Pieces」のようです。
ピアノのメロディから始まる曲で、Devon
Russellのファルセット気味のヴォーカルが
印象的。
淡々とした中に説得力があります。

Devon Russell - Prison Life


リズム特集 Pick Up The Pieces (ピック・アップ・ザ・ピーシズ)

5曲目はJah Stitchの「Give The Children
What They Want」です。
書いたように4曲目と同じトラックが使われ
たディージェイ・ナンバーで、Devon Russell
の曲では無く、オリジナルには収められて
いない曲です。。

6曲目はDevon Russellと女性シンガーNina
Soulのデュエット曲「Some Time」です。
浮遊感のあるシンセから始まる、アダルトな
空気感のラヴ・ソング(?)です。
タイミング良く入るギターが、大人のムード
を醸し出しています。

Devon Russell - Sometime - Prison Life LP / Tamoki Wambesi


7曲目は「Jah Is Watching You」です。
フルートの音色から始まる、アーバンな
ソウル・ミュージックかと思うような
バラード・ナンバーです。
ファルセットの浮遊感のある歌声が魅力。
まるでソウルのラヴ・ソングのようであり
ながら、歌詞が明らかにラスタファリズム
である事が、面白いところ。

Devon Russell - Jah Is Watching You


8曲目は「Shame And Pitty」です。
ひっかりのあるギターのメロディに心地良い
コーラス・ワーク、これに乗せた感情豊かな
ファルセットの歌声。
オシャレ感満載のレゲエ・ソウルです。

Devon Russell - Shame And Pity


9曲目は「Let's Get Together Now」です。
明かるシンセのメロディにストリングス、
表情豊かなDevon Russellのヴォーカルが
心地良い曲です。

10曲目は「Stranger」です。
こちらはゆったりとしたレゲエの刻むリズム
に乗せた、Devon Russellのファルセット・
ヴォーカルが冴える曲です。
淡々とした中に透明感があります。

11曲目は「Jah Will See」です。
シンセとギターのメロディに乗せた曲です。
こちらもDevon Russellのファルセットが
魅力的。

Devon Russell - Jah Will See


12曲目は「The Bland 」です。
こちらはオリジナルにない、CDボーナス・
トラックです。
緊張感のあるギターのメロディに、Devon
Russellのファルセットが冴える大人の曲
です。

ざっと追いかけて来ましたが、アーバンな
レゲエ・ソウルとでも呼びたいような、
大人の味わいのある洗練された曲が収め
られたアルバムです。
レゲエとしてはかなりソウル寄りで、その
あたりは多少好き嫌いが分かれる事かもしれ
ません。
ただDevon Russellの歌声は本当に素晴らしく、
そのスキルの高さは一聴の価値があると思い
ます。

この80年代前半からレゲエという音楽は、
徐々に変質して来るんですね。
今回のアルバムからもその模索が感じられ
ます。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Devon Russell
○アルバム: Prison Life
○レーベル: Tamoki-Wambesi-Dove
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1983

○Devon Russell「Prison Life」曲目
1. Thank You Jah
2. Let Sleeping Dogs Life
3. Life Is
4. Prison Life
5. Give The Children What They Want - Jah Stitch *
6. Some Time - Devon Russell & Nina Soul
7. Jah Is Watching You
8. Shame And Pitty
9. Let's Get Together Now
10. Stranger
11. Jah Will See
12. The Bland *
* CD Bonus Tracks

●今までアップしたDevon Russell関連の記事
〇Devon Russell & The Cultural Roots「Money, Sex & Violence」
〇Devon Russell「Roots Music」
〇Soul Revivers「On The Grove」