今回はJoe Gibbs And The Professionalsのアルバム

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「State Of Emergency」です。

Joe Gibbsはレゲエの歴史に数々の名曲を残した
プロデューサーとして知られています。
彼とエンジニアのErrol Thompsonのコンビ
はThe Mighty Twoと名乗り、レゲエの歴史に
数々の名曲、名アルバムを残して来ました。

しかしCharley Prideのカントリー・ソング
「Someone Loves You Honey」をレゲエ・
アレンジして大ヒットしたものの、その
著作権料を支払わなかった為に裁判を起こ
され敗北し破産。
以降は音楽界で活躍出来なくなります。
2008年に心臓発作で亡くなっています。

レーベル特集 Joe Gibbs (ジョー・ギブス)

The ProfessionalsはそのJoe Gibbsのハウス・
バンドです。
70年当時のジャマイカはミュージシャンの
専属契約のない状態で、集まれる人が集まって
録音する「プラスティック・バンド」の形式
が一般的でした。
その為当時のスタジオ・ミュージシャンは
いろいろなグループ名のバンドでプレイして
おり、バンド名は誰がプロデューサーかで
決まっていたんですね。
例えばJoe Gibbsがプロデューサーなら
The Professionalsと名乗り、Bunny Leeが
プロデューサーならThe Aggrovatorsと名乗る
といった感じです。
このThe ProfessionalsもベースがLloyd Parks
でほぼ固定していますが、他のメンバーは
流動的です。

今回のアルバムは1976年にJoe Gibbs
Recordからリリースされたダブ・アルバム
です。
Errol ThompsonのコンビThe Mighty Twoの
アルバムとしては比較的早い時期の作品で、
ダブとしてはエコーがかけられているぐらい
で、ほぼインストに近い形態のダブ・アルバム
です。
このThe Mighty Twoのダブといえばエコー
やリバーヴ、効果音がふんだんに使われた
「African Dub All Mighty」のシリーズが
よく知られていますが、この前年の75年
にはすでに第1作目の「African Dub - All
Mighty」が作られており、その翌年の77年
には「Chapter Two」、78年には
「Chapter 3」、79年には「Chapter 4」が
作られています。

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Joe Gibbs & The Professionals ‎– African Dub All Mighty - Chapter Two (1977)

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Joe Gibbs & The Professionals ‎– African Dub All-Mighty - Chapter 3 (1978)

ことダブに関して言えば、この70年代後半
がErrol ThompsonのコンビThe Mighty Twoの、
もっとも充実していた時期と言えると思い
ます。

手に入れたのはCrazy Joe Recordsという
Joe Gibbs関連のレーベルから出ている
CDでした。

全14曲で収録時間は約41分。
オリジナルは10曲で、残りの4曲はCD
ボーナス・トラックです。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Bass: Lloyd Parks
Drums: Sly Dunbar
Guitar: Eric 'Bingy Bunny' Lamont, Lennox Gordon
Piano, Organ: Franklyn Waul, Errol Nelson, Harold Butler
Alto Sax: Herman Marquis
Tenor Sax: Tommy McCook
Trumpet: Bobby Ellis
Trombone: Vin Gordon
Percussion: Sticky Thompson, Ruddy Thomas

Produced by Joe Gibbs & Errol Thompson
Recorded at Joe Gibbs Studio (Kingston) / 1976
Arranged by J. Gibbs, Errol T. & M. Wellington
Engineer: Errol Thompson
Art-work: Concrete Jungle

となっています。

The Professionalsのメンバーは、ベースに
Lloyd Parks、ドラムにSly Dunbar、ギター
にEric 'Bingy Bunny' LamontとLennox Gordon、
ピアノとオルガンにFranklyn WaulとErrol
Nelson、Harold Butler、アルト・サックスに
Herman Marquis、テナーサックスにTommy
McCook、トランペットにBobby Ellis、
トロンボーンにVin Gordon、パーカッション
にSticky ThompsonとRuddy Thomasという布陣
です。

特に注目はTommy McCookとBobby Ellis、Vin
Gordon (Donb D Junior)という組み合わせ
です。
70年代のアルバムを調べていると、この時代
を代表するようなアルバムに、この組み合わせ
がすごく多いんですね。
書いたようにこの時代は専属契約がなく、ほぼ
日雇いのような状態だったので、おそらくこの
3人でツルんで日頃から息を合わせ仕事を
貰えるようにしていたんだと思います。
彼らの参加したアルバムに素晴らしいものが
多いのは、日頃からそうしたコンビネーション
を磨いた賜物かもしれません。

印象的なジャケットはConcrete Jungleという
ところで、作っているようです。
ちなみにタイトルの「State Of Emergency」
は、ネットで翻訳すると「非常事態宣言」と
いうのが出て来ました。
3人の男が4人の軍人と警察官からホールド・
アップを命じられ、持ち物検査を受けている
絵柄です。

さて今回のアルバムですが、すごく聴き心地
の良いインスト系のダブ・アルバムです。
同じインスト系のダブでもChannel Oneの
Ernest Hoo-Kimのミックスする
The Revolutionariesのダブはすごく禁欲的
な匂いがしますが、今回のアルバムはむしろ
爽やかな聴き心地の仕上がりになっています。
このあたりはダブという音楽の面白いところ
で、ミックスした人の感性が音楽に反映する
んですね。

今回のアルバムでは人を楽しませる音楽を
作る事に長けたErrol Thompsonという人の
感性が前面に出ていて、それがアルバムを
すごく魅力的なものにしています。
おそらく多くは手を加えていないはずなん
ですが、それでもミキサーの色が出るんです
ね。
そこが音楽の面白いところなんだと思います。

King TubbyとLee Perry、Keith Hudsonと
並んで「創世記ダブ四天王」と呼ばれる事の
あるErrol Thompsonですが、彼の音楽には
常に愛情があり、そこがとても魅力的です。

アーティスト特集 Errol Thompson (エロル・トンプソン)

彼がダブという音楽を作ったアーティストの
ひとりだった事は、誰も否定する人は居ない
でしょう。
70年代を彩ったダブの魅力が、このアルバム
にも詰まっています。
ヒット曲をうまく使った軽快な流れるような
インストに近いダブは、あの「African Dub -
All Mighty」シリーズの凝ったエフェクトの
ダブとはまた違った魅力があり、このミキサー
の多才さがよく解ります。

1曲目は「Bountry Hunter」です。
リディムはMax Romeoの「Stop Piking On Me」
です。
オルガンのメロディを中心に、ホーンで彩りが
された曲です。
ちょっとユーモラスさのある曲を、歯切れの
良いリズムで演奏しています。

Joe Gibbs and The Professionals - State of Emergency - 01 - Bounty Hunter


2曲目は「Rawhide Kid」です。
こちらもホーンの明るいメロディの曲の軽快
な演奏です。
メローな楽曲に歯切れの良いリズムで、気持ち
が前向きになるような曲です。

3曲目は「Donald Quarrie」です。
リディムはJohn Holtの「Up Park Camp」
です。
浮遊感のあるオルガンのイントロから、
ホーン・セクションのポジティヴなメロディ
がとても気持ちの良い曲です。

Joe Gibbs and The Professionals - State of Emergency - 03 - Donald Quarrie


リズム特集 Get In The Groove/Up Park Camp (ゲット・イン・ザ・グルーヴ/アップ・パーク・キャンプ)

4曲目は「High Noon」です。
こちらもオルガンとホーンのコンビネーション
が、とても気持ちの良いグルーヴ感を生み
出している曲です。

5曲目は「The Great Escape」です。
こちらもホーンのユーモラスさを感じさせる
ようなユッタリしたメロディに、歯切れの
良いリズムが心地良い曲です。

6曲目は「Walls Of Jericho」です。
浮遊感のあるシンセのイントロから華々しい
ホーン・セクションのメロディ、心地良い
パーカッションと、レゲエの魅力がうまく
詰め込まれた曲です。
途中から入るリリカルなピアノ、テナー・
サックスのソロ・パートもグッド。

Joe Gibbs & The Professionals - Walls of Jericho


7曲目は「Wicked And Dreadful」です。
こちらはTommy McCookと思われるフルートの
メロディを中心とした、明るくポジティヴな
力強いリズムの曲です。

Joe Gibbs and The Professionals - State Of Emergency - 07 - Wicked and Dreadful


8曲目は「Revenge」です。
明るいホーン・セクションのメロディを中心と
した曲です。
力強いリズムがこの曲をすごく前向きな曲に
しています。

9曲目は「I Shot The President」です。
Bob Marleyのあのヒット曲を想起させる
タイトルに、思わずニヤリ(笑)。
こちらもホーンを中心としたメロディに、
ガンガン来るミリタントなリズムが魅力的
な曲です。

Joe Gibbs and The Professionals - State Of Emergency - 09 - I Shot The President


10曲目は表題曲の「State Of Emergency」
です。
こちらはホーンのメロディを中心とした曲
です。
ここでもレゲエらしいハードなリズムが、
曲をうまく引き締めています。

Joe Gibbs and The Professionals - State of Emergency - 10 - State of Emergency


11~14曲目まではオリジナルにはない、
CDボーナス・トラックが収められています。
ここでは説明は割愛します。

ざっと追いかけて来ましたが、やはりこの
Errol Thompsonのミックスは、心を前向きに
してくれるものがあります。
この時代のミリタントなビートがそういう
心理効果を作り出している面も大きいです
が、彼の作る音楽にはいつも彼自身の音楽愛
が込められているように感じます。
一見あまり手を加えていないようなアルバム
ですが、それでもジワっと来るものがあるのは
そうしたミキサーの隠れた心遣いが行き届いて
いるからなのかもしれません。

さりげなく魅力的なアルバム。
それが今回のアルバムです。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Joe Gibbs And The Professionals
○アルバム: State Of Emergency
○レーベル: Crazy Joe Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1976

○Joe Gibbs And The Professionals「State Of Emergency」曲目
1. Bountry Hunter
2. Rawhide Kid
3. Donald Quarrie
4. High Noon
5. The Great Escape
6. Walls Of Jericho
7. Wicked And Dreadful
8. Revenge
9. I Shot The President
10. State Of Emergency
(CD Bonus Tracks)
11. Security Force
12. Black September
13. Stone Wall Jackson
14. Wild Goat

●今までアップしたJoe Gibbs & The Professionals関連の記事
〇Joe Gibbs & The Professionals「Majestic Dub」
〇Joe Gibbs & The Professionals「African Dub All-Mighty Chapter 3」
〇Joe Gibbs & The Professionals「African Dub All-Mighty Chapter 4」
〇Joe Gibbs & The Professionals「African Dub All-Mighty Chapter Two」
〇Joe Gibbs & The Professionals「African Dub All-Mighty」
〇Joe Gibbs「Reggae Christmas」
〇Joe Gibbs「Scorchers From The Mighty Two」
〇Various「Joe Gibbs 12" Reggae Discomix Showcase Vol.1」
〇Various「Joe Gibbs 12" Reggae Discomix Showcase Vol.2」
〇Various「Joe Gibbs 12" Reggae Discomix Showcase Vol.3」
〇Various「Joe Gibbs 12" Reggae Discomix Showcase Vol.4」
〇Various「Joe Gibbs 12" Reggae Discomix Showcase Vol.5」
〇Professionals「Meet The Aggrovators At Joe Gibbs」