今回はThe Mighty Upsetter (Lee Perry)の
アルバム

lee_perry_06a

「Kung Fu Meets The Dragon」です。

まずはThe Mighty UpsetterことLee Perryに
ついて、説明しておきます。

Lee 'Scratch' Perryは60年代後半から
活躍するプロデューサーです。
60年代後半に自身のハウス・バンド
The Upsettersを率いて軽快なインスト・
ナンバーの「スキンヘッド・レゲエ」の
プロデューサーとしてUKで人気となり、
さらにはルーツ・レゲエの時代には自身の
スタジオBlack Arkで数々の名ダブを制作
したり、Max RomeoやThe Congosなどの多く
のアーティストのプロデュースで活躍する
んですね。

congos_03a
The Congos ‎– Heart Of The Congos (1977)

彼の作った「Blackboard Jungle Dub」は、
ダブを広めた初期の代表的なダブ・アルバム
のひとつと言われています。
そうしたレゲエのダブというジャンルで
活躍したのが、このLee Perryというプロ
デューサーなんですね。

アーティスト特集 Lee Perry (リー・ペリー)

lee_perry_01a
The Upsetters ‎– Blackboard Jungle Dub (1973)

The Upsettersについても、一言書いておき
ます。

The UpsettersはLee Perryのハウス・バンド
として活躍したバンドで、初期はUKの若者
向けの「スキンヘッド・レゲエ」のバンドと
して活躍し、ルーツ・レゲエ全盛の時代には
バック・バンドとしてMax RomeoやThe Congos
などの多くのミュージシャンのバック・バンド
として活躍したほか、Lee Perryの作るダブの
演奏を務めた事で知られています。
当時のバンドはプラスティック・バンドだった
ので、メンバーはいろいろ入れ替わっている
ようですが、Black Arkの時代にベースの
Boris Gardiner、ギターのEarl 'Chinna'
Smith、ドラムのSly Dunbarなどが参加して
いた事はよく知られています。

アップセッターズ - Wikipedia

今回のアルバムは1975年にDipという
レーベルからわずか300枚だけリリース
されたというアルバムです。

Lee Perryはこの75年に「インスト3部作」と
呼ばれるインストの3枚のアルバムを作って
います。
ひとつは今回のThe Mighty Upsetter名義の
「Kung Fu Meets The Dragon」で、次に
Lee Perry & The Upsetters名義の「Musical
Bones」、そして同じくLee Perry &
The Upsetters名義の「Return Of Wax」という
3枚のインスト系のアルバムを作っているん
ですね。

lee_perry_07a
Lee Perry & The Upsetters ‎– Musical Bones (1975)

lee_perry_13a
Lee Perry & The Upsetters ‎– Return Of Wax (1975)

この3枚のアルバムはプレ・リリースのみ
だったりとリリースが少なく、当時は激レア
盤だったというアルバムなんですね。

今回のアルバムはLee Perryが当時流行って
いたブルース・リー主演のカンフー映画
「燃えよ!ドラゴン」に刺激されて作ったと
いわれる作品で、音楽の中に口笛やゲップ音
などが入れられたかなり実験的な作品です。
そうした実験性などもあってか、この
「インスト3部作」と呼ばれるシリーズは
初めはあまりリリース枚数が多くないん
ですね。

手に入れたのはJustice Leagueというレーベル
からリリースされたCDでした。

ひとつ残念な事を書いておくと、今回の
アルバムは音質があまりよくありません。
曲によっては気になるパリパリ音がかなり
入ります。

またネットで調べたところ、このアルバムは
別ジャケ別タイトルの「Heart Of The Dragon」
というアルバムもあるようです。

全17曲で収録時間は約49分。
オリジナルは10曲で、今回のアルバムの
2~6曲目と8~12曲目がそのオリジナル
で、残りの曲はボーナス・トラックのよう
です。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

"The Upsetters"
Melodica: Augustus Pablo
Bass: Boris Gardiner
Lead Guitar: Earl Smith
Drums: Mikey 'Boo', Benbow
Hornes: Bobby Ellis, Dirty Harry
Piano: E. Sterling
Percussion: Lee Perry, Skully

Recorded at The Black Ark circa 1975.

となっています。

録音は1975年にLee Perryのスタジオ
Black Arkで行われ、The Upsettersのメンバー
としてメロディカでAugustus Pablo、ベースで
Boris Gardiner、リード・ギターにEarl Smith、
ドラムにMikey 'Boo'とBenbow、ホーンにBobby
EllisとDirty Harry、ピアノにE. Sterling、
パーカッションにLee PerryとSkullyが参加して
います。
やはり特筆すべきはメロディカで参加している
Augustus Pabloで、随所で彼らしいエモーショ
ナルなメロディカを聴く事が出来ます。

ユニークなジャケットですが、作者が誰なの
か?載っていないのが残念なところ。

さて今回のアルバムですが、インストといって
もLee Perryという人のアナーキーさやユニーク
さがよく現れたアルバムで、この70年代の
ルーツ・レゲエの時代の、もっとも先鋭的で
実験的なアルバムに仕上がっています。
書いたように口笛やゲップ音、さらには怪鳥
音などを意識的に音楽の一部にしてしまう、
この時代のLee Perryの感性ってスゴイん
ですね。
オリジナル・アルバムの曲を追いかけてみる
と、曲としてはけっこう単純なフレーズの繰り
返しだったりするのですが、それに付けられた
エフェクトが口笛やゲップ音、怪鳥音だったり
するので、独特なアナーキーで他にない世界を
作り上げています。
この時代のLee Perryの研ぎ澄まされた感性が
光るアルバムです。

この75年頃というのは、レゲエという音楽
が世界的にも認められ始め、さらにはダブ・
アルバムが73年に一斉に発売され、実験的な
音楽であるダブも市民権を得始めた頃だったの
ですが、そうした時代にさらに上を行く実験的
なダブを作ったのが、この人Lee Perryだったん
ですね。
この時代のLee Perryが頭一つ飛び抜けた、
卓越したプロデューサーであった事は否定が
出来ません。

彼はこの後も76年には「Super Ape」、78年
には「Return Of The Super Ape」という、
より呪術的で卓越したダブ・アルバムを残す
ことになるのですが、この「インスト3部作」
が彼の歴史を飾るアルバムのひとつである事は
間違いがありません。

lee_perry_02a
The Upsetters ‎– Super Ape (1976)

lee_perry_04a
The Upsetters ‎– Return Of The Super Ape (1978)

このBlack Ark時代のLee Perryは、それだけ
スゴいプロデューサーだったんですね。

1曲目は「Enter The Dragon」です。
Lee Perryの語りから入る曲です。
軽快なインスト・ナンバーですが様々な
エフェクトが入り、むしろそちらの方が
メインのような曲です。

2~6曲目まではオリジナル・アルバムの
A面に収められた曲が、順番通りに収められ
ています。

2曲目は「Theme From Hong Kong」です。
オリジナルの1曲目ですが、Augustus Pablo
のメロディカが良い空気感を作り出していま
す。
ユッタリした中にちょっとユーモラスな感じ
が面白いところ。

Lee Perry - Theme From Hong Kong


3曲目は「Heart Of The Dragon」です。
こちらはちょっとこもった感じのLee Perryの
語りから、不思議な叫び声に「ウッ!アッ!」
といった掛け声など多用されるエフェクトと、
ギターの刻むようなメロディの繰り返しの曲
です。
構成は単純ですが、エフェクトが退屈させ
ません。

Lee Perry - Heart Of The Dragon


4曲目は「Hold Them Kung Fu」です。
こちらは踊るようなメロディカのメロディに
高音のコーラスが乗った、楽しい空気感の曲
です。

5曲目は「Flames Of The Dragon」です。
Lee Perryの語りからギターのフレーズの繰り
返し、ギーギーいうエフェクトに、不思議な
叫び声、それらがひとつになった曲です。

Lee Perry....Flames of the Dragon


6曲目は「Scorching Iron」です。
こちらは郷愁を誘うようなメロディアスな
メロディカを中心とした曲です。
エモーショナルなAugustus Pabloのメロディカ
が、うまくこのアルバムに「箸休め」的な効果
を与えています。

MIghty Upsetter-Scorching Iron


7曲目は「Black Belt Jones」です。
Lee Perryの語り、口笛、ゲップ、ヘタな横笛?
など、様々なエフェクトを駆使した、遊び心
溢れる曲です。
こうした不思議な空間は、まさにLee Prryの
独壇場といった感があります。

8~12曲目まではオリジナル・アルバムの
B面の曲です。

8曲目は「Skango」です。
ユッタリとしたオルガンのメロディからホーン
の表情あるメロディへと移行する曲です。

Lee Scratch Perry - Skango (1975)


9曲目は「Fungaa」です。
表情のあるメロディカとシンセが絡んだ1曲。

10曲目は「Black Belt」です。
ベースを軸とした演奏ですが、独特の歪んだ
感じのクラヴィネット(?)が耳に残る曲
です。
こうした屈折した感じに、このLee Perryと
いう人の個性がよく現れています。

Lee Perry - Black Belt


11曲目は「Iron Fist」です。
陰影の濃いメロディカとオルガンのメロディ
が、強く心に残る曲です。
Lee Perryらしいギーギーとしたパーカッション
がよりこの曲の印象を強くしています。

Lee Perry - Iron Fist


12曲目は「Kung Fu Man」です。
ここまではインスト・ナンバーでしたが、
オリジナル最後の1曲は歌が入っています。
ユッタリとしたオルガンのメロディに、独特
の印象に残る歌声です。
「フーッ!ハッ!」という掛け声も楽しい
曲です。

Lee Perry, The Upsetters - Kung Fu Man


13曲目は「Exit The Dragon」です。
明るいホーンにチャイム音、女性ヴォーカル
も入った楽しい曲です。

14曲目は「Rockstone Dub」です。
浮遊感のあるオルガンのメロディに、ファル
セットのかかったコーラス、ギターのメロディ
といった曲です。

15曲目は「The Dragon Enters」です。
笑い声からしゃべり、そしてホーンのメロディ
にエコーのかかったヴォーカル、ディープな
いかにもLee Perryらしい世界が展開する曲
です。

16曲目は「23rd Dub」です。
ポピュラーソングの聴き覚えのあるメロディ。
あるセントで入るクラヴィネットが印象的。

17曲目は「Rebels Dub」です。
1曲目「Enter The Dragon」をさらに
ヴァージョン・アップしたような1曲。

ざっと追いかけて来ましたが、同じフレーズ
の繰り返しにエフェクトを重ねる事で、独特
の彼らしい独特の世界を作り上げている手腕
は、やはり目を見張るものがあります。
もうこの時代の彼にはそうしたフレーズを
繰り返す事で、独特の深みのある世界へ誘う
手法が完成しつつあるんですね。

彼はその後さらに呪術的で魅惑的な「Super
Ape」や「Return Of The Super Ape」という
アルバムを作り上げる事になるのですが、
このBlack Ark時代のLee Perryの実験的な
精神が、そうしたアルバムを最後に生み
だした事は間違いありません。

このアルバムにはそうした彼の実験精神が、
満ち溢れています。
そうした彼の精神がむき出しで見えるところ
が、このアルバムの魅力なんですね。

機会があればぜひ聴いてみてください


○アーティスト: The Mighty Upsetter (Lee Perry)
○アルバム: Kung Fu Meets The Dragon
○レーベル: Justice League
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1975

○The Mighty Upsetter (Lee Perry)「Kung Fu Meets The Dragon」曲目
1. Enter The Dragon
2. Theme From Hong Kong *
3. Heart Of The Dragon *
4. Hold Them Kung Fu *
5. Flames Of The Dragon *
6. Scorching Iron *
7. Black Belt Jones
8. Skango *
9. Fungaa *
10. Black Belt *
11. Iron Fist *
12. Kung Fu Man *
13. Exit The Dragon
14. Rockstone Dub
15. The Dragon Enters
16. 23rd Dub
17. Rebels Dub
* オリジナル・アルバムの曲