今回はThe Congosのアルバム

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「Heart Of The Congos」です。

The Congosは70年代のルーツレゲエの時代
から活躍するヴォーカル・グループです。
もともとはCedric MytonとRoydel Johnsonの
2人のコーラス・デュオとしてスタートした
彼らは、1977年にLee Perryの元で
「Heart Of The Congos」という素晴らしい
アルバムを発表して人気グループへと成長
して行くんですね。
その後コーラスにWatty Burnettも加えて、
現在まで3人組のコーラス・グループとして
活躍しています。

The Congos - Wikipedia

今回のアルバムは1977年にジャマイカの
Black Artというレーベルからリリースされた
彼らのファースト・アルバムです。
このアルバムはBlack Ark Studios時代の
Lee Perryの名仕事として知られている
アルバムで、ルーツ・レゲエを代表する
アルバムのひとつと言われています。

手に入れたのはVP Recordsからリリースされた
CDでした。

全10曲で収録時間は約45分。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Musicians:
Bass: Boris Gardiner, W. Wright on Congoman
Lead Guitar: Ernest Ranglin
Rhythm Guitar: Robert 'Billy' Johnson
Drums: Sly Dunbar, Michael Richards
Organ: Winston Wright
Piano: Keith Sterling
Percussions: Scully, Brother Joe

Recorded at: Black Ark Studios
Mixed by: Lee 'Scratch' Perry, The Scientist
Produced by: Congos

となっています。

プロデュースはCongos自身で、この頃はまだ
Cedric MytonとRoydel Johnsonの2人組だった
ようです。
ただネットの情報などを調べると、もうひとり
のWatty Burnettもすでに参加していたようで、
Lee Perryから3人組になる事を強く勧めら
れたというような事が書かれていました。
ジャケットにはコンゴ・ドラムを叩く2人の
写真が使われていますが、左の青いシャツを
着た人物がCedric Mytonで、右の口を大きく
開けて太鼓を叩いているのがRoydel Johnson
です。

録音はBlack Ark Studiosで行われ、ミックス
はLee 'Scratch' PerryとThe Scientistが
担当しています。
このアルバムはLee Perryのミックスとして
知られていますが、Scientistも参加していた
んですね。

バックはLee Perryのハウス・バンド
The Upsettersという事になると思います。
ベースにBoris Gardiner、リード・ギターに
Ernest Ranglin、リズム・ギターにRobert
'Billy' Johnson、ドラムにSly Dunbarと
Michael Richards、オルガンにWinston Wright、
ピアノにKeith Sterling、パーカッションに
ScullyとBrother Joeという、この70年代
らしい布陣です。
2曲目「Congoman」はオルガンのWinston
Wrightがベースを弾いているようです。

さて今回のアルバムですが、Max Romeoの
「War Ina Babylon」と並ぶLee Perryの
名ミックスとしてとても有名なアルバムです
が、やはりこのルーツの時代らしいディープ
なサウンドは、聴いておくべき魅力があり
ます。

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Max Romeo & The Upsetters ‎– War Ina Babylon (1976)

やはり特筆すべきはこの時代のLee Perryの
ミックスで、2002年刊行の本「Roots Rock
Reggae」には「瀬戸口」さんという方の文章
で、「病的ミックス」(もちろんホメ言葉)
という書き方をされているけれど、Black Ark
というスタジオで作られる、ちょっと滲んだ
ようなスモーキーなサウンドは今聴いても
すごくディープ感があり、とても魅力的です。
一見「病的」であってもこの時代のLee Perry
のサウンドにはシッカリした抑制が効いて
いて、音楽の魅力を最大限に引き出す感性が
シッカリと働いているんですね。

このサウンドがBlack Ark焼失後は、Lee Perry
は作れなくなってしまうんですね。
その理由ははっきりとは解りませんが、この
時代のLee Perryが他の制作者よりも一歩抜き
出たクウォリティの高い特別なアルバムを多く
残したのは事実で、その中でも今回のアルバム
は特に聴いておくべきアルバムのひとつだと
思います。

The Congosについても一言触れておくと、
やはりCedric Mytonのファルセット・ヴォイス
を中心としたコーラス・ワークはとても
魅力的です。
このコーラス・ワークをうまく生かしたのが
1曲目の彼らの代表曲「Fisherman」です。
Cedric Mytonのファルセットを中心に、
低音のコーラス(Watty Burnett?)なども
交えたこの曲には、彼らの魅力がうまく表現
されたルーツの名曲のひとつだと思います。
こうした恵まれたスタート切った彼らは、
その後もそのコーラス・ワークを生かして
長く活躍を続けるんですね。
その始まりがこのアルバムなんですね。

1曲目は「Fisherman」です。
Cedric Mytonのファルセットを中心とした
コーラス・ワークが胸に刺さる、彼らの
代表曲です。
飢えた子どもたちが待っている、漕げと歌う
この曲は、ネットの歌詞を調べると聖書の
マタイ伝などから発想を得た事が解ります。
重く暗い曇り空のようなリアルな空気感が、
このルーツの時代らしい魅力。

The Congos - Fisherman


コンゴス(Congos) - Row Fisherman Row - リリック

2曲目は「Congoman」です。
ちょっとかすれたようなコーラス・ワーク
から入る曲です。
微妙に入る声や雷のエフェクトなど、この
Black Ark Studiosらしい滲んだスモーキー
なサウンドが魅力的。
女性コーラスにパーカッションなども入り、
どんどんディープな空間に引きずり込まれて
行く感覚がタマラない曲です。

The Congos - Congoman


3曲目は「Open Up The Gate」です。
こちらもエコーの効いたコーラス・ワークと
ヴォーカルに、このBlack Arkらしい独特の
空間を感じる曲です。
このスタジオで刻まれる音には、どこか他の
スタジオにはない「気配」が漂います。

The Congos - Open Up The Gate


4曲目は「Children Crying」です。
こちらもエコーの効いたコーラス・ワークに、
淡々と歌われるヴォーカル。
(こちらはRoydel Johnsonがリード・
ヴォーカルか?)
牛の鳴き声のエフェクトなども入り、澄んだ
歌声と霧の奥から聞こえるような滲んだ
コーラスとの対比が面白い曲です。

5曲目は「La La Bam-Bam」です。
こちらもリード・ヴォーカルはRoydel Johnson
のようです。
明るいメロディ・ラインの曲ですが、やはり
遠くで聴こえるようなコーラス・ワークが
かえって耳に残ります。

The Congos - Heart Of The Congos - 05 - La La Bam Bam


6曲目は「Can't Come In」です。
遠くで聴こえるようなパーカッションと
ベースから、ファルセットなヴォーカルと
コーラス・ワーク。
The CongosXLee PerryXBlack Arkという
組み合わせが、独特の世界を作り上げている
曲です。

7曲目は「Sodom & Gomorrow」です。
Cedric Mytonのファルセットなコーラスに、
Roydel Johnsonのシッカリしたヴォーカル
という組み合わせ。
Black Arkらしい空気感が曲に一味を添えて
います。
「ソドムとゴモラ」というタイトルから見て、
題材は聖書か?

8曲目は「The Wrong Thing」です。
こちらはファルセットなコーラスに、さらに
ファルセットなヴォーカルという曲です。
(Cedric Mytonの多重録音か?)
ミリタントなビートがうまくこの曲を引き
締めています。

9曲目は「Ark Of Covenant」です。
ガシッとしたドラミングから妖しいファルセット
のかかったコーラス・ワーク。
独特の世界観が面白い曲です。

The Congos - Heart Of The Congos - 09 - Ark Of The Covenant


10曲目は「Solid Foundation」です。
こちらは明るいミリタント・ビートに、彼ら
独特のCedric Mytonのファルセットが冴える
曲です。
最後は明るく希望を感じる曲でシメています。

The Congos - Solid Foundation


ざっと追いかけて来ましたが、このアルバム
が「The Congosといえばこれ!」という彼ら
の代表作であることは間違いがありません。
ルーツ・レゲエという音楽が行き着いた
もっとも魅力的な音楽が、このアルバムには
刻まれているんですね。
彼らはこの後も「Congo Ashanti」など魅力的
なアルバムを残しますが、このLee Perryとの
コラボが彼らのもっとも魅力的なアルバムの
ひとつだった事は間違いがありません。

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Congos ‎– Congo Ashanti (1979)

そしてこの時代のLee Perryの作る音楽は
やはり特別なものがあり、彼がこの時代に
もっとも輝いたプロデューサー(ミキサー)
であった事は否定が出来ません。
それがBlack Ark焼失後に急激に力を失った
事は、非常に残念です。
ただこのBlack Ark時代の音源は、今もルーツ
の貴重な音源としてけっして光を失っていま
せん。

機会があればぜひ聴いてみてください


○アーティスト: The Congos
○アルバム: Heart Of The Congos
○レーベル: VP Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1977

○The Congos「Heart Of The Congos」曲目
1. Fisherman
2. Congoman
3. Open Up The Gate
4. Children Crying
5. La La Bam-Bam
6. Can't Come In
7. Sodom & Gomorrow
8. The Wrong Thing
9. Ark Of Covenant
10. Solid Foundation

●今までアップしたLee Perry (The Upsetters)関連の記事
〇Lee Perry & The Upsetters「Musical Bones」
〇Lee Perry & The Upsetters「Return Of Wax」
〇Lee 'Scratch' Perry「Mr Perry I Presume: Starring Lee Perry as The Upsetter」
〇Upsetters「Blackboard Jungle Dub」
〇Upsetters「Return Of The Super Ape」
〇Upsetters「Super Ape」
〇Max Romeo & The Upsetters「War Ina Babylon」
〇Jah Lion (Jah Lloyd)「Colombia Colly」
〇Ras Michael & The Sons Of Negus「Love Thy Neighbour」
〇Mighty Upsetter (Lee Perry)「Kung Fu Meets The Dragon」