今回はLinval ThompsonとKing Tubbysのアルバム

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「Linval Thompson Meets King Tubbys:
"Ina Reggae Dub Style" "Dis A Yard Dub"」
です。

Linval Thompsonは70年代から80年代の
初めにシンガーとして活躍した人で、また
80年代頃からはプロデューサーとして
ダンスホール・レゲエの多くのアーティスト
をプロデュースした事でも知られる人です。
Scientistの「漫画ジャケ」シリーズの
プロデュースなど、アーリー・ダンスホール
を盛り上げたのがこのLinval Thompsonだった
んですね。

アーティスト特集 Linval Thompson (リンヴァル・トンプソン)

King Tubbyはルーツの時代から活躍するダブ
のミキサーであり、プロデューサーである人
です。
もともと電気技師だった彼は、ルーツ・レゲエ
の時代からミキサーとして活躍し、ダブの創成
期からダブを作った人として知られています。

ダブはルーツ・レゲエが誕生した70年代初め
頃から徐々に作られるようになるのですが、
1973年に一斉にダブのアルバムが作られた
事から一気にひとつのジャンルとして確立した
音楽で、エコーやリバーヴなどのエフェクト
などを使用して原曲を全く別の曲に作り変えて
しまう手法を指します。

ダブ - Wikipedia

リミックスの元祖とも言われる音楽で、誰が
初めのダブを考案したかかはハッキリとは
解っていないのですが、このKing Tubbyが
ダブという音楽を完成させたと言われてい
ます。
自身のスタジオKing Tubby'sで、助手の
Prince JammyやScientistなどとともに
70年代から80年代にかけて多くのダブの
ミックスを手掛けたのが、このKing Tubby
という人なんですね。

その後も活躍を続けたKing Tubbyでしたが、
1989年に自宅前で何者かに射殺されて
亡くなっています。

アーティスト特集 King Tubby (キング・タビー)

今回のアルバムは2004年にClocktower
系列のカナダのレーベルAbrahamからリリース
されたLinval Thompsonの音源をKing Tubbyの
スタジオKing Tubby'sでダブ・ミックスした
曲を集めたアルバムです。

ただこのアルバムは謎の多いアルバムなん
ですね。
バックは80年代のアーリー・ダンスホール
で活躍したRoots Radicsが務めており、おそ
らくその80年代前半の音源を集めた
アルバムだと思うのですが、タイトルになって
いる「Ina Reggae Dub Style」と「 Dis A
Yard Dub」という2枚のアルバムが見つかり
ません。

しかも同じタイトルでジャケットも同じ
アルバムで、曲目のタイトルがまったく違う
アルバムもあるんですね。
(ページの最後にそちらの曲目も表示)

さらに曲名でも検索をかけてみましたが、
ラヴァーズロックのDonna Marieという人
の制作年不詳のアルバム「Reggae Love Music
Vol-1」(全8曲)と、初めの8曲の曲名が
ほとんど一致していました。
今回のアルバムはダブ・アルバムなのに
「~Dub」というタイトルはなく、ラヴァーズ
っぽいタイトルの曲が多いんですね。

さらに裏ジャケットには全18曲の表示があり
ますが、実際にパソコンで読み込んでみると
全16曲で、最後の17曲目「Send Me Back
My Love」と18曲目「Forever My Darling」
が入っていませんでした。

ウ~ン、どうもおかしい…。
どうも曲名はいい加減で、正直何かダマされて
いるような…。
もしかしたらレゲエによくある事ですが
(苦笑)、何か別のアルバムをタイトルを
変えて発売しているのかもしれない…。

そう思って曲を聴くとどうもミックスが
Scinentistっぽいんですね。
そこでScinentistがミックスでLinval Thompson
がプロデュースのアルバム、81年の
「Scientist Meets The Space Invaders」を
聴いてみると一致する曲を見つけました。
今回のアルバムの15曲目「Go On Home」と、
「Scientist Meets The Space Invaders」の
2曲目「Red Shift」が同じ曲です(苦笑)。

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Scientist ‎– Scientist Meets The Space Invaders (1981)

他の曲は調べていませんが、おそらく
「Scientist Meets The Space Invaders」
などの、Linval Thompsonプロデュースで
ScinentistなどのKing Tubby'sミックスの曲
を集めたのが、今回のアルバムのようです。
実際に「Ina Reggae Dub Style」と「 Dis A
Yard Dub」というアルバムを調べても出て
来なかったのは、そのアルバム自体が存在
しないからなのかもしれません。
おそらくタイトルもDonna Marieのアルバム
などから流用して、適当に付けているんです
ね(笑)。

こういうのは本当に調べる人泣かせです(泣)。

Scientistについても紹介しておきます。
ScientistことOverton Brownは、ミキサーや
ダブのクリエイターとして活躍した人です。
70代の後半にミックスやダブのスペシャリスト
King TubbyのスタジオKing Tubby'sで助手として
キャリアをスタートさせた彼は、そこで頭角を
現し、80年代のダンスホール・レゲエの時代に
なるとVocanoレーベルのHenry 'Junjo' Lawes
プロデュースの「漫画ジャケ・シリーズ」など
で人気のダブのミキサーになるんですね。
70年代のルーツ・レゲエの時代のダブとは
また一味違った、80年代のダンスホール・
レゲエのダブを創造したミキサーとして知られ
ています。

アーティスト特集 Scientist (サイエンティスト)

全16曲で収録時間は約48分。
裏ジャケに全18曲が表記されていますが、
実際には全16曲で最後の2曲は入って
いません。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Musicians: All Tracks Backed by Roots Radics
Drums: Style Scott
Bass: Flabba Holt
Guitar: Bingy Bunny
Piano: Earl Fitzsimmonds
Keyboards: Wycliffe 'Steelie' Johnson

Recorded & Mixed by Osbourne 'King Tubby' Ruddock & Linval Thompson at King Tubby Studio
Recorded at Randy's Studio, Channel One Studio, Kingston, Jamaica

Produced by Linval Thompson

となっています。

プロデュースはLinval Thompsonで、録音は
Randy'sとChannel One、King Tubby'sで行わ
れ、ミックスはKing TubbyとLinval Thompson
がKing Tubby'sで行ったとなっていますが、
実際にはScientistなどが行っていると思わ
れます。

書いたように実際に使われている音源は、
Scientistの「漫画ジャケ」シリーズの
「Scientist Meets The Space Invaders」
などの音源のようです。

さて今回のアルバムですが、書いたように別の
アルバムの曲を流用した、ちょっとガッカリ・
ポイントのあるアルバムなんですが、元の
音源が素晴らしく内容は悪くないんですね。

このアーリー・ダンスホールの時代の
ScientistとLinval Thompson、さらにRoots
Radicsという組み合わせは、まさに黄金の
組み合わせで素晴らしいアルバムを数多く
残しています。

このScientist+Linval Thompson+Roots
Radicsという組み合わせは、紹介した81年
の「Scientist Meets The Space Invaders」
の他に、81年の「In Dub Volume 1」、
同じく81年の「Dub Landing」、82年の
「漫画ジャケ」シリーズの「Scientist
Encounters Pac-Man」、82年のScientistと
Prince Jammie (Jammy)のアルバム「Dub
Landing Vol: 2」、同じく82年のPrince
Jammyとのアルバム「Scientist And Jammy
Strike Back!」などで見る事が出来ます。

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Scientist ‎– In Dub Volume 1 (1981)
Scientist「In Dub Volume 1」 : つれづれげえ日記

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Scientist ‎– Dub Landing (1981)
Scientist「Dub Landing」 : つれづれげえ日記

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Scientist ‎– Scientist Encounters Pac-Man (1982)
Scientist「Encounters Pac-Man At Channel One」 : つれづれげえ日記

ざっと調べただけでもこれだけのアルバムが、
出て来るんですね。
まさにこのアーリー・ダンスホールでもっとも
輝いていたのが、この人達なんですね。
彼らの努力で時代はダンスホール・レゲエへ
と向かう事となり、さらに80年代半ばには
デジタルのダンスホール・レゲエへと大きく
舵を切る事になります。

この時代のScientistやRoots Radics、さらに
Linval Thompsonの活躍というのは見逃せない
ものがあるんですね。

今回のアルバムはLinval ThompsonとKing Tubbys
のアルバムとなっていますが、King Tubbyと
いうよりはScientistのミックスという色彩が
強いアルバムです。
またオリジナルのダブ・アルバムは見つから
ず、Scientistのいくつかのダブ・アルバム
から曲を集めたコンピュレーションのよう
です。

出来ればScientist+Linval Thompson+
Roots Radicsという組み合わせのオリジナル
のアルバムの方の購入をおススメしますが、
悪い内容ではないので、気軽に聴くには悪く
ないアルバムかもしれません。

機会があれば聴いてみてください。


○アーティスト: Linval Thompson, King Tubbys
○アルバム: Linval Thompson Meets King Tubbys:
"Ina Reggae Dub Style" "Dis A Yard Dub"
○レーベル: Abraham
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2004

○Linval Thompson, King Tubbys「Linval Thompson Meets King Tubbys:
"Ina Reggae Dub Style" "Dis A Yard Dub"」曲目
1. When You Need A Laugh
2. She's Got You
3. What Loving You Has Done
4. Half As Much
5. What Ever Happened
6. On The Outside
7. Answers
8. Fall To Pieces
9. Don't Baby
10. Can I Have This Dance
11. Part Of Me
12. One Of Us Will Weep Tonight
13. Strange
14. Believe
15. Go On Home
16. Heartaches
(曲目として表記されているけれど入っていない曲)
17. Send Me Back My Love
18. Forever My Darling

(同名タイトルで曲名がまったく違うアルバムの曲目)
A1. Jah Peoples Dub
A2. Dub Of Protection
A3. Hagga Ragga Dub
A4. A Feel Of Dub
A5. Baby, I Love You Dub
A6. Italian Dub
A7. Okinawa Dub
A8. A Worldly Dub
B1. Rock Of Gibraltar Dub
B2. Juggernaut Dub
B3. A Jagged Dub
B4. A Grand Masters Dub
B5. Dub Of Vibes
B6. A Scenic Dub
B7. Montego Dub
B8. A Hunters Dub