今回はLinval Thompsonのアルバム

Linval_thompson_05a

「Ride On Dreadlocks 1975-77」です。

Linval Thompsonは70年代から80年代の
初めにシンガーとして活躍した人で、また
80年代頃からはプロデューサーとして
ダンスホール・レゲエの多くのアーティスト
をプロデュースした事でも知られる人です。
Scientistの「漫画ジャケ」シリーズの
プロデュースなど、アーリー・ダンスホール
を盛り上げたのがこのLinval Thompsonだった
んですね。

アーティスト特集 Linval Thompson (リンヴァル・トンプソン)

scientist_05a
Scientist ‎– Scientist Meets The Space Invaders (1981)

今回のアルバムは200年にレゲエ・リイ
シュー・レーベルBlood & Fireからリリース
されたLinval Thompsonの歌手としての全盛期
だった1975年から77年の、前半は歌
後半はダブ(あるいはディージェイ)の
エクステンデッド・ミックスの曲を集めた
コンピュレーション・アルバムです。
この70年代中盤以降は12インチ45回転
のシングル盤が多く作られるようになり、
それに伴ってロング・ヴァージョンの曲が
必要になって来るんですね。

そこでレゲエが生みだしたのがこうした歌と
ダブ、あるいはディージェイをくっ付けた
ミックス盤です。
こうしたミックスを12インチ・ミックス、
あるいはエクステンデッド・ミックス、
ディスコ・ミックスなどと呼びます。
こうしたミックスはジャマイカのサウンド・
システムやダンスホールなどでかける時に、
曲が長いのでかけ替える手間が少なくて
済むという実用性があったんですね。

また1曲で歌とダブやディージェイが同時
に楽しめるというところも、好まれた理由
でしょう。
他のジャンルにはあまりない、面白い楽しみ
方だと思います。

手に入れたのは中古のCDでした。
ツメが折れてフタがパッカリと取れてしまう
状態で、そのせいか617円と安価で販売
されていました。

全11曲で収録時間は約68分。

詳細なミュージシャンの表記はありません。

Produced by Bunny Lee except tracks 5,10,11 produced by Linval Thompson

と書かれています。

5曲目「12 Tribes Of Israel (Extended)」と
10曲目「Jah Jah Is I Guiding Star
(Extended)」、11曲目「Can't Stop Natty
Dread Again (12" Version)」がLinval Thompson
のプロデュースで、残りはすべてBunny Leeの
プロデュースです。

Bunny Leeの方はいわゆる「Bunny Lee音源」で、
バックは彼のハウス・バンThe Aggrovatorsが
バックを務めていると思われます。
記載がないのでハッキリとは解りませんが、
ミックスはおそらくKing Tubby'sで行われた
ものと推測されます。

さて今回のアルバムですが、歌手としての
Linval Thompsonの魅力がうまく詰め込まれた
アルバムで、内容は悪くないと思います。

75~77年というとまだルーツ・レゲエ
真っ盛りといった時代ですが、このLinval
Thompsonの作る音楽からはサウンド・システム
やダンスホールといった若者が集う「現場」
の匂いが強く感じられます。
もうこの70年代の半ば以降には、その後
ダンスホール・レゲエへと移行する「下準備」
が整っていたんですね。
彼が80年代に入るとダンスホール・レゲエの
プロデューサーとして活躍したのは、むしろ
必然だったのかもしれません。

歌詞にはまだラスタファリズムの要素が多く
盛り込まれていますが、彼の作る音楽には
「踊る音楽」の匂いが、強く感じられます。
そのちょっと湿った空気感が、このシンガー
の最大の魅力です。

1曲目は「Jah Jah The Conqueror
(Extended)」です。
彼の代表曲のエクステンデッド・ミックス
です。
Linval Thompsonのヴォーカルがスローに
入って来て、徐々に調子の良いリズムに
盛り上がって行く曲です。
後半のダブはエコーのかけ方など、King
Tubby'sの匂いがプンプンするダブに
仕上がっています。

Linval Thompson-Jah Jah is the conqueror (extended)


2曲目は「Long Long Dreadlocks (Extended)」
です。
こちらはThe Aggrovatorsの専売特許のような
ビート、「フライング・シンバル」のシャリ
シャリとしたドラミングと、ホーンのメロディ
が印象的な曲です。
心地良さそうなLinval Thompsonのヴォーカル
も魅力。

3曲目は表題曲の「Ride On Dreadlocks
(Extended)」です。
こちらもフライング・シンバルのビートに、
伸びのあるLinval Thompsonのヴォーカルが
魅力的な曲です。
後半のエコーの効いたダブワイズもグッド。

Linval Thompson - Ride On Dreadlocks


4曲目は「Don't Cut Off Your Dreadlocks /
Joyful Locks」です。
前半はLinval Thompsonの代表曲「Don't Cut
Off Your Dreadlocks」で、後半は「featuring
U-Roy」となっているようにU-Royによるディー
ジェイ・ヴァージョン「Joyful Locks」と
なっています。
こちらもフライング・シンバルに乗せた曲で、
Linval Thompsonのソフトなヴォーカルと刻む
ようなギターのフレーズが印象に残る曲です。
後半はダブワイズしたLinval Thompsonの
ヴォーカルにウィキッドなU-Royのトース
ティングという組み合わせが魅力。

dont cut off your dreadlocks +++ - Linval Thompson - U Roy


5曲目は「12 Tribes Of Israel (Extended)」
です。
リディムはJohnny Clarkeの「Enter In To His
Gates With Praise」と同じリディムです。
重いベースのサウンドを軸に、ノビノビと歌う
Linval Thompsonの歌声が魅力。
後半はそのベースを生かしたヘヴィーで
リズミカルなダブになっています。

Linval Thompson ~ Twelve tribes of Israel


6曲目は「Everybody Needs Money (Extended)」
です。
こちらは刻むようなヘヴィーなリズムに
乗せた、Linval Thompsonのシッカリした歌い
ぶりが印象的。
アクセントのように入るリリカルなピアノが
良いです。
途中から溶け込むように入って来る、エコーの
効いたダブワイズもグッド。

Linval Thompson - EveryBody Needs Money + Dub


7曲目は「Don't Try To Rob I (Extended)」
です。
明るく伸びやかなLinval Thompsonのヴォーカル
の曲です。
こちらも溶け込むようにダブに移行します。

8曲目は「Cool Down Your Temper (Extended)」
です。
こちらも彼の代表曲のひとつ。
印象的なギターのフレーズからソフトなLinval
Thompsonのヴォーカル、ちょっと湿った空気感
が魅力。
こちらもヴォーカルにエコーがかかって、自然
な形でダブへと移行していきます。

9曲目は「A Big Big Girl (Extended)」です。
リディムはJackie Mittooの「Death Trap」。
こちらもフライング・シンバル独特の、
シャリシャリいうドラミングが耳に残り
ます。
途中から入るギター・ソロもグッド。

Linval Thompson - A big big girl


10曲目は「Jah Jah Is I Guiding Star
(Extended)」です。
こちらはリズミカルなホーンのメロディに
乗せた、Linval Thompsonのソフトなヴォー
カルが冴える曲です。

11曲目は「Can't Stop Natty Dread Again
(12" Version)」です。
リディムはSound Dimensionのロックステディ
のヒット曲「Real Rock」。
名リディムをダンホール色の強いアレンジで、
うまく歌いこなしています。

リズム特集 Real Rock (リアル・ロック)

ざっと追いかけて来ましたが、70年代のまだ
ルーツ・レゲエの時代の音源ですが、すでに
次の80年代に訪れるダンスホール・レゲエの
匂いが感じられる音楽を作っていたのがこの
Linval Thompsonだったんですね。
同じラスタファリズムについて歌っていても、
ルーツのもっともディープな音楽ナイヤビンギ
とはまったく真逆のダンサブルな音楽を、すで
にこのLinval Thompsonは作っています。

この後彼Linval Thompsonは、Volcanoレーベル
のHenry 'Junjo' Lawesなどとともに、新しい
音楽ダンスホール・レゲエのプロデューサー
として活躍する事になります。
ただその基礎はこの70年代の時代から、すで
にあったのかもしれません。
またシンガーとしての魅力も、捨てがたい
ところがあります。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Linval Thompson
○アルバム: Ride On Dreadlocks 1975-77
○レーベル: Blood & Fire
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2000

○Linval Thompson「Ride On Dreadlocks 1975-77」曲目
1. Jah Jah The Conqueror (Extended)
2. Long Long Dreadlocks (Extended)
3. Ride On Dreadlocks (Extended)
4. Don't Cut Off Your Dreadlocks / Joyful Locks - featuring U-Roy
5. 12 Tribes Of Israel (Extended)
6. Everybody Needs Money (Extended)
7. Don't Try To Rob I (Extended)
8. Cool Down Your Temper (Extended)
9. A Big Big Girl (Extended)
10. Jah Jah Is I Guiding Star (Extended)
11. Can't Stop Natty Dread Again (12" Version)