今回はPeter Toshのアルバム

peter_tosh_07a

「Equal Rights」です。

Peter Toshは60年代のスカやロックステディ
の時代から70年代のルーツ・レゲエの時代に
活躍した、有名なシンガーです。
彼はBob MarleyとBunny Livingston(Wailer)
とともに、スカの時代に伝説のグループThe
Wailersを結成し、The Skatalitesの演奏を
バックにジャマイカで人気コーラス・グループ
として活躍するんですね。

その後にロックステディからレゲエの時代
になるうちに楽器も演奏するようになり、
Barrett兄弟のリズム隊も含めた5人組の
レゲエ・バンドThe Wailersとなり、メジャー・
レーベルIslandから1973年にアルバム
「Catch A Fire」で世界デビューし、レゲエ
という音楽を世界に知らしめる役割を果たし
ます。

bob_marley_03a
The Wailers ‎– Catch A Fire (1973)

ところがIslandから2枚のアルバムを出した
ところでPeter ToshとBunny Livingston
(Wailer)が脱退し、2人はソロ・シンガーに
なってしまうんですね。

その後Peter Toshはソロとしてアルバムを発表
し、その実績が徐々に認められて、ロック・
バンドThe Rolling Stonesにレゲエの手ほどき
をした事をきっかけにStonesのレーベルから
アルバムを出したりして、世界的に活躍する
レゲエ・アーティストになって行くんですね。

そうして世界的にも活躍したPeter Toshです
が、1987年に強盗に殺害されて亡くなって
います。

アーティスト特集 Peter Tosh (ピーター・トッシュ)

今回のアルバムは1977年にColumbia
レーベルからリリースされた、彼のセカンド・
アルバムです。
この前年の76年に彼はソロとして初めて
のアルバム、マリファナの解禁を訴えた
「Legalize It」をリリースしています。

peter_tosh_01a
Peter Tosh ‎– Legalize It (1976)

それに続いて発表された今回のセカンドでは、
The Wailers時代のヒット曲「Get Up, Stand
Up」やThe Wailersを育てた師匠Joe Higgsの
ヒット曲で彼の代表曲ともなる「Stepping
Razor(邦題:歩くカミソリ)」、タイトル曲
にもなっている黒人の平等の権利を訴えた
「Equal Rights」など、彼の代表曲が収め
られたアルバムになっています。

手に入れたのは日本のSony Recordsから
リリースされた、中古のCDでした。

全8曲で収録時間は約40分。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Produced by Peter Tosh

My deepest gratitude goes to Bunny Wailer, my brother, who
appears throgh the courtesy of Island Records

Special thanks to: Tyrone Downie, Calie Barrett, Abdul Wali,
Skully, Bobby Ellis, Dirty Harry, Harold Butler, Alex Sadkin,
Jack Nuber & Mike Pantaleoni

Thefollowing pesons at (former) CBS Records have committed
a lot of energy and support to the Peter Tosh experience:
Bruce Lundvall, Dick Wingate, Ron McCarrell, Arma Andon,
Mike Pillot, Andy Engel, Peter Wertimer, Jock McLean, Jim Foley,
David Cohen, & Pattie Posa. Thank you all.

A special salute to: Word Sound & Power, for their 'livication'
and loyalty.
Theie names are Robbie, Sly, Wia, Al, Skully & Tarzan.

Recording Engineer: Karl Pitterson
Remix Engineers: Karl Pitterson, Alex Sadkin, Jack Nuber
Production Coordinators: Ozzie Brown, Herbie Miller

Recorded in Kingston, Jamaica at Randy's Studio
Overdubbed in Kingston, Jamaica at the following studios: Aquarius,
Joe Gibbs & Dynamic Sound
Mixed at Criteria-"Studio B", Miami, Florida
Mastered at Columbia Recording Studio, New York City

Front cover photo by Kim Gottlieb
Back cover photo by Ritch Barnes, Fikisha Jahliyl Cumbo, Kim Gottlieb
Album design by Andy Engel

となっています。

プロデュースはPeter Tosh本人で、レコーディ
ングはRandy's Studioで行われ、Aquariusや
Joe Gibbs、Dynamic Soundなどでオーヴァー・
ダビングが行われ、レコーディング・エンジニア
はKarl Pitterson、リミックス・エンジニアは
Karl PittersonとAlex Sadkin、Jack Nuber、
ミックスはマイアミにあるCriteria-"Studio B"
で行われています。

ミュージシャン関係がちょっと解りづらいです
が、解説文などを参考に見ると、中心となった
バンドはPeter Toshが結成したバック・バンド
Word Sound & Powerで、そのメンバーは、

Robbie, Sly, Wia, Al, Skully & Tarzan

となっています。

解説文によるとRobbieはベースのRobbie
Shakespeare、SlyはドラムのSly Dunbar、Wia
はキーボードのEarl 'Wire' Lindo、Alはギター
のAl Anderson、それにパーカッションの
Skully、キーボードのTarzanがWord Sound &
Powerのメンバーで、このアルバムの中心に
なっているようです。

他に一番初めに「my brother」と書かれている
The Wailersの同僚だったBunny Wailerが、
コーラス(もしかしたらパーカッションも)で
参加しているほか、The Wailersののドラマーの
Calie Barrett(Carlton Barrett)、サックス
のDirty Harry、トランペットのBobby Ellis、
キーボードのHarold Butlerなどが、「Special
thanks」として名前があります。

このルーツ期のジャマイカの優秀なバック・
ミュージシャンが結集したアルバムになって
います。

さて今回のアルバムですが、聴き心地から
見てもこのPeter Toshの代表作と言える
アルバムで、内容はとても良いです。
このPeter Toshという人正直なところあまり
にも、ど・ストレートな性格の人で、ちょっと
評価に迷うところがある人なんですね(笑)。
この人の場合曲よりも歌詞重視で、全てを黒人
の権利を主張するプロテストに捧げたような
人なんですね。
そのあまりにストレート過ぎる姿勢は、時に
聴く側としてはアルバムとしてはイマイチと
感じてしまう事もあります。
そのあたりがこの人について書く場合に、
すごく悩む部分なんですね。

ただこの人は後のアフリカン・レゲエの
アーティストに与えている影響は、あの
Bob Marleyを上回るほどの絶大なものが
あります。
彼の放つ辛らつな言葉が、多くのアフリカン・
アーティーストを鼓舞し、戦う力を与えている
んですね。
彼がその辛らつな批判精神で、レゲエの歴史
に名前を刻んだ事は間違いのない事実です。

今回のアルバムでもThe Wailesの名曲
「Get Up, Stand Up」やオリジナルは師匠
Joe Higgsの曲「Stepping Razor」などで、
どこか危険な香りが漂うような凄味のある
背筋がゾクゾクするような素晴らしい歌唱
を披露しています。
それこそがこのPeter Toshという人の魅力
なんですね。

平和より平等な権利が欲しいという彼
Peter Toshの歌には、いっさいの妥協が
ありません。

1曲目は「Get Up, Stand Up」です。
ある意味もっともThe Wailesというグループ
を代表する曲だと思います。
中心メンバーだったBob Marley、Bunny Wailer
とPeter Toshの3人すべてがこの曲を歌って
いるんですね。
かれらOrijinal Wailesを結ぶ曲であることは
間違いがありません。
その中でもこのPeter Toshのヴァージョンは、
切れ味満点です。
コーラスで明らかにBunny Wailerと解る、
声が入っています。

Peter Tosh - Get Up, Stand Up (Audio)


2曲目は「Downpressor Man」です。
このアルバムの中でも最長の6分28秒の曲
です。
刻むようなベースに泣くギター、そのメロディ
に乗せたジックリ歌い込むようなPeter Tosh
のヴォーカルが印象的。
入っている笑い声は明らかにBunny Wailer。

3曲目は「I Am That I Am」です。
こちらはキーボードのソフトなメロディに、
よく通るPeter Toshの歌声が心地良い曲です。

4曲目は「Stepping Razor」です。
映画「ロッカーズ」でも使用された、彼
Peter Toshの代表曲のひとつです。
書いたようにオリジナルはJoe Higgs。
泣くギターの軽快なリズムに乗せた、危険な
グルーヴ感が満ち溢れた1曲です。

Peter Tosh - Stepping Razor


5曲目は表題曲の「Equal Rights」です。
「俺には平和は必要ない。平等と正義が欲しい
だけ。」と訴える曲です。
歌詞のシビアさとは対照的に、ソフトな
キーボードのメロディから、ノビノビとした
ユッタリした歌いぶりの曲です。
その対比こそレゲエの魅力なんですね。

Peter Tosh - Equal Rights Lyrics


6曲目は「African」です。
黒人の同胞に呼びかけたメッセージです。
Peter Toshらしいノビのある歌声が魅力。

7曲目は「Jah Guide」です。
コーラス・ワークから始まる、優しく語り
掛けるように歌う曲です。
ラスタファリズムの神(ジャー)の愛を
歌っています。

Peter Tosh - Jah Guide (HD)


8曲目は「Apartheid」です。
悪名高き南アフリカの「人種隔離政策」を
批判した曲です。
そのシビアさにこそこの人の本質があります。
銃撃のエフェクトから、抑えた怒りを込めた
淡々とした歌いぶりがかえって凄味がある
1曲です。

ざっと追いかけて来ましたが、やはりこの
時代のPeter Toshには他のシンガーにない、
独特の魅力があります。
彼はこの後あのThe Rolling Stonesに認め
られ、彼らのレーベルでレコードを出す事に
なるんですね。
それは彼の中にある現状を打ち破ろうとする
「ロックな魂」が評価されたからかもしれ
ません。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Peter Tosh 1979-07-16 Pt 2: Steppin' Razor



○アーティスト: Peter Tosh
○アルバム: Equal Rights
○レーベル: Sony Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1977

○Peter Tosh「Equal Rights」曲目
1. Get Up, Stand Up
2. Downpressor Man
3. I Am That I Am
4. Stepping Razor
5. Equal Rights
6. African
7. Jah Guide
8. Apartheid

●今までアップしたPeter Tosh関連の記事
〇Peter Tosh「Captured Live」
〇Peter Tosh「Legalize It」
〇Peter Tosh「Mama Africa」
〇Peter Tosh「The Toughest」