今回はVarious(オムニバス)もののアルバム

greensleeves_01a

「Nice Up The Dance: U.K. Bubblers 1984-87」
です。

今回のアルバムは2010年にGreensleeves
Recordsからリリースされた、UKのダンス
ホール・レゲエの音源を集めたCD2枚組の
コンピュレーション・アルバムです。

タイトルにあるU.K. Bubblersは、Greensleeves
Records傘下のレーベルの名前のようで、その
レーベルから1984年から87年までに
リリースされた、UKのダンスホール・レゲエ
とラヴァーズの曲をまとめたアルバムのよう
です。
Tippa IrieやPato Bantonなど、この時代の
UKのレゲエ・シーンで活躍したアーティスト
の曲が多数収められたアルバムに仕上がって
います。

Tippa Irie - Wikipedia

Pato Banton - Wikipedia

実は今回のアルバムは下北沢のdisk inion
で、たった400円(税抜き)で中古で
売られていたアルバムでした(笑)。

CD 1が全18曲で収録時間は約66分。
CD 2が全18曲で収録時間は約75分。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Recorded & Mixed at Mark Angelo Studio, Easy Street Studio & Remaximum Studio
Engineers: Lindell Lewis, Patrick Donegan & Joe Richards

Backed by The Regulars:
Keyboards: Patrick Donegan, Lindell Lewis, Derek Fevrier, Joe Richards, Brian Campbell
Rhythm Guitar: Patrick Donegan, Joe Richards
Bass: Lindell Lewis, Trevor Salmon, Derek Fevrier
Program Drums: Lindell Lewis
Acoustic Drums: Drumtan Ward
Lead Guitar on "Hello Darling": Ciyo
Saxophone on "Hello Darling": Ray Carless
Tracks: CD1/7; CD2/8 (backed by One Distiny); CD2/20 (Backed by Azana)

Design: Tony McDermott

となっています。

レコーディングとミックスはUKのMark Angelo
とEasy Street、Remaximumというスタジオで
行われ、エンジニアはLindell LewisとPatrick
Donegan、Joe Richardsが担当しています。

CD 1の7曲目とCD 2の8曲目はバックが
One Distiny、CD 2の20曲目はバックがAzana、
その他の曲はすべてバックをThe Regularsが
担当しています。

デザインはScientistの「漫画ジャケ」
シリーズやMad Professorの「Dub Me Crazy!」
シリーズのイラストで知られるTony McDermott
が担当しています。

収録されているアーティストはTippa Irie、
Daddy Colonel、Daddy Rusty、Daddy Sandy、
Pato Banton、Lesley Lyrics、Sparky Dean、
Tannoi、Deborahe Glasgow、Annette B、
Peter Spence、Ricky Tamlin、One Destiny、
Dennis Gregory、Azana、Sugar Merchantと
多彩です。
正直なところTippa IrieとPato Banton以外
は、名前も聞いた事の無いレベルです。
その2人も名前は知っていても、ほとんど
聴いた事の無いレベルです。

さて今回のアルバムですが、私自身も聴いて
みて驚いた部分があるのですが、意外とUK
のダンスホール・レゲエというのは盲点で、
意識して聴いていなかった部分がありました。
この時代にはジャマイカではアーリー・ダンス
ホールからデジタルのダンスホールへと切り
替わって行く時期で、イギリスでもそうした
ダンスホールに影響を受けたミュージシャン
が次々に誕生していたんですね。
その事を見落としていた部分がありました。

実際に聴いてみた印象ですが、これが
けっこう新鮮で面白い音源なんですね。
やはりジャマイカとUKでは同じダンス
ホール・レゲエといっても音に微妙な差が
あり、そのあたりが面白いところです。
例えば今回のアルバムではけっこう早口
ディージェイのような曲が多いんですが、
元々はジャマイカにあったスタイルの中で
面白いと思った部分をピック・アップして、
それを独自に進化させているんですね。
UKで発達したラヴァーズなどを取り入れた、
独特の進化が、とても新鮮に聴こえる要因
だと思いました。

CD 1にはどちらかというと、ディージェイの
曲が多めに収められている印象です。

CD 1の1曲目はTippa Irie & Daddy Colonel
の「Just A Speak」です。
リディムはLone Rangerの「Answer」。
このリディムのオリジナルはSlim Smithの
「Never Let Go」です。
2人のディージェイのトースティングが楽しい
曲です。

Tippa Irie & Daddy Colonel - Tippa & The Colonel Just a Speak ( Answer Rhythm )


リズム特集 Answer (アンサー)

2曲目はDaddy Rustyの「No No Way」です。
こちらも「Answer」のリディムを使った
ディージェイの曲です。
明るくトボケた感じが面白いところ。

3曲目はDaddy Sandyの「Riddle Bubble」
です。
こちらも「Answer」のリディムを使った
ディージェイもの。
軽快なリズムに滑らかなトースティング。

4曲目はDaddy Colonelの「Lyric Banton」
です。
こちらはいかにもデジタルといったドラミング
やシンセが印象的な、トラックに乗せたトース
ティングです。
早口なトースティングがハマる曲です。

Daddy Colonel _ Lyric Banton


5曲目はTippa Irieの「It's Good To Have
The Feeling You're The Best」です。
リディムはSlim Smith & The Uniquesの
「My Conversation」。
Tippa Irieの早口トースティングは見事に
ハマった、不思議な空気感がある曲です。

Tippa Irie - It's Good To Have The Feeling You're The Best (My Conversation Riddim)


リズム特集 My Conversation (マイ・カンバセーション)

6曲目はTippa Irieの「All The Time The
Lyric A Rhyme」です。
リディムはSound Dimensionのロックステディ
のヒット曲「Real Rock」です。
こちらも早口ディージェイが全開の曲です。

Tippa Irie - All The Time The Lyric A Rhyme


リズム特集 Real Rock (リアル・ロック)

7曲目はPato Bantonの「Mash Up The Telly」
です。
こちらはデジタルの軽快なリズムに乗せた
トースティング。

8曲目はLesley Lyricsの「Put Back Your
Truncheon」です。
リディムはRoland Alphonso & Soul Vendors
の「Death In The Arena」、通称「Arena」の
リディムです。
こちらも軽快なトースティングが楽しめる曲
です。

Put Back Your Truncheon - Lesley Lyrics & Tannoi


リズム特集 Arena (アリーナ)

9曲目はDaddy Colonelの「Take A Tip From
Me」です。
競馬のファンファーレ風のシンセから始まる、
楽しいトースティングの曲です。

10曲目はSparky Deanの「Satisfaction
Guarenteed」です。
こちらはピアノのメロディに乗せたトース
ティング。

11曲目はTippa Irie & Pato Bantonの
「Walk Pon The Spot」です。
こちらもディージェイの掛け合いの楽しい
トースティングの曲です。

Tippa Irie & Pato Banton - Walk Pon The Spot


12曲目はPato Bantonの「Don't Sniff Coke」
です。
リディムはDennis Brownの「Revolution」。
陰影のあるデジタルのリズムを、彼らしい
早口を駆使したトースティングでうまく
聴かせています。

Pato Banton - don't sniff coke (GREENSLEEVES - UK BUBBLERS - 1986) 12inch


リズム特集 Revolution/Here I Come (レヴォリューション/ヒア・アイ・カム)

13曲目はTannoiの「Cocaine Mash Up Your
Brain」です。
リディムはFreddie McGregorの「Bobby
Babylon」。
ここでようやくシンガーの歌が登場。
デジタルなリズムに乗せた、シッカリした
歌いぶりです。

Tannoi - Cocaine Mash Up Your Brain


リズム特集 Bobby Babylon/Hi Fashion (ボビー・バビロン/ハイファッション)

14曲目はTannoiの「Worries And Troubles」
です。
こちらもデジタルなリズムに乗せた、いかにも
ダンスホールらしい軽快なナンバーです。

15曲目はDaddy Rustyの「Roger The Dodger」
です。
こちらはデジタルのリズムに乗せた、ディー
ジェイの楽しいトースティング。

16曲目はTippa Irieの「769 1230」です。
こちらは自分の電話番号を歌ったような曲
です。
ゆったりしたデジタルのワン・ドロップに
乗せた、早口のトースティング。

17曲目はDaddy Sandyの「Vibes」です。
こちらもデジタルのリズムに乗せた軽快な
早口トースティング。

18曲目はTippa Irieの「Have You Got A
Neighbour」です。
こちらはデジタルなロックンロールのような
リズムに乗せた、Tippa Irieの早口トース
ティングが楽しい曲です。

CD 2はラヴァーズかと思うような女性ヴォー
カルも入った、ヴォーカルものが多い構成
です。

CD 2の1曲目はTippa Irieの「Hello Darling」
です。
まさに口笛でも吹きたくなるような明るい
リズムに乗せた、Tippa Irieのトースティング
が楽しい曲です。
合間良く入るサックスとギターが、この曲を
うまく盛り上げています。

Tippa Irie - Hello Darling (OFFICIAL VIDEO)


2曲目はDeborahe Glasgowの「You're My
Sugar」です。
1曲目Tippa Irieの「Hello Darling」の
女性シンガー・ヴァージョンです。
こちらはラヴァーズのテイストで、ピアノ
が良いアクセントになっています。

3曲目はAnnette Bの「I Found Love」です。
こちらも女性シンガーのラヴァーズ・テイスト
の曲です。

Annette B - I Found Love 1986


4曲目はPeter Spenceの「Don't Leave Me
Lonely」です。
こちらは男性シンガーの、心地良いラヴァーズ
といった曲です。
伸びのあるヴォーカルが魅力。

5曲目はDeborahe Glasgowの「Knight In
Shining Armour」です。
こちらも女性ヴォーカルのラヴァーズ全開の
曲です。

6曲目はAnnette Bの「Casanova」です。
こちらも女性らしいスウィートな歌声の
ナンバー。

7曲目はRicky Tamlinの「Going To A Party」
です。
こちらは女性コーラスをバックにした、
オシャレな男性ヴォーカルといった曲です。

8曲目はOne Destiny featuring Dennis
Gregoryの「No Regrets」です。
こちらは明るくポピュラリティの強い、
男性ヴォーカルものです。

9曲目はDeborahe Glasgowの「Don't Stay
Away」です。
リディムは「ジャマイカン・ゴスペルの女王」
と呼ばれたPhyllis Dillonのロックステディ
のヒット曲「Don't Stay Away」です。
時代が経っても色褪せない名曲を、心地良さ
そうに歌いこなしています。
合間良く入るサックスもグッド。

Deborahe Glasgow - Don't Stay Away [1987] - Reggae


リズム特集 Don't Stay Away (ドント・ステイ・アウェイ)

10曲目はAzanaの「Runaway Woman」です。
こちらは男性のスウィートな、泣きの
ヴォーカルといった曲です。
こちらもホーンが良い具合に効いています。

11曲目はSugar Merchantの「Tears Of A
Clown」です。
ベースのリズムが聴いた曲に、Sugar Merchant
の陰影のあるヴォーカルが良い味を出して
います。
途中から入るファルセットのヴォーカルは
強烈です。

Sugar Merchant - Tears Of A Clown


12曲目はTannoiの「Gunshot Salute」です。
リディムはLone Rangerの「Answer」。
こちらはダンスホール色の強い仕上がり。

13曲目はTannoiの「Rude Boys」です。
心地良いリズムに乗せた、Tannoiのヴォーカル
が冴える曲です。

14曲目はSparky Deanの「Yip Yap Rabbit」
です。
こちらはSparky Deanの早口ディージェイ・
ナンバーです。

15曲目はLesley Lyricsの「Blind Date」
です。
リディムはSound Dimensionの「Real Rock」。
ロックステディの名リディムを余裕のある
トースティングでうまく乗りこなしています。

16曲目はPato Bantonの「Secret
Thunderbird Drinker」です。
以下にデジタルらしいリディムに、トボケた
味わいのあるPato Bantonのトースティングが
うまくマッチしています。

17曲目はTippa Irieの「Dance Down A Yard」
です。
こちらは明るいノリのリズムに、滑らかな
早口トースティングが冴える曲です。

18曲目はTippa Irieの「Dance Up A Leeds」
です。
最後は明るいリズムに、ノリの良いトース
ティングという曲でシメています。

Tippa Irie - Dance Up A Leeds


ざっと追いかけて来ましたが、同じダンス
ホール・レゲエでも明らかにジャマイカと違う
空気感が面白いところです。
歌ものはかなりラヴァーズに近い空気になり、
ディージェイは早口ディージェイが流行って
いた感がうかがえます。
不思議とジャマイカ以上に、乾いたサウンド
なのが印象的。
ある意味ジャマイカとはまた違った魅力が、
このUKのダンスホール・レゲエにはあり
ます。

機会があればぜひ聴いてみてください。


Pato Banton - Mash Up The Telly - Live 1985



○アーティスト: Various
○アルバム: Nice Up The Dance: U.K. Bubblers 1984-87
○レーベル: Greensleeves Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2010

○Various「Nice Up The Dance: U.K. Bubblers 1984-87」曲目
CD 1
1. Just A Speak - Tippa Irie & Daddy Colonel (Tippa Irie & The Colonel)
2. No No Way - Daddy Rusty
3. Riddle Bubble - Daddy Sandy
4. Lyric Banton - Daddy Colonel
5. It's Good To Have The Feeling You're The Best - Tippa Irie
6. All The Time The Lyric A Rhyme - Tippa Irie
7. Mash Up The Telly - Pato Banton
8. Put Back Your Truncheon - Lesley Lyrics
9. Take A Tip From Me - Daddy Colonel
10. Satisfaction Guarenteed - Sparky Dean
11. Walk Pon The Spot - Tippa Irie & Pato Banton
12. Don't Sniff Coke - Pato Banton
13. Cocaine Mash Up Your Brain - Tannoi
14. Worries And Troubles - Tannoi
15. Roger The Dodger - Daddy Rusty
16. 769 1230 - Tippa Irie
17. Vibes - Daddy Sandy
18. Have You Got A Neighbour - Tippa Irie
CD 2
1. Hello Darling - Tippa Irie
2. You're My Sugar - Deborahe Glasgow
3. I Found Love - Annette B
4. Don't Leave Me Lonely - Peter Spence
5. Knight In Shining Armour - Deborahe Glasgow
6. Casanova - Annette B
7. Going To A Party - Ricky Tamlin
8. No Regrets - One Destiny featuring Dennis Gregory
9. Don't Stay Away - Deborahe Glasgow
10. Runaway Woman - Azana
11. Tears Of A Clown - Sugar Merchant
12. Gunshot Salute - Tannoi
13. Rude Boys - Tannoi
14. Yip Yap Rabbit - Sparky Dean
15. Blind Date - Lesley Lyrics
16. Secret Thunderbird Drinker - Pato Banton
17. Dance Down A Yard - Tippa Irie
18. Dance Up A Leeds - Tippa Irie