今回はFrankie Paul & Coco Teaのアルバム

frankie_paul_03a

「Showdown Vol 8」です。

Frankie Paulは80年代のダンスホール・
レゲエで活躍したシンガーです。
生まれた時から盲目に近い状態だった彼は、
「ジャマイカのスティービー・ワンダー」と
形容されるほどの実力で、このダンスホール・
レゲエの時代に活躍するんですね。

アーティスト特集 Frankie Paul (フランキー・ポール)

Coco Teaはレゲエレコード・コムの彼の紹介
ページによると、十代前半で数曲の作品を
残したもののうまくいかず、一時は漁師や
騎手として生計を立てていた事もあったそう
ですが、VolcanoレーベルのHenry 'Junjo'
Lawesの元で「Lost My Sonia」や「Rocking
Dolly」のヒットを放ち、トップ・アーティ
ストの仲間入りを果たした人なんだそうです。

アーティスト特集 Cocoa Tea (ココ・ティー)

今回のアルバムは1986年にChannel One
傘下のHit Boundから発表されたFrankie Paul
とCoco Teaのクラッシュ・アルバム(対決盤)
です。

このアーリー・ダンスホールの時代には、
こうしたLPの片面ずつに違うアーティスト
を収めたクラッシュ・アルバムが多く作られて
いるんですね。
元々は同じ曲を歌ってその実力を競うという
形だったようですが、徐々に形が崩れて
違う曲でもクラッシュ・アルバムと呼ばれて
いるようです。

このChannel Oneの「Show-Down」シリーズ
もクラッシュ・アルバムの人気シリーズで、
83年のLittle JohnとBarry Brownの「Vol.1」
から86年のFrankie JonesとMidnight Riders
の「Vol.9」まで全9作が作られています。

今回はその8集目のアルバムなんですね。

barry_brown_04a
Little John & Barry Brown ‎– Show-Down Vol. 1 (1983)

sugar_minnott_03a
Sugar Minott & Frankie Paul ‎– Show-Down Vol. 2 (1983)

frankie_paul_02a
Frankie Paul & Little John ‎– Show-Down Vol. 6 (1984)

Side 1がCoco Teaのサイドで4曲、Side 2が
Frankie Paulのサイドで4曲の全8曲。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Misicians: Hi Times Band
Drums: Tony 'Benbow' Creary
Bass: Christopher Merridith
Keyboards: Tony 'Asha' Brissette
Rhythm Guitar: Fazal Prendegast

Produced by: Steve Byfield & Clement Hailey for Corner Stone Production
Exec. Producer: Michael Chin
Mixed by: Bunny Tom Tom, Soljie
All tracks written by Coco Tea & Frankie Paul

Rhythm tracks recorded at Channel One Recording Studio
Mixed at Channel One Recording Studio

となっています。

バックはHi Times Bandで、プロデュースは
Corner StoneレーベルのSteve Byfieldと
Clement Hailey、レコーディングとミックスは
Channel Oneで、ミキシング・エンジニアは
Bunny Tom TomとSoljieが担当しています。

エクゼクティブ・プロデューサーとして
Michael Chinの名前があります。
おそらくCorner Stoneレーベルで作った音源
を、Channel OneのMichael Chinが買い取って
アルバムにしたのが、今回のアルバムと思われ
ます。

後にCorner Stoneレーベルから出たCoco Tea
の若い時代の音源を集めたアルバム「In His
Early Days 84, 85, 86 - 1998」には、今回
のアルバムにも収録されている「War」と
「Send Them For Me」の2曲が収録されて
います。

coco_tea_02a
Coco Tea ‎– In His Early Days 84, 85, 86 - 1998 (1998)

おそらくこの当時はそうしたプロダクション
同士の曲の貸し借りが、けっこう行われて
いたんじゃないかと思います。

さて今回のアルバムですが、ちょっと曲数は
少ないものの、このアーリー・ダンスホール
のCoco TeaとFrankie Paulの若々しい魅力的
な歌声が収められたアルバムで、内容はなか
なか良いです。

この2人ともがその後のデジタルのダンス
ホールになってからも活躍を続けた実力派の
アーティストなんですが、個人的にはこの
アーリー・ダンスホールの音源が特に好き
です。
というのもこの2人とも初めはその良さに
気付かなかったのに、それを見直した音源が
このアーリー・ダンスホールの時代の音源に
あるんですね。

Coco Teaはセカンド・アルバムの「Weh Dem
A Go Do... Can't Stop Coco Tea」を聴いて
から、印象が変わったシンガーでした。

coco_tea_01a
Coco Tea ‎– Weh Dem A Go Do... Can't Stop Coco Tea (1985)

もっと後の音源を聴いていて歌のウマい人
だなとは思っていたんですが、それほど
強い印象は持っていませんでした。
それがこのアルバムを聴いて、飢えた若者の
エネルギーのようなものを感じて、それから
すごく好きになりました。
元々はRoots Radicsの演奏しているアーリー・
ダンスホールの音源だから買ってみるかぐらい
の感じだったのですが、それ以来注目して
いるアーティストに変わりました。

Frankie Paulはこの「Show-Down」シリーズの
2作目Sugar Minottとの共演の「Show-Down
Vol. 2」に入っている、「Warries In The
Dance」を聴いてから印象がガラッと変わり
ました。
そのまるで咆哮するような、飢餓感のある
荒々しいヴォーカルは強烈。
それまでのただウマい人を覆す、素晴らしい
名曲でした。

レゲエをこうして聴いていると、1枚の
アルバムや1曲で、それまでのイメージが
覆される事がよくあります。
やはりこうして名前の残っている人には、
それだけの実績や魅力があるんですね。
大切なのはこの人のどこが魅力なのか?
貪欲に探し続ける事です。
そうすれば素晴らしい音源に、出会える
かもしれません。

さて話を戻しますが、今回のアルバムは
そうしたアーリー・ダンスホールで輝きを
放った2人のアーティストの歌声が楽しめ
るアルバムでなかなか。
すべての曲が同じリディムで競っている訳
ではないようですが、同じ「Vanity」の
リディムを使った曲などもあり、2人の
歌いぶりが楽しめるクラッシュ・アルバム
に仕上がっています。

Side 1の4曲はCoco Teaが歌っています。

Side 1の1曲目は「War」です。
Side 2の3曲目Frankie Paulの「Cry Fi Them」
と同じリディムの曲のようです。
陰影のあるメロディにCoco Teaの感情の入った
ヴォーカルが沁みます。

COCOA TEA - War (1986 Hitbound)


2曲目は「Send Them For Me」です。
ピアノのメロディに乗せたCoco Teaの優しい
ファルセット気味のヴォーカルがグッと来る
1曲です。

3曲目は「Loving You Always」です。
こちらはSugar Minottの「Vanity」のリディム
として知られている曲です。
(オリジナルはAlton Ellisの「I'm Just A
Guy」。)
こちらもピアノのメロディに乗せたCoco Tea
の歌声が、とても魅力的な曲です。

COCOA TEA - Love you always (1986 Hitbound)


リズム特集 I'm Just A Guy (アイム・ジャスト・ア・ガイ)

4曲目は「Cindy Lue」です。
ピアノとギターのリズムを中心とした、
曲です。
切々と歌うCoco Teaのヴォーカルが良いです。

Side 2の4曲はFrankie Paulが歌っています。

Side 2の1曲目は「De Pon Street Again」
です。
リディムはThe Heptonesの「Love Won't Come
Easy」。
よく通るFrankie Paulのヴォーカルが冴える
曲です。

2曲目は「Please Stay With Me」です。
リディムはBert Kaempfertの「African Beat」。
特徴的なホーンのメロディに乗せた、Frankie
Paulのヴォーカルが魅力。
シッカリした説得力のあるヴォーカルを聴か
せています。

FRANKIE PAUL - Please stay with me (Hitbound 1986)


リズム特集 African Beat/Under Mi Sensi (アフリカン・ビート/アンダー・ミ・センシ)

3曲目は「Cry Fi Them」です。
書いたようにSide 1の1曲目「War」と、同じ
リディムが使われているようです。
こちらはたたみ掛ける様なハードなヴォーカル
が魅力。
まったく違う印象の曲に仕上げています。

FRANKIE PAUL - Cry fi them (Hitbound 1986)


4曲目は「Youthman」です。
こちらも「Vanity」のリディムが使われた曲
です。
こちらも元の曲を感じさせない、自分の曲に
作り変えています。

Frankie Paul - Youthman


ざっと追いかけて来ましたが、どちらの歌手も
その出発点から自分の世界を持った、シッカリ
した実力を持った歌手だった事がよく解ります。
彼らがその後も活躍を続けたのは、むしろ当然
だったのかもしれません。

今回のアルバムはそうした彼らの輝きが、
うまく収められたアルバムだと思います。

機会があれば聴いてみてください。


○アーティスト: Frankie Paul & Coco Tea
○アルバム: Showdown Vol 8
○レーベル: Hit Bound
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1986

○Frankie Paul & Coco Tea「Showdown Vol 8」曲目
Side 1
1. War - Coco Tea
2. Send Them For Me - Coco Tea
3. Loving You Always - Coco Tea
4. Cindy Lue - Coco Tea
Side 2
1. De Pon Street Again - Frankie Paul
2. Please Stay With Me - Frankie Paul
3. Cry Fi Them - Frankie Paul
4. Youthman - Frankie Paul

●今までアップしたFrankie Paul関連の記事
〇Sugar Minott, Frankie Paul「Show-Down Vol. 2」
〇Frankie Paul, Little John「Show-Down Vol. 6」
〇Frankie Paul, Pinchers「Turbo Charge」
〇Frankie Paul「Casanova」
〇Frankie Paul「Pass The Tu-Sheng-Peng / Tidal Wave」