今回はKeith Hudson & Friendsのアルバム

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「Studio Kinda Cloudy」です。

まずはこのアルバムのプロデューサーで
あるKeith Hudsonという人について書いて
おきます。

Keith Hudsonはレゲエの歴史に名を刻む
シンガーであり、プロデューサーである人
として知れらています。
1974年に発表された彼のファースト・
アルバム「Flesh of My Skin Blood of My
Blood」は、「レゲエ初のコンセプト・
アルバム」という高い評価を受けている
アルバムで、まるでライブのような水の音
のエフェクトなど、彼独特の世界が描かれて
います。

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Keith Hudson - Flesh of My Skin Blood of My Blood (1974)

それに続く75年の「Pick A Dub」は初期の
ダブの傑作と呼ばれ、それによって彼は
Lee Perry、King Tubby、Errol Thompsonと
並ぶ「創世記ダブ四天王」という言い方を
される事があります。

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Keith Hudson - Pick A Dub (1975)

独特の世界観を持った音楽を作り続け
「レゲエ界の異端児」、「レゲエのダーク・
プリンス」などと呼ばれたKeith Hudsonで
したが、84年末に42歳という若さで
ガンで亡くなっています。

アーティスト特集 Keith Hudson (キース・ハドソン)

今回このアルバムは1988年にTrojan
RecordsからリリースされたKeith Hudsonが
プロデューサーとして活躍していた時代の
音源を集めたコンピュレーション・アルバム
です。
彼の音楽の出発は歌手としてではなく、まずは
Studio Oneのスタジオに出入りして、プロ
デューサーとして活動を始めた事なんですね。
そうした事で自信の付いた彼は、自身の
アルバムをリリースするようになる訳です。
今回はそうしたKeith Hudsonのプロデュース
した曲を集めたアルバムで、1970年から
75年までの曲が集められています。

手に入れたのは日本のP-Vine Recordsが発売
元の、中古のCDでした。
中には工藤 BIG 'H' 晴康さんという方の解説
文が付いていました。

全18曲で収録時間は約49分。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Alltracks produced by Keith Hudson in Kingston, Jamaica, 1970-1975
Musical backing for these tracks by The Soul Syndicate, whose probable personnel at this time included:
Drums: Carlton 'Santa' Davis
Bass: George Fullwood
Lead Guitar: Earl 'Chinna' Smith
Rhythm Guitar: Tony Chin
Organ: Bernard 'Touter' Harvey
Trumpet: Johnny 'Dizzy' Moore
Tenor Saxophone: Val Bennett
Trombone: Vincent 'Trommie' Gordon as Don D Junior

となっています。

プロデュースはKeith Hudsonで、スタジオ
の記載はありませんが、1970年から
75年の間にジャマイカのキングストンで
録音されています。

バックはギタリストのEarl 'Chinna' Smith
の率いるバンドThe Soul Syndicateとなって
います。
Keith HudsonはよくこのThe Soul Syndicate
と仕事をしているんですね。
ただすべての曲をThe Soul Syndicateが演奏
しているかはちょっと疑問な部分もあります。
今回集められているのは初期レゲエの時代の
音源が多く、その時代からThe Soul Syndicate
が活動していたとはちょっと思えないんです
ね。
おそらく他にStudio Oneの音源か何かを
使っているんじゃないかと思います。

解説文にもありますが、3曲目の「Dynamic
Fashion Way」は、「U・ロイがデューク・
リードの元からヒットを連発する以前の、
彼の3番目の録音」という、英文の解説がある
そうで、そうなると69年以前でないと
おかしいんだそうです。
聴いた印象も少しロックステディが混じって
いる印象があるので、60年代の録音も
混じっているかもしれません。

アルバム1枚を通して聴くと、前半は初期
レゲエの時代で、後半は70年代中期の
ルーツ・レゲエの時代という感じです。
今回のアルバムは元々はLPで片面9曲が
収められたアルバムでしたが、どうも
初めの9曲がロックステディから初期レゲエ
の時代、残りの9曲がルーツ期中期の時代の
音源という気がします。

収録されているアーティストはKen Boothe、
Dennis Alcapone、U-Roy、Phillip Samuel、
Keith Hudson、Soul Syndicate、Horace Andy、
Jah Woosh、Dino Perkins、Alton Ellis、
Don Drummond Junior、Skiddy & Detroit、
Bunny Galeと、有名無名な多彩な顔触れが
揃っています。
全18曲中Dennis Alcaponeの曲が5曲、
しかも4曲連続で続いています。

1~3曲目までKen Bootheの「Old Fashioned
Way」のリディムの曲が並びますが、こうした
同じ曲でディージェイのヴァージョンなどを
作る、「使い回し」を早くから始めたのがこの
人なんだとか。
またU-Royの録音もDuke ReidのTreasur Isle
でヒット曲を出す以前に行っていたり、かなり
目先の利く先鋭的なプロデューサーだった
らしいです。

さて今回のアルバムですが、特に初めの9曲
の、初期レゲエの頃の音源を集めた曲が面白い
です。
この初期レゲエの時代って、どこかファンキー
でクレイジーな不思議なノリのある時代なん
ですね。
今回のアルバムにはその能天気で狂気じみた、
ヤバいノリの匂いが、プンプン漂っています。
その危険な香りが、ちょっとゾクゾクする
くらい魅力的。

後半9曲はKeith Hudsonがだいぶ自身の
音楽性を確立している感じがうかがえます。
彼がその後自身を中心としたアルバムを
作るようになったのは、むしろ必然だった
のかもしれません。
ある意味彼出なく別の人が歌った方が、
彼のドランキーな歌いぶりよりシッカリ
した歌に聴こえる面もあります(笑)。
ただおそらくそれでは彼の歌ではないん
ですね。
良いに付け悪いに付け、彼Keith Hudsonは
自分で歌う事で自我を確立していったんだ
と思います。

ちなみに今回のアルバムは2002年に出た
「Roots Rock Reggae」や2003年に出た
「スカ・ディスク・ガイド」などにも紹介
されているアルバムです。
やはり初期レゲエのコンピとしては、なかなか
面白いアルバムなんですね。

1~9曲目ぐらいまでがロックステディから
初期レゲエぐらいの空気感の残る曲が続き
ます。
この時代のどこか狂気を孕んだ空気感は
やはり魅力的。

1~3曲目までは「Old Fashioned Way」の
リディムの曲が続きます。

1曲目はKen Bootheの「Old Fashioned Way」
です。
解説文によるとKeith Hudsonの「輝かしい
第1作目のヒット」なんだとか。
そこからKeith Hudsonのプロデューサーと
しての道が開けたのかもしれません。
Ken Bootheはこの当時「ミスター・ロック
ステディ」といわれるほどの人気シンガー
で、曲もちょっとロックステディの匂いの
する軽快な曲です。
異常なほどに陽性なエネルギーが、溢れて
いる曲です。

Ken Boothe - Old Fashioned Way


2曲目はDennis Alcaponeの「Spanish Amigo」
です。
1曲目Ken Bootheの「Old Fashioned Way」の
ディージェイ・ヴァージョンです。
キャッチーなメロディにクールなトースティ
ングが光ります。

Dennis Alcapone - Spanish Omega (Spanish Amigo)


3曲目はU-Royの「Dynamic Fashion Way」です。
こちらも1曲目Ken Bootheの「Old Fashioned
Way」のディージェイ・ヴァージョン。
こちらはサックスに乗せてのトースティング。
同じディージェイのトースティングでもバック
のサウンドを微妙に変えて、雰囲気を変えて
いるところにKeith Hudsonのセンスがうかがえ
ます。

U Roy - Dynamic Fashion Way (Inbidimts)


4~7曲目までの4曲はDennis Alcaponeの
ディージェイ・ナンバーが続きます。

4曲目はDennis Alcaponeの「Shades Of
Hudson」です。
ホーンのメロディに乗せたトースティング。
U-Royと肩を並べるほど人気を誇った、いか
にも初期のディージェイらしい語り口が光り
ます。

5曲目はDennis Alcaponeの「Revelation
Version」です。
この時代の「Version」という言葉は、まだ
ダブを指すのではなく、同じ音源を使った
別の曲という意味なんですね。
不思議に浮き立つようなコーラスに乗せた
トースティングです。

DENNIS ALCAPONE "REVELATION VERSION" (Studio Kinda Cloudy)


6曲目はDennis Alcaponeの「Marker Version」
です。
こちらもホーンのメロディに乗せた、楽し気な
雰囲気のトースティングです。

7曲目はDennis Alcaponeの「The Sky's The
Limit」です。
こちらはギターとホーンのメロディに乗せた
トースティング。
時折入る「イェー!」という甲高い掛け声が、
いかにもこの人らしいちょっとイカレた雰囲気
を醸し出しています。

8曲目はPhillip Samuelの「Hot Stick
Version」です。
この人もディージェイで、こちらはピアノと
ホーンのメロディに乗せた陽気なトースティ
ングです。

Phillip Samuels - Hot Stick Version


9曲目はKeith Hudsonの「Satan Side」です。
リディムはThe Wailersの「Get Up Stand Up」。
Keith Hudsonのヴォーカルものとしては、
早い時期のもののようです。
歌っているのか喋っているのか解らないよう
な、後のドラッギーさから見れば、まだ
おとなしい感じの歌いぶりです。

Satan Side - Keith Hudson


10曲目以降は比較的安定したルーツ色が
強く感じられます。
この頃になるとダブも誕生しているので、
明らかにダブワイズした曲も収められて
います。

10曲目はSoul Syndicateの「Riot」です。
いかにもSoul Syndicateらしい、ファンキー
であか抜けた曲です。
Johnny 'Dizzy' Mooreと思われる、トラン
ペットがなかなか秀逸です。

11曲目はU-Royの「The Hudson Affair」
です。
10曲目Soul Syndicateの「Riot」の
ディージェイ・ヴァージョンです。

12~14曲目までの3曲は「Don't Think
About Me」のリディムが続きます。

12曲目はHorace Andyの「Don't Think About
Me」です。
こちらはしっかりとしたルーツ・レゲエと
いう印象の曲です。
ドッシリした重さが心地良い曲です。

13曲目はJah Wooshの「I'm Alright」です。
12曲目Horace Andyの「Don't Think About
Me」のディージェイ・ヴァージョンです。
このあたりになると、いかにもルーツという
空気感があります。
ダブワイズした曲に乗せたトースティングが
魅力。

Jah Woosh // I'm Alright


14曲目はDino Perkinsの「Skin Him Alive」
です。
こちらも12曲目Horace Andyの「Don't Think
About Me」のディージェイ・ヴァージョン
です。
こちらはダブワイズはしておらず、原曲に
乗せたトースティングです。
ズンと響くベースが魅力。

15曲目はAlton Ellisの「Big Bad Boy」
です。
スカやロックステディの時代から活躍する
名シンガーの、ソフトな歌声にヤラレちゃう
曲です。
ちょっと音質が悪い印象があるので、こちら
も初期レゲエの頃の曲かもしれません。

16曲目はDon Drummond Juniorの「Evil
Spirit」です。
15曲目Alton Ellisの「Big Bad Boy」の
トロンボーン・ヴァージョンです。
茫洋としたトロンボーンが、魅力の1曲。

17曲目はSkiddy & Detroitの「The Exile
Song」です。
「ならず者の歌」と題された曲ですが、
リディムはポップ・グループThe Animalsの
64年のヒット曲「House Of The Rising Sun
(邦題:朝日の当たる家)」のようです。
こちらも多少音質が悪い印象で、初期レゲエの
頃の音源か?
15,16曲目もオルガンが入っていますが、
それがどうもJackie Mittooポイ、浮遊感の
あるオルガンなんですね。
(Studio Oneの音源か?)

The Exile Song - Skiddy & Detroit


18曲目はBunny Galeの「In The Burning
Sun」です。
リディムはThe Viceroysの「Ya Ho」。
こちらもStudio Oneのヒット曲です。
初期レゲエぐらいの音源か?

ざっと追いかけて来ましたが、特に初期レゲエ
の時代と思われる音源は、弾けきった狂気にも
近いアブナイ音楽の匂いがします。
その恐ろしいほどのパワーで、レゲエは世界
にも認められていくんですね。

また彼Keith Hudsonのプロデュースした作品
には、その後の彼自身の作品にも繋がる匂い
がします。
自らの音楽に自信を深めた彼は、この後も
自分の音楽を追及して、このルーツの時代を
駆け抜けて行くんですね。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Keith Hudson & Friends
○アルバム: Studio Kinda Cloudy
○レーベル: P-Vine Records (Trojan Records)
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1988

○Keith Hudson & Friends「Studio Kinda Cloudy」曲目
1. Old Fashioned Way - Ken Boothe
2. Spanish Amigo - Dennis Alcapone
3. Dynamic Fashion Way - U-Roy
4. Shades Of Hudson - Dennis Alcapone
5. Revelation Version - Dennis Alcapone
6. Marker Version - Dennis Alcapone
7. The Sky's The Limit - Dennis Alcapone
8. Hot Stick Version - Phillip Samuel
9. Satan Side - Keith Hudson
10. Riot - Soul Syndicate
11. The Hudson Affair - U-Roy
12. Don't Think About Me - Horace Andy
13. I'm Alright - Jah Woosh
14. Skin Him Alive - Dino Perkins
15. Big Bad Boy - Alton Ellis
16. Evil Spirit - Don Drummond Junior
17. The Exile Song - Skiddy & Detroit
18. In The Burning Sun - Bunny Gale