今回はPhillip Fraserのアルバム

phillip_fraser_05a

「Blood Of The Saint Vintage: Phillip Fraser
Showcase 79-80-81-82」です。

Phillip Fraserは70年代のルーツ・レゲエ
の時代から80年代のダンスホール・レゲエ
の時代にかけて活躍したシンガーであり、
プロデューサーでもある人です。
自身のレーベルRazer Soundsや、Errol 'Don'
Maisの率いるレーベルRoots Traditionなど、
主にジャマイカ国内の小さなレーベルから
アルバムを出している人なんですね。
ルーツからダンスホールの時代にかけて、
ジャマイカ国内ではかなり目覚ましい活躍を
しています。

今回のアルバムはジャマイカのレーベル
Corner Stoneから発表されたアルバムで、
Phillip Fraserの歌とダブがひとつになった
ショーケース・スタイル(ディスコ・ミックス・
スタイル)の楽曲を集めたアルバムです。
制作年はハッキリとは解りませんが、表題曲
の「Blood Of The Saint」が82年にアルバム
として発売されているので、おそらくはその
82年頃にリリースされたものと思われます。
(少なくとも82年以降である事は、間違い
ありません。)

phillip_fraser_01a
Phillip Fraser ‎– Blood Of The Saint (1982)

表題曲の「Blood Of The Saint」のほか、
「Stop The Fussing And Fighting」や
「Bad Boys」、「Moses Moses」など彼の
代表曲が入っていて、前半は歌で後半は
ダブのショーケース・スタイルの楽曲が
入った、ボリューム感のあるアルバムに
仕上がっています。
82年に発売されたアルバムはA面2曲の
B面2曲の全4曲入りとなっているので、
こちらもショーケース・スタイルの曲
だったんじゃないかと思います。
今回のアルバムはそのアルバムにさらに
2曲、「Stop The Fussing And Fighting」
と「Moses Moses」が追加されたアルバム
なんですね。

ちなみに私が持っているアルバム「Blood
Of The Saint」は、2004年にSilver
Kamel Audioというレーベルからリリース
されたCDで、全13曲入りのアルバム
です。
おそらく同じ曲が入っているようなんです
が、曲によっては「Mr. Wicked Man」と
そのダブ「Wicked Man Dub」に分かれた形
で収められています。
今回は安価な事とジャケットが気に入った
ので買ってしまいましたが、このCDを
持っていれば買う必要の無いアルバムだと
思います。

今回手に入れたのは中古のLPで、6百円
半ばというかなり安価なアルバムでした。
ただひとつ残念な事があって、Side Aの最後
の曲「Stop The Fussing And Fighting」は、
レコードの溝の上に中央のシールがはみ出して
貼られていて、曲を最期まで聴く事が出来ま
せんでした。
何とかシールが剥がせないか試してみました
が、うまくいきませんでした。

ジャマイカのLPの場合どうもそういうところ
がすごく雑で、たいていズレて貼られている
んですが、溝にまでかかって貼られているのは
さすがに初めてでした。
ここまで来ると「さすが!ジャマイカ人!」
と、そのルーズさに感心するしかありま
せん(笑)。

ジャマイカのこうしたマイナーなLPの場合、
ジャケットが汚れているのはもう当たり前、
レーベルも必ずと言って良いほどズレて貼ら
れています。
もう日本の隅々まで汚れが無いという考え方
は、この人達には通用しないんですね(笑)。
もうLPも今は生産されておらず、そんな
LPでも手に入ればありがたい、そう考え
ないとジャマイカのアルバムは集められま
せん。

でもここまでズレて貼れるのは逆にスゴイ!
そう考えた方が幸せなんですね(笑)。

Side Aは3曲、Side Bは3曲の全6曲。
すべて前半は歌後半はダブのショーケース・
スタイルの楽曲が収められています。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Produced and arranged by: Michael Chin and Tyrone Hailey
for Corner Stone Records
All tracks recorded at Channel One Studio, by Soljie
Musicians: Earl 'Chinna' Smith and The Soul Syndicate Band
Voiced and Mixed by: Scientist at King Tubby's Studio, Kingston, Jamaica

Art Work by: Clement Hailey

となっています。

プロデュースはCorner Stone Recordsの
Michael ChinとTyrone Hailey、レコーディング
はChannel Oneで行われ、バックはギタリスト
のEarl 'Chinna' Smithが率いるバック・バンド
The Soul Syndicate Bandが担当し、レコー
ディング・エンジニアはSoljie、声入れと
ミキシングはKing Tubby'sで行われ、ミキシン
グ・エンジニアはScientistが担当しています。

このアーリー・ダンスホールのアルバムとして
は、悪くない布陣だと思います。
特にScientistはこのアーリー・ダンスホールの
活躍がもっとも目覚ましい人なんですね。

さて今回のアルバムですが、このPhillip
Fraserはこのジャマイカ国内でのみで、ダンス
ホールの時代に活躍したような人で、そうした
ミュージシャンならではの、等身大の良さの
ある人なんですね。
彼のアルバムを見てみると、自身のレーベル
Razer SoundsやRoots Tradition、そして今回
のCorner Stoneと、弱小レーベルでの健闘が
光る人なんですね。

そうした人が生き残っていくためには、少ない
予算の中で曲をやり繰りしていくしかあり
ません。
今回のも自分の曲のショーケース・ヴァー
ジョンで、アルバムを作っているんですね。
ある意味すごくみみっちぃヤリ方なんです
が、バックがThe Soul Syndicate Bandで
ミックスがScientistという、この時代なら
ではの恵まれた布陣なので内容は悪くあり
ません。
むしろジャマイカの人達に愛された音楽が
刻まれたアルバムは、今の時代になると
とても貴重なんですね。

Side Aの1曲目は「Writing On The Wall」
です。
イントロがBob Marleyの「No Woman No Cry」
にちょっと似ている曲です。
Phillip Fraserらしい艶のある、泣きの
ヴォーカルが魅力。
後半のScientistらしいドンシャリの効いた
ダブも悪くありません。

Phillip Fraser - Writing on the Wall


2曲目は表題曲の「Blood Of The Saints」
です。
リディムはSound Dimensionのロックステディ
の名曲「Real Rock」です。
まさにこのPhillip Fraserを代表する1曲
です。
このダンスホールの時代になると、こうした
ロックステディの曲がリディムとしてよく
利用されるようになるんですね。
Phillip Fraserのヴォーカルと、特徴的な
メロディがうまくマッチしています。
後半はトビ音がアクセントになった、ベース
の効いた渋いダブになっています。

Phillip Fraser - Blood of the Saint


リズム特集 Real Rock (リアル・ロック)

3曲目は「Stop The Fussing And Fighting」
です。
掛け合いのように入るトースティングは
Dillingerです。
今回のアルバムには書いてありませんでした
が、CDには記載されています。
こちらもドスンと落とすこのアーリー・ダンス
ホールらしいワン・ドロップに乗せた曲です。
かなりエコーの効いたヴォーカルとトース
ティングが、ヤバさをうまく演出しています。
後半は打ち込むようなドラムが効いたダブ。
書いたようにレコードの溝にシールがかかって
いて、最期まで聴けないのが残念なところ。
ただScientistらしさがよく出たダブだと思い
ます。

Dillinger & Phillip Fraser - Stop the fussing and fighting


Side Bの1曲目は「Bad Boys」です。
ドラマチックなイントロから、感情をこめた
ヴォーカルが魅力的な曲です。
攻撃的なミリタント・ビートに陰影のある
オルガンとピアノがうまく出入りした曲です。
後半はベースを軸にした演奏に、ピアノと
オルガン、エフェクトでうまくメリハリを
付けたダブ。

2曲目は「Mr. Wicked Man」です。
こちらも陰影のあるメロディに乗せた曲です。
このアーリー・ダンスホールらしい湿り気の
あるメロディに乗せた、Philip Frazerの
ヴォーカルが素晴らしいです。
後半はエコーとドンシャリの効いたダブ。

Philip Frazer - Mr Wicked Man (Extended) - 12inch / Freedom Sounds


3曲目は「Moses Moses」です。
リディムはKen Bootheのロックステディの
ヒット曲「When I Fall In Love」です。
こちらもロックステディのリズムうまく再生
しています。

ざっと追いかけて来ましたが、やはりこの
アーリー・ダンスホールのヴォーカリストの
ひとりとして、このPhillip Fraserは覚えて
おきたい人なんですね。
またこの時代のScientistのミックスも、
アーリー・ダンスホールの魅力のひとつなん
ですね。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Phillip Fraser
○アルバム: Blood Of The Saint Vintage: Phillip Fraser Showcase 79-80-81-82
○レーベル: Corner Stone
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: (1982)

○Phillip Fraser「Blood Of The Saint Vintage:
Phillip Fraser Showcase 79-80-81-82」曲目
Side A
1. Writing On The Wall
2. Blood Of The Saints
3. Stop The Fussing And Fighting
Side B
1. Bad Boys
2. Mr. Wicked Man
3. Moses Moses