今回はJa-Man All Starsのアルバム

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「In The Dub Zone」です。

Ja-Man All Starsは文字通り70年代の
ルーツ・レゲエの時代に活躍したレーベル
Ja-Man Recordsのオールスター・バンド
という意味です。
このJa-Man Recordsは今回のプロデューサー
であるDudley 'Manzie' Swabyという人が
主催していたレーベルのようで、彼はこの
レーベルの他にManzieも主催していたよう
です。

ネットのDiscogsにはこのJa-Man All Stars
のメンバーとして、次のような名前が書かれて
いました。

メンバー:
'Deadly' Headley Bennett, Ansel Collins, Bertram 'Ranchie' McLean,
Bobby Ellis, Calvin 'Bubbles' Cameron, Eric Lamont,
Gladstone Anderson, Lowell Dunbar, Michael Richards,
Radcliffe 'Dougie' Bryan, Tommy McCook, Uziah 'Sticky' Thompson

この70年代のレゲエに詳しい人は知っている
と思いますが、このメンバーはほとんどChannel
Oneのハウス・バンドThe Revolutionariesや
Bunny Leeのハウス・バンドThe Aggrovatorsと
ほとんどメンバーが同じようなものなんですね。

実はこの70年代ぐらいのレゲエのプロデュー
サーは、スタジオを持たないフリー・ランスの
プロデューサーが多く、レコードを作る際には
スタジオをレンタルし、スタジオ・ミュージ
シャンと歌手を集めて録音して、プレスすると
いう作り方が一般的でした。
つまりミュージシャンや歌手の専属契約は
あまりなく、日雇いのようなものだったん
ですね。
ミュージシャンや歌手はその録音の手数料を
貰い、儲けも損もすべてプロデューサーのもの
というのが一般的だったようです。

バンドはその時に集まれるメンバーで録音する
という、「プラスティック・バンド」の形式が
一般的でした。
その為にミュージシャンや歌手を続けるには
常にレコーディングしなければならず、スタ
ジオ前にいつもたむろして、プロデューサー
から声がかかるのを待っていた状態だった
ようです。
その為バンド名は違っていても、同じような
メンバーが常に入っている事になっているん
ですね。

基本的にこの時代のバンド名の違いは、
どのプロデューサーが録音したかという事で
決まっているんですね。
Channel OneのHoo-Kim兄弟の録音だと
The Revolutionaries、Bunny Leeの録音だと
The Aggrovators、Joe Gibbsの録音だと
The Professionalsと名前は違っても、同じ
ようなメンバーが重複して入っているのは
その為です。

ただサウンドが皆一緒かというと、そうでも
ないんですね。
優秀なスタジオ・ミュージシャンだった当時
の人達は、雇い主の好みによって多少サウンド
を使い分けていたところが感じられます。
例えばChannel OneのHoo-Kim兄弟の
The Revolutionarieの演奏の時は、ドラマー
のLowell 'Sly' Dunbarをリーダーとして、
彼が開発した攻撃的な「ミリタント・ビート
(別名ロッカーズ・ビート)」をウリにした
演奏をしています。
ところがこれがBunny LeeのThe Aggrovators
になると、リーダーはRobbie Shakespeareと
書かれていたりする事があり、Tommy McCook
などのブラスを中心とした演奏のアルバムを
多く出していたり、74~75年の一時期だけ
流行した、ドラマーのCarlton 'Santa' Davis
が開発したといわれる「フライング・シンバル」
というビートの曲が多かったりと、明らかな
使い分けが感じられるんですね。

話が長くなりましたが、今回のアルバムは
2003年にレゲエ・リイシュー・レーベル
Blood & Fireからリリースされた、Ja-Man All
Starsの2枚のダブ・アルバムとシングル盤の
B面に収められたダブ(ヴァージョン)を
集めたコンピュレーション・アルバムです。
このJa-Man AllstarsはDudley 'Manzie' Swaby
が主催していたもうひとつのレーベルManzie
から、1977年に「Ja-Man Dub」(全9曲)、
80年に「King's Dub」(全10曲)という
2枚のダブ・アルバムをリリースしています。
その全19曲にシングル盤のB面4曲をプラス
した、全23曲入りのアルバムが今回の
アルバムです。

全23曲で収録時間は73分35秒。
3~11曲目までの9曲が1977年の
「Ja-Man Dub」からの曲、14~23曲目
までの10曲が80年の「King's Dub」
からの曲で、残りの4曲がシングル盤の
B面からの曲です。
ちなみに「Ja-Man Dub」と「King's Dub」共に
曲順は、元のアルバム通りです。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

All tracks arranged & produced by Dudley Swaby

Original mixed by Crucial Bunny, Maxie, Soldgie Hamilton,
Ernest Hookim, Ranking Barnabas, Dudley Swaby at Channel One;
King Tubby at King Tubby's Studio [tracks 1&2 only]

Reissure produced by Steve Barrow
Annotated by Dudley 'Manzie' Swaby

Designed by: Nadine Fleischer

Channel One photographs by: Adrian Boot

Musicians include:
Drums: Lowell 'Sly' Dunbar, Mikey 'Boo' Richards,
Leroy 'Horsemouth' Wallace, Eric 'Fish' Clarke (tracks 1&2 only)
Bass: Ranchie McLean, Robbie Shakespeare,
Errol 'Flabba' Holt (tracks 1&2 only)
Guitar: Dougie Bryan, Eric 'Bingy Bunny' Lamont
Keyboards: Ansel Collins, Gladstone Anderson, Theophilus Beckford
Trumpet: Bobby Ellis
Alto Sax: Herman Marquis, Headley Bennett
Tenor Sax: Tommy McCook
Trombone: Don Drummond Jr., Calvin Cameron
Percussion: Noel 'Scully' Simms, Uziah 'Sticky' Thompson

となっています。

Sly & RobbieのほかLeroy 'Horsemouth' Wallace
やRanchie McLean、Gladstone Andersonなど
70年代から活躍するメンバーのほか、'Flabba'
HoltやBingy Bunnyといった80年代にRoots
Radicsなどで活躍した人達も入っています。
ホーンもBobby EllisにHerman Marquis、
Deadly Headley Bennett、Tommy McCook、
Don Drummond Jr.(Vin Gordon)となかなか。

さて今回のアルバムですが、ではJa-Man All
Starsとしての演奏どうか?というと、
攻撃的なミリタント・ビートのスタイルで、
The Revolutionarieに近い演奏スタイルと
言えると思います。
特にこのアルバムの頭の2曲はThe Heptones
の「Pretty Looks Isn't All」のリディムを
使った曲がセレクトされていますが、同じ
リディムを使ったThe Revolutionariesの
「Marijuana」とすごく似ているんですね。
その中でも2曲目「Dangerman Version」は、
The Revolutionariesの方の頭にJah Thomas
のトースティングが入っているぐらいの違い
なんですね(笑)。
意外とちょっとだけ変えて、違う曲にして
いるというのあるかも…。

まあ、そういう部分はあるものの、この70
年代のルーツ・レゲエの時代だからこそ聴ける
音楽が、ここにはあります。
このダブという音楽は70年代に流行ったもの
の、80年代になると徐々にジャマイカでは
下火になり、あまり作られなくなってしまい
ますが、こうした実験的なパワーがレゲエと
いう音楽を他の音楽と別格の音楽にしたのは
事実で、今の時代に聴いても優れた素晴らしい
音楽なんですね。

ダブ - Wikipedia

全体にはベースを軸とした少し地味目のダブ
ですが、その内容は悪くないと思います。

1~2曲目まではThe Heptonesの「Pretty
Looks Isn't All」のリディムが使われて
おり、シングル盤のB面の曲が収められて
います。

1曲目は表題曲ともいえる「Dub Zone」です。
書いたようにリディムはThe Heptonesの
「Pretty Looks Isn't All」。
こちらはバイクの排気音のようなエフェクト
から始まる曲です。
Jah Stitchの「Danger Zone Chapter 3」の
B面に収められたダブのようです。
Robbie Shakespeareと思われるベースを軸
とした、シブ目のダブです。

Ja Man All Stars - Dub Zone + Dangerman Version


2曲目は「Dangerman Version」です。
こちらも「Pretty Looks Isn't All」。
The Rebelsというグループの「Dangerman」
という曲のB面のダブのようです。
書いたようにホーンのサウンドは、The
Revolutionariesの「Marijuana」と聴き分け
が出来ないほど似ています。
ロックステディの名リディムのダブワイズ
がタマリません。

3~11曲目までは77年の「Ja-Man Dub」
の曲が順番通りに収められています。

3曲目は「Herb Cutter」です。
こちらはThe Heptonesの「Pretty Looks
Isn't All」を発展させたようなリディムで
ある、John Holtの「Love I Can Feel」が
使われています。
曲のイントロでは別のリディムも使われて
いて、ちょっと複雑な曲です。
重いベースを軸に、ミリタント・ビートに
乗せた華やかなホーンが魅力的な曲です。

Ja-Man All Stars - Herb Cutter


リズム特集 Love I Can Feel (ラブ・アイ・キャン・フィール)

4曲目は「Dread Nut Chalice」です。
リリックなピアノのメロディから、ベースを
中心にパーカッションのリズムが心地良い曲
です。

5曲目は「Well Black」です。
こちらも踊るようなピアノのメロディから、
ベースを中心としたシブ目のダブ。

6曲目は「Fire Bun」です。
明るいピアノのメロディから、ズンと腹に
響くようなベースを中心としたダブです。
エコーの効いたパーカッションも魅力。

Ja Man All Stars - Fire Burn


7曲目は「Half Ounce」です。
リディムはErrol Dunkleyで知られる「Movie
Star」。
華やかなホーンのダブワイズしたイントロから、
ベースの重いリズムに心地良いミリタント・
ビート、ヘヴィーで魅力的な曲です。

Ja Man All Stars - Half Ounce


8曲目は「Big Spliff」です。
ネットのDiscogsで調べるとリディムはCornell
Campbell & The Eternalsの「Queen Of The
Minstrel」と出て来たのですが、聴いた印象
ではこちらもThe Heptonesの「Pretty Looks
Isn't All」のリディムのような…。
ベースを軸とした演奏がすごくイイです。

Ja Man All Stars - Big Spliff


9曲目は「Rasta Feeling」です。
リディムはThe Heptonesの「Tripe Girl」。
印象的なオルガンの陰のあるメロディが、
とても魅力的な曲です。

Ja Man All Stars - Rasta Feeling


10曲目は「Bush Weed」です。
リディムはHorace Andyの「Fever」。
ちょっと味のあるメロディに、重いベースの
サウンドが冴えます。

11曲目は「Don't Get Crazy」です。
リディムは「General」としてダンスホール期
に流行したリディムですが、オリジナルは
The Heptonesの「The Heptones」。
ベースを軸に、オルガンが華やかな味付けを
しています。

リズム特集 General (ジェネラル)

12~13曲目はシングル盤のB面のダブが
収められています。

12曲目は「Weak Heart Drop」です。
Neville Tateという人の「Lightening Clap」
という曲のB面のダブのようです。
オルガンのメロディからベースを軸とした
ダブ。

13曲目は「Blood Version」です。
こちらはBlazing Fireという人(グループ?)
の「Blood Donza」という曲のB面のダブの
ようです。
というかJunior Bylesの「Remember Me」の
リディムといった方が解り易いかもしれま
せん。
寂寥感のあるメロディを、タフなベースを
軸に演奏しています。

残りの14~23曲目までは、80年の
「King's Dub」の曲が収められています。
こちらもベースを軸としたダブが多いです
が、時代を反映してか華やかな感じの
エフェクトが入っているのが印象的。

14曲目は「King's Dub」です。
ズシッと来るベースを軸としたダブ。
合間よく入るダブワイズしたホーンに
オルガンがグッド。

15曲目は「Nuclear Bomb」です。
リディムはThe Jamaicansの「Ba Ba Boom」。
こちらはハデ目のエフェクトのオープニング
に、ちょっとユーモアのある曲調が魅力。

Ja Man All Stars - Nuclear Bomb


リズム特集 Ba Ba Boom (バ・バ・ブーム)

16曲目は「Poor Man Skank」です。
華やかなホーンから心地良いベースのメロディ、
パーカッションにダブワイズもイイ感じの曲
です。

Ja-Man All Stars - Poor Man Skank


17曲目は「Censemania Dub」です。
リディムはThe Heptonesの「Get In The
Groove」。
ホーンのメロディと華やかなエフェクト、
それを支えるようなか嫉妬したベースが
印象的。

リズム特集 Get In The Groove/Up Park Camp (ゲット・イン・ザ・グルーヴ/アップ・パーク・キャンプ)

18曲目は「Hotter Claps」です。
こちらはギターのメロディにヴォーカル、
ピュンピュンとしたエフェクトも効いたダブ。

19曲目は「East Man Skank」です。
リディムはLone Rangerの「Answer」リディム
として知られる曲ですが、オリジナルは
Slim Smithの「Never Let Go」です。
ホーンも入って華やかな印象の曲です。

リズム特集 Answer (アンサー)

20曲目は「West Man Skank」です。
リディムはRay Iの「Weatherman Skank」。
浮遊感のあるオルガンにトビ音満載のダブです。

21曲目は「Higher Ranking Dub」です。
リディムはThe Heptonesの「Love Me Always」。
華やかなホーンに、エフェクトもさらに
華やかさをプラスしているダブです

リズム特集 Love Me Always (ラブ・ミー・オールウェイズ)

22曲目は「Hot Steppers Dub」です。
リディムはHorace Andyの「Skylarking」。
初期のレゲエの名曲のひとつですが、こちら
はベースを中心にド渋なダブにまとめて
います。

Ja Man All Stars - Hot Steppers Dub


23曲目は「Downtown Rubadub」です。
最後はちょっとは泣かかなホーンが入るダブ
でまとめています。
こちらもズンと来るベースが魅力的。

ざっと追いかけて来ましたが、書いたように
この70年代という時代には資金を貯めて
スタジオをレンタルし、自分でアルバムを作る
独立系のプロデューサーがけっこう居たん
ですね。
このDudley 'Manzie' SwabyというJa-Manと
Manzieという2つのレーベルを持っていた
プロデューサーもそうしたプロデューサーの
ひとりと思われ、努力してレゲエの歴史に
Junior Bylesの楽曲などいくつかの成果を
残しているんですね。

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Various ‎– Junior Byles & Friends - 129 Beat Street - Ja-Man Special 1975-1978 (1998)

それは小さな成果だったかましれませんが、
今の時代になると、レゲエの歴史にとって
とても大切な成果だったんですね。
そういうプロデューサーの作った今回の2枚
のアルバムは、ベースを中心とした少し地味
なアルバムだったかもしれません。
ただそこには少ない予算の中でも少しでも
良い音楽をを作ろうという、レゲエを愛する
人間の想いが目いっぱい詰め込まれたアルバム
なんですね。
その想いは人の気持ちを打つ力を、秘めている
んですね。

ある意味Blood & Fireというレーベルは、
レゲエに対する想いが強すぎて失敗した
レーベルです。
ただその想いが強過ぎるゆえに、出せる
アルバムというのもあるんですね。
多くの人はそのアルバムを地味と言ったり
するかもしれません。
ただ聴く人が聴けばその良さが解る、そんな
アルバムがあるのかもしれません。

多くの人が良いというものは確か良いの
でしょう。
ただ少数の人が良いというものの中にも、
未来を予見したり、これからに繋がったり、
ジワっとその良さが解ってくるようなものが
あるのかもしれない…。
Blood & Fireというレーベルはそうした
危険な領域をあえて泳いだからこそ、今も
私たちの心に残るレーベルであり続けて
います…。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Ja-Man All Stars
○アルバム: In The Dub Zone
○レーベル: Blood & Fire
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2003

○Ja-Man All Stars「In The Dub Zone」曲目
1. Dub Zone
2. Dangerman Version
3. Herb Cutter *
4. Dread Nut Chalice *
5. Well Black *
6. Fire Bun *
7. Half Ounce *
8. Big Spliff *
9. Rasta Feeling *
10. Bush Weed *
11. Don't Get Crazy *
12. Weak Heart Drop
13. Blood Version
14. King's Dub +
15. Nuclear Bomb +
16. Poor Man Skank +
17. Censemania Dub +
18. Hotter Claps +
19. East Man Skank +
20. West Man Skank +
21. Higher Ranking Dub +
22. Hot Steppers Dub +
23. Downtown Rubadub +

* Tracks 3-11 originally issued as "Ja-Man Dub" LP 1977
+ Tracks 14-23 originally issued as "King's Dub" LP 1980
Tracks 1,2,12,13 originally issued as b-sides of Ja-Man or Manzie 45rpm singles