今回はTapper Zukieのアルバム

tappa_zukie_04a

「MPLA」です。

Tapper Zukie(Tappa Zukie)はRanking Dread
などとともに「第2世代」のディージェイと
して知られている人です。
この「第2世代」のディージェイ特徴として
は、U Royなどの「第1世代」のディージェイ
と較べて、より政治性が強い事があげられます。
当時のジャマイカは極貧国のひとつで、政治
抗争も激しく、当時の2大政党ジャマイカ
労働党 (JLP)と人民国家党 (PNP) の間で銃撃
戦が起きるほど荒れた国だったんですね。
このTapper ZukieとRanking Dreadは、
ジャマイカ労働党 (JLP)の熱烈な支持者と
して有名だったらしいです。
彼らはディージェイなので、銃ではなく言葉
(トースティング)で政治闘争をしていたん
ですね。
Bob Marleyなどにも見られるように、武器
ではなく言葉でプロパガンダを行うという
のは、世の中を変える有効な手段のひとつ
なんですね。

その彼Tappa Zukieの思想性はジャマイカだけ
に留まらず、多くのパンクスなどの社会に
不満を持つ人々にも影響を与えました。
当時「ニューヨーク・パンクスの女王」と
呼ばれたPatti Smithも彼に影響を受けたひとり
で、彼を自分のステージのオープニング・
アクトに起用したほどでした。
さらにツアーを共にした彼女はTapper Zukie
を師と仰ぎ、トースティングの手ほどきを
受けたと言われています。
さらにはあのSex PistolsのJohn Lydonも
彼を絶賛したとも言われています。
今回はそれだけパンクスにまで影響を与えた
Tapper Zukieという人の紹介です。

Tapper Zukie - Wikipedia

今回のアルバムは1976年にUKのKlik
というレーベルからリリースされた、彼の
セカンド・アルバムです。

ネットの情報などをまとめると、彼は
プロデューサーのBunny Leeに認められ、UK
に送られて修業したのちにジャマイカに戻り
ファースト・アルバム「Man a Warrior」
(73年)をリリース。
その後Bunny Leeと争いが起きますが和解。
その和解した後に出したのが、このアルバム
なんだとか。
Bunny Leeと和解した時にもらった数曲が
入っているのが、今回のアルバムなんだ
そうです

全10曲で収録時間は約33分。

詳細なミュージシャンの表記はありません。

Produced by Tapper Zukie

Photo: Charles Whittier
Sleeve: Cooke Key

という文字があります。

ほとんどの曲はいわゆる「Bunny Lee音源」と
思われます。
なので多くの曲のバックはBunny Leeのハウス・
バンドThe Aggrovatorsが担当しているものと
思われます。
またネットの情報によると、数曲のCannel One
の音源もあるようです。
そちらはCannel Oneのハウス・バンド
The Revolutionariesか?
まあ、どちらのバンドも、同じようなメンバー
が参加していますが…(笑)。

さて今回のアルバムですが、彼の代表作の
ひとつともいえるアルバムで、内容は悪く
ありません。
その攻撃的な内容は、多くのパンクスからも
支持されたと言われています。
いわば彼の出世作とも言われるアルバムなん
ですね。

使われている曲は「Bunny Lee音源」で
ルーツ・レゲエの時代のおなじみのナンバー
が多いですが、このアルバムではその聴き易さ
が効果的に感じます。
比較的スローで明かるい曲に、辛辣で攻撃的
なトースティングという対比がウケたという
側面があると思います。
深刻な事を暗く憂鬱に言われるよりは、深刻
な事を明るくサラッと言われる方が胸に響く、
そうした心理的効果を当時のパンクスたちは
受け止めたんじゃないでしょうか。

1曲目は「Pick Up The Rockers」です。
ネットのRiddimguideによるとリディムは
The Royalsの「Pick Up The Pieces」となって
いました。
ちょっと違う気もしますが、明るくリラックス
した空気感が魅力的。

Tappa Zukie - Pick Up The Rockers


リズム特集 Pick Up The Pieces (ピック・アップ・ザ・ピーシズ)

2曲目は表題曲の「M.P.L.A.」です。
リディムはRoy Richardsの「Freedom Blues」。
「M.P.L.A.」とはアンゴラの政党「アンゴラ
開放人民運動」の事で、その独立運動を支援
する歌のようです。
こちらはChannel OneのThe Revolutionaries
の有名なアルバム「Revolutionary Sounds」
(通称 白ゲバラ)にも同タイトルのダブが
収められている曲です。

revolutionaries_04a
The Revolutionaries ‎– Revolutionary Sounds (1976)

そのThe Revolutionariesをバックに、Tapper
Zukieの滑らかなトースティングが冴えます。

リズム特集 Freedom Blues (フリーダム・ブルース)

アンゴラ解放人民運動 - Wikipedia

3曲目は「Don't Get Crazy」です。
リディムはThe Melodiansのロックステディ
のヒット曲「Don't Get Weary」。
いきなり会話のリラックスした雰囲気から
始まる曲です。
方の力が抜けたトースティングが心地良い
1曲。

4曲目は「Go De Natty」です。
リディムはCornell Campbellの「Searching
For You」。
Cornell Campbellのソフトなファルセットに
乗せた、Tapper Zukieノアかるトースティング
が冴えます。

Tapper Zukie - Go De Natty (Original 1976)


5曲目は「Stop The Gun Shooting」です。
リディムはHorace Andyの「Skylarking」。
タイトルから見て銃規制を訴えた曲か?
Studio Oneの名リディムで気持ち良さそうに
トースティングしています。

6曲目は「Ital Pot」です。
リディムはBurning Spearの「Creation
Rebel」。
華やかなホーンが効いたリズムから、エコー
の効いたTapper Zukieのトースティングが
魅力。
Bunny Leeの曲によく見られる「フライング・
シンバル」のビートを使用した曲です。

Tapper Zukie M P L A 76 06 Ital pot


7曲目は「Marcus」です。
こちらはJohnny Clarkeの歌う「Poor Marcus」
のリディム。
こちらも「フライング・シンバル」のビート
で、シャリシャリいうドラミングが特徴的。
エコーのかかったトースティングにかぶる
ように入って来るホーンやJohnny Clarkeの
ヴォーカルが、ディープな世界を作り上げて
います。

8曲目は「Chalice To Chalice」です。
リディムはThe Uniquesの「Give Me A
Love 」。
こちらはいわゆる「ガンジャ賛歌」のよう
です。
もちろんマリファナは日本では違法なので、
吸ってはいけません。

9曲目は「Don't Deal With Babylon」です。
こちらは元のリディムが解りませんでした。
ベースを軸としたちょっとゴツい曲に乗せた
ダブワイズしたトースティングです。

Tappa Zukie - Don't Deal With Babylon


10曲目は「Freedom」です。
リディムはJunior Rossの「We Were Slaves」。
ダブワイズした曲にちょっとフラフラした
トースティングが面白いです。

Tapper Zukie M P L A 76 10 Freedom


ざっと追いかけて来ましたが、当時のパンクス
も魅了したというアルバムで、内容的にも
なかなか面白いアルバムだと思いました。

あのSex Pistolsもレゲエをよく聴いていた
という事は知られていますが、彼らもただ
レゲエをユルい音楽として聴いていた訳では
なく、そのレゲエに宿るハード・コアな
メッセージを聴いていたのかもしれません。
音楽的にはかなり違っていても、レゲエと
パンクというのは階級社会への不満という
共通のテーマがあり、当時は「兄弟のような
音楽」という側面があった事は見逃せません。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Tapper Zukie
○アルバム: MPLA
○レーベル: Virgin
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1976

○Tapper Zukie「MPLA」曲目
1. Pick Up The Rockers
2. M.P.L.A.
3. Don't Get Crazy
4. Go De Natty
5. Stop The Gun Shooting
6. Ital Pot
7. Marcus
8. Chalice To Chalice
9. Don't Deal With Babylon
10. Freedom

●今までアップしたTappa Zukie関連の記事
〇Tappa Zukie「Living In The Ghetto」
〇Tappa Zukie「Raggamuffin」
〇Tappa Zukie「Tappa Zukie In Dub」
〇Tappa Zukie「Tapper Roots」
Tapper Zukie「Escape From Hell」
〇Tapper Zukie「Raggy Joey Boy」
〇Tapper Zukie「The Man From Bozrah」