今回はVarious(オムニバス)もののアルバム

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「Studio One Dancehall: Sir Coxsone In
The Dance: The Foundation Sound」です。

まずは今回のアルバムの元になっている
Studio Oneというレーベルについて書いて
おきます。
Studio Oneは主催者のC.S. Doddを中心に、
ジャマイカの音楽界をスカ→ロックステディ
→レゲエとけん引し続けたレーベルです。
質の高い音楽性から「レゲエのモータウン」
という、言い方をされる事があります。

そうしたジャマイカに質の高い音楽を提供し
続けてきたStudio Oneですが、70年代半ば
以降はChannel Oneなどの他のレーベルに
押されて失速し、80年代半ばには閉鎖に
追い込まれています。

レーベル特集 Studio One (スタジオ・ワン)

今回のアルバムは2014年にSoul Jazz
Recordsからリリースされた、Studio One
のダンスホールの楽曲を集めたコンピュレー
ション・アルバムです。
ジャマイカで本格的にダンスホール・レゲエ
のブームが起こるのは、79年にTechniques
レーベルからRanking Slacknessのアルバム
「Slackest LP」やこのStudio Oneから
Michigan & Smileyのアルバム「Rub-A-Dub
Style」が発売されてからなのですが、今回
のアルバムでゃもっと広義に捉えていて、
そのヒット・リディムなどの元の曲も含んで
いるようです。

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Ranking Slackness ‎– Slackest LP (1979)

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General Smiley & Papa Michigan ‎– Rub-A-Dub Style (1979)

ちなみに今回のアルバムにはそのMichigan &
Smileyの楽曲は収められていません。

書いたように70年代半ばを過ぎるとStudio
Oneは他のレーベルに押されて勢いを失い、
主催者のC.S. Doddも経営に情熱を失っていた
といわれています。
そのStudio Oneを実質的に仕切っていたのが、
エンジニアのSylvan Morrisだったんですね。
彼はStudio Oneの持っていたロックステディ
の時代の音源をうまく利用して、自信を
Dub Specialistと名乗ったダブ・アルバムを
制作したり、Johnny OsbourneやSugar Minott
というアーティストの古い曲に新しいリリック
を乗せた楽曲を制作したりして、Studio One
を何とか支える仕事をしたんですね。

例えばSugar MinottのStudio One時代の曲で
「Vanity」という曲があります。
この曲はダンスホールの時代に「Vanity
リディム」とした楽曲ですが、実はオリジナル
は1967年のAlton EllisのStudio Oneから
のヒット曲「I'm Just A Guy」です。

I'm Just A Guy (アイム・ジャスト・ア・ガイ)

つまり10年ぐらい前の曲を、新しい歌手に
歌わせるということをしているんですね。
Sugar MinottはこのStudio Oneから70年代
の後半にデビューしていますが、こうした
60年代のStudio Oneの古い楽曲をリメイク
した曲による、ちょっと変わったデビュー
だったんですね。

前述したMichigan & Smileyなども、そうした
古い楽曲を新しいダンスホール・レゲエに
生かした楽曲でデビューしています。

それは窮余の策でそしてStudio Oneの最後の
輝きという事になってしまうのですが、それ
でもダンスホール・レゲエにまで影響を与え
続けたStudio Oneというレーベルは、レゲエ
を聴く人間には忘れ得ぬ愛すべきレーベル
なんですね。

今回はそうしたStudio Oneの魅力が収めら
れたアルバムです。

全18曲で収録時間は約79分。

詳細なミュージシャンの表記はありません。

書いたように70年代後半にStudio Oneは
10年以上前のロックステディの時代の
音源をまた再利用しているんですね。
そういう事もあって今回のアルバムでは
ロックステディから初期レゲエの時代の
音源が多く使われており、当時のバック・
バンドだったSound DimensionやSoul
Vendorsなどの音源も多く使われています。

さて今回のアルバムですが、ある意味広義
でのダンスホール・レゲエという事になり
ますが、その踊るためのサウンドは古くも
あり、新しくもあり、とても面白いんです
ね。
これがStudio Oneの最後の輝きであったと
しても、その輝きはやはり特別な輝きなん
ですね。

1曲目はErnest Wilsonの「Why Oh Why」
です。
ダンスホールを感じさせる、ホーンに乗せた
甘い歌いぶりが印象的な曲です。

Ernest Wilson - Why Oh Why


2曲目はJohnny Osbourneの「Lend Me The
Sixteen」です。
リディムはSound Dimensionの「Real Rock」。
ロックステディの時代から活躍するJohnny
Osbourneですが、一番活躍したのは80年代
のダンスホールの時代という人なんですね。
ベテランらしい遊び心のある、歌いこなしが
感じられる1曲です

リズム特集 Real Rock (リアル・ロック)

3曲目はWindel Hayeの「Haunted House」
です。
リディムはSlim Smith & Uniquesの「My
Conversation 」。
ロックステディの名リディムを楽しい
トースティングで聴かせます。
このアルバムでも2番目に長い7分37秒
の曲で、5分を超えたあたりからはダブの
ディスコ・ミックス・スタイルの曲になって
います。
このスタイルもダンスホール特有のものです。

Windel Haye - Haunted House


リズム特集 My Conversation (マイ・カンバセーション)

4曲目はGreen Tea & Chassyの「Ghetto Girl」
です。
リディムはTechniquesの「My Girl」。
ふぁリセット・ヴォイスのヴォーカルに
ディージェイが乗った、勢いのある1曲
です。

5曲目はJohnny Osbourneの「Time A Run Out」
です。
リディムはJackie Mittoo & Soul Vendorsの
「Hot Milk」。
ギターとオルガンを中心とした、独特の
ドラッギーなリズムがソソる1曲です。
後半はJackie Mittooのオルガンを中心とした
ダブのディスコ・ミックス。

Johnny Osbourne Time A Run Out - Studio One 12


リズム特集 Hot Milk/Murderer (ホット・ミルク/マーダラー)

6曲目はLone Rangerの「Noah In The Ark」
です。
リディムは1曲目のErnest Wilsonの「Why Oh
Why」です。
70年代後半に登場したLone Rangerですが、
77年にStudio Oneから彼のディージェイと
ダブが収められたアルバム「On The Other
Side Of Dub」でデビューしています。

The Lone Ranger ‎– On The Other Side Of Dub (1977)

こちらも昔の楽曲を生かしたトースティングが
味わえます。

7曲目はDevon Russellの「Thanks And
Praise」です。
リディムはBaba Brooksの「Shank I Sheck 」。
リズムカルなメロディを、ベテラン・シンガー
らしい歌いぶりでこなしています。

リズム特集 Shank I Sheck (シャンク・アイ・シェック)

8曲目はBrentford Disco Setの「Rebel
Disco」です。
このアルバムの中で1番長い7分54秒にも
及ぶインスト・ナンバーです。
キビキビと歯切れの良いリズムに乗せたホーン
が、良い味を出している曲です。

9曲目はDoreen Schafferの「I Don't Know
Why」です。
リディムはErrol Dunkleyで知られる「Movie
Star」。
女性シンガーのネットリと艶っぽい歌いぶり
が、ソソる1曲です。
こちらは2分を過ぎたあたりでダブ、最後の
50秒ぐらいにまたヴォーカルが入るという
珍しいディスコ・ミックスです。

Doreen Schaffer - I Don't Know Why


10曲目はSlim Smithの「Lonely Lover」
です。
ホーンに乗せたロックステディ時代の
名ヴォーカリストの1曲。

11曲目はField Marshall Hayeの
「Roots And Herb Style」です。
リディムは80年代に定番リディムとなる、
Techniquesの「Stalag」です。
こちらはレア・ディージェイによる1曲。

Field Marshall Haye - Roots & Herb Style (Studio One/ 7 inch)


リズム特集 Stalag (スタラグ)

12曲目はDJ Dawn & The Ranking Queensの
「Peace Truce Thing」です。
リディムはAlton Ellisの「I'm Still In
Love With You」。
この女性コンビはこの1曲のみしか出て
来ません。
Joe GibbsからデビューしたAlthea & Donna
を思い起こさせるようなコンビですが、
こちらの方が歌がウマい印象です(笑)。
こちらの7分20秒にも及ぶ、後半はダブの
ディスコ・ミックスの曲です。

DJ Dawn & The Ranking Queens - Peace Truce Thing (Studio 1 12in)


リズム特集 I'm Still In Love (アイム・スティル・イン・ラブ)

13曲目はJim Brownの「Cure For The Fever」
です。
リディムはHorace Andyの「Fever」。
こちらは楽し気な1曲。
5分10秒の曲で、後半はダブのディスコ・
ミックス・スタイル。

Jim Brown - Cure For The Fever


14曲目はSugar Minottの「Peace Treaty
Style」です。
Sugar Minottらしい甘い歌声の1曲。
後半はSugar Minott本人と思われるトース
ティングが入っている、ちょっと珍しい
ディスコ・ミックス・スタイルの1曲。

Sugar Minott Peace Treaty Style


15曲目はLloyd Robinsonの「It Deep」です。
新しいような古いような、不思議な空気感を
持った1曲。

STUDIO ONE ROOTS - IT DEEP - LLOYD ROBINSON


16曲目はBarry Brownの「Far East」です。
Barry Brownの曲の中でももっとも愛され、
名リディムとして長くカヴァーされ続けた
1曲です。

リズム特集 Far East/Jah Sharkey (ファー・イースト/ジャー・シャーキー)

17曲目はWindel Haye & Captain Morganの
「Flood Victim」です。
こちらもリディムはSound Dimensionの
「Real Rock 」。
こちらも前半はディ-ジェイ、後半はダブの
7分12秒にも及ぶディスコ・ミックス・
スタイルの曲です。

18曲目はErnest Wilsonの「Pick Them Up」
です。
爽やかなヴォーカルにコーラス・ワークと
いう曲です。

ざっと追いかけて来ましたが、今回のアルバム
は広い意味でのダンスホールという定義が
功を奏し、その原点を探るような内容になって
います。
もともと踊る音楽としての「ダンスホール」
は、レゲエが始まる以前のロックステディの
時代からジャマイカ音楽の根底にあったもの
なんですね。
70年代のルーツ・レゲエの時代の実験的な
模索が一段落した時に、このダンスホール・
レゲエという音楽が浮上して来たのは、むしろ
必然というべき事だったのかもしれません。

Studio Oneというレーベルは最後にものすごく
複雑な10年ぐらい前のロックステディの音源
を再生するという手法をとっていますが、その
手法はダンスホール・レゲエの時代になっても
用いられていて、ロックステディの時代の音源
はその後も長く使い続けられる事になるんです
ね。

古い音源から新しい音楽を作りだす、それが
レゲエ流の思考方法なんですね。
良いものは良い、ならばそれを擦り切れるまで
使い倒す、それもレゲエという音楽の面白さ
なのかもしれません。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Various
○アルバム: Studio One Dancehall: Sir Coxsone In The Dance: The Foundation Sound
○レーベル: Soul Jazz Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2014

○Various「Studio One Dancehall: Sir Coxsone In The Dance: The Foundation Sound」曲目
1. Why Oh Why - Ernest Wilson
2. Lend Me The Sixteen - Johnny Osbourne
3. Haunted House - Windel Haye
4. Ghetto Girl - Green Tea & Chassy
5. Time A Run Out - Johnny Osbourne
6. Noah In The Ark - Lone Ranger
7. Thanks And Praise - Devon Russell
8. Rebel Disco - Brentford Disco Set
9. I Don't Know Why - Doreen Schaffer
10. Lonely Lover - Slim Smith
11. Roots And Herb Style - Field Marshall Haye
12. Peace Truce Thing - DJ Dawn & The Ranking Queens
13. Cure For The Fever - Jim Brown
14. Peace Treaty Style - Sugar Minott
15. It Deep - Lloyd Robinson
16. Far East - Barry Brown
17. Flood Victim - Windel Haye & Captain Morgan
18. Pick Them Up - Ernest Wilson