今回はVarious(オムニバス)もののアルバム

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「Studio One Soul 2」です。

まずは今回のアルバムの元になっている
Studio Oneというレーベルについて書いて
おきます。
Studio Oneは主催者のC.S. Doddを中心に、
ジャマイカの音楽界をスカ→ロックステディ
→レゲエとけん引し続けたレーベルです。
質の高い音楽性から「レゲエのモータウン」
という、言い方をされる事があります。

そうしたジャマイカに質の高い音楽を提供し
続けてきたStudio Oneですが、70年代半ば
以降はChannel Oneなどの他のレーベルに
押されて失速し、80年代半ばには閉鎖に
追い込まれています。

レーベル特集 Studio One (スタジオ・ワン)

今回のアルバムはSoul Jazz Recordsの
「Studio Oneシリーズ」の1枚で、2006年
にリリースされたStudio Oneのソウルフルな
レゲエの楽曲を集めたアルバムです。
ちなみに今回のアルバムは第2集目のアルバム
で、2001年に第1集目の「Studio One
Soul」がすでに発売されています。

全18曲で収録時間は約57分。

詳細なミュージシャンの表記はありません。

今回のアルバムもSoul Jazz Recordsらしい
多彩なアーティストを集めたコンピュレー
ションで、Jacob Miller、Hortense Ellis、
Horace Andy、The Soul Vendors、
The Heptones、Jackie Mittoo & Brentford
Disco Set、Prince Jazzbo、Cornell Campbell、
Winston Francis、Tony Gregory、
Dub Specialist、Little Joe、Devon Russell、
Jerry Jones、Ken Boothe、Anthony Creary、
という、歌あり、ディージェイあり、インスト
ありの多彩な楽曲が収められています。

さて今回のアルバムですが、こうしたレゲエ
のソウルフルな楽曲を集めたアルバムという
と、あのBlood & Fireから2001年に出た
「Darker Than Blue: Soul From Jamdown
1973-1980」を真っ先に思い浮かべます。

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Various ‎– Darker Than Blue: Soul From Jamdown 1973-1980 (2001)

あのアルバムはレゲエとソウルの関わりを
深く追求したアルバムで、レゲエ・リイ
シュー・レーベルBlood & Fireのカタログの
中でも屈指の1枚と言えるアルバムでした。

それに較べると今回の楽曲はStudio Oneと
いう制約もあり、そこまでディープな色彩は
強くなく、総花的が並んでいる印象です。
ただそこがある意味Soul Jazz Recordsらしい
ところと言えるかもしれません。
あくまでディープにディープにルーツ・レゲエ
を追及しようとするBlood & Fireに対して
このSoul Jazz Recordsは、あらゆる音楽の
総カタログのアルバムを作ろうという意図を
目論んでいるような選曲が特徴のレーベル
なんですね。
ある意味聴き手の嗜好には深入りせず醒めた
視線で最良なものを提供する、そこに集中して
いる意図が感じられるレーベルなんですね。
ある意味その差が面白いところです。

そういう点では今回のアルバムは「ソウル
限定」という視点ではなく、レゲエにある
「ソウル的なもの」の中の良質なものという
視点で、「ソウル」を捉えているところが
あります。
必ずしもソウルではなく、あくまで「ソウル
的なもの」なんですね。
ただそこにレゲエにおける「ソウル」が、
見えてくる部分もあります。
そこが今回のアルバムの面白さなんですね。

1曲目はJacob Millerの「Westbound Train」
です。
リディムはご存じNiney The Observerプロ
デュースによる、Dennis Brownによる同名曲
です。
このJacob Millerはルーツ期におけるもっとも
ソウルフルなシンガーのひとり。
その彼の歌うこの曲は、レゲエの曲であり
ながらめちゃめちゃディープなんですね。
このJacob MillerはジャマイカでBob Marley
に匹敵する人気を誇ったと言われますが、
それを証明するような1曲です。

Jacob Miller - Westbound Train (Studio One)


2曲目はHortense Ellisの「People Make The
World Go Round」です。
こちらはソウル・グループとして人気を博した
The Stylisticsの同名ヒット曲です。
その楽曲をAlton Ellisの妹Hortense Ellisが、
心を込めて歌いあげた曲です。

3曲目はHorace Andyの「Ain't No Sunshine」
です。
こちらはソウル・シンガーBill Withersの
超名曲。
実はこの曲大好きで、YouTubeのBill Withers
のライヴ・ヴァージョンを時々聴いているほど
好きな曲です。
レゲエ以外の曲でこれほど聴く曲は、他にあり
ません(笑)。
原曲も本当にシビレる曲ですが、このHorace
Andyのヴァージョンも短いのが惜しまれる
涙ものの1曲です。

Horace Andy - Aint No Sunshine - Organ Version (Best One ) Studio 1 Records


4曲目はThe Soul Vendorsの「Swing Easy」
です。
今回のアルバムにはJackie Mittooの楽曲が
多く入っていますが、やはりレゲエにおける
ソウルといえばこの人の存在は忘れる事が
出来ません。
これは彼が中心のStudio Oneのバック・
バンドThe Soul Vendorsの1曲。
Jackie MittooといえばStudio OneのC.S. Dodd
とともにレゲエの基礎を作ったと言われます
が、根底にソウルへの憧れがあった事が見て
取れます。

リズム特集 Swing Easy (スウィング・イージー)

5曲目はThe Heptonesの「Choice Of Colours」
です。
ロックステディ期に大活躍したコーラス・
グループですが、その根底にあるソウルの
影響は無視できません。
ロックステディに潜むソウル魂、その良さが
出た1曲です。

6曲目はJackie Mittoo & Brentford Disco
Setの「Choice Of Music Part 2」です。
5曲目The Heptonesの「Choice Of Colours」
のインスト・ヴァージョン。
シッカリとJackie Mittooがソウルのエッセンス
を生かしているのが、よく解る1曲。
浮遊感のあるオルガンが魅力の曲です。

7曲目はPrince Jazzboの「Fool For Love」
です。
リディムは女性シンガーDawn Pennのヒット曲
「No No No」です。
アンニュイなメロディにソウル感いっぱいの
1曲。
その曲にレゲエならではのディージェイの
トースティングという組み合わせが、最高に
ディープでカッコいいです。

8曲目はCornell Campbellの「Ten To One」
です。
リディムはThe Techniquesの「My Girl」。
Cornell Campbellのソフトなヴォーカルが
魅力的な1曲です。

Cornell Campbell - Ten To One - CD


9曲目はWinston Francisの「Don't Change」
です。
ロックステディから初期レゲエの時代に魅力的
な歌声を披露した、名シンガーの1曲。
ソウルフルな歌声がソソります。

10曲目はJackie Mittooの「Jumping
Jehosophat」です。
いかにもJackie Mittooらしい浮遊感のある
オルガンが魅力の1曲。

Jackie Mittoo - Jumping Jehosophat


11曲目はTony Gregoryの「Get Out Of My
Life Woman」です。
誰の曲かまでは解りませんでしたが、アメリカ
のブルースか何かの曲のようです。
Tony Gregoryもあまり知られていないシンガー
ですが、その歌いぶりはまさしくソウル。
実力派のシンガーです。
途中から入って来るサックスもすごく良い
です。

Tony Gregory - Get Out Of My Life Woman


12曲目はDub Specialistの「Darker Block」
です。
Studio OneのエンジニアSylvan Morrisによる
ユニットDub Specialistの、Jackie Mittoo &
Soul Vendorsの曲「Darker Shade Of Black」
のダブです。
あえて低めの音が入っていたり、音の魔術師
的な出し入れが魅力。

リズム特集 Darker Shade Of Black (ダーカー・シェイド・オブ・ブラック)

13曲目はLittle Joeの「Red Robe」です。
こちらはレア・ディージェイによる1曲。

14曲目はDevon Russellの「Make Me Believe
In You」です。
リディムはThe Techniquesの「You Don't
Care」。
スカの時代から活躍する名シンガーの、
ファルセット・ヴォーカルが魅力の曲です。

リズム特集 You Don't Care (ユー・ドント・ケア)

15曲目はJerry Jonesの「Compared To What」
です。
こちらはブギー調のリズムにクールな
ヴォーカルが冴える、ファンキーな1曲。

Jerry Jones - Compared To What (RocknRolla Soundsystem Edit)


16曲目はKen Bootheの「Thinking」です。
浮遊感のあるオルガンのメロディに乗せた、
ロックステディの時代から活躍する名シンガー
のソウルフルな歌唱が冴える1曲です。

17曲目はAnthony Crearyの「Land Call
Africa」です。
リディムはUKのロック・バンドThe Animals
のヒット曲として知られる、アメリカの
トラディショナルなフォーク・ソングである
「House Of The Rising Sun」。
日本では「朝日のあたる家」として知られて
いる曲です。
泣き節のメロディが、心に沁みる1曲。

Land Call Africa - Anthony Creary


朝日のあたる家 - Wikipedia

18曲目はJackie Mittooの「Fancy Pants」
です。
最後後は浮遊感のあるインスト・ナンバーで
シメています。

ざっと追いかけて来ましたが、このStudio One
で果たしたJackie Mittooの役割の大きさが
よく解るアルバムになっています。
彼はスカの時代にThe Skatalitesのメンバー
としてStudio Oneのバック・バンドとして活躍
した一人ですが、Tommy McCoookなど他の
メンバーがジャズの要素をジャマイカの音楽に
もたらしたのに対して、このJackie Mittooは
アメリカの音楽ソウルやファンクの要素を
ジャマイカの音楽にプラスした人なんですね。
その事がよく解るアルバムになっています。

ある意味Blood & Fireのアルバムなどから
見ると、すごく客観的な視点からレゲエを
捉えたアルバムなんですが、その的確な
客観性が隅々まで行き届いていて、すごく
聴き心地良いアルバムに仕上がっていると
思いました。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Various
○アルバム: Studio One Soul 2
○レーベル: Soul Jazz Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2006

○Various「Studio One Soul 2」曲目
1. Westbound Train - Jacob Miller
2. People Make The World Go Round - Hortense Ellis
3. Ain't No Sunshine - Horace Andy
4. Swing Easy - The Soul Vendors
5. Choice Of Colours - The Heptones
6. Choice Of Music Part 2 - Jackie Mittoo & Brentford Disco Set
7. Fool For Love - Prince Jazzbo
8. Ten To One - Cornell Campbell
9. Don't Change - Winston Francis
10. Jumping Jehosophat - Jackie Mittoo
11. Get Out Of My Life Woman - Tony Gregory
12. Darker Block - Dub Specialist
13. Red Robe - Little Joe
14. Make Me Believe In You - Devon Russell
15. Compared To What - Jerry Jones
16. Thinking - Ken Boothe
17. Land Call Africa - Anthony Creary
18. Fancy Pants - Jackie Mittoo