今回はPeter Toshのアルバム

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「Mama Africa」です。

Peter Toshは60年代のスカやロックステディ
の時代から70年代のルーツ・レゲエの時代に
活躍した、有名なシンガーです。
彼はBob MarleyとBunny Livingston(Wailer)
とともに、スカの時代に伝説のグループThe
Wailersを結成し、The Skatalitesの演奏を
バックにジャマイカで人気コーラス・グループ
として活躍するんですね。

その後にロックステディからレゲエの時代
になるうちに楽器も演奏するようになり、
Barrett兄弟のリズム隊も含めた5人組の
レゲエ・バンドThe Wailersとなり、メジャー・
レーベルIslandから1973年にアルバム
「Catch A Fire」で世界デビューし、レゲエ
という音楽を世界に知らしめる役割を果たし
ます。

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The Wailers ‎– Catch A Fire (1973)

ところがIslandから2枚のアルバムを出した
ところでPeter ToshとBunny Livingston
(Wailer)が脱退し、2人はソロ・シンガーに
なってしまうんですね。
残ったBob MarleyはBob Marley & The Wailers
というバンド名で活動します。

その後Peter Toshはソロとしてアルバムを発表
し、その実績が徐々に認められて、ロック・
バンドThe Rolling Stonesにレゲエの手ほどき
をした事をきっかけにStonesのレーベルから
アルバムを出したりして、世界的に活躍する
レゲエ・アーティストになって行くんですね。

そうして世界的にも活躍したPeter Toshです
が、1987年に強盗に殺害されて亡くなって
います。

アーティスト特集 Peter Tosh (ピーター・トッシュ)

今回のアルバムは1983年にEMIレーベル
から発表されたアルバムです。
タイトル曲の「Mama Africa」をはじめ、
ロックン・ロールのChuck Berryの名曲
「Johnny B Good」のほか、スカの時代の
The Wailersのヒット曲「Stop That Train」
や「Maga Dog」など、リメイクなども含めて
Peter Toshというシンガーの個性がよく出た
アルバムに仕上がっています。

全12曲で収録時間は約62分。
オリジナルは9曲で、残りの3曲は収録曲の
ロング・ヴァージョンや7インチ・ヴァー
ジョンなどが収められています。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Drums: Carlton 'Santa' Davis, Sly Dunbar
Bass: Lebert 'Gibby' Morrison, Robbie Shakespeare
Rhythm Guitar: Steve Golding, Mikey 'Mao' Chung
Lead Guitar: Donald Kinsey, Darryl Thompson
Piano: Keith Sterling
Organ: Robbie Lyn
Clavinet: Peter Tosh
Percussions: Skully Simms, Sticky Thompson
Prophet Keyboards: Byron Allred
OBX Keyboards: Peter Couch
Backing Vocals: Betty Wright, Donald Kinsey, Dorriett Myers,
Pam Hall, Audrey Hall, Raymond Hall, Peter Tosh
The Tamlins: on "Stop That Train" & "Feel No Way"
Hornes:
Sax: Dean Fraser
Trombone: Ronald 'Nambo' Robinson
Trumpets: David Madden, Arnold Breckenridge, Junior 'Chico' Chin, Frank
Hornes Arranged by Clive Hunt on "Stop That Train","Peace Treaty","Feel No Way"
Recorded by: Lancelot 'Maxi' McKenzie, Geoffrey Chung
Recorded at Dynamic Sound Studios, Kingston, Jamaica

Produced by: Chris Kimsey, Peter Tosh
Mixed by: Chris Kimsey, Peter Tosh

Original Cover Illustration: Mervin Palmer

となっています。

ネットなどの記述を見ると、メインでドラム
を叩いているのはSly Dunbarではなく、
Santa Davisのようです。

印象的なイラストは、Mervin Palmerという人
が描いているようです。

さて今回のアルバムですが、この83年と
いうとジャマイカではダンスホール・レゲエ
が大流行していた時期ですが、Peter Tosh
の音楽からはそうした影響はまったくと
言って良いほど感じられません。
むしろこの時代の彼には、あくまで自分の道
を突き進む、そうした意志が感じられます。

今回のアルバムを聴くと、後のアフリカン・
レゲエに通じる重厚なブラスや女性コーラス
といった要素が見られ、いかにアフリカン・
レゲエがこのPeter Toshから大きな影響と
メッセージを受け取ったのかが見て取れます。
Peter Toshがアフリカン・レゲエに似ている
のではなく、アフリカン・レゲエがこの
Peter Toshに影響を受けているんですね。

このPeter Toshのサウンドはレゲエでもあり、
同時にロック的な要素も含んでいて、正直な
ところどう解釈したら良いか迷うところも
あります。
ただ今回のアルバムなどを聴くと、あまりに
ド・ストレートなそのパワーは、やはり無視
出来ないところがあります。

ちなみに2002年シンコー・ミュージック
刊行の本「Roots Rock Regge」には、この
アルバムについて「孝」さんという方の文章
で、次のように書かれています。

「コロンビアからの2枚をソロ第1期、ロー
リング・ストーンズ・レコーズ時代を第2期
とすれば、厳密にはこの83年作が射殺され
るまでの第3期、4年間の幕開けということ
になる。アフリカ賛歌、そして同胞を鼓舞す
るメッセージにトッシュの人間味があふれ、
このうなるような気合いと男気、ツヤと色気
が最高潮に達したヴォーカルを聴くたびに、
熱い身震いに襲われる。机上のラヴ&ピース
を遥かに凌ぐ、ラヴ&ファイトのリアリズム。」
(「Roots Rock Regge」より「孝」さんと
いう方のアルバム評より。)

補足するとこの「孝」さんという方は、
Columbiaレーベルから出たファースト・
アルバム「Legalize It」(76年)と
セカンド・アルバム「Equal Rights」
(77年)を彼の第1期、Rolling Stones
Recordsからアルバムの出た「Bush Doctor」
(78年)と「Mystic Man 」(79年)、
「Wanted Dread & Alive」(81年)の
3枚を第2期、そしてこのアルバムと
「Captured Live」(ライブ盤、84年)と
「No Nuclear War」(87年)の3枚を
第3期と考えているようです。

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Peter Tosh ‎– Legalize It (1976)

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Peter Tosh ‎– Bush Doctor (1978)

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Peter Tosh ‎– Mystic Man (1979)

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Peter Tosh ‎– Captured Live (1984)

それが正しいかは解りませんが、彼らしい
音楽活動はおそらくこのソロ・アーティスト
時代にあった事は間違いありません。

1曲目は表題曲の「Mama Africa」です。
このPeter Toshには当時流行っていたダンス
ホールなどまったく眼中になく、むしろルーツ
の原点を探るような音作りです。
パーカッションに女性コーラス、アフリカの
大地を感じさせるような、明るいリズムに
乗せた1曲です。

Peter Tosh - Mama Africa


2曲目は「Glass House」です。
ビンの割れるようなエフェクトから、シンセ
のメロディに乗せたPeter Toshの伸びのある
歌声が心地良い曲です。

3曲目は「Not Gonna Give It Up」です。
こちらはホーン・セクションに乗せたPeter
Toshのヴォーカルに、コーラス・ワークと
いう曲です。
ジャマイカではダンスホール・レゲエが
流行りこうしたホーンを使った重厚な
サウンドは敬遠されるようになるのです
が、彼は逆に敢えてそうしたパワフルな
音作りをしているようです。
そうしたところに、この人の矜持が垣間見え
ます。

4曲目は「Stop That Train」です。
この曲のオリジナルはロックステディの時代
のKeith & Texの同名曲です。
その曲をThe WailersはIslandレーベルの
メジャー・デビュー・アルバム「Catch A
Fire」の中で、Peter Toshの歌でやって
いるんですね。
この曲はその再演という事になりますが、
かなりアレンジされた曲になっています。
ストレートさよりも、重厚さがより増して
いる印象です。

Peter Tosh - Stop That Train


5曲目は「Johnny B. Goode」です。
言わずと知れたChuck Berryのロックン・
ロール・ナンバーです。
こちらもかなりレゲエ・アレンジがなされて
いて、ホーン・セクションから始まる全く
違う印象の曲になっています。
その黒いうねるようなヘヴィーさが見事で、
カッコイイです。

Peter Tosh - Johnny B. Goode (HD)


6曲目は「Where You Gonna Run」です。
こちらは元気なホーン・セクションから
始まる、ソウルを思わせるようなナンバー。
重厚なホーンと女性コーラスに乗せた、
Peter Toshのヴォーカルが冴えます。

Peter Tosh - Where You Gonna Run


7曲目は「Peace Treaty」です。
ホーン・セクションから始まる、勢いのある
ナンバーです。
爆破音のエフェクトが印象的。

8曲目は「Feel No Way」です。
こちらはホーン・セクションから、ベースを
軸とした演奏に乗せた曲です。

9曲目は「Maga Dog」です。
こちらはスカの時代にPeter Toshがリード・
ヴォーカルをとった、The Wailersのヒット曲
です。
オリジナルはBob Marleyがリードを取った
「Simmer Down」に似たニュアンスを持った曲
でしたが、こちらはレゲエ・アレンジをされて
おり、もう少しユッタリとシッカリとした、
また別の曲になっています。

Peter Tosh - Maga Dog


10~12曲目はCDボーナス・トラックで、
5曲目「Johnny B. Goode」のロング・ヴァー
ジョン、6曲目「Where You Gonna Run」の
ロング・ヴァージョン、1曲目「Mama Africa」
の7インチ・ヴァージョンの、3曲が収め
られています。

ざっと追いかけて来ましたが、まるで時代に
抵抗するかのように重いホーン・セクション
や重厚感を際立たせる女性コーラスなど、
敢えて使っているところにこのPeter Tosh
という男のへそ曲がりぶり(笑)、反骨精神
を感じるアルバムです。
良い意味で時代に左右されないところが、
この人にはあるんですね。

結果的に彼のそうした姿勢は、後のアフリ
カン・レゲエ・アーティストに大きな影響を
与えることになります。

機会があればぜひ聴いてみてください。

04 - Peter Tosh - Not Gonna Give It Up (Live)



○アーティスト: Peter Tosh
○アルバム: Mama Africa
○レーベル: EMI
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1983

○Peter Tosh「Mama Africa」曲目
1. Mama Africa
2. Glass House
3. Not Gonna Give It Up
4. Stop That Train
5. Johnny B. Goode
6. Where You Gonna Run
7. Peace Treaty
8. Feel No Way
9. Maga Dog
Bonus Tracks
10. Johnny B. Goode (Long Version)
11. Where You Gonna Run (Long Version)
12. Mama Africa (7" Version)

●今までアップしたPeter Tosh関連の記事
〇Peter Tosh「Captured Live」
〇Peter Tosh「Equal Rights」
〇Peter Tosh「Legalize It」
〇Peter Tosh「The Toughest」