今回はAugustus Pabloのアルバム

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「Blowing With The Wind」です。

Augustus Pabloは70年代のルーツ・レゲエの
時代から活躍したメロディカ奏者、キーボード
奏者、プロデューサーとして知られている人
です。
それまで練習用の楽器ぐらいにしか思われて
いなかったメロディカを駆使して、レゲエに
それまでに無い新しい音楽というイメージを
プラスしたのがこの人なんですね。
数々のセッションに参加し、多くのインストや
ダブ・アルバムを残し、Hugh Mundellをはじめ
とする若手のミュージシャンを育てた彼でした
が、1999年に筋無力症のために亡くなって
います。

アーティスト特集 Augustus Pablo (オーガスタス・パブロ)

今回のアルバムは1990年にShanachie
レーベルから発売された、彼のソロ・アルバム
です。

ちょっと個人的な事を書かせてもらうと、
手に入れたCDにはまだ「SHINSEIDO \2200」
と書かれた値段のシールが付いていました。
おそらく90年代に、横浜駅近くの新星堂と
いうレコード店で購入したものと思われます。
この90年代というのは私がレゲエを買うの
を止めていた時期なのですが、Augustus Pablo
のアルバムだけは見つけると買っていたん
ですね。
そういう意味ではちょっと思い出のアルバム
という事になるのかもしれません。

全10曲で収録時間は約43分。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Produced by: King Selassie I Divine Power
Co-producer: Augustus Pablo for Rockers International
All tunes published by: Pablo Publishers Ltd.
Arranged by H. Swaby
All music written by: H. Swaby
Recorded at: Tuff Gong and Dynamics
Mixed at: Music Works and Tuff Gong
Engineer: Soldgie, Sylvan Morris and Tony Trinny

Players of Instruments:
Bass: Pablo, Danny Thompson, Chris Meredith, Ranchie McLean
Drums: Squiddly Cole, Leroy Wallace, Ben Bow Creary, Santa Davis
Rhythm Guitar: Leroy Pennicott, Chinna Smith
Lead Guitar: Chinna Smith
Trumpet: Special thanks to Jonny Moore (Original Skatalites)
Percussion: Yami Bolo, White Mice, Ruffy Newton
All Keyboard instruments and synthesizers: A. Pablo

となっています。

この90年代のAugustus Pabloのアルバムの
特徴ですが、プロデュースがエチオピア皇帝
ハイレ・セラシエの名前になっているんです
ね。
今回のアルバムでも「Produced by: King
Selassie I Divine Power」と書かれています。
この90年代ぐらいからAugustus Pabloは
筋無力症の症状に苦しみだすんですね。
それでも彼はラスタファリアンの信念から、
薬物治療を拒否して自然治癒を願って活動
を続けるんですね。
ある意味より敬虔なラスタファリアンとなり、
信仰が高まった事でこうしてプロデューサー
名にラスタファリアンの神であるエチオピア
皇帝の名前を書くようになるんですね。

アレンジや作曲にある「H. Swaby」は、
Augustus Pabloの本名Horace Swabyです。

録音はTuff GongとDynamicsで行われ、ミックス
はMusic WorksとTuff Gong、エンジニアは
SoldgieとSylvan Morris、Tony Trinnyと
いった人達が行っています。

90年代になるとミュージシャンも70年代
のルーツの時代とは、だいぶ変わって来てい
ます。
ただドラムのLeroy 'Horsemouth' Wallaceや
Carlton Santa Davis、ギターのEarl 'Chinna'
Smithなどの名前があるのは嬉しいところです。

またパーカッションに80年代以降に活躍
したシンガー、Yami BoloとWhite Miceの
名前があります。

スペシャル・ゲストはトランペットのJonny
'Dizzy' Moore。
この人はスカの時代に活躍したThe Skatalites
のオリジナル・メンバーだった人です。

Augustus Pabloはベースとすべてのキー
ボード、シンセを演奏しています。
Augustus Pabloといえばメロディカという
イメージが強いですが、今回のアルバムでは
シンセの曲が多い印象です。

さて今回のアルバムですが、Augustus Pablo
の後期の特徴が現れたアルバムで、内容は
悪くないと思います。
たびたびブログに書いていますが、私は
20歳代だった70年代から80年代前半
にBob Marleyをきっかけにレゲエを聴いて
いて、その後長い中断があり6年ぐらい前
から再びレゲエを聴き始めた人間です。
ただそうしたレゲエを聴かない時期でも、
Augustus Pabloのアルバムはレコード店で
見つけるとたまに買っていたんですね。
今回のアルバムもそうして買った1枚です。

何故Augustus Pabloのアルバムを買っていた
のか?というと、やはり初めに出会った彼の
アルバム「East Of The River Nile」の衝撃
が大きかった事が挙げられます。

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Augustus Pablo ‎– East Of The River Nile (1978)

その初めにレゲエを聴いていた20代の頃
に聴いていたんですね。
その当時に聴いたこの「East Of The River
Nile」というアルバムは、まるでおもちゃ箱
をひっくり返したようなイマジネーションに
溢れた、素晴らしいアルバムでした。

実はその後レゲエを聴かなくなったきっかけ
はBob Marleyが80年に亡くなった事で、
その後だんだんレゲエの歌ものを聴くのが
苦痛に感じられるようになったんですね。
彼の音楽はそれだけ自分にも影響があった
んですね。
彼の死後は徐々にインストのレゲエばかり
聴くようになっていました。

そうした時期によく聴いていたのがこの
Augustus Pabloで、彼のイマジネーション
溢れるメロディカは、その後もずっと心に
残るものだったんですね。
そんな事もあって、レゲエを聴かない時期
もこのAugustus Pabloのアルバムはたまに
買っていたんですね。
そして長い時間が経って呪縛が解け、再び
レゲエを聴き始めてからも、このAugustus
Pabloは私にとっては重要なアーティスト
であり続けています。

話が長くなりましたが、では今回のアルバム
は?というと、もうこの頃はデジタルのダンス
ホール・レゲエが大流行している頃ですが、
打ち込みなどは取り入れながらも彼の持つ
エモーショナルな要素は失われていません。
ただ彼のサウンドは晩年になるとより敬虔
になり、優しいサウンドへと変わって行く
んですね。
それは彼の人間としての成長が、反映して
いるのかもしれません。

70年代の彼の初期のSanticでメロディカや
クラヴィネットを吹いていたり、Randy'sの
Impact All Starsの初期ダブのアルバム
「Java Java Java Java」でメロディカを
吹いていた、ちょっと荒々しい若いエネルギー
のみなぎったAugustus Pabloはすごく魅力的
で忘れられない記憶として残っていますが、
この晩年のある意味老成したPabloもやはり
聴くべきものがあるんですね。

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Impact All Stars ‎– Java Java Java Java (1973)

今回のアルバムはそこまで老成したという
感じでは無いかもしれませんが、デジタルに
なった時代で自分の道を模索する彼の姿勢が
見えるアルバムになっている気がしました。

1曲目は「Ancient Harmonies」です。
ユラユラと揺れる様なメロディカの音色が
心に残る曲です。
エモーショナルなパワーのある曲です。

Augustus Pablo - Ancient Harmonies


2曲目は「Creation Blues」です。
スペシャル・ゲストJonny 'Dizzy' Mooreと
思われるトランペットが、イントロに入る
曲です。
トランペットとメロディカの掛け合いも
素晴らしい1曲。

augustus pablo - Creation Blues


3曲目は「Twinkling Stars」です。
ギターのイントロから、Pabloの奏でる
メロディカが良い味を出している曲です。

4曲目は表題曲の「Blowing With The Wind」
です。
出だしからPabloらしい哀愁を秘めたメロ
ディカが全開の曲です。
小鳥の鳴き声のエフェクトも入った、ナチュ
ラル感満載の1曲。

Augustus Pablo - Blowing With The Wind


5曲目は「Zion UFO」です。
こちらはシンセの演奏か?
基本に流れるグルーヴは一緒なので、それほど
違和感なく聴けます。

6曲目は「Eastern Code」です。
こちらの曲もシンセが使われています。
彼らしいスピリチュアルな演奏が光る曲です。

augustus pablo - Eastern Code


7曲目は「21 Years After」です。
こちらはオルガンのメロディから、メロディカ
の演奏になって行く曲です。
寂寥感のあるメロディカのメロディが美しい
曲です。

8曲目は「First World Call」です。
こちらはリズム感のあるメロディカの楽曲で
す。

9曲目は「This Song」です。
こちらはこのアルバムで唯一語りと歌の
入った楽曲。
歌っているのはYami Boloあたりなのか?

10曲目は「Drums To The King」です。
このアルバムでもっとも長い7分4秒に及ぶ、
ちょっとナイヤビンギ調のビンギ・ドラムの
入った曲です。
メロディカとビンギ・ドラムの掛け合いが、
深いメディテーション空間へと誘います。

Augustus Pablo - Drums To The King


ざっと追いかけて来ましたが、内容は悪く
ないと思います。
この後Augustus Pabloは筋無力症と闘い
ながら音楽制作を続けるのですが、99年
に亡くなっています。
そうした苦闘の90年代の始まりの頃の
アルバムが、今回のアルバムなんですね。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Augustus Pablo
○アルバム: Blowing With The Wind
○レーベル: Shanachie
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1990

○Augustus Pablo「Blowing With The Wind」曲目
1. Ancient Harmonies
2. Creation Blues
3. Twinkling Stars
4. Blowing With The Wind
5. Zion UFO
6. Eastern Code
7. 21 Years After
8. First World Call
9. This Song
10. Drums To The King