今回はThe Aggrovatorsのアルバム

aggrovators_08a

「Dubbing At King Tubby's」です。

The Aggrovatorsは70年代のルーツ・レゲエ
の時代に、プロデューサーのBunny Leeの
ハウス・バンドとして活躍したグループです。
数々の歌手のバック・バンドとして活躍した
ほか、Kingu Tubbyなどのミックスによる
ホーンを中心とした素晴らしいダブを多く
残しています。

The Aggrovators - Wikipedia

この70年代のレゲエのバック・バンドは、
集まれる人が集まって録るプラスティック・
バンドの形式が一般的でした。
レコードの制作自体がBunny Leeのように
スタジオを持たないプロデューサーが仕切って
いるケースが多かったので、スタジオは
レンタルで歌手やミュージシャンも日雇い、
儲けも損もプロデューサーのものという
専属契約のないインディーズ的な作り方だった
んですね。
そのためミュージシャンを続けるには常に
仕事(録音)を続けるしかなく、当時の
レゲエ映画に見られるように常にスタジオの
前にたむろして、録音の機会を待っていた
ようです。
Earl 'Chinna' Smithが最多録音の記録を
持っているそうですが、その裏にはそうした
事情もあったようです。

その為グループ名は違っても、同じアーティ
ストがいろいろなグループで演奏しているん
ですね。
Sly & Robbieや'Chinna' Smith、Barrett兄弟
などはほとんどのグループに顔を出している
くらいです。
ある意味こういうバック・ミュージシャンが、
当時の「レゲエ」というサウンドを創造して
いたとも言えます。

当時のバンド名とは、プロデューサーが誰か?
レーベルがどこか?という事で決まっていま
した。
例えば今回のThe Aggrovatorsという名前は、
プロデューサーがBunny Leeなので、彼の
ハウス・バンド名という事です。
これがChannel OneのHookim兄弟の録音だと、
バンド名はThe Revolutionaries、Joe Gibbs
の録音だとThe Professionalsという名前に
なります。
他にも○○レーベルだと、○○ All-Stars
なんていう名前になっている場合があります。
ただバンド名だけでなく演奏しているミュー
ジシャンを見てみると、意外と同じ人が演奏
しているケースが多いんですね。

ではバンド名が違うだけで全く同じかという
と、そこはプロのスタジオ・ミュージシャン
だけあって、バンドごとに核になるミュー
ジシャンが居て、バンドごとに音を使い分けて
いた形跡が見られます。

例えばChannel OneのThe Revolutionaries
の場合は、ドラマーの'Sly' Dunbarをリーダー
として、攻撃的なミリタント・ビート(別名
ロッカーズ・ビート)をウリとしています。

The Aggrovatorsの場合は、'Robbie'
Shakespeareがリーダーと書かれている事が
あり、Carlton 'Santa' Davisが開発したと
いわれる「フライング・シンバル」の楽曲が
多いんですね。
(フライング・シンバルは74~75年の
短期間だけ流行。)
またThe Aggrovatorsの場合は、Tommy McCook
を中心としたホーンを中心とした演奏が多い
のも特徴的なところです。

要するに雇い主の好みに合わせて、中心
メンバーの違いなどでグループの個性に変化
を付けることをしているんですね。
The Aggrovatorsの場合は一時期フライング・
シンバルの楽曲が多かった事と、比較的に
ブラスを中心としたナンバーが多い事が
特徴的なところです。

今回のアルバムは今年2016年に、VP
レーベルから発表されたThe Aggrovatorsの
ダブを集めた、コンピュレーション・アルバム
です。
CDでは2枚組全44曲、LPでは2枚組の
LPで22曲ずつVol. 1とVol. 2の2集に
分けて発売されたアルバムで、その膨大な量
の為に聴くだけでも2時間半ぐらいかかると
いう、かなり力の入った大掛かりなアルバム
です。

Disc 1は全22曲で収録時間は約76分。
Disc 2は全22曲で収録時間は約75分。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Produced by: Bunny 'Striker' Lee
Mixed by: Osbourne 'King Tubby' Ruddock, Lloyd 'Prince Jammy' James,
Phillip 'Price Phillip' Smart, Pat Kelly, Overton 'Scientist' Browne

The Aggrovators:
Bass: Aston 'Family Man' Barrett, George 'Fully' Fullwood,
Bertram 'Ranchie' McLean, Lloyd 'Sparks' Parks, Robert 'Robbie' Shakespeare,
Earl 'Bagga' Walker, Cornell Campbell(Occasionally)
Drums: Lloyd 'Tin Leg' Adams, Carlton 'Carlie' Barrett, Lowell 'Sly' Dunbar,
Basil 'Brother Benbow' Creary, Carlton 'Santa' Davis
Lead Guitar: Radcliffe 'Duggie' Bryan, Jerome 'Jah Jerry' Hines,
Earl 'Chinna' Smith
Rhythm Guitar: Aston 'Family Man' Barrett, Winston 'Bo Peep' Bowen,
Radcliffe 'Duggie' Bryan, Albert Valentine 'Tony' Chin,
Alva 'Reggie' Lewis, Lorraine 'Ranny Bop' Williams, Cornell Campbell,
Horace Andy (Occasionally)
Piano: Gladstone 'Gladdy' Anderson, Johnnie 'Studio Idler' Clarke,
Ansel 'Pinkie' Collins, Bernard 'Touter' Harvey, Oswald 'Ossie'/'No Go' Hibbert,
Bobby Kalphat, Errol 'Tarzan' Nelson, Keith Sterling, Johnny Clarke (Occasionally)
Organ: Glen 'Capo' Adams, Ansel 'Pinkie' Collins, Tyrone 'Organ D' Downie,
Bernard 'Touter' Harvey, Oswald 'Ossie'/'No Go' Hibbert, Earl 'Wire' Lindo,
Jackie Mittoo, Lloyd 'Charmers' Tyrell, Ian Winter, Winston 'Brubeck' Wright,
Horace 'Augustus Pablo' Swaby (Occasionally)
Tenor Saxophone: Roland Alphonso, Val Bennett, Karl 'King Cannon' Bryan,
Richard 'Dirty Harry' Hall, Tommy McCook, Lester Sterling
Alto Saxophone: Felix 'Deadly' Hedley Bennett, Lennox Brown, Dean 'Youth Sax' Fraser,
Alphanso Henry, Herman 'Seventh' Marquis
Baritone Saxophone: Herman 'Seventh' Marquis
Trumpet: Bobby Ellis, Mark Lewis, David Madden, Lester Sterling
Trombone: Vincent 'Don D Junior'/'Trommie' Gordon, Dave Parks, Ron 'Willow' Wilson
Harmonica: Charles 'Charlie Organaire' Cameron
Percussion: 'Barnabus', Denzil 'Pops' Laing, Noel 'Zoot'/'Scully' Simms,
Uziah 'Sticky' Thompson

Executive Producer: Christpher Chin
A&R / Project Manager: Chris O'Brian
Artwork: Supercing
Photo: Dave Hendley

となっています。

この膨大な名前の量を見ても解るように、
当時はプラスティック・バンドだった為に
多くのミュージシャンが演奏に参加して
います。
曲が作られた時期ははっきりとは解りま
せんが、70年代のルーツ・レゲエの時代
のものと考えられます。
おそらくその時期に活躍した有名なスタ
ジオ・ミュージシャンのほとんどの名前が、
あるんじゃないかと思います。

ちなみに表ジャケが小冊子になっていて、
そこにはミュージシャンの記載などの他に
曲ごとのミックスした人の名前が載って
いました。
最後に曲目と一緒にミックスした人の名前
も載せておきましたが、King Tubbyをはじめ
Prince JammyやPhillip Smart、Pat Kelly、
Scientistといった名前があります。
(意外やScientistは2曲だけ。)

The Aggrovatorsのどういうアルバムから
曲が使われているか?調べようと思いまし
たが、断念しました(苦笑)
その理由はこの音源が「Bunny Lee音源」
だったからなんですね。
このBunny Leeの場合、売る地域などによって
名前を変えたり、曲をやたらと使い回している
んですね。

例えば75年にTommy McCook and The
The Aggrovators名義で発売された「Cookin'」
と「Brass Rockers」という2枚のアルバムが
あります。

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Tommy McCook and The Agrovators ‎– Cookin' (1975)

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Bunny Lee & King Tubby Present Tommy McCook And The Aggravators ‎– Brass Rockers (1975)

実はこの2枚、中身はまったく同じアルバム
なんですね(笑)。
UKとジャマイカで違う名前で売られていた
アルバムなんですね。
近年発売されているアルバムでも使い回しが
やたらと多いのが、「Bunny Lee音源」なん
ですね。
その為整理して行くのが大変なのが、この
「Bunny Lee音源」なんですね(苦笑)。
そのため今回は元のアルバムが何なのか?
辿って行く事を断念しました。

さて今回のアルバムですが、よくぞここまで
「Bunny Lee音源」を整理してThe Aggrovators
のダブの音源を集めたものだと感心する内容
です。
書いたように「Bunny Lee音源」は整理する
だけでもとても大変なんですね。
エクゼクティブ・プロデューサーのChristpher
ChinをはじめとするVPレーベルのスタッフも
かなり苦労したんじゃないかと思います。
ただそのかいもあってかなり素晴らしいダブ
が集まった、アルバムになったと思います。
多くは耳馴染みのあるダブですが、やはり
この時代のThe Aggrovatorsはルーツ・レゲエ
を語る上で、外せない存在のバック・バンド
だった事がこのアルバムからもよく解ります。

今回のアルバムのすごく良い点は、曲ごとの
King Tubby'sのミキサーの名前がハッキリと
記されている点です。
これをみると誰がミックスしたかが、一目瞭然
で解るんですね。
そのあたりのサービス精神は拍手ものです。

ただそれぞれに個性の違いは多少はあるもの
の、通して聴くとKing Tubby'sのダブという
感じがしました。
ある程度ダブというスタイルの統一感が取れて
いるんですね。
そのあたりにこのKing Tubby'sというスタジオ
の優れた部分があります。

もともとダブというのはレゲエの時代になった
70年代頃から作られるようになった、元の曲
にエコーやリバーヴなどのエフェクトをかける
事によってまったく別の曲に作り変えてしまう
手法の事を言います。

ダブ - Wikipedia

すでに70年代の初め頃から作り始められて
いたらしいのですが、1973年にRandy'sの
「Java Java Java Java」やLee Perryの
「Blackboard Jungle Dub」など初期ダブの
アルバムがいっせいに発売された事で、一気
にレゲエの一ジャンルとして確立した音楽
なんですね。

lee_perry_01a
The Upsetters ‎– Blackboard Jungle Dub (1973)

こうした実験的な音楽が作られたという
ところにも、この70年代という時代の
レゲエがいかに革新的な音楽であったか
という事が見て取れます。

このダブという音楽は誰が一番最初に発明
したか?は諸説あり、ハッキリとは解って
いません。
ただダブという音楽を完成させたのは
King Tubbyだと言われています。
もともと電気技師だった彼は、芸術家肌と
いうよりは職人気質を持った人で、電気技師
としての配線の知識などを生かし、ダブを
作る音楽設備なども作り、感覚的に出なく
論理的・物理的にダブという音楽を組み立て
て、ダブという音楽を完成させるんですね。
そしてそのダブを作る知識を、彼の助手たち
に伝えて行く訳です。

King Tubby'sのダブはそうしたKing Tubbyが
完成させたダブを助手たちにシッカリと伝え
ている為に、統一感が取れたダブに仕上がって
いるんですね。
実際にKing Tubbyは80年代初期のダンス
ホール・レゲエが流行り始めた頃には、ダブ
を作る仕事は助手だったPrince Jammyや
Scientistに任せて、自分は電気技師の仕事
の方を優先していたと言われています。
実際に80年代前半のKing Tubbyのダブと
いうのは、数が少ないんですね。

しかしKing Tubby'sのダブを作る中心だった
Prince JammyやScientistが独立してKing
Tubby'sを離れると、また現場に復帰して
またプロデューサーとして現場の指揮を
執っているんですね。
そしてPrince Jammy改めKing Jammyになった
元助手の起こしたデジタルのダンスホール・
レゲエ、「コンピューター・ライズド」の
大ブームの中で、Anthony Red Roseの
「Tempo」などのヒットを飛ばしているん
ですね。
しばらく現場から離れていても、すぐにその
時代に対応できる、それこそこのKing Tubby
が本物の天才であったという証しだと思い
ます。

話が飛びましたが、今回のこのアルバムでは
Bunny Leeのバック・バンドThe Aggrovators
のアルバムではありますが、視点を変えると
70年代ルーツ期のKing Tubby'sのダブを
集めたアルバムと見る事も出来ます。
そういう視点から見ると今回のダブは、どの
ダブもよく出来たダブでいかにこのKing
Tubby'sというスタジオが優れたスタジオで
あったのか、その事がよく解る作品群が並ん
でいます。

Disc 1の1曲目は「Bag O Wire Dub」です。
リディムはJohnny Carkeが歌う「Marcus
Garvey」です。
(Burning Spearの同名曲とは違います。)
雷のエフェクトから始まるホーンを中心と
した曲で、The Aggrovatorsの楽曲に多く
見られる「フライング・シンバル」のビート
が印象的な曲です。
ミックスはKing Tubbyで、メリハリの付け方
のウマさが際立ちます。

Johnny Clarke - Bag A Wire Dub


2曲目は「Dub Of Rights」です。
リディムはAbyssiniansで知られる
「Declaration Of Rights」です。
ミックスはKing TubbyとPrince Jammy。
こちらもJohnny Carkeの曲を使ったダブで、
雷のエフェクトやエコーなど、なかなかの
切れ味のダブです。

3曲目は「Guidance Dub」です。
リディムはLeroy Sibblesの「Guiding
Star」。
ミックスはKing Tubbyで、ルーツ・レゲエの
時代らしい重いホーンのリズムをうまく処理
しています。

4曲目は「Hold Them In Dub」です。
ミックスはPrince Jammy。
ベースを中心としたダブをうまくさばいて
います。

5曲目は「Dub Ites Green And Gold」です。
76年に発表されたThe Aggrovatorsのアルバム
「Rasta Dub '76」に収められた「Ites Gold
Green Dub」が同じ曲です。

aggrovators_09a
The Agrovators ‎– Rasta Dub '76 (1976)

ミックスはKing Tubby。
こちらもベースを軸としたダブです。

6曲目は「A Heavy Dub」です。
こちらもミックスはKing Tubby。
ベースを軸としたダブに、雷のエフェクト
などでウマく変化を付けています。

7曲目は「Stealing Version」です。
ミックスはPhillip Smart。
フライング・シンバルの楽し気な楽曲に、
うまく変化を付けています。

8曲目は「The Poor Barber」です。
ミックスはKing Tubby。
こちらもフライング・シンバルの楽曲に、
銃撃ののエフェクトなどでウマく変化を
付けています。

9曲目は「Real Gone Crazy Dub」です。
リディムはJohnny Clarkeが歌うBob Marley
の名曲「Crazy Baldhead」です。
ミックスはKing Tubby。
昇天もののカッコよさです。

The Aggrovators - Real Gone Crazy Dub


10曲目は「King Tubby's In Fine Style」
です。
リディムはHorace Andyの名曲「You Are My
Angel」です。
ミックスはKing Tubby。
イントロからのちょっとヒネた音使いが
昇天ものです。

King Tubby's In Fine Style


11曲目は「No Love Version」です。
リディムはLeroy Smartの「No Love」。
ミックスはPhillip Smart。
聴けば解るLeroy Smartの歌声とホーンが
うまく処理されたダブです。

12曲目は「A Living Version」です。
ミックスはKing Tubby。
雷のエフェクトやJhnny Clarkeの歌声が
うまく処理された、ダブらしいダブです。

13曲目は「Six Million Dollar Version」
です。
ミックスはPrince Jammy。
ノビノビとしたホーンの音色に乗せたダブ。

14曲目は「African Sounds」です。
ミックスはPrince Jammy。
こちらもヴォーカルはJohnny Clarkeのよう
です。
ユラユラ感満点のダブ。

15曲目は「A Stalawatt Version」です。
ミックスはKing Tubby。
Johnny Clarkeの軽快なヴォーカルに乗せた
曲です。

16曲目は「How Long Dub」です。
こちらはロックステディ期に活躍した歌手と
しても知られるPat Kellyがミックスした曲
です。
出だしからのタメがちょっと面白いダブ。

King Tubby - How Long Dub


17曲目は「Breaking Up Dubwise」です。
ミックスはPrince Jammy。
こちらもJohnny Clarkeの楽曲のようです。
ベースを軸にパーカッションが効果的に使わ
れたダブです。

18曲目は「Horn For I」です。
ミックスはPrince Jammy。
ベースを軸に、タイトル通りホーンが効果的
に使われたダブです。

19曲目は「Drums Of Africa」です。
ミックスはPrince Jammy。
こちらもJohnny Clarkeのヴォーカルの入った
ダブ。
ドラムやパーカッションを効果的に使った、
ダブらしいダブです。

20曲目は「Dub To The Rescue」です。
リディムはBob Marleyの「Sun Is Shining」。
ミックスはPrince Jammy。
Bob Marleyの陰影のある楽曲を生かした、
渋めのダブです。

21曲目は「Jah Love Rockers Dub」です。
リディムはジャズの名曲「Take Five」。
ミックスはPrince Jammy。
印象的なフルートのメロディを生かした、
ダブワイズした演奏が最高に良いです。
フルートはおそらくTommy McCookと思われ
ます。

King Tubby and friends - Jah love rockers dub.wmv


22曲目は「Fatter Dub」です。
ミックスはPrince Jammy。
こちらはオルガンのメロディを中心とした
メローなダブです。

Disc 2の1曲目は「Satta Dread Dub」です。
ミックスはKing Tubby。
陰影のあるメロディを生かした、ディープ感
の強いダブです。

King Tubby ~Satta Dread Dub


2曲目は「Exalted Dub」です。
ミックスはPhillip Smart。
こちらはLeroy Smartの楽曲を使った、ベース
を中心としたダブです。

3曲目は「Tubby Get Smart」です。
ミックスはKing Tubby。
こちらもLeroy Smartの楽曲を使った、ホーン
とベースを中心としたダブです。

4曲目は「Wreck Up A Version」です。
リディムはLeroy Smartのヒット曲「Wreck
Up My Life」。
ミックスはPrince Jammy。
Leroy Smartの特徴ある歌声を生かした
ダブワイズが光ります。

5曲目は「Beat Them In Dub」です。
リディムはCornell Campbellの「Jah Jah A
Beat Them」。
ミックスはPrince Jammy。
こちらもエフェクトをうまく聴かせて、原曲
と違う楽曲にうまく作り直しています。

6曲目は「Channel Is A Joker」です。
リディムはJohnny Clarkeの「Just Give Up
The Badness」。
ミックスはPrince Jammy。
パーカッションの効いたディープ感の強い
ダブです。

Channel One Is A Joker - Johnny Clark at King Tubby's


7曲目は「Channel One Under Heavy Manners」
です。
リディムはLeroy Smartの「Channel One Feel
It」です。
ミックスはPrince Jammy。

8曲目は「Channel Get Knockout」です。
ミックスはPrince Jammy。
こちらはJohnny Clarkeの楽曲を使った、
ベースを軸としたダブ。

9曲目は「Everybody Needs Dub」です。
ミックスはPrince Jammy。
原曲はCornell Campbellか?
ファルセットなヴォーカルが良いアクセント
になっている曲です。

10曲目は「Dub With A View」です。
ミックスはScientist。
ベースを軸に、エフェクトなどでアクセント
を付けた曲です。

11曲目は「Dub Is My Occupation」です。
ミックスはPrince Jammy。
ベースを軸に、ホーンをうまく駆使したダブ。

12曲目は「Dub Fi Gwan」です。
ミックスはKing Tubby。
こちらはベースを軸とした、比較的地味な
印象のダブです。

King Tubby & The Aggrovators - Dub Fi Gwan


13曲目は「Dub Investigation」です。
ミックスはPrince Jammy。
ベースを軸にコーラスなども入ったダブです。
ヴォーカルはCornell Campbellか?

14曲目は「Thunder Rock」です。
ミックスはPrince Jammy。
リディムはThe Uniquesのロックステディ
の名リディム「My Conversation」。
ヴォーカルはCornell Campbellのようです。
ベースを軸に、心地良いドラミングと耳に
残るエフェクトが印象的な曲です。

Cornel Campbell - Thunder Rock - King Tubby


15曲目は「Version Of Class」です。
ミックスはPrince Jammy。
こちらは耳に心地よいホーンから始まる
ダブです。

16曲目は「The Champion Version」です。
リディムは「Death In The Arena」として
知られる「Arena」のリディム。
ミックスはPrince Jammy。
レゲエの定番リディムのひとつですが、実は
ロックステディの時代のAlton Ellisのヒット
曲が原曲なんですね。

リズム特集 Arena (アリーナ)

17曲目は「Sly Want Dub」です。
ミックスはPrince Jammy。
曲はJohnny Clarkeのようです。
心地良いミリタント・ビートに乗せたダブ。

18曲目は「Higher Ranking」です。
ミックスはKing Tubby。
ディープ感のある、ベースを主体としたダブ。

19曲目は「Dreada Version」です。
リディムはJohnny Clarkeの「Dread A Dread」。
ミックスはPrince Jammy。
Johnny Clarkeの特徴的なヴォーカルと、
ホーンをうまく生かしたダブです。

King Tubby - Dreada Version


20曲目は「Peace And Love In The Dub」
です。
リディムはJohnny Clarkeの「Peace In
The Ghetto」。
ミックスはPrince Jammy。
ベースを軸に陰影のあるリズムが徐々に
盛り上がって行くダブです。

Peace and love in the dub - king tubby & Friends


21曲目は「Step It Up In Dub」です。
ミックスはScientist。
ベースを軸とした陰影の濃いダブです。

22曲目は「Chapter Of Money」です。
リディムはHorace Andyの「Money Money」
です。
ミックスはKing Tubby。
かなりユラユラ感が強烈なホーン・ダブ。

ざっと追いかけて来ましたが、こうして見て
くるとPrince Jammyのミックスしたダブが
多いのに対して、Scientistのミックスした
ダブが2曲と少ない事に気付かされます。
もしかしたらKing Tubby'sで働き始めた時期
の違いもあるのかもしれませんが、ミックス
を依頼するBunny LeeがPrince Jammyの
ミックスを好んだとか、そういう事情が
あったのかもしれません。

いずれにしてもこのKing Tubby'sという
スタジオは、70年代から80年代のレゲエ
という音楽を裏から支えた重要なスタジオ
だった事が解ります。
そこにはKing Tubbyという、職人肌の重要
人物が居たんですね。

彼は自分自身も音楽を作る人、芸術肌の
感性を持った人間だとは全く思っていな
かったと思います。
彼はあくまで諸君として音楽を考え、感覚
では無く論理的や物理的に音楽を考えたん
ですね。
実はそれが彼King Tubbyという人の凄い
ところで、彼のそうした発想は音楽に
それまでに無い視点をもたらしたん
ですね。

実は音楽的なものではなく、楽器に触れる
というもっと直接的、物理的な事から
生まれるものなのです。
その視点を彼は無意識の中で持っていた
んですね。
彼のそうした物理的な発想は、音楽に
新しい次元をもたらす事になるんですね。
現代の音楽はKing Tubbyから始まっている、
後世にそう呼ばれる存在に彼はなって
しまうんですね。

あなたが今聴いているすべての音楽は、
実はこの70年代のルーツ・レゲエの
時代に生まれた、実験的な音楽ダブから
始まっています。
それを生み出したのはKing Tubbyという、
感覚的・直感的にではなく物理的・論理的
に音楽を作ろうとした人物だった。
その事実は多くの人が憶えておくべき
事実だと思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: The Aggrovators
○アルバム: Dubbing At King Tubby's
○レーベル: VP Music Group
○フォーマット: CDx2
○オリジナル・アルバム制作年: 2016

○The Aggrovators「Dubbing At King Tubby's」曲目
Disc 1
1. Bag O Wire Dub (mixed by King Tubby)
2. Dub Of Rights (mixed by King Tubby/Prince Jammy)
3. Guidance Dub (mixed by King Tubby)
4. Hold Them In Dub (mixed by Prince Jammy)
5. Dub Ites Green And Gold (mixed by King Tubby)
6. A Heavy Dub (mixed by King Tubby)
7. Stealing Version (mixed by Phillip Smart)
8. The Poor Barber (mixed by King Tubby)
9. Real Gone Crazy Dub (mixed by King Tubby)
10. King Tubby's In Fine Style (mixed by King Tubby)
11. No Love Version (mixed by Phillip Smart)
12. A Living Version (mixed by King Tubby)
13. Six Million Dollar Version (mixed by Prince Jammy)
14. African Sounds (mixed by Prince Jammy)
15. A Stalawatt Version (mixed by King Tubby)
16. How Long Dub (mixed by Pat Kelly)
17. Breaking Up Dubwise (mixed by Prince Jammy)
18. Horn For I (mixed by Prince Jammy)
19. Drums Of Africa (mixed by Prince Jammy)
20. Dub To The Rescue (mixed by Prince Jammy)
21. Jah Love Rockers Dub (mixed by Prince Jammy)
22. Fatter Dub (mixed by Prince Jammy)
Disc 2
1. Satta Dread Dub (mixed by King Tubby)
2. Exalted Dub (mixed by Phillip Smart)
3. Tubby Get Smart (mixed by King Tubby)
4. Wreck Up A Version (mixed by Prince Jammy)
5. Beat Them In Dub (mixed by Prince Jammy)
6. Channel Is A Joker (mixed by Prince Jammy)
7. Channel One Under Heavy Manners (mixed by Prince Jammy)
8. Channel Get Knockout (mixed by Prince Jammy)
9. Everybody Needs Dub (mixed by Prince Jammy)
10. Dub With A View (mixed by Scientist)
11. Dub Is My Occupation (mixed by Prince Jammy)
12. Dub Fi Gwan (mixed by King Tubby)
13. Dub Investigation (mixed by Prince Jammy)
14. Thunder Rock (mixed by Prince Jammy)
15. Version Of Class (mixed by Prince Jammy)
16. The Champion Version (mixed by Prince Jammy)
17. Sly Want Dub (mixed by Prince Jammy)
18. Higher Ranking (mixed by King Tubby)
19. Dreada Version (mixed by Prince Jammy)
20. Peace And Love In The Dub (mixed by Prince Jammy)
21. Step It Up In Dub (mixed by Scientist)
22. Chapter Of Money (mixed by King Tubby)

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〇Aggrovators, Revolutionaries「Guerilla Dub」
〇Aggrovators「Kaya Dub」
〇Aggrovators「Rasta Dub '76」
〇Agrovators, Revolutionaries「Agrovators Meets The Revolutionaries At Channel 1 Studios」
〇Tommy McCook & The Agrovators「King Tubby Meets The Agrovators At Dub Station」
〇Tommy McCook and The Agrovators「Cookin'」
〇Various (The Aggrovators)「Jackpot Dub: Rare Dubs From Jackpot Records 1974-1976」
〇Bunny Lee & King Tubby Present Tommy McCook And The Aggravators「Brass Rockers」
〇King Tubby's (Prince Jammy) And The Agrovators, (Delroy Wilson)「Dubbing In The Back Yard / (Go Away Dream)」
〇Various「Rubadub Revolution: Early Dancehall Productions From Bunny Lee」
〇Various「When Jah Shall Come」
〇Professionals「Meet The Aggrovators At Joe Gibbs」
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〇King Tubby & Soul Syndicate「Freedom Sounds In Dub」
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〇Tommy McCook & The Agrovators「King Tubby Meets The Agrovators At Dub Station」
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〇Bunny Lee & King Tubby Present Tommy McCook And The Aggravators「Brass Rockers」
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〇Various「Once Upon A Time At King Tubbys」
〇Augustus Pablo「Ital Dub」
〇King Tubby's (Prince Jammy) And The Agrovators, (Delroy Wilson)「Dubbing In The Back Yard / (Go Away Dream)」
〇Harry Mudie, King Tubby「Harry Mudie Meets King Tubby's In Dub Conference Volume One」
〇Harry Mudie, King Tubby「Harry Mudie Meet King Tubby In Dub Conference Vol.2」
〇Harry Mudie, King Tubby「Harry Mudie Meet King Tubby In Dub Conference Vol.3」
〇Niney The Observer All Stars At King Tubby's「Dubbing With The Observer」
〇Niney The Observer「At King Tubby's: Dub Plate Special 1973-1975」