今回はRas Michael & The Sons Of Negusのアルバム

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「Kibir Am Lak」です。

Ras Michael & The Sons Of Negusはレゲエの
中でも特にディープな、ラスタファリアンの
集会音楽「ナイヤビンギ」のグループとして
知られています。
2002年シンコー・ミュージック刊行の本
「Roots Rock Reggae」にはこのグループに
ついて次のような記述があります。

「ラスタファリアンのコミュニティに育った生粋
のラスタであり、60年代の初頭にハンド・
ドラムとチャントを中心にしたグループ、サン
ズ・オブ・ニガスを結成したラス・マイケル。
アフリカン・ドラムとナイヤビンギ・サウンドの
結合、そこにルーツ・ロック・レゲエのエッセン
スを見事に溶け込ませていったパイオニアである。
ボブ・マーリー、ピーター・トッシュ、バーニン
グ・スピアーを筆頭にルーツ・レゲエのミュージ
シャンの多くがラス・マイケルから受ける影響、
すなわちルーツ・リズムの根底に流れる思想と
ふくよかなグルーヴ感を大切にしてきた。彼らの
多くがルーツ・マスターと呼び、敬意を表した
のである。」
(「Roots Rock Reggae」より「孝」さんという
方の解説文より)

つまりレゲエという音楽が誕生する以前の60年
代から、すでにThe Sons Of Negusを率いて活動し、
Bob MarleyやBurning Spearなどのルーツ・レゲエ
のアーティストにも影響を与えたのが、この
Ras Michaelなんですね。

Ras Michael - Wikipedia

今回のアルバムは1977年にRastafariと
いうレーベルから発表されたアルバムです。
Discogsなどの彼らの履歴を見ると5枚目
ぐらいのアルバムで、ナイヤビンギらしい
長い曲が多く、全8曲入りのアルバムに
なっています。

手に入れたのはCrocodiscというレーベルから
出ている、中古のCDでした。

全8曲で収録時間は約42分。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Musicians:
Trap Drums: Mickey Richards
Guitars: Earl 'Chinna' Smith, Sweeney ' The Man' Williams, Clarence Weirs
Keyboards: Bernard 'Touter' Harvey, Neville Hinds
Bass: Robbie Shakespeare
Trumpet: David Madden
Saxophone: Glen Da Costa
Ikety Funde: Bro. 'I' Jack, Bro. 'I' Marts
Bass Funde: Bro. Sydney 'Rasta' Wolfe
Repeter & Lead Vocal: Ras Michael

Recorded at E.T. Studio & Dynamic Sounds, Kingston, Jamaica
Recorded Engineer: Errol Thompson, Jerome Fransique
Arranged by: Tommy Cowan, Ras Michael
Produced by: Tommy Cowan

Front Cover Design by: Evelyne Grevellec

となっています。

ベースのRobbie Shakespeareやギターの
'Chinna' Smith、サックスでGlen Da Costa、
トランペットでDavid Maddenなどが参加して
います。
'Chinna' SmithはこのRas Michaelと縁が深く、
74年の「Freedom Sound」の頃から参加して
います。

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Ras Michael & The Sons Of Negus ‎– Freedom Sound (1974)

その「Freedom Sound」のジャケットでは、
チリチリパーマの'Chinna' Smithが写って
います。

またこのThe Sons Of Negusには、あの
Kiddus Iが参加していた事でも知られて
います。

さて今回のアルバムですが、このRas Michael
という人はナイヤビンギを意識したピュアな
部分と、ポピュラリティーを意識したイン
ピュア(不純)な部分の両面を持ち合わせて
いる人なんですね。
彼のアルバムを聴いていると、いつもその狭間
で揺れ続けている事がよく解ります。
それはある意味ミュージシャンを続ける為の
苦悩なのかもしれません。

最近2016年にThe Sons Of Negus名義の
「A Psalm Of Praises To The Most High
1967-1972」というアルバムが日本のDub Store
Recordsから出ましたが、ジャマイカ国内向け
に作られた曲ばかりを集めたアルバムでした
が、とてもこのグループのピュアな部分が出て
いて素晴らしいアルバムでした。

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The Sons Of Negus ‎– A Psalm Of Praises To The Most High 1967-1972 (2016)

ただ素晴らしいと思うのは今の時点から見て
の話で、例えば70年代当時にその音源を
世界に発表して受け入れられたか?その辺は
ちょっと微妙です。
おそらくこのRas Michaelはそうした苦悩を、
ずっと抱えていた人なんじゃないかと思い
ます。
彼のアルバムはどれも微妙に違っていて、
音楽の表現に微妙な「揺れ」があるんです
ね。

では今回のアルバムはどうかというと、これが
ピュアとインピュアが同時に収められたような
アルバムで、ファースト・インプレッションと
しては微妙なところがありました。
ただ何度か聴いているうちに、ピュアな要素
が優っているかなという気がしてきました。
特に1曲目「New Name」と4曲目「Zion Land」
は、彼の代表曲とも言える出来で必聴です。

1曲目は「New Name」です。
このアルバムで2番目に長い6分06秒の
曲です。
語りから入り、一気にナイヤビンギらしい
コーラス・ワーク、このグループの良さが
出た1曲です。

Ras Michael - New Name


2曲目は「Wicked Men」です。
アンニュイな空気から優しく語り掛ける
ような曲です。
使われているのはシンセか?
ポピュラリティーを意識した1曲。

3曲目は「No-Hoppers」です。
こちらも緩めのユッタリしたリズムから、
Ras Michaelのメッセージが語られる曲です。

4曲目は「Zion Land」です。
このアルバムの中でも白眉の1曲。
ユッタリとしたパーカッションのリズムに、
どんどんメディテーション空間に引きずり
込まれて行くような1曲。

Ras Michael - Zion Land


5曲目は「If You Only Knew」です。
このアルバムの中で一番長い7分30秒
にも及ぶ曲です。
こちらもスローなリズムに、力みのない
Ras Michaelの語りとヴォーカル、心地良い
グルーヴ感に満ちた曲です。

Ras Michael & The Sons Of Negus - If They Only


6曲目は「Babylon」です。
パーカッションに乗せた楽し気な曲です。

7曲目は「Booma Yeah」です。
空気感のあるギターのイントロから、Ras
Michaelのヴォーカルから徐々に盛り上がって
行く曲です。

8曲目は「Over The Mountain」です。
こちらはビンギ・ドラムからサックスが入り、
さらにMichaelのヴォーカルが入って来る、
心地良い曲です。

Ras Michael & The Sons of Negus - Over The Mountain


ざっと追いかけて来ましたが、1曲1曲追い
かけて行くと、けっこう良曲が多いアルバム
なんですね。
そういう意味ではすごく良いアルバムと言える
かもしれないのに、なぜか全体を通した印象が
ちょっと弱いアルバムなんですね。
その辺が少し惜しまれます。

ただナイヤビンギという特殊なジャンルで
頑張ったこのRas Michael & The Sons Of
Negusというグループは、やはりルーツ・
レゲエを語る上ではぜひ聴いてもらいたい
グループだと思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Ras Michael & The Sons Of Negus
○アルバム: Kibir Am Lak
○レーベル: Crocodisc
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1977

○Ras Michael & The Sons Of Negus「Kibir Am Lak」曲目
1. New Name
2. Wicked Men
3. No-Hoppers
4. Zion Land
5. If You Only Knew
6. Babylon
7. Booma Yeah
8. Over The Mountain

●今までアップしたRas Michael & The Sons Of Negus関連の記事
〇Ras Michael & The Sons Of Negus「Live Ina Babylon」
〇Ras Michael & The Sons Of Negus「Love Thy Neighbour」
〇Ras Michael & The Sons Of Negus「Movements」
〇Ras Michael & The Sons Of Negus「Rastafari Dub」
〇Ras Michael & The Sons Of Negus「Rastafari」
〇Ras Michael & The Sons Of Negus「Revelation」
〇Ras Michael & The Sons Of Negus「Disarmament」
〇Ras Michael And The Sons Of Negus「Nyahbinghi」
〇Ras Michael & The Sons Of Negus With Jazzboe Abubaka「Tribute To The Emperor」
〇Sons Of Negus「A Psalm Of Praises To The Most High 1967-1972」