今回はU Royのアルバム

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「Rasta Ambassador」です。

U Royはレゲエのディージェイ・スタイルを
確立したディージェイとしてよく知られて
います。
それまでもCount MachukiやKing Stittなど、
サウンド・システムで曲と曲の間や間奏部分
で「掛け声係」として観客を盛り上げる
ディージェイという職業はジャマイカにあった
のですが、曲の中でしゃべる「トースティング」
を始めたのは彼が最初だと言われています。
そのトースティングでU Royは70年代初めの
ルーツ期にディージェイの大ブームを起こし、
一躍人気者となるんですね。
彼のファースト・アルバム「Version Galore」
は、世界初のディージェイ・アルバムとして
知られています。

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U Roy ‎– Version Galore (1971)

このディージェイ・スタイルは70年代の
ルーツ・レゲエの時代にジャマイカで大流行し、
すぐにI RoyやBig Youthなど多くの追随者を
生み、やがてそのスタイルはアメリカのラップ
という音楽も生み出す事になるんですね。
そのため彼U Royは「元祖ラッパー」と言わ
れる事があります。

アーティスト特集 U Roy (U ・ロイ)

今回のアルバムは1977年にVirgin
レーベルから発売されたアルバムです。

レゲエレコード・コムのこのアルバムの紹介
ページには「復帰後の2NDアルバム!」と
書かれていました。
U Royは一時自分の模倣者の多さに嫌気が
さし、引退状態になっていた事があります。
その復帰後の2作目という事のようですが、
実際にそうだったのかは解りませんでした。

手に入れたのはVirginから出ている中古の
CDでした。

全10曲で収録時間は約40分。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Recorded at Harry J Studios
Engineers: Silvester Morris, Errol T.

Bass: Robbie Shakespear, Clinton Fearon
Drums: Sly Dunbar
Lead Guitar: Albert 'Gladiator' Griffiths, Ranchie
Rhythm Guitar: Duggie
Piano: Ansel Collins
Synthesizer: Earl 'Wire' Lindo
Percussion: Stickie
Vocals: Wayne Jarrett, Albert Griffiths & The Gladiators, Naggo Morris

Lyrics: U-Roy, Prince Tony
Produced by: Prince Tony Robinson
Illustration: Wurlitzer

となっています。

レコーディングはHarry J Studiosで、
エンジニアはSilvester MorrisとErrol T.。
Silvester MorrisはDub Specialistとして
Studio Oneのダブを作った事でも知られる
Sylvan Morrisの事と思われます。
Errol T.はRandy'sやJoe Gibbsなどでミキサー
として活躍したErrol Thompsonです。

ベースのClinton Fearonとリード・ギターの
Albert 'Gladiator' Griffithsは、ルーツ期
に活躍したThe Gladiatorsのメンバーです。

黒い鳥がオリーブを咥えた印象的なイラスト
は、Wurlitzerという人が描いています。

さて今回のアルバムですが、とても聴き易い
楽しい印象のアルバムという気がしました。
このU Royはもともと陽性なウィキッドな
トースティングが持ち味という人ですが、
このアルバムあたりからより楽し気な
トースティングになって行くんですね。
今回のアルバムではトースティングだけでは
なく、実際に歌っているシング・ジェイの
スタイルも披露していますが、そうした
エンターテイメント性を重視した人に真似の
出来ない楽しいスタイルへと、彼自身の
スタイルが変わって行くんですね。
「元祖」として活躍した人は、あくまでも
オリジネイターとしてのトースティングを
追及し続ける、そこにこのU Royという
ディージェイの矜持が見えます。

そのリラックスしたトースティングは、理屈
を超えてとても魅力的です。

1曲目は「Control Tower」です。
電話のベルから始まる、「U Roy劇場」の
幕開けを告げる1曲。
ダブワイズされた楽曲に乗せた、エコーの
効いたトースティングが冴えます。

U Roy Control Tower


2曲目は「Wear You To The Ball」です。
John Holtが在籍した事で知られるThe
Paragonsのロックステディ時代の名曲
「Wear You To The Ball」のリディムです。
初期のアルバムでも得意としたロックステディ
のリズムを、心地良さそうに乗りこなして
います。

U Roy Rasta Ambassador 1977 02 Wear You To The Ball U Roy


3曲目は「Evil Doers」です。
こちらはエコーの効いたダブワイズした
空間での、ちょっとストイックなトース
ティング。
クールでありながらホット。

4曲目は「Mr Slave Driver」です。
こちらは泣きのメロディに、クールな
トースティングが冴えます。

5曲目は「Small Axe」です。
こちらはBob Marley & Wailersの同名曲の
リディムです。
このアルバムで一番長い5分24秒の曲です。

U Roy Small Axe (Version)


6曲目は「Come Home Little Girl」です。
こちらはロックステディ時代のThe Melodians
のヒット曲「Come On Little Girl」のリディム
です。
ダブワイズしたバックに負けない、U Royの
力強いトースティングが冴えます。

U☆Roy - Come Home Little Girl


リズム特集 Come On Little Girl (カム・オン・リトル・ガール)

7曲目は「Say You」です。
歌声はNaggo Morrisのようです。
ファルセット気味の爽やかな歌声にダブ
ワイズ、それに被さるように入って来る
U Royのトースティングと、楽しさ満点の
曲です。

8曲目は「No More War」です。
こちらもダブワイズしたバックに、U Royの
ウィキッドなトースティングが冴えます。

9曲目は「Tide Is High」です。
こちらはロックステディ時代のThe Paragons
の同名ヒット曲のリディム。
ダブワイズが効いた1曲。

U Roy The Tide Is High (Version)


リズム特集 Tide Is High (タイド・イズ・ハイ)

10曲目は「Jah Jah」です。
ホーンのメロディに乗せたトースティング。
こちらもダブワイズした楽曲ですが、難なく
歌いこなす実力を見せています。

ざっと追いかけて来ましたが、今回のアルバム
の曲はダブワイズした曲が多く収められて
います。
レゲエレコード・コムの彼のページなどを
見ると、彼はこうしたダブを使った曲が苦手
という言われのない非難をウケていた事が
あるようです。
その事がこのアルバムに影響しているかは
解りませんが、少なくともこのアルバムでは
そうした楽曲にもスムーズに対応している
事は事実です。

人々を笑顔にするような楽しいトース
ティング、それが彼U Royの真骨頂と言える
かもしれません。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: U Roy
○アルバム: Rasta Ambassador
○レーベル: Virgin
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1977

○U Roy「Rasta Ambassador」曲目
1. Control Tower
2. Wear You To The Ball
3. Evil Doers
4. Mr Slave Driver
5. Small Axe
6. Come Home Little Girl
7. Say You
8. No More War
9. Tide Is High
10. Jah Jah

●今までアップしたU-Roy関連の記事
〇U Roy & Friends「With A Flick Of My Musical Wrist: Jamaican Deejay Music 1970-1973」
〇U Roy「30 Massive Shots From Treasure Isle」
〇U Roy「Hold On Rasta」
〇U Roy「I Am The Originator」
〇U Roy「Jah Son Of Africa」
〇U Roy「Old School / New Rules」
〇U Roy「Smile A While」
〇U Roy「True Born African」
〇U Roy「Version Galore」
〇U-Roy「Dread In A Babylon」
〇Various「When Jah Shall Come」
〇Niney The Observer「Microphone Attack 1974-78」
〇Various「King Jammy Presents New Sounds Of Freedom」