今回はVarious(オムニバス)もののアルバム

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「From 'Bam-Bam' To 'Cherry Oh! Baby'」です。

ネットの情報によると今回のアルバムは、
1966年から72年までの「ジャマイカ・
ソング・フェスティバル」の入賞曲を
集めたアルバムなんだそうです。
66年から68年というとジャマイカでは、
66~68年のわずか3年間だけ流行した
レゲエの前身の音楽ロックステディの時代
から、アーリー・レゲエの時代という事に
なります。

ロックステディ - Wikipedia

要するにレゲエが世界的に認められる
ちょっと前ぐらいの時代のジャマイカの
音楽が収められたアルバムなんですね。
おそらくこの頃になると音楽産業も盛ん
になって来て、こうしたフェスティバルも
行われるようになっていたんだと思います。

タイトルにあるように、Toots & The
Maytalsの「Bam-Bam」から、The Jamaicans
の「Ba Ba Boom」、Eric Donaldsonの
「Cherry Oh! Baby」までが収めれていて、
この時代の熱い空気感が伝わって来る
アルバムになっています。

手に入れたのはJamaican Goldというレーベル
の中古のCDでした。

全10曲で収録時間は30分43秒。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Producers: Bylon Lee, Leslie Kong, Tommy Cowan, Duke Reid,
Warwick Lyn, Alvin Ranglin, Lee Perry, Bunny Lee
Engineers: Carlton Lee, Carl Pitterson, Barry Lambert, George Philpotts
Photographs: the Daily Gleaner
Front coverdesign LP by H.M.Young
Front coverdesign CD by Studio Eric Wondergem bNO Baarn, Holland
Degital transfer from the original mastertape done at Dynamic studio
by Sylvan Morris, assisted by Aad van der Haek

となっています。

プロデューサーやエンジニアの名前がやたら
と多いのは、多くのプロデューサーがこの
フェスティバルに協力した為か?

オリジナルのカヴァー・デザインは、CD
ジャケットの右上のあたりで、Jamaican Gold
の文字で隠れているあたりには、スポンサー
の航空会社の名前が入っていたんだとか。

さて今回のアルバムですが、これから登って
行く「太陽」であったレゲエの勢いを感じる
アルバムで、なかなか御白いと思います。
アルバムに収められているアーティストは、
Toots & The Maytals、The Jamaicans、
Desmond Dekker & The Aces、Hopeton Lewis
& The Chosen Few、Billy Dice、Junior Byles、
Derrick Morgan、Eric Donaldsonの8組で、
Toots & The Maytalsが3曲で残りは各1曲
ずつが収められています。
無名に近いのはBilly Diceぐらいで、あとは
スカやロックステディ、アーリー・レゲエで
活躍した人ばかりです。
特にToots & The Maytalsの「Bam-Bam」や
The Jamaicansの「Ba Ba Boom」、Eric
Donaldsonの「Cherry Oh! Baby」の3曲は
この時代のレゲエを聴いている人なら
知らない人は居ない有名リディムで、後々
まで何回もリピートされて愛され続けて
います。

ある意味ちょっと安っぽさもあるし、完成
されていないけれど、勢いがあるのがこの
時代の魅力と、言えるかもしれません。

2003年リットーミュージック刊行の本
「スカ・ディスク・ガイド」にはこのアルバム
が紹介されていて、そこには「本根」さんと
いう方の文章で次のように書かれています。

「トゥーツ&ザ・メイタルズの表題曲(66年)
をはじめ、ジャマイカンズの「Ba Ba Boom」
(67年)など、ジャマイカ・ソング・フェス
ティヴァル・コンテスト(という催しがあった
らしい)の優勝者がずらりと並んだコンピ。
自社LPにジャマイカ航空の入れちゃうくらい
ジャマイカの国際化に力を入れたプロデュー
サー、バイロン・リーによる労作。中にはモロ
にフェスティヴァル用お世辞ソングも入って
いる。作られたイタナさだけど、拒めない魅力
がある1枚。」
(「スカ・ディスク・ガイド」より「本根」
さんという方のアルバム評より。)

「拒めない魅力」というのはちょっとオー
ヴァーかなという気がしますが、そうした
「御用ソング」も含めて、時代の空気を伝える
良いコンピである事は間違いがありません。

1曲目はToots & The Maytalsの「Bam-Bam」
です。
Toots & The Maytalsのロックステディの時代
の66年のヒット曲のようです。
アーリー・レゲエの時代に「Monkey Man」など
の「スキンヘッド・レゲエ」で人気を博す彼ら
ですが、すでにこの頃から充分な魅力を持った
楽曲を作っています。
間違いなく初期のレゲエをけん引した、グルー
プのひとつが彼らだったんですね。

THE MAYTALS - BAM BAM.wmv


アーティスト特集 Toots & The Maytals(トゥーツ&ザ・メイタルズ)

リズム特集 Bam Bam/Murder She Wrote (バン・バン/マーダー・シー・ロート)

2曲目はThe Jamaicansの「Ba Ba Boom」
です。
書かれているように、この曲は67年の
優勝曲のようです。
ロックステディの時代に活躍した彼らです
が、この曲はその後も名リディムとして
長く愛され続ける曲になるんですね。

The Jamaicans - BaBa Boom


The Jamaicans - Wikipedia

リズム特集 Ba Ba Boom (バ・バ・ブーム)

3曲目はDesmond Dekker & The Acesの
「Intensified」です。
Desmond Dekkerもロックステディの時代に
活躍した名シンガーです。
「007 Shanty Town」で、イギリスのヒット・
チャートでスマッシュ・ヒットを記録して
います。
こちらはバックのコーラス・グループThe Aces
を従えた、ロックステディの曲です。

Desmond Dekker & The Aces - Intensified '68 (aka Music Like Dirt)


アーティスト特集 Desmond Dekker (デズモンド・デッカー)

4曲目は再びToots & The Maytalsの「Sweet
& Dandy」です。1969
こちらはネットのDiscogsなどで調べると、
1969年頃の曲のようです。
この頃になると、もうシッカリと初期レゲエ
の特徴が現れています。
イギリスのスキン・ヘッドに愛された軽快な
リズムは、今聴いてもとても心地良いです。

5曲目はHopeton Lewis & The Chosen Fewの
「Boom Shacka Lacka」です。
Hopeton Lewisはロックステディの時代に
人気を博したシンガーです。
こちらは69年ぐらいの曲のようですが、
いくぶんロックステディの匂いを残した
曲調です。

Hopeton Lewis - Wikipedia

6曲目はBilly Diceの「Unity Is Love」
です。
こちらはあまり名前を知られていない人の
ようです。

BILLY DYCE & THE UNTOUCHABLES - Unity is love (1972 Champion)


7曲目はJunior Bylesの「Da Da」です。
こちらはルーツ期に活躍した名シンガーの
1曲です。
フェスティバル用という事でか、明るい
メロディの曲です。

アーティスト特集 Junior Byles (ジュニア・バイルズ)

8曲目はToots & The Maytalsの「Pomps
And Pride」です。
こちらは派手なブラスをバックとした、
完全にレゲエのリズムの曲です。

9曲目はDerrick Morganの「Festival 10」
です。
スカからロックステディの時代に活躍した人
ですが、こちらは完全にフェスティバルを
意識した明るい曲です。

アーティスト特集 Derrick Morgan (デリック・モーガン)

10曲目はEric Donaldsonの「Cherry Oh!
Baby」です。
こちらはあのThe Rolling Stonesまでカヴァー
した初期レゲエの人気曲です。

Eric Donaldson - Cherry Oh Baby


Eric Donaldson - Wikipedia

リズム特集 Cherry Oh Baby (チェリー・オー・ベイビー)

エリック・ドナルドソン(Eric Donaldson) - Cherry Oh Baby - 1971 - リリック

ざっと追いかけて来ましたが、このロック
ステディ→アーリー・レゲエという時代は、
レゲエが世界の音楽として飛躍して行く
もっとも重要な時代だったんですね。
今回のアルバムなどを聴いても、いかにも
この時代らしい雑っぽさやアラも少し見える
のですが、やはりこの時代にあった大きな
エネルギーもチラチラと感じるんですね。
そこがこのアルバムの一番面白いところ
だと思います。

機会があれば聴いてみてください。


○アーティスト: Various
○アルバム: From 'Bam-Bam' To 'Cherry Oh! Baby'
○レーベル: Jamaican Gold
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1972

○Various「From 'Bam-Bam' To 'Cherry Oh! Baby'」曲目
1. Bam-Bam – Toots & The Maytals
2. Ba Ba Boom – The Jamaicans
3. Intensified – Desmond Dekker & The Aces
4. Sweet & Dandy – Toots & The Maytals
5. Boom Shacka Lacka – Hopeton Lewis & The Chosen Few
6. Unity Is Love – Billy Dice
7. Da Da – Junior Byles
8. Pomps And Pride – Toots & The Maytals
9. Festival 10 – Derrick Morgan
10. Cherry Oh! Baby – Eric Donaldson