今回はMad Professor & Jah Shakaのアルバム

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「New Decade Of Dub +5」です。

Mad Professorは80年代からイギリスの自分
のスタジオAriwaを拠点に活動を続けるプロ
デューサーであり、ダブのクリエイターである
人です。
プロデューサーとしてはSandra Crossなど多く
のラヴァーズロック・レゲエのアーティストの
プロデュースや、Massive AttackやJamiroquai
など他ジャンルのアーティストのプロデュース
まで幅広いジャンルのアーティストをプロデュー
スしています。
また「Dub Me Crazy」シリーズや「Black
Liberation Dub」シリーズなどの数多くのダブ
を作った事でもよく知られています。

レーベル特集 Ariwa (アリワ)

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Mad Professor - Dub Me Crazy (1982)

Jah Shakaはイギリスを拠点に自身のレーベル
「Jah Shaka」を率いて80年代からルーツ・
レゲエを追求し続けているプロデューサーです。
彼は80年代の初めから数多くのダブのアルバム
を作り続け、「Commandments Of Dub」シリーズ
や「Dub Salute」シリーズなど、数多くの作品
を残しています。

Jah Shaka (ジャー・シャカ)

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Jah Shaka ‎– Dub Salute 1 (1994)

今回のアルバムは1996年に発表された
Mad ProfessorとJah Shakaの競演アルバム
です。
この2人にはUKで活躍するダブ・クリエイ
ターという共通点があり、80年代に2人が
活躍し始めた頃からの親交があるんですね。
1984年には2人がLPの片面ずつを
プロデュースしたダブ・アルバム「Jah Shaka
Meets Mad Professor: At Ariwa Sounds」を
発表しています。

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Jah Shaka, Mad Professor - Jah Shaka Meets Mad Professor: At Ariwa Sounds (1984)

それから12年経って作られた今回のアルバム
は、その続編という意味合いのアルバムです。
12年前に作られたアルバムは片面ずつを
お互いがプロデュースする形でしたが、今回の
アルバムは2人が共同で制作する形をとって
います。

今回手に入れてアルバムは昨年2015年に、
日本のUltra-Vibesからデジタル・リマスタ
リングされて再発されたCDで、オリジナル
の11曲にプラスして、84年のアルバム
「Jah Shaka Meets Mad Professor: At Ariwa
Sounds」からMad Professorプロデュースの
5曲が収録された全16曲入りのアルバムに
なっています。

全16曲で収録時間は62分02秒。
オリジナルの曲は11曲で、残りの5曲は
84年のアルバム「Jah Shaka Meets Mad
Professor: At Ariwa Sounds」から「Mad
Professor Side」の5曲が追加されていま
す。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Produced by Mad Professor & Jah Shaka
Mixed by Mad Professor
Recorded & Mixed at Ariwa Studios
Speech: Louis Farrakhan
Drums: Sinclair Seales
Bass: Eddie Brown
Keyboards: Victor Cross
Guitars: Black Steel
Percussion: Drumtan Ward
D-Zine: TMcD

となっています。

レコーディングとミックスはAriwa Studios
で、プロデュースはMad ProfessorとJah Shaka、
ミックスはMad Professor、演奏はBlack Steel
をはじめとするAriwaのメンバーが行っている
ようです。

最後に書いてある「D-Zine: TMcD」は、解り
にくいですが、
Design: Tony McDermott
の略のようです。

Tony McDermottはScientistの「漫画ジャケ」
シリーズやMad Professorの「Dub Me Crazy」
シリーズで知られるデザイナーです。
確か前回の「At Ariwa Sounds」のデザインも
この人なんですね。
全開のアルバムもMad ProfessorとJah Shaka
の「影」をモチーフにしたデザインをして
いますが、今回も似たデザインをしています。

今回の日本盤の帯には、次のような文章が
付いていました。

「1984年にJah-Shakaレーベルからリリース
された『At Ariwa Sounds』の続編として制作さ
れたUKルーツ・レゲエの祖であるジャー・
シャカとマッド・プロフェッサーがタッグを組
んだ強力なUKダブの傑作アルバム!ボーナス・
トラック追加収録。日本初CD化!」

どうやら日本では初CD化されたアルバム
らしいです。

さらに表ジャケが小冊子になっていて、そこ
には河村祐介さんという方の解説文が載って
いました。
要約するとMad ProfessorよりもJah Shaka
のストイックな個性がより強く出たアルバム
で、「ベーシック・チャンネルにも影響を
与えたとされるシャカのストイックでミニ
マルなダブ・ミックスの魅力を感じることの
できるアルバム」という事が書かれています。

ちなみにこの96年当時というのは、Mad
Professorは「Black Liberation Dub」シリー
ズなどを制作していた時期、Jah Shakaは
「Dub Salute」シリーズなどを制作していた
時期にあたります。

さて今回のアルバムですが、デジタル感の
強いダブですが、言われてみると確かに
Jah Shakaの禁欲的な匂いのするダブに近い
ダブという気が、しないでもありません。
ただMad Professor自身もこの時期は、
以前の冷笑的な遊び心溢れるダブから
ある程度ルーツ・レゲエを意識した「Black
Liberation Dub」シリーズを制作していた
時期なんですよね。
そういう意味では両社の志向する方向性が、
もっとも一致していた時期と見る事も出来
ます。
Mad Professor自身にも、このJah Shakaと
仕事をすることは、すごく意義のある事
だったんじゃないかと思います。

このアルバムなどを聴くと、やはりこの2人
が80年以降にジャマイカのダブとまったく
違うダブを生み出し続けてきた事に、あらた
めて感心させられます。
ジャマイカのダブは80年以降徐々に衰退して
しまいますが、70年代に誕生したすごく実験
的で魅力的な音楽ダブを、この2人は新しい
魅力を発見する事で生き延びさせ続けた功労者
である事に、あらためて気付かされます。

そうした2人が作ったダブは、たとえ12年
の歳月が経過しようと、やっぱり魅力的で
輝いているんですね。

1曲目は「Ecological Dub」です。
ホーンのサウンドからパーカッションやエフェ
クトなどをうまく駆使したダブです。
遠くで聞こえるような演説ともトースティング
とも区別がつかないようなヴォイス…。
一見デジタルでもデジタルでない、独特の
Ariwa Soundsの音作りがうまく生きたダブです。

Mad Professor & Jah Shaka - Ecological Dub


2曲目は「Natural Roots」です。
ギターのフレーズのイントロから、パーカッ
ションの心地よいサウンドが冴えるダブです。

Mad Professor & Jah Shaka - Natural Roots


3曲目は「One Million Man Dub」です。
こちらはシンセのメロディに、パーカッション
の心地良いリズムといったダブ。

4曲目は「Wig Wam」です。
こちらは心地よいパーカッションを中心と
した曲です。
今回のアルバムではこうしたパーカッション
が効いている曲が多いんですね。
また解説文などを読むと「ステッパー・
リディム」も特徴のひとつのようです。

Mad Professor & Jah Shaka - Wig Wam


5曲目は「Chanting Down The Wicked」
です。
こちらもシンセとパーカッションが冴える曲
です。

6曲目は表題曲の「New Decade Dub」です。
こちらはギターのメロディとパーカッション、
ヴォイスにエフェクトといった組み合わせ。
派手さはないけれどパーカッション(ビンギ・
ドラム)を中心とした、シッカリした音作り
が今回のアルバムの魅力です。

Mad Professor & Jah Shaka - New Decade Dub


7曲目は「Gautrey Road Style」です。
こちらはベースとドラムのリズム隊が、前面
に出た曲です。

8曲目は「Roots Jamboree」です。
こちらはホーンをうまく配した1曲。
パーカッションのリズムを要所でうまく
盛り上げています。

Mad Professor & Jah Shaka - New Decade Of Dub - 08 Roots Jamboree.wmv


9曲目は「Zulu Hut」です。
こちらはギターのイントロから、パーカッ
ションを軸に、ヴォイスやエフェクトで
うまくアクセントを付けた曲です。

Mad Professor & Jah Shaka - Zulu Hut


10曲目は「Only One God」です。
こちらはギターとベースを軸に、パーカッ
ションのリズムで疾走感を演出している
ダブです。

Mad Professor & Jah Shaka - Only One God


11~16曲目までは84年のアルバム
「At Ariwa Sounds」から「Mad Professor
Side(A面)」の5曲が収められています。
こちらはいかにもMad Professorらしさの
あるダブですが、ここでは割愛します。

ざっと追いかけて来ましたが、例えば今回
ボーナス・トラックとして収められている
12年前の5曲と較べても、この2人の
作ろうとしている音楽のスタンス自体は
12年前と全くと言えるほど変わっていない
んですね。
また情熱もけっして衰えていません。
このUKにそうした情熱を持ち続けるダブの
アーティストが居たという事が、80年代
以降もUKでダブという音楽が廃れなかった
一番大きな要因なんですね。

そうした「同志」のような関係の2人が
また12年後に再開しアルバムを作る、
それだけでも素晴らしい事ですが、彼らの
魂はまだ衰える事を知らないんですね。
今回のアルバムでもビンギ・ドラムを中心に、
攻撃的でストイックな素晴らしいダブを
聴かせています。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Mad Professor & Jah Shaka
○アルバム: New Decade Of Dub +5
○レーベル: Ultra-Vibes
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1996

○「New Decade Of Dub +5」曲目
1. Ecological Dub
2. Natural Roots
3. One Million Man Dub
4. Wig Wam
5. Chanting Down The Wicked
6. New Decade Dub
7. Gautrey Road Style
8. Roots Jamboree
9. Zulu Hut
10. Morphing Dub
11. Only One God
(CD Bonus Tracks)
12. Creation Dub
13. Atmospheric Dub
14. Claps Like Thunder
15. People Of Yoruba
16. Rorima