今回はThe Revolutionariesのアルバム

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「Dub Out Her Blouse & Skirt Volume 1」です。

The RevolutionariesはHookim兄弟が率いる
レーベルChannel Oneで活躍した、ドラムの
Sly Dunbarをリーダーとするバック・バンド
です。

この時代のジャマイカのバック・バンドは、
その時集まれるミュージシャンが集まって
録るという「プラスティック・バンド」の
形式が当たり前だったんですね。
その為The RevolutionariesやThe Aggrovators、
The Professionalsなどと名前が違っても、
けっこう同じ人がいろいろなバンドで演奏
しているんですね。
メンバーが固定ではないので、バンド名
というのはどのレーベルで演奏したかという
事の色分けで使われているんですね。
例えばChannel Oneで演奏すればThe
Revolutionaries、Bunny Leeの元で演奏
すればThe Aggrovators、Joe Gibbsだった
らThe Professionalsといった感じです。

このThe Revolutionariesもドラマーの
Sly Dunbarを実質的なリーダーとし、
攻撃的なミリタント・ビートをウリにした
バック・バンドという事は決まっていても、
メンバーはある程度流動的だったんですね。
ただそのグループによって音の使い分けは
多少あったようで、このThe Revolutionaries
は70年代後半のルーツ・レゲエの時代に
ミリタント・ビートをウリに最も人気の
あったグループだったようです。

The Revolutionaries - Wikipedia

レーベル特集 Channel One (チャンネル・ワン)

ネットのレゲエレコード・コムやdisk union
などのこのアルバムの紹介ページによると、
今回のアルバムは後にPenthouseレーベル
を立ち上げるDonovan Germainがプロデュース
した、彼の初期のダブ・アルバムという事
です。
制作年は1979年で、表ジャケ左下にある
Revolutionary Soundsというのが、彼の使って
いたレーベル名のようです。

そのせいか販売サイトによっては、アーティ
スト名がRevolutionary Soundsとなっている
ところもありました。
裏ジャケにはミュージシャン名がThe
Revolutionaries書いてありますが、上に説明
したように本来はChannel Oneから出たアルバム
のバックがThe Revolutionariesなんですが、
Channel Oneで録音したアルバムで、ミュージ
シャンもThe Revolutionariesと変わらないの
で、The Revolutionariesとなっているよう
です。

ただHookim兄弟がプロデュースしたアルバム
とは、若干サウンドが異なっているようです。
The Revolutionariesというと攻撃的なミリ
タント・ビートがウリのバンドですが、
今回のアルバムではダンスホールで大流行
するワン・ドロップの曲が多く収められて
います。
要するに純粋にThe Revolutionariesとして
演奏している時よりも、プロデューサーの
Donovan Germainの好みの音に柔軟に対応して
いるんですね。

そういう意味ではThe Revolutionariesという
よりは、Donovan GermainのバンドRevolutionary
Sounds BandあるいはRevolutionary Sounds
All Starsといった名前の方が良いのかもしれ
ません。

手に入れたのは今年2016年に、Bond Export
というレーベルから再発されたCDでした。

全10曲で収録時間は33分20秒。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Recorded at Channel One and Joe Gibbs Studios
Engineer: Bunny, Maxie, E.T.
Mixed by: E.T. and Errol Brown

Musicians: The Revolutionaries

Produced by: D. Germain

Cover Design & Illusrations: Dennis/Pitter Graphic Studio

となっています。

録音はChannel OneとJoe Gibbsで、エンジニア
はBunnyとMaxie(おそらくChannel One)と、
E.T.ことErrol Thompson(おそらくJoe Gibbs)、
ミックスはE.T.とErrol Brownが担当して
います。

バックはThe Revolutionariesとしか記載され
ていません。
やはり際立つのは、おそらくSly Dunbarと思わ
れるドラミングです。
ネットのdisk unionのアルバム評でも「鋭い
ハット」と書かれていますが、力強いドラミング
がこのアルバムの魅力になっています。

印象的なイラストはDennis/Pitter Graphic
Studioという人達の作品のようです。
この絡み合うような男女のイラスト、シリーズ
化されているようで、服装やバックを変えた
ものがいくつか存在するようです。
このThe Revolutionariesのものももう1枚
ありますが、コンピュレーションなどでも
似たデザインのイラストのものがあります。

面白いのはこのイラストから、すでに次
のダンスホール・レゲエの時代の匂いが
プンプンと感じられる事です。
Donovan Germainは1988年にPenthouse
レーベルを立ち上げて、現在までレゲエ・
レーベルの老舗として活躍する事になるの
ですが、この70年代の終わり頃に彼の志向
はすでにルーツにはなく、ダンスホール・
レゲエに向いていた事がよく解ります。

さて今回のアルバムですが、このアルバムで
聴かれるサウンドは、すでにルーツという
よりは次のレゲエを志向するサウンドなん
ですね。
それがまだハッキリとダンスホール・レゲエ
とは解っていない時代だったのかもしれま
せんが、ここではすでにダンス・ミュージック
としてのレゲエを模索する感じがハッキリと
出ているんですね。

音楽自体はまだルーツの匂いを残している
ものの、このアルバムにはすでにそうした
新しい音楽を模索する姿勢、エネルギーが
色濃く感じられるんですね。
それが今回のアルバムの面白さだと思います。

書いたようにバックの演奏陣では、Sly Dunbar
と思われる力強いドラミングが、このアルバム
に息吹を吹き込んでいます。
またホーンが3曲ぐらいしか入っていなダブ
なので、Robbie Shakespeareと思われる
ベースを中心とした演奏が多く、後のアーリー・
ダンスホールでのベースを中心としたダブを
連想させるところもあります。

注意深く聴くと、明らかにダンスホール・
レゲエの萌芽が感じられるアルバムなんです
ね。
またErrol ThompsonとErrol Brownの比較的
ポップなミックスも、魅力のひとつかもしれ
ません。

1曲目は「Wisdom Dub」です。
頭からシンセ・ドラムの「飛び音」満載の
演奏です。
この時代からデジタルが徐々にレゲエにも
入り込んで来て、80年代半ばのデジタルの
ダンスホール・レゲエの大ブレイクに繋がる
んですね。
そうした予兆を感じさせる勢いのある曲です。

The Revolutionaries - Wisdom Dub


2曲目は「Juliet's Delight」です。
こちらはユッタリドしたワン・ドロップの
リズムの曲です。
80年代初めのアーリー・ダンスホールでは、
こうしたスローなワン・ドロップのリズムが
流行するんですね。
ズンと重いベースを中心とした演奏は、初期
のダンスホールを感じさせるものがあります。

3曲目は「Festus Style」です。
こちらも重いベースを中心としたワン・
ドロップの演奏で、それに飛び音などで
うまくアクセントを付けています。

Revolutionaries - Festus Style


4曲目は「So Much Dub」です。
こちらは甲高い電子オルガンのようなサウンド
が中心のダブ。
それとピアノのメロディがうまくこのワン・
ドロップのサウンドを支えています。

5曲目は「Craven Park Dub」です。
こちらは泣きのギターを中心に、ちょっと
ヴォーカルも入った1曲。
エフェクトも巧みで、ポジティブな空気感が
心地良いダブです。

The Revolutionaries - Craven Park Dub


6曲目は「Don't Break This Dub」です。
こちらこのアルバムの中でも少ないホーンが
入ったダブです。
ベースを軸にしながらも、派手目のドラムと
ホーンでウマく味付けをしています。

Revolutionaries - Don't Break This Dub 1979 (Reggae-Wise)


7曲目は「Ready To Dub」です。
こちらもホーンを効果的に使ったダブです。

8曲目は「Hot Stepping Dub」です。
こちらもベースを軸にしながらも、ホーンに
乗せたダブです。
独特なキュッキュッいう効果音もイイ味を
出しています。

Revolutionary Sounds - Hot Stepping Dub


9曲目は「Central Dub」です。
心地良いドラミングからズンと響くベース、
刻むようなギターと勢いのあるリズムが心地
良い曲です。

Revolutionaries - Central Dub


10曲目は「Cultural Rock」です。
こちらはベースを軸に、オルガンのメロディ
などが絡むダブです。

ざっと追いかけて来ましたが、6~7曲目まで
の3曲はホーン・ダブですが、そちらは比較的
ルーツに近いクラッシックな印象。
むしろベースを中心としたワン・ドロップの
シンプルな演奏の方が後のダブを感じさせる
ものがあります。
Errol ThompsonとErrol Brownの飛び音を
ふんだんに使った、ポップなダブ処理も悪く
ないです。

この70年代後期のThe Revolutionaries
というと、Ernest Hookimのインストに近い
ような禁欲的なダブ処理が印象に残りますが、
それと較べると今回のアルバムはプロデュー
サーもミキサーも違うので、よりポップで
快楽的な音処理の印象。
それが華やかな感じで悪くないんですね。
すごく聴き心地の良いダブだと思いました。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: The Revolutionaries
○アルバム: Dub Out Her Blouse & Skirt Volume 1
○レーベル: Bond Export
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1979

○The Revolutionaries「Dub Out Her Blouse & Skirt Volume 1」曲目
1. Wisdom Dub
2. Juliet's Delight
3. Festus Style
4. So Much Dub
5. Craven Park Dub
6. Don't Break This Dub
7. Ready To Dub
8. Hot Stepping Dub
9. Central Dub
10. Cultural Rock

●今までアップしたRevolutionaries関連の記事
〇Revolutionaries (G.G.'s All Stars)「Macca Rootsman Dub」
〇Revolutionaires「Jonkanoo Dub」
〇Revolutionaries「Channel One Maxfield Avenue Breakdown: Dubs And Instrumentals 1974-79」
〇Revolutionaries「Drum Sound The Revolutionaries: More Gems From The Channel One Dub Room - 1974 to 1980」
〇Revolutionaries「Earthquake Dub」
〇Revolutionaries「Goldmine Dub」
〇Revolutionaries「I Came, I Saw, I Conquered」
〇Revolutionaries「Musical Dub Attack」
〇Revolutionaries「Revolutionary Sounds」
〇Revolutionaries「Top Ranking Dub Volume 1」
〇Revolutionaries「Vital Dub: Well Charged」
〇Aggrovators, Revolutionaries「Guerilla Dub」
〇Various「Can't Stop The Dread」
〇Roy Francis (The Revolutionaries)「Phase One Dub-Wise Volume 1/2」
〇Various「Different Fashion: The High Note Dancehall Collection」