今回はGarnett Silkのアルバム

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「Killamanjaro Remembers Garnett Silk」です。

Garnet Silkは92年に「It's Growing」で
アルバムデビューし、その後ヒット曲を連発し
ジャマイカの音楽界に衝撃を与えたシンガー
として知られています。
しかし94年に母親とともに火災により死亡
しています。

実質的に彼が活躍した期間はわずか3年足らず
ですが、それでも彼が高い評価を受けている
のは、当時は性や暴力といった「スラックネス」
が主流だったダンスホール・レゲエの世界に、
ルーツ・レゲエの時代から続くラスタファリズム
の精神を再び復活させたことです。
そのため彼は「Bob Marleyの再来」とまで言われ
る高い評価を受けています。

アーティスト特集 Garnett Silk (ガーネット・シルク)

今回のアルバムは1995年に日本の24x7 Records
というところから発売された、Garnett Silkの
トップ・サウンド・マンRicky Trooperのプロ
デュースしたダブ・プレートを集めた追悼盤
です。

ちなみにダブ・プレートとはWikipediaによる
と、「直径12インチ、または10インチ、7インチ
のアセテート盤にダイレクトカッティング方式
で録音したレコード」の事で、サウンド・シス
テムが他のサウンド・システムなどと闘う
「サウンド・クラッシュ」などの時に用意する
一般にリリースされない録音やスペシャルな
録音を指します。

ダブ・プレート - Wikipedia

Ricky Trooperはそのサウンドシステムの
トップ・サウンド・マンで、Killamanjaro
は当時彼が在籍していたサウンド・システム
の名前だそうです。
(後に自らのサウンド・システムTrooper Sound
を設立。)
このRicky TrooperとGarnett Silkは親友
だったそうで、彼の元に残されたアセテート
盤から今回のアルバムは作られたんですね。

RICKY TROOPER来日記念INTERVIEW

彼のインタビューなどを読むと、今回のアルバム
は日本限定のスペシャルなアルバムだったよう
です。
日本盤の為、表ジャケの小冊子には高橋瑞穂さん
という「ラスタ嫌い」の方のセンチメンタルな
文章が付いていました。

なおアセテート盤から起こした音源の為か、
あまり音質はよくありません。
曲によってかなり気になるポツポツ音などが
入ります。

全21曲で収録時間は54分20秒。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Production Arrangement & Song Produced by: Ricky Trooper (Killamanjaro)
All Song Written by Garnett Smith a.k.a. Garnett Silk for Killamanjaro

Licensed From: Jason Lee (Sonic Sounds LTD.) & Ricky Trooper (Killamanjaro)
Kingston Jamaica 1995

となっています。

追悼盤という事で、表ジャケの裏側には次の
文字が記されています。

1966.4.2. GAENETT SILK 1994.12.10

これはGarnett Silkの誕生日と亡くなった
日付ですね。

彼の死については火災で母親とともに亡くなった
事しか解っていないのですが、スラックネスを
批判した為に暗殺されたとか、マフィアに殺され
たとか言われています。
いずれにしてもレゲエを正しい方向に導こうと
していた人で、わずか3年の活動歴にもかかわ
らず、いまだに多くの人に愛されているシンガー
なんですね。

さて今回のアルバムですが、これがなかなか
面白いアルバムなんですね。
私が再びレゲエを聴き始めたのは6年ぐらい前
からなんですが、このアルバムはその早い時期
にを中古で手に入れていました。
ただその時はまだルーツぐらいしか聴いた事が
無くて、このアルバムの良さがよく解らなかった
んですね。

ところが今回聴き直してみると、音質には多少
難があるものの、スペシャルなダブ・プレート
という事もあってGarnett Silkの生き生きとした
素晴らしいヴォーカルの聴けるアルバムで、
とても魅力的なアルバムでした。
こういうのを聴いていながら解っていなかった
というのは…ちょっと恥ずかしいです(笑)。

2002年シンコー・ミュージック刊行の本
「Roots Rock Reggae」にはこのアルバムに
ついて「八幡」さんという方の文章で、次の
ように書かれています。

「人気クラッシュ・サウンド・システム、キラマ
ンジャロが、ガーネット・シルクの残した数多く
のダブ・プレートをコンパイルしたハードコアな
追悼盤。互いに協力し合い、勝ち上がる中でシル
クと強固な信頼関係を持った当時のメイン・セレ
クター、リッキー・トゥルーパーだから録れたと
言われる、男気溢れる渾身のダブの連発に胸が熱
くなる。同時に、ダブならではのシルクの自由で
生き生きとした様子、笑い声に涙。」
(「Roots Rock Reggae」より「八幡」さんと
いう方のアルバム評より。)

サウンド・クラッシュ用に作成されたダブ・プレ
ートなので、「キラマンジャロ」や「ジャロ」の
連呼が多少鬱陶しいところはありますが、確かに
彼の生きた時間を切り取ったようなミックスは
とても貴重だと思います。

特10曲目「Joyful Noise」は、Ricky Trooper
自身が生涯のベスト・トラックと上記のネット
のインタビューでも語っているほど思い出深い
トラックだそうで、そのあたりも聴きどころと
なっています。

1曲目は「Message (Killamanjaro Remembers
Garnett Silk)」です。
文字通りRicky Trooperによる12秒のメッセージ
です。

2曲目は「Marley Medley」です。
生き生きと歌うGarnett Silkのヴォーカルが
ソソる1曲です。

3曲目は「Fight Back」です。
Richie Stephensとの共演の曲です。
オープニングのトースティングがカッコいい
1曲です。
リディムはAlton Ellisの「Can I Change My Mind」。

4曲目は「3 The Hard Way」です。
Richie StephensとScattaとの共演。
リディムはSound Dimensionの「Rockfort Rock」。
サウンド・システムのリアルな空気感が魅力。

Garnet Silk & Richie Stephen - 3 The Hard Way


5曲目は「Jaro Ruling」です。
こちらはLukie Dとの共演です。
歌の絡みとダブワイズしたサウンドが魅力。

6曲目は「One Of A Kind」です。
いかにも現場的な空気感が魅力の曲です。

7曲目は「Rub A Dub Soldier」です。
こちらもオープニングにトークが入る1曲。
「ジャロ」という事がを連発していますが、
それで会場が湧くシーンが目に浮かぶようです。

8曲目は「Pressure」です。
トークからSound Dimensionの名リディム
「Real Rock」へと入る曲です。
会場の歓声がまるで聴こえるような、計算された
1曲です。

Garnett Silk - Pressure (Real Rock Riddim)


9曲目は「Evacuate」です。
こちらは「Cuss Cuss」のリディム。
重いベースを軸としたバックに支えられた、
生き生きとしたライブ感のある1曲です。

10曲目は「Joyful Noise」です。
ネットにあるインタビューでRicky Trooper
自身が「生涯の1曲」と語っている曲です。
重いベースと絡み合うようなGarnett Silkの
ヴォーカルが最高にカッコいい1曲。
シンプルでシャープ、Ricky Trooperのセンス
が光る素晴らしい曲です。

Garnett Silk - Joyful Noise


11曲目は「Rule Dem」です。
こちらもリディムは「Rockfort Rock」。
シンセを中心とした軽快なサウンドにのせた、
Garnett Silkのヴォーカルがキラー。

12曲目は「Rule Dem」です。
こちらはLucianoとの共演ヴァージョン。
さらにキラー度アップの名パフォーマンス。

Garnett Silk Rule Dem ft Luciano


13曲目は「Blessing」です。
彼のヒット曲「 Bless Me」です。
現場的な空気感で魅力がよりアップしています。

14曲目は「Blessing」です。
こちらはCapletonとの共演ヴァージョン。

15曲目は「Defeat You」です。
こちらは歌詞に「ジャロ」を入れたスペシャル・
ヴァージョンといった曲です。

16曲目は「Memories」です。
こちらは楽し気に盛り上げています。
「アルプス一万尺」のリディム。

17曲目は「Sing With Me」です。
こちらはDennis Brownとの共演です。

18曲目は「Complain」です。
こちらはCapletonとの共演です。
リディムはKing Tubby'sの80年代のヒット・
リディム「Tempo」です。

garnet silk & capleton complain


19曲目は「Respect Jaro」です。
こちらもCapletonとの共演です。
Capletonの男臭いトースティングと、Garnett
Silkのヴォーカルの絡みが面白い曲です。

20曲目は「One Blood」です。
重いベースのリディムに乗せた、Garnett Silk
のヴォーカルの冴える曲です。

21曲目は「Knee Shall Bow」です。
リディムはこちらも「Tempo」か?
ズシッと来るベースを軸に、Garnett Silkの
作りだすダークな世界観が圧倒的な1曲です。

Garnett Silk - Knee Shall Bow


ざっと追いかけて来ましたが、このGarnett
Silkという人は人の曲を多く歌っているし、
ちょっと掴みづらいところのある人という印象
がありました。
ただ今回のアルバムなどを聴くと、より音楽的
に複雑になったこの90年代のレゲエをうまく
乗りこなしていて、しかもすごく魅力的な
パフォーマンスを見せています。

そういうサウンド・システムなどの「現場」で、
シッカリと自分の個性を持ったパフォーマンス
を発揮できる、真の実力者だった事は間違いあり
ません。
そうした彼がわずか3年の活動歴で、命を落と
してしまった事はとても残念です。

ただ彼がんこした作品は、今もその輝きを失って
いません。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Garnett Silk
○アルバム: Killamanjaro Remembers Garnett Silk
○レーベル: 24x7 Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1995

○Garnett Silk「Killamanjaro Remembers Garnett Silk」曲目
1. Message (Killamanjaro Remembers Garnett Silk)
2. Marley Medley
3. Fight Back – with Richie Stephens
4. 3 The Hard Way – with Richie Stephens & Scatta
5. Jaro Ruling – with Lukie D
6. One Of A Kind
7. Rub A Dub Soldier
8. Pressure
9. Evacuate
10. Joyful Noise
11. Rule Dem
12. Rule Dem – with Luciano
13. Blessing
14. Blessing – with Capleton
15. Defeat You
16. Memories
17. Sing With Me – with Dennis Brown
18. Complain – with Capleton
19. Respect Jaro – with Capleton
20. One Blood
21. Knee Shall Bow