今回はMisty In Rootsのアルバム

misty_in_roots_03a

「Roots Controller」です。

Misty In RootsはWalford TysonとDelvin
TysonのTyson兄弟とDelbert Mckayの3人の
ヴォーカリストを擁するUKのルーツ・レゲエ・
グループです。

2002年シンコー・ミュージック刊行の本
「Roots Rock Reggae」には「孝」さんという方
の文章でこのグループについて次のように書か
れています。

「スタイリッシュ・ソフィスティケイトといった
概念から断固距離を置いてきた愛すべき在英グル
ープ。タイソン兄弟とD.マッケイの3ヴォーカ
リストをフロントに置くこのMIRは、もともと
1975年にニッキー・トーマスのバック・バン
ドとして集められたミュージシャン集団。そこで
思想や音楽性で結束を見た彼らは、アルバムを1
枚も出さずにロック・アゲインスト・レイシズム
の中心的役割を担うまでに人気を博し、ムーヴメ
ントに参加した度のグループよりも多い回数のラ
イヴ・アピールを行う。そこで磨かれたライヴ・
アクトが、デビュー・ライヴ盤の素晴らしさに反
映した。ライヴ盤2枚のあとはスタジオ盤を定期
的にリリース。87年不慮の事故でタイソン弟が
死亡するという不幸に見舞われながらも89年に
前向きな作品をリリースするが、それ以降はたま
にステージに上がるのみで、リリースが途絶えて
いた。ところが02年6月に、13年ぶりとなる
新作「Roots Controller」が発売される予定。」
(「Roots Rock Reggae」より「孝」さんという
方のグループの紹介文より)

この本の発売後にこのアルバムが発売されたよう
です。

Misty in Roots - Wikipedia

「ロック・アゲインスト・レイシズム」について
も少し説明しておきます。
事の発端は1976年のバーミンガムのライヴで
白人のギタリスト、エリック・クラプトン(Eric
Clapton)が「有色人種はイギリスから出て行け」
とレイシスト発言をしたことがきっかけで起きた
運動で、当時イギリスで台頭して来ていた極右の
白人組織「ナショナル・フロント」やそうした
差別的な思想の白人ミュージシャンなどに反対
する運動です。
そのロック・アゲインスト・レイシズム(RAR)の
運動の中心になったのが、パンクではThe Clash、
レゲエではSteel PluseやこのMisty In Roots
だったんですね。
1978年4月にRARのイベントがヴィクトリア
公園で開催され、The ClashやSteel Pluseなどの
ライヴが行われて10万人の観衆を集めたんだ
そうです。

Rock Against Racism - Wikipedia

今でも日本で人気のあるEric Claptonですが、
黒人のブルースを元にしたブルース・ロックで
人気者となり、Bob Marleyの「I Shot The
Sheriff」も歌って「黒人」で商売をしている
のに、そういうレイシストの側面があると聞く
と、ちょっと幻滅しますよね(苦笑)。
ちなみに当時の彼は極度のアル中だったという
説があります。
また「妻が有色人種にお尻を触られたから」
と言い訳しているようですが、その発言自体
は撤回していないそうです。

エリック・クラプトン - Wikipedia

まだこの70年代という時代は白人が公然と
黒人をはじめとする有色人種を差別する、バカ
にする、そういう事が平気で行われる時代だっ
たんですね。
そういう差別に立ち向かうロック・アゲインス
ト・レイシズムの運動の先頭に立ち、活動して
いたのが彼らMisty In Rootsだったんですね。

今回のアルバムは2002年に発表された
アルバムです。
先に紹介したこのグループの解説文にあるよう
に、かなり久しぶりに発表されたアルバム
だったんですね。
全13曲中1~6曲目までが新録音で、残りの
7曲のうち3曲が83年のアルバム「Earth」の
曲、2曲が86年のアルバム「Musi-O-Tunya」
の曲、2曲が彼らの79年のデビュー・ライヴ・
アルバム「Live At The Counter Eurovision 79」
の曲で構成されています。

misty_in_roots_04a
Misty In Roots ‎– Live At The Counter Eurovision 79 (1979)

つまりニュー・アルバムとベスト盤が一緒に
なったような、ちょっと中途半端な構成の
アルバムなんですね。
その為ネットのDiscogsではコンピュレーション・
アルバムという扱いになっています。

手に入れたのはReal World Recordsという
レーベルのCDでした。

全13曲で収録時間は69分04秒。

ミュージシャンについては以下の記述があります。

Vocals(1-7,12,13), Trumpet(7,9,10): Walford Tyson (Poko)
Vocals(9-11): Delvin Tyson (Duxie)
Vocals(8): Delbert McKay (Ngoni)
Bass(1-13): Antony Henry (Tsungi)
Drums(1-6,12,13): Julian Peters
Rhythm Guitar(7,9,11,13): Dennis Augustin (Chop Chop)
Drums(7-10): J. Brown (Munya)
Lead Guitar(7): D. Griffiths (Tonderai)
Lead Guitar(12,13): Chesley Sampson
Saxophone(7,9,10): N. Nortey
Saxophone(11): Andy Harewood, Steve Williamson
Saxophone(1-6): Winston Rose
Trumpet(1-6): Niles Hailstone
Lead, Rhythm Guitar(1-6,11): Lawrence Crossfield (Kaziwayi)
Lead, Rhythm Guitar(1-6): Desmond Charles (Tunga)
Keyboards(1-11): Delford Briscoe (Tawanda)
Keyboards(12,13): Vernon Hunt
MC(12,13): William Simon

Album produced by Misty In Roots
Mixed by Ben Findlay and Misty In Roots at Real World Studios
Engineered by Ben Findlay, assisted by Paul Grady
Mastered by John Dent at Loud Mastering

Tracks 1-6 written by Walford Tyson, recorded by Ben Findlay
at Real World Studios, 2001
Tracks 7-13 re-mastered by John Dent, 2002
'Follow Fashion' written by Walford Tyson and Misty In Roots,
originally from the album 'Earth', 1983
'Ireation' written by Delbert McKay and Misty In Roots,
originally from the album 'Musi-O-Tunya', 1985
'New Day' written by Dennis Augustin and Delvin Tyson,
originally from the album 'Earth', 1983
'Dreadful Dread' written by Delvin Tyson and Misty In Roots,
originally from the album 'Earth', 1983
'Musi-O-Tunya' written by Delvin Tyson and Misty In Roots,
originally from the album 'Musi-O-Tunya', 1985
'Man Kind (Live)' written by Walford Tyson,
originally from the album 'Live At The Counter Eurovision', 1979
'Ghetto Of The City (Live)' written by Walford Tyson,
originally from the album 'Live At The Counter Eurovision', 1979

となっています。

半分はベスト盤の為か、メンバーの数の多さが
目立ちます。

一見ただの仏像の写真か何かのようなジャケット
ですが、実はかなり凝ったジャケットで、仏像の
陰の部分などにたくさんの顔がコラージュされて
いるジャケットなんですね。
ジャケット・デザインはMarc Bessant、写真は
Phil Knottという人が担当しています。

さて今回のアルバムですが、前半6曲はニュー・
アルバム後半7曲はベスト盤という何ともな
アルバムなんですが(苦笑)、これが残念な事
にMisty In Rootsが今のところ最後にリリース
したアルバムになっているようです。

Misty In Rootsというと、ルーツ好きの人の中
にはあのファースト・アルバムのライヴ盤
「Live At The Counter Eurovision 79」が忘れ
られないという人って、かなり居るんじゃないか
と思います。
紹介文の中にもありますが、デビュー前の
ロック・アゲインスト・レイシズムの運動で
培われた強力なライヴ・パフォーマンスが彼ら
の持ち味で、それを反映したデビュー・ライヴ
盤は多くのリスナーのハートをガシッと鷲掴み
するような強力な内容でした。

それに較べてしまうとスタジオ録音のアルバム
は、悪い内容ではないのだけれどどこか中途
半端な印象が残るのが彼らなんですね。
このアルバムのリリースは13年振りだった
ような事も書かれていますが、このアルバムの
後にアルバムはリリースされておらず、今日の
時点でもう14年ぐらいリリースされていない
事になります。
そういう何とも掴みどころのない片想いの
ような想いばかりが募るようなグループ、
それが彼らMisty In Rootsなんですね。

ただ今回このアルバムを聴き直してみて、思い
ました。
それはそれで良いのかなって。

ネットで調べてみると今は彼らの多くのアルバム
が廃盤になっているそうですが、たとえ中途半端
でもルーズなアルバムでも、このMisty In Roots
というグループを聴いた事、持っている事が
ルーツ・レゲエを愛する者にとっては誇りなん
ですね。
そういうグループって、そうそうはあるものでは
ありません。

実際に今回聴いた印象でも、ファーストのライブ
盤の最後の2曲はかなり強烈な印象です。
やはりあのファースト・アルバムはかなり
凄かったんだなぁと思い知らされる内容です。
ただ今回は初めの6曲にも、ぜひ耳を傾けて
もらいたいところです。
ライブ盤のような強烈さはありませんが、彼ら
は誠実にルーツを追及していて、その生真面目
な姿勢に好感が持てます。

1曲目は「True Rasta」です。
華やかなホーンから始まる曲です。
心地よいヴォーカルにコーラス、強靭なリズムに
オルガンのメロディ、彼らの作るルーツ・サウン
ドの素晴らしさがよく解る1曲です。

MISTY IN ROOTS - TRUE RASTA


2曲目は「Cover Up」です。
緊迫感のあるメロディの曲です。
歌詞にたびたび「レイシズム」という言葉が
登場するところから見て、内容はかなりシビア
なようです。

3曲目は「How Long Jah」です。
ホーンを中心としたメロディにヴォーカル、
コーラス・ワークといった曲です。

Misty In Roots - How Long Jah


4曲目は「Almighty (The Way)」です。
こちらは明るいメロディのリラックスした
空気感の1曲です。

5曲目は「Dance Hall Babylon」です。
浮遊感のあるシンセのサウンドに乗せた曲です。
タイミングよく入るホーンに乗せ、ジックリ
聴かせるヴォーカルがとても良いです。
歌詞はダンスホールを否定したような内容か?

6曲目は「On The Road」です。
こちらはオルガンにホーンといったバックに
聴かせるヴォーカルにコーラスといった曲です。

Misty In Roots - On The Road


この後の曲はすべて他のアルバムで発表された
曲です。

7曲目は「Follow Fashion」です。
83年のアルバム「Earth」の曲です。
ヴォーカルの合間に入るホーンが印象的。

8曲目は「Ireation」です。
85年のアルバム「Musi-O-Tunya」からの曲
です。
ちょっと面白い空気感のある曲です。

Misty In Roots - Ireation


9曲目は「New Day」です。
83年のアルバム「Earth」からの曲です。
ちょっと寂寥感のあるメロディに乗せた
ヴォーカルが聴かせる曲です。

Misty In Roots - New Day


10曲目は「Dreadful Dread」です。
こちらも「Earth」からの曲です。
ノビノビとしたヴォーカルにコーラス、味の
あるホーンのメロディといった曲です。

11曲目は「Musi-O-Tunya」です。
85年のアルバム「Musi-O-Tunya」の表題
曲です。
不思議な魅力のある1曲。

最後に2曲はライヴ盤の彼らのファースト・
アルバム「Live At The Counter Eurovision
79」からの曲です。

12曲目は「Man Kind (Live)」です。
このオルガンのメロディが流れるだけで
シビレる1曲です。
ガシッと硬いリズムに乗せたヴォーカルが
素晴らしい1曲。

13曲目は「Ghetto Of The City (Live)」
です。
こちらも強靭なリズムにシビレる1曲。
ロック・アゲインスト・レイシズムで鍛えた
彼らの鋼のリズムは最強です。

Misty In Roots - Ghetto Of The City (live)


ざっと追いかけて来ましたが、このMisty
In Rootsはまさに「ロック・アゲインスト・
レイシズム」の運動が育てたようなグループ
で、そのライヴ・パフォーマンスに全てを
賭けているような、強烈なエネルギーを持った
グループなんですね。
そういうグループが居たという事、それは
それだけでレゲエという音楽の誇りです。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Misty in Roots - Musi-u-tunya - Live



○アーティスト: Misty In Roots
○アルバム: Roots Controller
○レーベル: Real World Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2002

○Misty In Roots「Roots Controller」曲目
1. True Rasta
2. Cover Up
3. How Long Jah
4. Almighty (The Way)
5. Dance Hall Babylon
6. On The Road
7. Follow Fashion
8. Ireation
9. New Day
10. Dreadful Dread
11. Musi-O-Tunya
12. Man Kind (Live)
13. Ghetto Of The City (Live)