今回はBurning Spearのアルバム

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「Presenting Burning Spear」です。

Burning SpearことWinston Rodneyは70年代
のルーツ・レゲエの時代から活躍するシンガー
です。
Bob Marleyの紹介でStudio Oneから曲を出す
ようになった彼は、ラスタファリアンを貫く
ディープな楽曲で、ジャマイカで人気シンガー
になって行くんですね。
さらにメジャー・レーベルIslandと契約し、
1975年にJack Rubyプロデュースで
コーラス2人を付けた3人組コーラス・
グループ「Burning Spear」としてメジャー・
デビュー・アルバム「Marcus Garvey」
を発表します。

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Burning Spear - Marcus Garvey (1975)

このアルバムはLeroy 'Horsemouth' Wallace
の叩き出す攻撃的なミリタント・ビートと、
Burning Spear(Winston Rodney)のルーツ
に根ざしたディープなヴォーカルで、世界
に衝撃を与えるんですね。
その後は再びソロ・シンガーに戻り、多くの
ルーツに根ざしたアルバムを発表し、グラミー
賞のレゲエ・ベスト・アルバムを12度受賞
するなどの活躍をしたのがこの人です。

アーティスト特集 Burning Spear (バーニング・スピア)

今回のアルバムは1973年にStudio One
から発表された、Burning Spearのジャマイカ
でのデビュー・アルバムです。
ファースト・アルバムにして「Creation」や
「Down By The Riverside」、「He Prayed」
など、後々まで彼の代表曲として愛される曲
が収めらたアルバムです。

ちなみにこのアルバムは何ヴァージョンかあっ
て、「Studio One Presents Burning Spear」や
ただの「Burning Spear」というタイトルでも
発売されています。

全12曲で収録時間は40分42秒。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Produced by Clement 'Sir Coxon' Dodd
Recorded at Jamaica Recording Studio
Music arranged by C.S. Dodd
Music by The Sound Dimensions

Illustration & Design: O'Neil Nanco

となっています。

バックの初期レゲエらしいガシッと硬いサウンド
は、Studio Oneのバック・バンドThe Sound
Dimensionsが担当しているようです。

さて今回のアルバムですが、Burning Spear
というアーティストが好きでなくても、今回の
アルバムはルーツ好きだったらぜひ聴いておく
べきアルバムだと思います。
徐々に「千年一日のごとく」のようになって
しまうこの人ですが(笑)、このStudio One
の時代やJack Rubyと組んだ「Marcus Garvey」
の頃は、もっともルーツの最先端のサウンドを
作っていたんですね。
そういう意味では出来ればこの人のルーツ期の
アルバムは全部持っていたいところですが、
今回のアルバムとStudio Oneのもう1枚
「Rocking Time」と、「Marcus Garvey」だけは
ぜひ聴いてもらいたいアルバムです。

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Burning Spear ‎– Rocking Time (1974)

この時代のBurning Spearには、聴けば解る
凄さがあります。
ジャマイカのミュージシャンに、他の民族音楽
やポピュラー音楽と違う道を歩ませたのは、
こうしたルーツに根ざした音楽を作った人が
居たからなんですね。
そうしたルーツ・ミュージックというものを
創造した、特別なアルバムのひとつだと思い
ます。

ちなみに2002年シンコー・ミュージック
刊行の本「Roots Rock Reggae」には「石川」
さんという方の文章で、このアルバムについて
次のように書かれています。

「ある意味本国では『Marcus Garvey』より
ポピュラーなアルバム。それは『Get Ready』
と『Creation Rebel』が収録されているから。
スカ、ロック・ステディだけがスタジオ・ワン
の遺産ではない。これ程優れたルーツ・アルバム
はそう多くないと断言できる。前述の2曲以外
にも『Them A Come』『Fire Down Below』等々
全曲が名曲。「理由なき反抗」なんて甘っちょ
ろいことはジャマイカ人は言わんのだ。肝に
銘じて聴こう。」
(「Roots Rock Reggae」より「石川」さんと
いう方のアルバム評より。)

これを読むと本国ジャマイカであの「Marcus
Garvey」より知られたアルバムだという事が
解ります。
おそらくは彼の歌うルーツ・ミュージックが
本国ジャマイカでもかなりショックなもの
だったのでしょう。

1曲目は「Ethiopians Live It Out」です。
ユッタリしたリズムに乗せたしゃがれたヴォー
カルにコーラス・ワーク。
ちょっとユーモラスにも感じるメロディに、
脱力したヴォーカルが面白い曲です。

Burning Spear - Ethiopians Live It Out


2曲目は「We Are Free」です。
初期レゲエを思わせる硬くシャリシャリと
したドラミングに乗せて、心地良さそうな
ヴォーカルを聴かせる曲です。

3曲目は「Fire Down Below」です。
こちらも硬いドラムにウンチャカしたギター、
コーラス・ワークに乗せた心地良さそうな
ヴォーカル。
多くの人のイメージするレゲエではあります
が、それがすごくディープなのがこの人
らしいところです。

4曲目は「Creation」です。
言わずと知れた彼の代表曲のひとつです。
軽快なギターのバックが心地良い曲です。

Burning Spear - Creation Rebel


5曲目は「Don't Mess With Jill」です。
ベースのリズムを軸にエコーのかかった
ヴォーカルが良い味を出しています。

6曲目は「Down By The Riverside」です。
こちらも彼の名曲のひとつです。
サビの伸びのあるヴォーカルに、シビレない
人は居ないでしょう。
彼のシンガーとしての魅力が、よく解る1曲
です。

Burning Spear - Down By The River - Down By The Riverside


7曲目は「Door Peep Shall Not Enter」
です。
こちらも彼らしいルーツの曲です。

8曲目は「Pick Up The Pieces」です。
こちらは軽快なオルガンのメロディに乗せた
曲です。
コーラスがうまく深みを添えています。

9曲目は「Get Ready」です。
こちらもオルガンのメロディに乗せた曲で、
とても魅力的な曲です。

Burning Spear Get Ready - Studio One - Coxsone


10曲目は「Journey」です。
こちらもギターの刻むメロディが印象的な曲
です。

11曲目は「Them A Come」です。
こちらも特徴的なギターのフレーズに乗せて
の1曲。
この初期レゲエの頃の方がギターに遊びが
あるのも、面白いところ。

12曲目は「He Prayed」です。
こちらも彼の代表曲のひとつです。
ギターのリズムを中心に、深く森の中に分け
入って行くようなミステリアスな感覚のある
ルーツの1曲です。

Burning Spear - He prayed 1973


ざっと追いかけて来ましたが、やはり彼の
初期の曲にはかなり独自性があり、多くの
人々に衝撃を与えた事に間違いがありません。
また後のBurning Spearのかなり硬直した頑固
なイメージと較べると、このアルバムにある
のは確かな創造性です。
そのサウンドの豊かさは、確かに一聴の価値
があると思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Burning Spear - Ethiopians Live It Up, Live In Hamburg 1981



○アーティスト: Burning Spear
○アルバム: Presenting Burning Spear
○レーベル: Studio One
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1973

○Burning Spear「Presenting Burning Spear」曲目
1. Ethiopians Live It Out
2. We Are Free
3. Fire Down Below
4. Creation
5. Don't Mess With Jill
6. Down By The Riverside
7. Door Peep Shall Not Enter
8. Pick Up The Pieces
9. Get Ready
10. Journey
11. Them A Come
12. He Prayed

●今までアップしたBurning Spear関連の記事
〇Burning Spear「Calling Rastafari」
〇Burning Spear「Dry & Heavy」
〇Burning Spear「Farover」
〇Burning Spear「Garvey's Ghost」
〇Burning Spear「Hail H.I.M.」
〇Burning Spear「Live」
〇Burning Spear「Marcus Garvey」
〇Burning Spear「Original Living Dub Vol.1」
〇Burning Spear「Rocking Time」
〇Burning Spear「Social Living」
〇Burning Spear「Sounds From The Burning Spear」
〇Burning Spear「Spear Burning: Burning Spear Productions 1975-1979」
〇Burning Spear「Travelling」