今回はCimaronsのアルバム

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「People Say: An Early History Of The Cimarons」です。

Cimaronsはdisk unionのこのアルバムの紹介
ページなどによると、UKでもっとも早く
レゲエ・バンドとして活動したグループなんだ
そうです。
英語のWikipediaのページなどを見ると1967
年に結成されているようです。

CIMARONS / シマロンズ / PEOPLE SAY | diskunion.net

The Cimarons - Wikipedia

さらにこのCimaronsについて興味深い事が
解りました。
なんとこのバンド「内海利勝&ザ・シマロンズ」
として1975年に日本で「ジェミニ Part.1」
というアルバムを出しているんですね。
内海利勝と聴いてもダレ?という人も多いと思い
ますが、あの矢沢永吉さんが初めに在籍した
バンド、キャロルでギターを弾いていた人です。
その内海利勝さんまだ現役のミュージシャンで
活動を続けているようなのですが、ネットに
あった彼のインタビューを読むと、キャロル解散
後に会社の持ち込み企画で組んでアルバムを
出したのがこのCimaronsなんだそうです。
そして75年に「ジェミニ Part.1」という
アルバムを出していて、シングル・カットされた
「鏡の中の俺」「レゲエ レゲエ天国(B面?)」
というのも出しているようです。

実際にネットで「鏡の中の俺」を聴いてみた
感じでは、レゲエというよりはキャロルの
ロカビリー色の方が強い印象ですが、外国の
レゲエ・ミュージシャンとのもっとも早い
コラボらしいです。
つまり日本でもっとも早くレゲエを取り入れた
ミュージシャンは、この内海利勝さんらしいん
ですね。

UKレゲエというとAswadやMatumbiなどが初期
のバンドとして知られていますが、Aswadが
ファースト・アルバム「Aswad」を出したのは
1976年ですから、それより早い75年に
すでに日本に来ていたUKのレゲエ・バンドが
このCimaronsなんですね。

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Aswad ‎– Aswad (1976)

disk unionのページでも「ブリティッシュ・
レゲエの先駆者的存在」と紹介されています。

今回のアルバムは発売は1991年ですが、
Cimaronsの74年から76年にかけてジャマイカ
で録音された音源を集めたアルバムです。
このCimaronsはかなりポップなグループとして
知られているらしいのですが、実はジャマイカ
に渡ってRas MichaelやLee Perry、Augustus
Pabloといった一流アーティストからレゲエを
直接学んでいたんですね。

全15曲で収録時間は61分00秒。

ミュージシャンについては以下の記述があります。

Musicians:
Keyboards, Vocal, Percussion: Carl Levy
Bass, Vocal, Percussion: Franklyn Dunn
Lead Vocal, Percussion: Winston Reid
Guitar, Vocal, Percussion: Locksley Gichie
Drums, Vocal, Percussion: Maurice Ellis

Thanks to:
Ras Michael for Nyabingi sessions
Lee Perry (Upsetter) exceptional engineer
Ernest & Ossie from Channel One
Roger 'Fatters', Ian 'Stout' & Jacob Miller
'Horsemouth', Augustus Pablo & Sid Buckner

Recorded between 1974/1976 at:
Channel One, Black Ark Studio, Joe Gibbs Studio & Chalk Farm

Liner notes & Cover design: Frank Jacques

Produced by Cimarons & Tommy Cowan

となっています。

74~76年と3年ぐらいかけて録音している
ので、スタジオもChannel OneやBlack Ark、
Joe Gibbsと多くのスタジオを利用しています。
(Chalk Farmはあまり聴いた事が無いので、
UKのスタジオか?)
「Ras Michael」として名前の挙がっている
ミュージシャンが興味深いです。
Ras MichaelやLee Perry、Augustus Pablo
のほか、Ernest Hoo-KimやJacob Miller、
Leroy 'Horsemouth' Wallace、Sid Buckner
などの名前があります。
例えばRas Michaelは「for Nyabingi sessions」
となっているので、ナイヤビンギとはどういう
ものなのか?について学んだのでしょう。
おそらくはそうしたジャマイカのミュージシャン
から、レゲエとはどういう音楽なのか?真剣に
学んだ形跡がうかがえます。

さて今回のアルバムですが、内容的にはなかなか
悪くないと思います。
正直ちょっと決め手にかける部分はあるものの、
彼らの音楽にちゃんと向き合う姿勢が見えて、
聴き心地の良いアルバムに仕上がっています。
正直なところこのCimaronsってあんまり知らない
グループだったんですが、ネットでいろいろ曲
を探してみたところ、中にはけっこうポップな
曲もあったので、そうしたポップなレゲエ・
グループと見られているようですが、実は根底
にはこうしたレゲエがあったんですね。
まあ、あのAswadなども後にサウンドがポップ
になって批判されたりしているので、生き残る
為にポップになって行くのは当時は仕方なかった
のかもしれません。

これらの曲を作っていた74年から76年に
かけての間の75年には、同時に内海利勝&
ザ・シマロンズのアルバムも作っていた事も
興味深い事実です。
その辺に彼らの小器用そうな一面もなんと
なく感じない事もありません。
ただ模索の時期にいろいろな音楽に触れるの
は、必ずしも悪い事ではない気もします。

1曲目は「Ship A Hoy」です。
初めに小鳥のさえずりのエフェクトから入る曲
で、パーカッションやコーラスにナイヤビンギ
の影響を感じる1曲です。

cimarons-ship a hoy


2曲目は「Ethiopian Feeling」です。
いかにもレゲエらしい刻むリズムに乗せた曲
です。

3曲目は「Rock Reggae Rhapsody」です。
印象的なギターから始まる曲で、そのギターに
乗せたヴォーカルとコーラスが心地良い曲です。

Cimarons - Rock Reggae Rhapsody


4曲目は表題曲の「People Say」です。
こちらもギターのフレーズに乗せたちょっと
ファンキーなヴォーカルが印象的な曲です。

Cimarons--People Say


5曲目は「Rosie」です。
刻むギターのリズムに乗せた曲です。
「Rosie」という女性へのラヴ・ソングか?

6曲目は「Paul Bogle」です。
シンセか何かの印象的なフレーズが入る曲です。

7曲目は「Greedy Man」です。
コーラス・ワークからユッタリとした刻むような
ギターのリズムに乗せた曲です。
全員がヴォーカルを取れるグループのようです
が、コーラス・ワークのウマさもこのグループ
の特徴のひとつのようです。

8曲目は「Wake Up Jah-Man-Can」です。
こちらも彼らのコーラス・ワークのウマさが
よく発揮された曲です。

Cimarons - Wake up Jah-Man-Can (On the Rock)


9曲目は「I Wanna Please You」です。
オルガンのメロディに乗せたちょっとファンク
っぽい曲です。

10曲目は「Hear Talk Of Inflation」です。
陰影のあるメロディに乗せたヴォーカルと
コーラス・ワークが印象に残る曲です。

11曲目は「Rooting For A Cause」です。
こちらもコーラスをバックにした曲です。

12曲目は「Zion」です。
こちらは女性かと思うような声の人がリード・
ヴォーカルをとった1曲です。
バックのコーラス・ワークもキマっています。

13曲目は「He Who Hides」です。
ギターのリズムに乗せたヴォーカルがジックリ
歌い込んでいる印象の曲です。

14曲目は「Dim The Light」です。
ギターからピアノのメロディ、コーラス・ワーク
という6分ぐらいある大曲です。
ジックリと聴かせようとするヴォーカルが魅力の
曲です。

Cimarons - Dim the light 1991


15曲目は「Free As Life」です。
こちらはいかにもルーツ・レゲエといった陰影
のある曲です。

The Cimarons - Free As Life


YouTubeで曲を探していて気が付きましたが、
今回のアルバムは1曲1曲が長い曲が多く、
なるべく多くの曲を入れようとしたためか、
曲のイントロをカットして入れた曲がけっこう
ありました。
出来ればそういう事はしない方が良いのになぁ
というのが、正直なところ。

ざっと追いかけて来ましたが、1曲1曲は
それなりに悪くはないんですね。
ただ全体を通して聴くと、ちょっと印象が弱い
かなという気もしました。
この時代はまだUKのレゲエも模索の時期
だったので、いろいろ試行錯誤の時期という
事もあるかもしれません。
こうしたバンドの後にAswadやMatumbiなどの
バンドが誕生し、UKのレゲエはようやく
華開く事になります。
その先駆け的なバンドとして、こうしたバンド
が居た事は憶えておいても悪くないと思います。

機会があれば聴いてみてください。


○アーティスト: Cimarons
○アルバム: People Say: An Early History Of The Cimarons
○レーベル: Planet Vibe
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1991

○Cimarons「People Say: An Early History Of The Cimarons」曲目
1. Ship A Hoy
2. Ethiopian Feeling
3. Rock Reggae Rhapsody
4. People Say
5. Rosie
6. Paul Bogle
7. Greedy Man
8. Wake Up Jah-Man-Can
9. I Wanna Please You
10. Hear Talk Of Inflation
11. Rooting For A Cause
12. Zion
13. He Who Hides
14. Dim The Light
15. Free As Life