今回はVarious(オムニバス)もののアルバム

roots_techniques_01a

「Roots Techniques」です。

今回のアルバムは1999年にレゲエ・リイ
シュー・レーベルPressure Soundsから発表
されたアルバムで、Winston Riley率いる
Techniquesレーベルの70年代のルーツ・レゲエ
の時代の音源を集めたアルバムです。

このWinston Rileyは初めはSlim Smithが所属
した事で知られるロックステディの時代の、
人気コーラス・グループThe Techniquesの
リーダーだった人なんですね。
そのグループ脱退後にこのTechniquesという
レーベルを作っています。
つまりTechniquesというとロックステディの時代
の人気コーラス・グループと、Winston Rileyが
作ったレーベルの2つのTechniquesがあるという
ややこしい事が起きているんですね(笑)。

ちなみにコーラス・グループThe Techniquesの
活躍はロックステディの時代ですが、この
Techniquesレーベルはロックステディ→ルーツ・
レゲエ→ダンスホール・レゲエと長く愛される
レーベルに成長して、特に80年代のダンス
ホール・レゲエの時代には「Stalag」リディムで
人気レーベルとなるんですね。

レーベル特集 Techniques (テクニクス)

今回のアルバムはそのTechniquesレーベルの
70年代のルーツ・レゲエの楽曲を集めた1枚
です。
この70年代のルーツ期のTechniquesレーベル
は、まだStudioneやChannel Oneというレーベル
には後れを取っていたものの、堅実に人気
レーベルとしての歩みを進めていたんですね。
ちなみにこのルーツ期の74年に、Ansel Collins
の「Stalag 17」という曲がリリースされて
いますが、この曲が80年代のTechniques
レーベルの看板リディムとなる「Stalag」の
一番初めの曲なんだそうです。

リズム特集 Stalag (スタラグ)

全15曲で収録時間は48分44秒。

詳細なミュージシャンの表記はありません。

さて今回のアルバムですが、これが濃くて
ディープな、なかなか良いルーツのアルバム
なんですね。
さらにTechniquesレーベルお馴染みのリディム
「Stalag」も入っていて、聴きごたえ充分な
アルバムになっています。

このTechniquesレーベルはダンスホール・
レゲエの時代のスマートな印象がありますが、
このルーツの時代にはもっとドロッと濃い
サウンドを得意としていた事がこのアルバム
からよく解ります。
その濃さが今回のアルバムの最大の魅力だと
思います。

ちなみに今回のアルバムは、2002年
シンコー・ミュージック刊行の本「Roots Rock
Reggae」にも紹介されていて、そこには「山口」
さんという方の文章で次のように書かれて
います。

「60年代の後半ロックステディ期から現在に
至るまで長い歴史を持つプロデューサー、ウィ
ンストン・ライリーのテクニークス・レーベル
であるが、70年代のルーツ期の活動はリリース
も少ない所為かあまり知られていない。しかし
その中にはいぶし銀の様な渋いナンバーが多く、
そんな楽曲を英プレッシャー・サウンズがコン
パイルしたのが本アルバム。興味深いインスト
~ダブ・テイクも数曲収録。」
(「Roots Rock Reggae」より「山口」さんと
いう方のアルバム評より。)

やはりこのルーツ期は、あまりTechniques
レーベルは活発に活動していなかったようです。
ただリリースが少なかったにしても、このルーツ
の時代もこのレーベルはそれなりの成果を上げて
いて、今回のアルバムのような濃い楽曲やダブを
けっこう残しているんですね。

ちなみにこの時代のTechniquesレーベルのダブ
は、同じレゲエ・リイシュー・レーベルPressure
Soundsから後にまとめられて、「Techniques In
Dub」というタイトルでアルバムが出ていて、
このアルバムは77年のダブ・アルバム
「Meditation Dub」10曲に、さらに10曲を
プラスした20曲入りのアルバムとして、97年
にリイシューされています。

techniques_in_dub_01a
Various - Techniques In Dub (1997)

このルーツの時代は量は少ないながらも、そう
した実績を着実に残していた時期だったよう
です。
それが80年のダンスホール・レゲエの時代に
一気に花開くんですね。
そうしたTechniquesレーベルの歩みが解るアル
バムとして、今回のアルバムはなかなか良い
アルバムなんじゃないかと思います。

1曲目はDave Barkerの「Your Love Is A Game」
です。
1曲目からかなりガツンと来るルーツ・ナンバー
です。
心地良いサックス・ソロなども入った、イカした
曲です。

Dave Barker - your love is a game.


2曲目はJohnny Osbourneの「Purify Your
Heart」です。
腹に響くようなベースを中心とした重いナンバー
を、Johnny Osbourneは丁寧に歌っています。

Johnny Osbourne - Purify Your Heart


3曲目はJimmy Rileyの「Prophecy」です。
2曲目「Purify Your Heart」と同じリディム
を使った曲です。
ハミングのようなちょっと不気味なコーラス
が、すごくディープ感があって印象的(笑)。
ちなみにJimmy Rileyは、The Techniquesや
The Uniquesなどで活躍した後、ソロとしても
活躍したシンガーで、このTechniquesレーベル
の主催者Winston Rileyの弟です。
ちなみに「Prophecy」というタイトルですが、
Little Royで知られている同名曲とは別の曲
です。

Jimmy Riley - prophecy / prophecy version - Techniques All Stars


4曲目はTechniques All Starsの「Prophecy
(Version)」です。
3曲目「Prophecy」のダブ。

5曲目はBig Youthの「All Nations Bow」
です。
こちらはTechniquesレーベルのもっとも有名な
リディム「Stalag」を使った曲です。
名ディージェイのトースティングも素晴らしい
1曲。

Big Youth - All Nations Bow


6曲目はHorace Andyの「Love Is The Light」
です。
こちらも「Stalag」リディムを使った曲です。
ルーツからダンスホールの時代まで愛され続けた
リディムですが、今聴いてもゾクゾクするほど
カッコいいリディムなんですね。
名ヴォーカリストの歌声も冴えます。

Horace Andy - Love Is The Light (Techniques)


7曲目はI Royの「Who Is The Man」です。
当時の一番人気のディージェイのトースティング
が冴える1曲です。

8曲目はTechniques All Starsの「Who Is The
One (Version)」です。
7曲目はI Royの「Who Is The Man」のダブ。
心地良いリズムのダブです。

9曲目はDonovan Adamsの「Don't Mock Jah」
です。
こちらもいかにもルーツの時代らしい1曲です。

Donovan Adams & Techniques All Stars - Don't Mock Jah + Version


10曲目はの「Don't Mock Jah (Version)」
です。
9曲目「Don't Mock Jah」のダブ。
ディープな世界に堕ち込んで行くような感覚が
タマラないダブです。

11曲目はWinston And Anselの「Zion I」
です。
Winston And AnselはWinston Rileyとキーボード
のAnsel Collinsの事のようです。
コーラス・ワークが彼らか?
ソソるメロディカが入る1曲です。

Winston & Ansel - Zion I (Techniques)


12曲目はThe Internsの「Nothing Is
Impossible」です。
The InternsはThe Viceroysの別名ユニット。
11曲目「Zion I」のリディムを使った曲です。

13曲目はAnsel Collinsの「Black Out」です。
こちらも11曲目「Zion I」のリディムを使った
曲です。
メロディカを中sんとしたインストですが、
Ansel Collins名義になっているところを見る
と、メロディカはAnsel Collinsが吹いている
のか?
すごくカッコいい1曲です。

14曲目はMorvin Brooksの「Cheer Up Blackman」
です。
あまり知らないシンガーですが、丁寧に歌う
歌いぶりが魅力です。

Morvin Brooks - Cheer Up Black Man 7"


15曲目はTechniques All Starsの「Cheer Up
Blackman (Version)」です。
14曲目「Cheer Up Blackman」のダブ。
こちらはギターとベースを中心としたダブで、
ダブワイズしていくユラユラ感がなかなか
心地良いダブです。

ざっと追いかけて来ましたが、やっぱりこの
ルーツ期を収めたアルバムとして、内容が
とても素晴らしいです。
やはりこのルーツの時代はこの時代で無ければ
味わえない音楽があり、そして魅力がある。
その事をあらためて実感させてくれるアルバム
だと思います。

この時代はもう二度とは戻って来ませんが、
それでも私たちの記憶の中で永遠に忘れられ
ない記憶として光り輝いています。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Various
○アルバム: Roots Techniques
○レーベル: Pressure Sounds
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1999

○Various「Roots Techniques」曲目
1. Your Love Is A Game – Dave Barker
2. Purify Your Heart – Johnny Osbourne
3. Prophecy – Jimmy Riley
4. Prophecy (Version) – Techniques All Stars
5. All Nations Bow – Big Youth
6. Love Is The Light – Horace Andy
7. Who Is The Man – I Roy
8. Who Is The One (Version) – Techniques All Stars
9. Don't Mock Jah – Donovan Adams
10. Don't Mock Jah (Version) – Techniques All Stars
11. Zion I – Winston And Ansel
12. Nothing Is Impossible – The Interns
13. Black Out – Ansel Collins
14. Cheer Up Blackman – Morvin Brooks
15. Cheer Up Blackman (Version) – Techniques All Stars

●今までアップしたTechniques関連の記事
〇Techniques & Friends「Winston Riley's Rock Steady & Early Reggae 1968-1969」
〇Techniques「Little Did You Know」
〇Techniques「Run Come Celebrate: Their Greatest Reggae Hits」
〇Techniques「Techniques In Dub」
〇Winston Riley「Concrete Jungle Dub + Meditation Dub」
〇Winston Riley「Quintessential Techniques」