今回はBunny Wailerのアルバム

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「Rootsman Skanking」です。

Bunny Wailerは60年代のスカの時代に
Bob MarleyやPeter ToshとともにThe Wailers
で活躍したシンガーです。
このThe Wailersはこの後ロックステディ→
ルーツ・レゲエと時代が進むうちにBarrett兄弟
を加えた5人組のバンド編成となります。
そして73年にメジャー・レーベルIslandから
「Catch A Fire」で世界デビューし、レゲエと
いう音楽を世界に知らしめる役割を果たすん
ですね。

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The Wailers - Catch A Fire (1973)

ところが2枚目のアルバム「Burnin'」を
リリースしたところでこのBunny Wailerと
Peter Toshが脱退してしまいます。
その理由はツアーの辛さに耐えかねた為だとも、
「白人にも解る音楽を」というIslandの要求を
2人が拒否した為だとも言われています。

そして残されたメンバーはBob Marleyを
リーダーとするBob Marley & The Wailersと
なり、Peter Toshはソロとして世界を相手に
活動を続けます。
ただこのBunny Wailerはジャマイカにとどまり、
たまにアルバムを出したりライヴをしたり、
時には農業をしたりと気ままな生き方をして
行くんですね。

アーティスト特集 Bunny Wailer (バニー・ウェイラー)

今回のアルバムはダンスホール・レゲエが
全盛だった1986年に発表されたアルバム
です。
実はこのアルバムには元のアルバムがあって、
それがBunny Wailerが81年に発表したアルバム
「Rock 'N' Groove」です。
その「Rock 'N' Groove」全8曲に、さらに
「Gamblings」と「Cry To Me」の2曲をプラス
して発表したのが今回のアルバムなんですね。

全10曲で収録時間は34分21秒。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Produced, Performed, Arranged and Directed by Bunny Wailer
Recorded and Mixed at Harry J and Channel One
Engineers: David Hamilton and Maxi
Accompanied by Bunny Wailer
Front Cover Design and Hand-lettering by Anita Karl
Art Design: Bunny Wailer
Graphics: Solographics
Photos: P. Blackwood
All Songs Written by N. Livingston
except 'Another Dance' - Curtis Mayfield

Musicians:
Featuring 'The Radics' plus special orchestry of:
Bass: R. Shakespear
Drums: S. Dunbar
Keyboards: K. Sterling
Hornes: H. Bennett, D. Fraser, R. Robinson
Electric Drum, Vocals: Bunny Wailer

となっています。

バックはRoots Radicsに、Sly & Robbieや
キーボードのK. Sterling、ホーンのH. Bennett、
D. Fraser、R. Robinsonなどが加わった布陣の
ようです。
実質81年のアルバムなので、Roots Radics
の一番良い時期の録音という事になります。

さて今回のアルバムですが、非常に評価に迷う
アルバムです。
正直なところこのBunny Wailerという人自身
がどう評価して良いものか、非常に評価に迷う
人なんですね。
200年シンコー・ミュージック刊行の本
「Roots Rock Reggae」などではこの人の紹介
ページには、The Wailers脱退後に、「それまで
見えなかったカリスマ性が表面化してくる」と
いうような事が書かれていて、ダンスホールの
時代なども大活躍したような扱いなんですが、
果たして本当にそうだったのか?
ちょっと疑問なところがあるんですね。

確かに初めの何枚かのアルバムは評価はされた
と思うんですが、その後は尻すぼみというのが
本当のところだったんじゃないか。
そんな気がするんですね。
あんまりダンスホール・レゲエには大きな影響
を与えていないんじゃないか、そんな気がする
んですね。
実際に80年代以降のダンスホール・レゲエなど
を見た時に、この人の楽曲に対する影響って
ほとんど無いように見えるんですね。
むしろ一部の日本の(評論家を含めて)熱狂的
なファンに人気のある人という気がします。

今回のアルバムも81年の「Rock 'N' Groove」
は、当時全盛のRoots Radicsをバックにした
アルバムで、アーリー・ダンスホールのアルバム
として意味はあったと思うのですが、それから
5年経ったおそらくはKing Jammyを中心とした
デジタルのダンスホール・レゲエの時代の86年
に、このアーリー・ダンスホールの音源が
どれほどの意味を持ったのか?
ちょっと疑問な点はあります。

あと今回のアルバムにも「Cry To Me」が入って
いますが、この人のアルバムには必ずThe Wailers
時代の曲が入っているんですよね。
そうしたいつまでもいつまでもThe Wailersで
食べているようなところも、イマイチ素直に
この人を評価できないところです。
「Dubd’sco Vol. 1」のような素晴らしいアルバム
も残している人なんですが、イマイチ残念な人
というのが、私の評価なんですよね(笑)。

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Bunny Wailer - Dubd'sco Vol. 1 (1978)

さて、書いたようにこのアルバムの歴史的評価と
いう視点から見たらかなり?マークが付くアル
バムですが、人間Bunny Wailerという視点から
見た場合には、内容はそこそこ悪くないアルバム
だと思います。
おそらくBunny Wailerが大好きな人にとっては、
タマラないアルバムだと思います。
彼の黒いハートが楽しめるアルバムなんですね。

上述した本「Roots Rock Reggae」にもこの
アルバムは載っていて、そこでも絶賛されて
いるんですが、書いたように86年に発売され
ている事を考えると、必ずしもその評価を肯定
出来ませんが、ただ内容は悪くないと思います。

ただよく聴いてみると、バックはダンスホール
で活躍したRoots Radicsだとしても、この人の
根底にあるリズムはやっぱりルーツ・レゲエ
なんだなぁと思わされるアルバムでもあります。
そのあたりが、この人が必ずしもダンスホール・
レゲエを「支配」出来なかった本当の理由かも
しれません。
持っているグルーヴが、明らかにダンスホール
とは違うんですね。

1曲目は「Ballroom Floor」です。
オルガンのメロディに乗せた曲で、いかにも
Bunny Wailerらしい粘っこいヴォーカルが楽し
める曲です。

2曲目は「Collyman」です。
ユッタリしたワン・ドロップのリズムに、合間
良く入って来るホーンに乗せた1曲で、Bunny
Wailerの心地良さそうな歌いぶりも印象的な曲
です。

3曲目は「Dance Rock」です。
ホーンのメロディにBunny Wailerのエコーの
かかったダブワイズしたヴォーカルが印象的な
曲です。
アルバム「Rock 'N' Groove」ぐらいまでは
あの「Dubd’sco Vol. 1」に感じられた良い
グルーヴ感を維持していたという事が感じられる
1曲です。

Bunny Wailer - Dance Rock


4曲目は「Gamblings」です。
この曲は今回のアルバムで追加された曲です。
心地良いリズムにオルガンのメロディといった
曲です。

5曲目は今回の表題曲の「Rootsman Skanking」
です。
Bunny Wailerの独特の弾むようなヴォーカルが、
良い味を出している1曲です。

Bunny Wailer Rootsman Skanking 1981 05 Rootsman Skanking


6曲目は「Cool Runnings」です。
こちらもBunny Wailerの代表曲のひとつと言える
曲です。
独特の弾むようなグルーヴ感のある曲です。

Bunny Wailer ~ Cool Runnings


7曲目は「Cry To Me」です。
あのBob Marleyの名曲です。
こちらも今回のアルバムで追加された曲です。
曲は素晴らしい曲ですが、アルバムに毎回
The Wailers関連の曲を入れているところに
この人の苦しさがあるんですね。

8曲目は「Rock'N Groove」です。
こちらもタイトル通りグルーヴ感がある1曲で、
内容はとても良いです。

9曲目は「Another Dance」です。
こちらはソウルの大御所Curtis Mayfieldの
曲のようです。
全く違和感なく彼の持ち歌として披露しています。

Bunny Wailer - Another Dance


10曲目は「Jammins」です。
寂寥感のあるオルガンのメロディから、トビ音も
入ったなかなか聴かせる1曲です。

Bunny Wailer - Jammins 1987


ざっと追いかけて来ましたが、やっぱり元と
なったアルバム「Rock'N Groove」はとても
良いアルバムだったんだなぁと、このアルバム
を聴いても解るほど曲自体の内容は悪くあり
ません。
ただその良いアルバムに、曲を足して5年後に
また出してしまうところに、この人の苦しさが
あるんですね。
81年のアルバムとして聴けば非常に良い内容
のアルバムですが、86年のアルバムとして
聴くと?マークの付いてしまうアルバム、それが
今回のアルバムだと思います。

機会があれば聴いてみてください。


○アーティスト: Bunny Wailer
○アルバム: Rootsman Skanking
○レーベル: Shanachie
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1986

○Bunny Wailer「Rootsman Skanking」曲目
1. Ballroom Floor
2. Collyman
3. Dance Rock
4. Gamblings
5. Rootsman Skanking
6. Cool Runnings
7. Cry To Me
8. Rock'N Groove
9. Another Dance
10. Jammins

●今までアップしたBunny Wailer関連の記事
〇Bunny Wailer「Blackheart Man」
〇Bunny Wailer「Bunny Wailer Sings The Wailers」
〇Bunny Wailer「Dubd'sco Vol. 1」
〇Bunny Wailer「Dubd'sco Vol. 2」
〇Bunny Wailer「Protest」
〇Bunny Wailer「Solomonic Singles 1: Tread Along 1969-1976」
〇Bunny Wailer「Solomonic Singles 2: Rise & Shine 1977-1986」
〇Bunny Wailer「Time Will Tell: A Tribute To Bob Marley」
〇Bunny Wailer「In I Father's House」
〇Bunny Wailer「Roots Radics Rockers Reggae」