今回はLion Youthのアルバム

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「Love Comes & Goes」です。

Lion Youthは70年だ後半から80年代に
イギリスで活動していたシンガーのようです。
Discogsなどの彼のバイオグラフィーを見て
みると、アルバムは今回のアルバムぐらいで、
他はシングルを70年代後半から80年代に
かけてリリースしているアーティストのよう
です。
ちょっとGregory Isaacsに似たセクシーな
歌いぶりが特徴的な人のようです。

今回のアルバムは1981年にUKのVirgo
Stomachというレーベルから出た彼のソロ・
アルバムです。

全14曲で収録時間は59分53秒。
オリジナルは10曲目までで、残りの2曲は
CDボーナス・トラック。
さらにジャケットに表記のない2曲のボーナス・
トラックのダブが付いています。

ミュージシャンについては以下の記述があります。

Drums: Ringer
Bass: Michael Francis, Lion Youth
Guitars: Donald Benjemen, Fits
Piano, Organ: Eyes, Patrick Mason
Backing Vocals: Michael Dawkins, Lion Youth
Lead Vocals: Lion Youth

Recorded and Mixed at Mark Angelo Recording Studio
Engineered by Mark Lusardi

All Tracks Produced by John Rubie
Executive Producer: John Rubie

となっています。

80年のアルバムですが、知らないアーティスト
の名前が並んでいます。
おそらくUKのマイナーなアーティストを集めて
作ったアルバムだと思います。
ただけっこうこの時代のレゲエのテイストを
完全にコピーした演奏で、意外と演奏の質は良い
です。

正直アーティストやプロデューサーの表記を
見た時には、「こりゃ、ヤッちゃったかな?」
と思いました(笑)。
あまりに知らない人ばかりで、最近のアルバム
を買っちゃったかなと思ったんですね。
ネットで調べてみたところ、81年のアルバム
だったので、一応狙っているあたりという事で
安心しました。

さて今回のアルバムですが、かなりマイナーな
アーティストと思われるLion Youthですが、
意外と内容は良いアルバムなんですね。
1曲目のタイトル曲「Love Comes And Goes」
などは、まさにGregory Isaacsか?と聴き間違う
ような歌い方なんですが、歌声もこの時代の
ジャマイカのダンスホールの空気感もうまく
コピーしていて、すごく良いグルーヴ感のある
アルバムになっているんですね。
「本物」じゃないけど「本物」みたいな、
ちょっと面白いアルバムだと思います(笑)。

1曲目は表題曲の「Love Comes And Goes」です。
出だしで「ウ~~~ン!」という吐息から入る
ところなんか、まさにGregory Isaacsそのまま
です。
それでもちっとも嫌味で無いのが、この人が
本当にGregory Isaacsとレゲエ・ミュージック
が好きで好きでコピーしている事が伝わって
来るんですね。

LION YOUTH - Love Comes & Goes


2曲目は「I Want A Girl」です。
こちらは明るいちょっとユーモラスささえ
感じるノリの曲です。
その曲を心地良さそうに歌うLion Youthの
ヴォーカルが良いです。

3曲目は「What Would You Do」です。
こちらもユッタリしたワン・ドロップのリズム
に、出だしのハミングもGregory Isaacsっぽい
Lion Youthのグルーヴ感たっぷりのヴォーカル
といった曲です。
正直すごくGregory Isaacsに似ているんです
ね。
それでも嫌な感じがしないのは、彼自身が
Gregoryをすごく愛している事が伝わって
来るからかもしれません。

4曲目は「Senorita」です。
ラヴ・ソングかスペイン語で「セニョリータ」
と歌う1曲です。
こちらもソフトな歌声がすごくソソる曲です。

5曲目は「Easy Skanking」です。
こちらもユッタリしたオルガンのメロディに
乗せたLion Youthのヴォーカルが、とても心
地良い曲です。
タイトルを聞くとあのBob Marleyの…と思い
ますが別の曲で、グルーヴ感タップリの1曲
です。

Youth Easy Skanking


6曲目は「Frustration」です。
こちらもオルガンのユッタリしたメロディに
乗せた曲で、Lion Youthの張りのあるヴォー
カルが気持ちの良い1曲です。
バックにも触れておきますが、意外と本場
ジャマイカの較べても遜色のないシッカリ
した演奏で、心地良いグルーヴ感を生み出して
います。

Lion Youth (Frustration)


7曲目は「Natty Bring De Cochi」です。
乾いたドラムのリズムからオルガンのメロディ、
Lion Youthのヴォーカルに女性コーラスと
いった曲です。
ここでもLion Youthのソフトなヴォーカルが
良い味を出しています。

8曲目は「Chant Ina Dance」です。
こちらもLion Youthのソフトな柔らかい
ヴォーカルが良い味を出している曲です。
彼のヴォーカルは確かにGregory Isaacsに似て
いますが、それだけでなく歌もウマく魅力的な
ヴォーカリストであることもまた事実です。
そしてGregory Isaacsに似たヴォーカリストを
求める需要もUKにあったのではないか?と
思われます。

9曲目は「It's A Shame」です。
軽快なリズムにソフトなヴォーカルといった
1曲。

Lion Youth - It's a shame


10曲目は「Decelia」です。
軽快なリズムにユル目のヴォーカルといった曲
で、リラックスした雰囲気がよう味を出している
1曲です。

ここまでがオリジナルのアルバムで、この後は
CDボーナス・トラックが収められています。
ただこのCDボーナス・トラックの11曲目
「Rat A Cut Bottle」は、彼の代表曲ともいえる
曲なんですね。
ある意味この曲が一番の聴きどころともいえる
曲です。
この後の2曲はビートがミリタント・ビートで、
どうも録音が70年代後半のようです。

11曲目は「Rat A Cut Bottle」です。
このアルバムで一番長い7分16秒にも及ぶ曲
です。
前半はピアノのメロディに乗せたシリアスな
ヴォーカル、後半はダブワイズの入ったトース
ティングに近いエコーのかかったヴォーカルと
いう曲です。
特に後半はDillingerのヴォーカルを聴いて
いるような、ソリッドなカッコよさがあります。
この1曲を聴くだけで、このLion Youthが単に
コピーに終わらないレゲエを愛するアーティスト
であることが伝わってきます。
ガツンと心を揺さぶるハード・コアな1曲です。

Lion Youth - Rat A Cut Bottle + Dub


12曲目は「Three Million On The Dole」
です。
こちらもこちよいビートが印象的な曲です。
重いベースとドラムの絡みが、ヴォーカルの
魅力をよりアップしています。

最後の2曲はジャケットにも書かれていない
2曲ですが、ボーナス・トラックの11曲目
「Rat A Cut Bottle」と、12曲目「Three
Million On The Dole」のダブが収められて
います。
こちらも70年代後半の録音ではないかと
思われます。

13曲目は「Rat A Cut Dub」です。
こちらは明らかに1曲目「Rat A Cut
Bottle」のダブで、エコーのかかったヴォー
カルに、まるで石で頭をゴンゴン殴られている
ようなハードなミックスが心地良い曲です。
ダブ好きには見逃せない1曲だと思います。

Lion Youth - Rat A Cut Dub


14曲目は「Three Million Posse
Unemployed In A Dub」です。
12曲目「Three Million On The Dole」の
ダブです。
こちらもかなりハード・コアなダブです。
こちらもダブ好きには見逃せない1曲です。

ざっと追いかけて来ましたが、すごく
Gregory Isaacsにヴォーカル・スタイルが似て
いて評価が微妙な部分もあるんですが、実際に
アルバムを通して聴いてみると、オリジナル・
アルバムは当時のダンスホール・レゲエの空気感
をうまく再現したグルーヴ感があるし、ボーナス・
トラックの「Rat A Cut Bottle」はすごく魅力的
な曲でさらにそのダブも素晴らしいわで、意外と
魅力的なアルバムなんですね。
特に「Rat A Cut Bottle」は、ルーツ好きには
必聴の1曲だと思います。

おそらくこの70年代後半から80年代の
イギリスにはジャマイカのレゲエやGregory
Isaacsのヴォーカルに憧れる黒人層、特に
ジャマイカ出身のの黒人層の中に、そうした
音楽を求める要求があったんだと思います。
そうした彼らはこのLion Youthの歌を聴き、
遠いジャマイカのレゲエを思い、さらには母なる
アフリカの大地に想いを馳せていたんだと思い
ます。
暗く重い雲の立ち込めた雨のそぼ降るイギリス
で、このLion Youthの歌うレゲエは、多くの人
の心の救いになったのかもしれません。

機会があれば聴いてみてください。


○アーティスト: Lion Youth
○アルバム: Love Comes & Goes
○レーベル: Virgo Stomach
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1981

○Lion Youth「Love Comes & Goes」曲目
1. Love Comes And Goes
2. I Want A Girl
3. What Would You Do
4. Senorita
5. Easy Skanking
6. Frustration
7. Natty Bring De Cochi
8. Chant Ina Dance
9. It's A Shame
10. Decelia
(CD Bonus Tracks)
11. Rat A Cut Bottle
12. Three Million On The Dole
(ジャケット記載なし)
13. Rat A Cut Dub
14. Three Million Posse Unemployed In A Dub