今回はThriller U, Admiral Tibettのアルバム

thriller_u_01a

「Two Good To Be True」です。

Thriller UことEustace Hamiltonは80年代の
ダンスホール・レゲエの時代に活躍したシンガー
です。

Thriller U - Wikipedia

Admiral TibettことKenneth Allenは、80年代
の半ば頃から活躍するシンガーです。
Bob MarleyやBurning Spearといったルーツ系の
アーティストに影響を受けた人のようで、コン
シャスな楽曲が多いのが特徴のシンガーのよう
です。

アーティスト特集 Admiral Tibet (アドミラル・チベット)

今回のアルバムは1989年にDigital Bから
発表された、Side 1はThriller Uの曲、Side 2
はAdmiral Tibettの曲が収められたいわゆる
「対決盤」です。
この80年代頃になるとこうした片面ずつ違う
アーティストが収められた、「対決盤」がよく
作られるようになるんですね。

詳しい事情は解りませんが、同じ楽曲を違う
アーティストに歌わせるという、バックの録音
を半分で済ませるという弱小プロダクションの
知恵みたいなものがあったのかも。
ただ今回のアルバムなどもそうですが、違う
楽曲のものもあります。
あるいはネーム・ヴァリューの強いアーティスト
と弱いアーティストを組み合わせるという、売り
方もあったのかも。
ただこういうヴァリエーションの付け方は、
いかにもジャマイカらしいところではあります。

今回のアルバムですが、実は手に入れるまで
ひと悶着あったアルバムでした。
先月にレゲエレコード・コムで注文して、
当日に新宿のDub Storeに取りに行ったところ
「在庫切れ」とのこと。

その日はそのまま他の商品だけ引き取って帰って
来たのですが、いくらなんでも人気商品とは思え
ないこのアルバムが同時に売れてしまう事がある
なんて思えない…。
そこでメールで問い合わせたところ、初めは欠品
の確認漏れとの事だったのですが、またメールが
来て、実はアルバムの汚れがあまりにもひどいの
で欠品扱いにしてしまったと連絡がありました。
そこで状態を見て引き取るか止めるか決めると
いう話になり、先日またDub Storeに行って来て
買い取る事にしたという訳です。

確かにジャケットの状態は悪く、Admiral Tibett
の写真の左腕の部分は青い洋服が赤く変色して
かなり汚れた状態でした。
レコード盤自体も雲ムラのようなものが出来て
いる状態でしたが、音質には問題はありません
でした。
ジャケットも濡らした布で拭くと、少しは
汚れが取れてキレイに。

店員の方に聞くと、ジャマイカではもうLPは
作っておらず在庫で残っているものを買い取る
形なので、こうしたかなり汚れたジャケットの
ものが送られて来る事が多いんだそうです。
そうしたものは中古品扱いで、安く売るしか
ないんだそうです。
まあ、そういう意味ではたとえ汚れたレコード
でも、値段以上に貴重なものなのかもしれません
ね。

Side 1はThriller Uの曲が5曲、Side 2は
Admiral Tibettの曲が5曲の全10曲。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Recorded at: Jammy's & Music Works Recording Studio
Musicians: Steely & Clevie, Digital, The Crew, M. Bennett
Recording Engineer: Bobby Digital
Mixing Engineers: Bobby Digital, Genius, Beckett
Special Thanks to: King Jammy, Mikey Bennett, Genius,
Brian & Tony Gold, Heat Wave Crew
Mixed at: King Jammy's
Produced by: Bobby Digital
Design & Art: Studio Case

となっています。

プロデュースはBobby Digitalで、バックは
Steely & Clevie、Digital、The Crew、
M. Bennettといった人達が担当、ミックスは
King Jammy'sで行られたアルバムです。
この布陣からも解るように、バックは完全に
デジタルの「打ち込み」の時代になっているん
ですね。

さて今回のアルバムですが、このデジタルの
ダンスホール・レゲエの時代の良い空気感が
うまく詰め込まれたアルバムだと思います。
このデジタルの時代になるとバックのサウンド
は打ち込みになり、ある意味軽く無表情な
サウンドになります。
その分歌い手にはより表情のある表現力が、
要求されたんじゃないかと思います。
今回のアルバムなどを聴くと、Thriller Uも
Admiral Tibettも、しっかり自分の個性を打ち
出す事に心を砕いている感じがあって、丁寧な
歌いぶりが心地よいサウンドを作っています。

Side 1にはThriller Uの楽曲が収められて
います。
彼の歌いぶりは伸びのある高音がなかなか
魅力的です。

Side 1の曲目は「Close The Door」です。
出だしから伸びのある高音が魅力の曲です。
チョコチョコ入るヴァイオリンと思われる
サウンドも良いアクセントになっています。
心地よいヴォーカルの1曲。

Thriller U - Close The Door


2曲目は「I Think It's Love」です。
一見ソウルのラヴ・ソングかと聴き間違うほど、
ポピュラリティーのある曲です。
こちらもノビノビとしたThriller Uのヴォーカル
が魅力の曲です。

Thriller U - I Think Its Love (Two Good To Be True - 1989)


3曲目は「Starting All Over Again」です。
デジタルらしいイントロからThriller Uの
ヴォーカルがジックリと聴かせる1曲。
やはりこの80年代後半ぐらいになると、
ラヴ・ソングが主流になって来るんですね。

4曲目は「Baby I Love You」です。
こちらはファルセット気味のヴォーカルも入った
1曲です。
踊りだすようなリズムに乗せた爽やかな曲です。

5曲目は「Sweetest Sound」です。
リディムはShabba Ranksの「Peanie Peanie」。
この時代のヒット・リディムに乗せたThriller U
のファルセットが冴える1曲です。

Thriller U - Sweetest Sound (Two Good To Be True - 1989)


リズム特集 Fade Away/Peanie Peanie (フェイド・アウェイ/ピニ・ピニ)

Side 2にはAdmiral Tibettの歌が収められて
います。
こちらはコンシャス・シンガーらしいシッカリと
した歌いぶりです。

Side 2の曲目は「Don't Come Love Me」です。
いかにもデジタルらしい金属的な音のエフェクト
のイントロから、シッカリしたAdmiral Tibetの
ヴォーカルが冴える曲です。

2曲目は「Feel The Pain」です。
リズミカルな曲に乗せたAdmiral Tibetの
男性的な伸びのある高音が魅力的な曲です。

3曲目は「Wrong Place」です。
こちらもAdmiral Tibetの張りのある
ヴォーカルに、リズミカルなメロディが印象的
な曲です。

4曲目は「In The Ghetto」です。
リディムはSoul Vendorsの「Bangarang」。
ロックステディの名リディムを気持ち良さそう
に歌うAdmiral Tibetのヴォーカルがとても
良いです。

Admiral Tibet - In The Ghetto (Two Good To Be True - 1989)


5曲目は「Oh My Lady」です。
リディムはLloyd Robinsonの「Cuss Cuss」。
デジタルのリズミカルな曲に乗せたAdmiral
Tibetのヴォーカルも冴えを見せます。

Admiral Tibet - Oh My Lady (Two Good To Be True - 1989)


リズム特集 Cuss Cuss (カス・カス)

ざっと追いかけて来ましたが、どちらのヴォー
カリストの歌にも気持ちの良いグルーヴ感が
あり、とても良いアルバムだと思います。

この時代になるとルーツ・レゲエが持っていた
ような土着性や、ダブが持っていたような革新性
は失われてきますが、それに変わってより洗練
された音楽へとレゲエは変わって来るんですね。
それはそれで自然な流れだったのかもしれ
ません。
大事なのは失ったものを見る事よりも、その
時代が得たものを見る事です。

機会があれば聴いてみてください。


○アーティスト: Thriller U, Admiral Tibett
○アルバム: Two Good To Be True
○レーベル: Digital B
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1989

○Thriller U, Admiral Tibett「Two Good To Be True」曲目
Side 1
1. Close The Door – Thriller U
2. I Think It's Love – Thriller U
3. Starting All Over Again – Thriller U
4. Baby I Love You – Thriller U
5. Sweetest Sound – Thriller U
Side 2
1. Don't Come Love Me – Admiral Tibett
2. Feel The Pain – Admiral Tibett
3. Wrong Place – Admiral Tibett
4. In The Ghetto – Admiral Tibett
5. Oh My Lady – Admiral Tibett

●今までアップしたThriller U関連の記事
〇Thriller U「On And On」
●今までアップしたAdmiral Tibet関連の記事
〇Admiral Tibet「Come Into The Light」
〇Admiral Tibett「Reality Time」
〇Admiral Tibett「Separate Class」