今回はVarious(オムニバス)もののアルバム

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「Reggae Anthology: Channel 1 Story
Chapter Two」です。

まずはChannel Oneというレーベルについて
説明しておきます。
Channel Oneは70年半ばのルーツ・レゲエの
時代に、それまでレゲエの中心的な存在だった
Studio OneやTreasure Isleといったレーベル
から主役を奪ったレーベルとして知られて
います。
中国系ジャマイカ人のJoseph Hoo Kimや
Ernest Hoo KimなどのHoo Kim4兄弟によって
設立されたこのレーベルは、Sly Dunbarを
実質的なリーダーとするChannel Oneのバック・
バンドThe Revolutionariesによる攻撃的な
ミリタント・ビート(別名ロッカーズ・ビート)
を武器に、ジャマイカの音楽界を席巻して行くん
ですね。
その後80年代の半ばに拠点をニューヨークに
移転した事で自然消滅した形になってしまい
ますが、70年代半ばら80年代にかけて
レゲエに大きな遺産を残したレーベルとして
知られています。

レーベル特集 Channel One (チャンネル・ワン)

今回のアルバムは2008年にVPレ-ベルから
発売された「Reggae Anthology」シリーズの
1枚です。
「Chapter Two」となっていますが、2004年
に発売された「Reggae Anthology: The Channel
One Story」の続編として発売されたアルバムで、
Channel Oneの70年代半ばのルーツ・レゲエの
時代から80年代初めのダンスホール・レゲエの
時代の音源を集めたCD2枚組のアルバムです。

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Various - Reggae Anthology: The Channel One Story (2004)

前作もCD2枚組で全37曲とかなりの
ヴォリュームでしたが、今回も全35曲と
かなりの聴きごたえのある内容で、この2つ
のアルバムを聴けばChannel Oneの全貌が解る
という仕様になっています。

Disc 1が全18曲で収録時間は66分49秒。
Disc 2が全17曲で収録時間は60分41秒。
ディスク2枚組で全35曲、2時間を超える
アルバムです。

ミュージシャンについては以下の記述があります。

Executive Producer: Joseph Hoo-Kim & Christopher Chin
Backing Band: The Revolutionaries
Recorded & mixed at: Channel One Recording Studio
Recording & Mixing Engineers: Soljie, Barnabas,
Ernest Hoo-Kim, Maxie, Scientist, Bunny Tom Tom

となっています。

今回のアルバムには詳細なミュージシャンの表記
はありませんが、前作のアルバムにはミュージ
シャンの名前が書かれていました。
それを写してみると、以下のようになっています。

Musicians:
Sly Dunbar, Style Scott, Horsemouth, Tony 'Benbow' Creary,
Flabba, Santa, Robbie Shakespeare, Bingy Bunny, Steely,
Ansel Collins, Rad Bryan, Sticky Thompson, Tony Chin,
Sky Juice, Robbie Lyn, Tarzan, Lloyd Parks, Tony Asher,
Touter, Dwight Pinkney, Ossie Hibbert, Fully Fulwood,
Ranchie McLean

Hornes:
Edication Squad

この全てが参加しているかは解りませんが、
同時期の録音と考えられるので、多くの人が
参加しているものと思われます。
参考程度に見ておいてください。

さて今回のアルバムですが、やっぱりアルバム
2枚を聴くとかなりの聴きごたえです。
いかにこの時代のChannel Oneというレーベル
がいかにスゴかったのか、あらためて思い知ら
される内容になっています。

今回収められているアーティストは、
Barry Brown、The Mighty Diamonds、Earth & Stone、
The Wailing Souls、Dillinger、Ranking Trevor、
Hell & Fire、Don Carlos & Gold、John Holt、
Delroy Wilson、The Heptones、Leroy Smart、
Michael Palmer、Sammy Dread、Barrington Levy、
Little John、Black Uhuru、The Tamlins、
Horace Andy、Yellowmanといった人達です。
全開は80年代のダンスホール・レゲエの時代
の音源が多く収められていた印象でしたが、
今回は70年代のルーツ期と半々ぐらいな印象
です。
やはりChannel Oneというとルーツ期を制覇
したミリタント・ビートの印象が強いので、
この配分は悪くないと思います。
全開は収められていなかったEarth & Stoneが
収められているのも、ちょっと嬉しいところ
です(笑)。

Disc 1の1曲目はBarry Brownの「Stand Firm
(It A Go Dread)」です。
Barry BrownがChannel Oneに残したアルバム
「Far East」からの1曲です。

アーティスト特集 Barry Brown (バリー・ブラウン)

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Barry Brown - Far East (1981)

2曲目はThe Mighty Diamondsの「Have Mercy」
です。
彼らのメジャー・デビュー・アルバム「Right
Time」にも収められた1曲。
The Revolutionariesの叩き出すハードなミリ
タント・ビートに乗せたThe Mighty Diamonds
のソフトな歌声という組み合わせ。
メローとビターが同居する、独特の世界を作り
上げています。

アーティスト特集 Mighty Diamonds (マイティ・ダイアモンズ)

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The Mighty Diamonds - Right Time (1976)

3曲目はEarth & Stoneの「Jail House Set
Me Free」です。
Earth & StoneはAlbert BaileyとClifton Howell
からなるユニットで、79年に「Kool Roots」
という素晴らしいアルバムをChannel Oneに残して
います。

Earth & Stone Kool Roots 1976 78 05 Jail house set me free


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Earth & Stone - Kool Roots (1979)

4曲目はThe Wailing Soulsの「Jah Give Us
Life To Live」です。
The Wailing Soulsはルーツ期にThe Wailers
の兄弟グループとしてStudio Oneからデビュー
して、ダンスホールの時代にも活躍した
グループです。
この曲は84年のアルバム「The Best Of
Wailing Souls」に収められた1曲です。

アーティスト特集 Wailing Souls (ウェイリング・ソウルズ)

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The Wailing Souls - The Best Of Wailing Souls (1984)

5曲目はDillingerの「Natty B.S.C. (a.k.a.
Teeth And Tongue)」です。
Dillingerの76年のアルバム「Bionic Dread」
からの1曲です。

アーティスト特集 Dillinger (ディリンジャー)

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Dillinger - CB 200 + Bionic Dread (1976)

6曲目はRanking Trevorの「Caveman Skank」
です。
Ranking TrevorことMaxwell Grantは、
70年代後半から80年代かけて活躍した
ディージェイのようです。

7曲目はHell & Fireの「Show Us The Way」
です。
こちらはあまり聞いた事のないアーティスト
ですが、シングル盤のみのレアなアーティスト
のようです。
リディムはJohn HoltとJoya Landisのロック
ステディのヒット曲「I'll Be Lonely」。

Hell & Fire - Show Us The Way - Reggae


リズム特集 I'll Be Lonely (アイル・ビー・ロンリー)

8曲目はThe Mighty Diamondsの「Back Whey」
です。
こちらもThe Revolutionariesのミリタント・
ビートに、The Mighty Diamondsのコーラス・
ワークが冴える1曲です。

9曲目はDon Carlos & Goldの「Hog And Goat」
です。
Don Carlosはメジャー・デビュー前の
Black Uhuruにも参加した事で知られるシンガー
で、80年代にはソロとして活躍した人です。
GoldはこのDon Carlosのアルバムでコーラス・
ワークを担当している他は、シングルを数枚
出しているシンガーです。
こちらは82年のアルバム「Them Never Know
Natty Dread Have Him Credential 」に入って
いる1曲です。

10曲目はJohn Holtの「Why Can't I Touch
You ?」です。
John Holtはロックステディの時代にコーラス・
グループThe Pragonsでキャリアをスタート
させたのちに、ルーツからダンスホールに
かけて活躍した大シンガーです。
こちらはルーツ期の音源か、心地良いビートが
堪能できる1曲です。

アーティスト特集 John Holt(ジョン・ホルト)

11曲目はDelroy Wilsonの「I'll Never Hurt
You」です。
この人もスカ→ロックステディ→ルーツ・レゲエ
さらにはダンスホール・レゲエの時代まで活躍
した名シンガーです。
この曲は78年のヒット曲のようで、気持ちの
良いビートに乗せた歌声を聴かせています。

Delroy Wilson - I'll never hurt you


アーティスト特集 Delroy Wilson (デルロイ・ウィルソン)

12曲目はThe Heptonesの「Every Day Every
Night (a.k.a. Every Night Every Day)」です。
The Heptonesはロックステディの時代に多くの
ヒット曲を飛ばし一世を風靡したコーラス・
グループで、ルーツの時代も活躍したグループ
です。
この曲は78年のアルバム「Good Life」から
の1曲です。

アーティスト特集 Heptones (ヘプトーンズ)

13曲目はLeroy Smartの「Wish You Good
Luck」です。
この曲は77年のアルバム「The Best Of
Leroy Smart 」からの1曲です。
彼の個性的なヴォーカルが生きた1曲。

アーティスト特集 Leroy Smart (リロイ・スマート)

14曲目はMichael Palmerの「Pon Your Toe」
です。
Michael Palmerは80年代のダンスホール・
レゲエの時代に活躍したシンガーです。
こちらはいかにもダンスホール!といった1曲
です。

15曲目はSammy Dreadの「M16」です。
Sammy Dreadは80年代のダンスホール期に
活躍したシンガーです。
このダンスホール期を象徴する名曲を、心地
良さそうに歌っています。

Sammy Dread - M16 - 7inch / Hitbound


16曲目はBarrington Levyの「Soldier」
です。
こちらもダンスホール期に「カナリア・
ヴォイス」で一世を風靡した名シンガー。
エコーの効いた心地良い歌声を聴かせてくれて
います。

17曲目はLittle Johnの「All Over Me」です。
こちらもダンスホール期に活躍したシンガー
です。
鼻にかかったような独特の歌声を聴かせて
います。

18曲目はThe Wailing Souls & Ranking
Trevorの「War」です。
こちらは前半が歌、後半がディージェイの
ディスコ・ミックス形式の曲になっています。
この楽しさもレゲエならでは!というものが
あります。

GRED 001 B - 1978 - Wailing Souls & Ranking Trevor - War


Disc 2の1曲目はThe Mighty Diamondsの
「Africa」です。
The Mighty Diamondsの曲の中でも名曲度が
非常に高い1曲です。

2曲目はEarth & Stoneの「In Time To Come」
です。
こちらも79年の「Kool Roots」からの1曲
です。
グイグイ来るビートにヤラレる1曲。

3曲目はJohn Holtの「Don't Fight Your
Brother (a.k.a. Hooligan)」です。
ベテラン・シンガーの貫禄の1曲。

4曲目はLeroy Smartの「Badness No Pay」
です。
こちらも77年のアルバム「The Best Of
Leroy Smart 」からの1曲です。

LEROY SMART - BADNESS DON ' T PAY


5曲目はDillingerの「Eastman Skank」
です。
こちらも76年のアルバム「Bionic Dread」
からの1曲です。
全盛期のDillingerのトースティングが
楽しめる1曲です。

Dillinger - Eastman Skank


6曲目はBlack Uhuruの「Sun Is Shining」
です。
こちらはメジャー・デビュー以前のBlack
Uhuruの1曲。
77年の曲のようです。
タイトルから解るようにあのBob Marleyの
名曲です。

アーティスト特集 Black Uhuru (ブラック・ユフル)

7曲目はEarth & Stoneの「Three Wise Men」
です。
リディムはDennis Walksの名曲「The Drifter」。

8曲目はLeroy Smartの「Sharon」です。
こちらも「The Best Of Leroy Smart 」から
の1曲です。

9曲目はThe Tamlinsの「Sweat For You Baby」
です。
こちらはルーツからダンスホールにかけて活躍
した3人組コーラス・グループの1曲です。

The Tamlins - Sweat for you baby


10曲目はJohn Holtの「Have You Ever
Been In Love ?」です。
この人ぐらいになると歌のウマいヘタという
レベルを超えているのがスゴイところです。

11曲目はHorace Andyの「Girl I Love You」
です。
ファルセット・ヴォイスが特徴の名歌手の1曲。
不思議な浮遊感のある1曲。

アーティスト特集 Horace Andy (ホレス・アンディ)

12曲目はThe Mighty Diamondsの「There's
No Me Without You」です。
このコーラス・グループの真の魅力が解る1曲
です。
後半はダブのディスク・ミックスの仕様になって
います。

The Mighty Diamonds There's no Me Without You


13曲目はDillingerの「Plantation Heights」
です。
聴けば解るリディムにDillingerのトースティング
が冴える1曲です。

14曲目はMichael Palmerの「No More Lean
Boot」です。
こちらもダンスホールの楽し気なリズムが収め
られた1曲です。

15曲目はYellowmanの「Mad Over Me」です。
ダンスホールの王者Yellowmanの空気感がうまく
収められた1曲です。

アーティスト特集 Yellowman (イエローマン)

16曲目はLeroy Smartの「Pride And Ambition」
です。
こちらも77年のアルバム「The Best Of
Leroy Smart 」からの1曲です。

17曲目はDelroy Wilsonの「Mother Nature
(a.k.a. (That's The Way) Nature Planned It)」
です。
ベテラン・アーティストの激渋の1曲です。

DELROY WILSON - Mother Nature [1976]


ざっと追いかけて来ましたが、やっぱりこの
Channel Oneってスゴいレーベルだなぁ!と、
あらためて思い知らされるようなかなり濃い
内容のアルバムだと思います。
やはりこのレーベルは間違いなくルーツ・レゲエ
からダンスホールという、ジャマイカの70年代
後半から80年代前半の音楽史を支えたレーベル
なんですね。
その価値はこれからもけっして色褪せる事は
ありません。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Various
○アルバム: Reggae Anthology: Channel 1 Story Chapter Two
○レーベル: 17 North Parade
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年:

○Various「Reggae Anthology: Channel 1 Story Chapter Two」曲目
Disc 1
1. Stand Firm (It A Go Dread) – Barry Brown
2. Have Mercy – The Mighty Diamonds
3. Jail House Set Me Free – Earth & Stone
4. Jah Give Us Life To Live – The Wailing Souls
5. Natty B.S.C. (a.k.a. Teeth And Tongue) – Dillinger
6. Caveman Skank – Ranking Trevor
7. Show Us The Way – Hell & Fire
8. Back Whey – The Mighty Diamonds
9. Hog And Goat – Don Carlos & Gold
10. Why Can't I Touch You ? – John Holt
11. I'll Never Hurt You – Delroy Wilson
12. Every Day Every Night (a.k.a. Every Night Every Day) – The Heptones
13. Wish You Good Luck – Leroy Smart
14. Pon Your Toe – Michael Palmer
15. M16 – Sammy Dread
16. Soldier – Barrington Levy
17. All Over Me – Little John
18. War – The Wailing Souls & Ranking Trevor

Disc 2
1. Africa – The Mighty Diamonds
2. In Time To Come – Earth & Stone
3. Don't Fight Your Brother (a.k.a. Hooligan) – John Holt
4. Badness No Pay – Leroy Smart
5. Eastman Skank – Dillinger
6. Sun Is Shining – Black Uhuru
7. Three Wise Men – Earth & Stone
8. Sharon – Leroy Smart
9. Sweat For You Baby – The Tamlins
10. Have You Ever Been In Love ? – John Holt
11. Girl I Love You – Horace Andy
12. There's No Me Without You – The Mighty Diamonds
13. Plantation Heights – Dillinger
14. No More Lean Boot – Michael Palmer
15. Mad Over Me – Yellowman
16. Pride And Ambition – Leroy Smart
17. Mother Nature (a.k.a. (That's The Way) Nature Planned It) – Delroy Wilson