今回はScientistのアルバム

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「Scientific Dub」です。

ScientistことHopeton Overton Browneは、
レゲエのダブのミキサーとして活躍した人です。
70年代の後半からダブ・マスターKing Tubby
の元で助手としてミックスの勉強をした彼は、
80年代になるとその実力を発揮してVolcano
レーベルのHenry 'Junjo' Lawesの元で、バック
はRoots Radics、ジャケットのイラストは
Tony McDermottという「漫画ジャケ」シリーズ
のダブで人気を博すようになるんですね。
その後King Tubbyから独立し、ダブのミキサー
として活躍した人です。

アーティスト特集 Scientist (サイエンティスト)

今回のアルバムは1981年にアメリカの
Brad Osborneが主催するレーベルClocktower
から発売されてアルバムのようです。
多くの販売サイトではScientistの「ファー
スト・アルバム」という事が書かれていて、
その制作年も80年や78年などになって
いました。
ただここではネットのDiscogsの記述に合わせ
て81年としました。

このアルバムがファースト・アルバムだとする
と、「漫画ジャケ」の始まりはこのアルバムと
いう事になるんですね。
それはどうなのかな~?というのが、正直な
ところです。
むしろ80年から始まった「漫画ジャケ」
シリーズに影響を受けて、このアルバムも
「漫画ジャケ」になっているという方が辻褄が
合っている気がするんですよね。
おそらくこのジャケの感じからすると、81年
の「漫画ジャケ」シリーズ3作目の「Scientist
Meets The Space Invaders」以降に書かれた
ものなんじゃないかという気がします。

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Scientist – Scientist Meets The Space Invaders (1981)

そう考えると81年でちょうど合っているん
ですね。
ちなみにScientistの作品には「漫画ジャケ」
のものが多いですが、「漫画ジャケ」シリーズと
呼ばれているのは80年から81年まで計6作
が作られたTony McDermottがイラストを手掛けた
ものを指します。

この80年代になるとそうした「イメージ戦略」
が進んで、Scientist=漫画ジャケという売り方
をするようになるんですね。
特にVolcanoレーベルのHenry 'Junjo' Lawesと
いう人は、そうしたパッケージまで気を配った
売り方が巧みだった人なんですね。
そのお蔭でScientist=漫画ジャケというイメージ
が定着し、彼は後のアルバムまで漫画ジャケが
多くなるんですね。

話が長くなりましたが、このアルバムが
「ファースト・アルバム」というのは、おそらく
アメリカでのファーストとか、そんなところ
じゃないかと思います。

ちなみにこのアルバムはClocktowerのBrad Osborne
も力を入れたアルバムだったようで、彼が直々に
「Bunny Lee音源」から作らせたアルバムだったと
いう事が、販売サイトなどに書かれていました。
確かにパーカッションには、Brad本人の名前もあり
ます。

全10曲で収録時間は33分55秒。

ミュージシャンについては以下の記述があります。

Bass: Robbie Shakespeare, Family Man, Bagga, Michael Dread
Drums: Carlton 'Santa' Davis, Sly Dunbar
Piano: Bernard 'Touter' Harvey, Augustus Pablo,
Gladstone Anderson
Organ: Winston Wright, Ossie 'Bongo' Hibbert
Electric Piano: Winston Wright
Rhythm Guitar: Tony Chin, Aston 'Family Man' Barrett,
Little D, Rick Frater
Lead Guitar: Willie Lindo
Percussion: Scully, Brad
Hornes: Ossie Scott

Produced by: Brad Osborne
Mixer: Scientist

Cover Photo by: Shizuo Ishii
Design by K. Okuyama

となっています。

ミュージシャンを見るとSly & RobbieやSanta、
Augustus Pabloなどルーツ期に活躍したアーティ
ストの名前が目立ちます。
実際に元になった音源もルーツ期のもののよう
です。
そのあたりもこのアルバムがファーストと
言われるゆえんか。
ただ「Bunny Lee音源」となると使い回しも
多いので、何とも言えません。

さて今回のアルバムですが、やっぱりScientist
となるとRoots Radicsを使ったダンスホール・
レゲエのワン・ドロップのサウンドという
イメージが強いのですが、こうしたルーツの
音源を使ってもしっかりと自分の個性を出した
ダブを作っています。
その辺はやっぱり才能のある人なんだなぁと
感心させられます。
何より彼独特の重量感のあるサウンドは、とても
魅力的です。

1曲目は「Drum Song Dub」です。
リディムはJackie Mittoo & Sound Dimensionの
「Drum Song」。
ロックステディの時代の名曲を、ベースと
パーカッションの効いたダブにしています。

Scientist - Scientific Dub - 01.Drum Song Dub.wmv


リズム特集 Drum Song (ドラム・ソング)

2曲目は「Keep A Good Dub Rubbing」です。
リディムはDennis Brownの「Can't Keep A Good
Man Down」。
使われているヴォーカルはJohnny Clarkeのよう
です。

Scientist - Scientific Dub - 02.Keep a good Dub Rubbing .wmv


3曲目は「Taxi To Baltimore Dub」です。
こちらはベースの効いたダブで、使われている
リディムはTamlinsの「Baltimore」という曲
のようです。

4曲目は「Satta Dread Dub」です。
リディムはWayne Jarrettの「Satta Dread」。
悲し気なピアノのメロディが印象的な曲です。

5曲目は「Every Dub Shall Scrub」です。
リディムはJohnny Clarkeの「Every Knee Shall
Bow」。
Johnny Clarkeのヴォーカルも少し入って
います。

6曲目は「Blacka Shade Of Dub」です。
こちらはJackie Mittoo & Soul Vendorsの
名リディム「Darker Shade Of Black」です。
こちらもオルガンのメロディに、ベース効いた
ダブに仕上げています。

Scientist - Blacka Shade Of Dub


リズム特集 Darker Shade Of Black (ダーカー・シェイド・オブ・ブラック)

7曲目は「Bad Days Dub」です。
リディムはJohnny Clarkeの「Bad Days Are
Going」。
ズンズン響くベースに、エコーの効いた
パーカッションという組み合わせのダブです。

8曲目は「East Of Scientist Corner」です。
リディムはToyanの「Irie Feelings」。
彼のトースティングも少し入っています。
ズシッと重いベースに乗せたワン・ドロップの
サウンド。
この曲なんかはダンスホールで活躍したディー
ジェイのToyanだし、バックもRoots Radics
っぽいです。

Scientist - East of Scientist Corner (II Pieces)


9曲目は「Just Say Dub.....Who」です。
リディムはHorace Andyの「Just Say Who」。
かなりダブワイズしたエフェクトが効いた1曲
です。

10曲目は「Words Of Dub」です。
こちらはホーンの音色を中心としたダブです。

ざっと追いかけて来ましたが、内容はなかなか
良いです。
ただルーツ時代の音源という事もあり、この
時代の後のダンスホール・レゲエの音源、特に
Roots Radicsの演奏を使ったダブと較べると
印象が若干弱いかなぁという気がします。
ただ師匠であるKing Tubbyからよく学んでいる
ところも見受けられ、King Tubbyが好きな人
から見れば、このアルバムが一番聴き易いかも
しれません。

ともかく彼の作品の中でも、聴いておくべき
1枚であることは間違いありません。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Scientist
○アルバム: Scientific Dub
○レーベル: Abraham
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1981

○Scientist「Scientific Dub」曲目
1. Drum Song Dub
2. Keep A Good Dub Rubbing
3. Taxi To Baltimore Dub
4. Satta Dread Dub
5. Every Dub Shall Scrub
6. Blacka Shade Of Dub
7. Bad Days Dub
8. East Of Scientist Corner
9. Just Say Dub.....Who
10. Words Of Dub