今回はNiney The Observer All Stars At
King Tubby'sのアルバム

niney_the_observer_11a

「Dubbing With The Observer」です。

Niney The ObserverことWinston Holnessは
70年代のルーツ・レゲエの時代から80年代
にかけて活躍したプロデューサーです。
Dennis Brownの「Westbound Train」など
ディープな楽曲を多く残したプロデューサー
として知られています。

レーベル特集 Observer(オブザーヴァー)

King Tubbyは70年代から80年代にかけて、
ダブのミキサー、プロデューサーとして活躍
した人です。
もともと電気技師だった彼は、その能力を
生かして音楽に様々なエフェクトをかける
ダブのエキスパートして、70年代に自分の
スタジオKing Tubbysで多くのダブを作成した
事で知られています。
その実績から「現代の音楽はKing Tubbyが
作った」と言われている程の人なんですね。

1989年に何者かに自宅前で射殺されて
亡くなっています。

アーティスト特集 King Tubby (キング・タビー)

今回のアルバムはオリジナルは1975年に
Attackレーベルから発売されたNiney The
Observerの初めてのダブ・アルバムです。
手に入れたのは2013年にリイシュー・
レーベルJamaican Recordingsから再発された
CDでした。

全16曲で収録時間は50分12秒。
オリジナルは13曲で、残りの3曲はCD
ボーナス・トラックです。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Musician Include:
Drums: Carlton 'Santa' Davis, Carlton Barrett
Bass: George 'Fully' Fullwood, Earl 'Flabba' Holt,
Aston 'Family Man' Barrett
Guitar: Earl 'Chinna' Smith, Tony Chin, Bingy Bunny
Lead Guitar: Hux Brown
Keyboards: Keith Sterling, Gladstone 'Gladdy' Anderson
Percussion: Noel 'Skully' Simms
Hornes: Bobby Ellis, Tommy McCook, Vin Gordon

Recorded at:Dynamic Sounds, Channel 1, Federal,
Randy's Studio 17, Joe Gibbs Studio, Harry J's,
King Tubbys

Design by: GARY @ Voodoo London
Photography: Niney The Observer
Produced by: Niney The Observer
Mixed by: King Tubby
Manufactured under Licence from: Winston Holness

となっています。

75年というとちょうどルーツ・レゲエど真ん中
といった時代で、当時の一流スタジオ・ミュージ
シャンが集まっている印象です。
バンドとしては当時Niney The Observerとよく
仕事をしていた、Soul Syndicateあたりという事に
なるんでしょうか。

今回のアルバムは表ジャケットが小冊子になって
いて、そこに曲ごとの元の曲の歌手と曲名が
書かれています。
例えば1曲目「Rebel Dance」は、

1 Rebel Dance
Source: That Was Love/ Max Romeo

という記述があります。
これを見ると1曲目「Rebel Dance」は、Max Romeo
の「That Was Love」という曲から作られたダブだ
という事が解ります。
こういう丁寧な仕事ぶりは、いかにもリイシュー・
レーベルJamaican Recordingsらしいところです。

さて今回のアルバムですが、これがなかなか
素晴らしいダブなんですね。

のちのダブのクリエイターMad Professorは、
日本の雑誌のインタビューに答えて、一番良い
ダブが作られた時期は「75年から76年に
かけて」と答えていますが、確かにこの時期
にはダブという形式が固まり始めて良いダブが
多く作られるようになるんですね。

ついでに書いておくと、ダブという音楽は
エコーやリバーブなどのエフェクトを施す事に
よって原曲を別の音楽に作り変えてしまう手法
の事を言います。
ジャマイカでレゲエが誕生した頃の70年代の
初めぐらいから、作られるようになった音楽
なんですね。

ダブ - Wikipedia

その始まりには諸説があり、ハッキリとは解って
いないのですが、プロデューサーのBunny Leeに
よるとKing Tubbyが偶然の失敗に発明したという
説もあります。
このダブは73年に多くのダブ・アルバムが
一度に発売された事によって、一気にレゲエの
一ジャンルとして確立して行くんですね。
そしてこの75年ぐらいになると、試行錯誤が
落ち着いてダブという形式が固まって来るん
ですね。
つまり初めに書いたMad Professorの75~76
年ぐらいのダブが良いというのは、ダブという
形式が形になり、良いダブが作られたという事
なんですね。

ちなみにダブの発祥はよく解っていないのです
が、ダブを完成したのはKing Tubbyだというのは
もはや定説になっています。
そして現代の音楽を最初に作ったのはKing Tubby
という事も言われています。
レゲエのこの時代のダブを聴いている人なら
解ると思いますが、King Tubbyの音楽には、現代
に使われている全ての手法がすでにあるんです
ね。

今回のアルバムはそのKing Tubbyの作ったダブの
中でも、一番良かった75年に作られたアルバム
のひとつです。
ちなみにこの年のKing Tubbyは、自らプロデュース
した「King Tubby Presents The Roots Of Dub」
や、Bunny LeeプロデュースでバックはAggrovators
さらにはTommy McCookを中心としたホーン・ダブの
「Brass Rockers」など、素晴らしいアルバムを
多く作っているんですね。

king_tubby_16a
King Tubby - King Tubby Presents The Roots Of Dub (1975)

aggrovators_03a
Bunny Lee & King Tubby Presents Tommy McCook &
The Aggrovators - Brass Rockers (1975)

そうした時代に作られたアルバムだけあって、
今回のアルバムも音に緊張感と新鮮さがあり、
とても内容の良いアルバムだと思います。

1曲目は「Rebel Dance」です。
華やかなホーンから始まるダブです。
全体を支えるベースとダブに彩りを添える
ホーンの使い方が絶妙な曲です。
ソースはMax Romeoの「That Was Love」。

The Observer All Stars - Rebel Dance


2曲目は「Casanova Dub」です。
ソースはDennis Brownの「Ride On Casanova」。
ちょっと「Westbound Train」を彷彿と
させる曲です。

3曲目は「Silver Bullet」です。
ソースはKen Bootheの「Silver Words」。
イントロはDennis Brownのヒット曲
「Money In My Pocket」と似たフレーズ。
King Tubbyの音の出し入れのウマさが際立つ
1曲です。

4曲目は「Rasta Locks」です。
ソースはSang Hughの「Rasta No Born Yah」。
いかにもNineyらしいディープなナンバーに、
切れ味のあるKing Tubbyのミックスという
組み合わせの、文句のない1曲です。

The Observers - Rasta Locks


5曲目は表題曲の「Dubbing With The
Observer」です。
曲の切れ味、エフェクト処理のウマさは、
やはりKing Tubbyならではのものがあり
ます。
ソースはDennis Brownの「Why Can't You
Be Faithful」。

The Observer & King Tubby ~ Dubbing With The Observer


6曲目は「Sir Niney's Rock」です。
ソースはDennis Brownの「Give A Helping
Hand」。
こちらもなかなか素晴らしいホーン・ダブに
仕上がっています。

Dennis Brown-Sir Niney's Rock


7曲目は「Jam Down」です。
ギターのイントロから、ドスの効いたベース
への移行が秀逸なダブです。
ソースはDennis Brownの「No More Will I
Roam」。

Jam Down - The Observer All Stars


8曲目は「Parade Dub」です。
ソースはDennis Brownの超有名曲「Westbound
Train」。
ベースを効かせて渋く作っているところが
King Tubbyらしいところです。

9曲目は「Youth Man」です。
ソースはDennis Brownの「I Am The Conqueror」。

10曲目は「Turntable Dub」です。
ソースはDelroy Wilsonの「Halfway Up The
Stairs」。
ベースを主体にピアノがうまく絡み合ったダブ
です。

11曲目は「Corn Man」です。
ソースはDennis Brownの「My Muma Used To
Say」。
ドスの効いたベースにホーンとギター、ピアノ
が絡むちょっとリズミカルなダブです。

12曲目は「Mister D.Brown Skank」です。
ソースはDennis Brownの「Debora」。
リズミカルなメロディが印象的な曲です。

King Tubby - Mister D. Brown Skank


13曲目は「Rema Dub」です。
ピアノのイントロからエコーの効いたドラム・
サウンド、さらにはベースと楽器をうまく
組み合わせたダブです。

ここまでがオリジナルで、残りの3曲はCD
ボーナス・トラック。

14曲目は「Yagga Dub」です。
ソースはDennis Brownの「Yagga Yagga」。

15曲目は「Tenement Dub」です。
ソースはDennis Brownの「Tenement Yard」。

16曲目は「You're No Dub」です。
ソースはDennis Brownの「You Are No Good」。

ざっと追いかけて来ましたが、元の曲としては
Dennis Brownの曲が多く使われているようです。
この当時のNiney The Observerプロデュースの
Dennis Brownのアルバムを調べてみたところ、
75年に「Just Dennis」というアルバムが
あり、曲も一致しました。
このNiney The Observerのディープなルーツ・
サウンドと、Dennis Brownのライトな個性は
不思議なほどに合っているんですね。

またこの時代のKing Tubbyのダブとしても、
ダブ好きとしては押さえておきたいアルバム
だと思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Niney The Observer All Stars At King Tubby's
○アルバム: Dubbing With The Observer
○レーベル: Jamaican Recordings
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1975

○Niney The Observer All Stars At King Tubby's
「Dubbing With The Observer」曲目
1. Rebel Dance
2. Casanova Dub
3. Silver Bullet
4. Rasta Locks
5. Dubbing With The Observer
6. Sir Niney's Rock
7. Jam Down
8. Parade Dub
9. Youth Man
10. Turntable Dub
11. Corn Man
12. Mister D.Brown Skank
13. Rema Dub
CD Bonus Tracks
14. Yagga Dub
15. Tenement Dub
16. You're No Dub