今回はVarious(オムニバス)もののアルバム

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「Dubwise & Otherwise: A Blood And Fire
Audio Catalogue」です。

まずはレゲエ・リイシュー・レーベルBlood
& Fireについて一言書いておきます。
Blood & Fireは1993年にレゲエ博士と
称されるSteve Barrow氏によって設立された
UKを代表するリイシュー・レーベルです。
このレーベルからレゲエの歴史に残る素晴らしい
アルバムが多くリイシューされましたが、
2000年代の後半になるとレーベルは活動を
停止しています。

その後Hot PotやKing Spinnaなど、その関係者
が立ち上げたレーベルからリイシュー・アルバム
が発売されたりはしていますが、Blood & Fire
というレーベル自体は活動再開には至っていない
ようです。

レーベル特集 Blood & Fire (ブラッド・アンド・ファイア)

今回のアルバムは1997年に発売された、
それまでにBlood & Fireから発売された
アルバムを集めたカタログ的なアルバムです。
93年に活動を開始したBlood & Fireですが、
97年までにこれだけの素晴らしいアルバム
をリイシューしたというのはやはり驚異的な
事です。
その多くが今では手に入れづらくなっている
のは、レゲエを聴く人間にとって本当に残念な
事です。
ちなみに2002年にはこの続編ともいえる、
このアルバム以降のアルバムを集めたアルバム
「Dubwise & Otherwise 2: A Blood And Fire
Audio Catalogue」というアルバムも発売され
ています。

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Various ‎– Dubwise & Otherwise 2: A Blood And Fire Audio (2002)

全17曲で収録時間は54分59秒。

詳細なミュージシャンの表記はありません。

さて今回のアルバムですが、基本的には
Blood & Fireというレーベルの販促的なアルバム
なので出来がうんぬんという事は無いのですが、
それでも1枚1枚が充実したアルバムなので
ここに収められている曲も悪い曲は全くなく、
むしろアルバムが手に入るなら手に入れたい
アルバムの曲ばかりなんですね(笑)。
こうしたレーベルが今は活動をしていないと
いうのは、本当に残念です。

このBlood & Fireのリイシューしたアルバム
を見ると、多くは70年代のルーツ・レゲエが
全盛だった時代のアルバムなんですね。
Steve Barrow氏好みのあったのかもしれません
が、レゲエが初めて世界的に認められもっとも
挑戦的な音楽を作っていたのがこの時代です。
この時代にダブやディージェイなど、それまでに
無かった音楽形態をレゲエは生み出しています。
その70年代のレゲエを、少しレゲエが落ち
着いた90年代に再考するというのは、やはり
意味のある事だったんじゃないでしょうか。
このBlood & Fireが今でも多くの人に愛され、
特別なレーベルと見られているのは、そうした
レゲエに対する卓越した視点を持っていた為
だと思われます。

1曲目はBig Joeの「In The Ghetto」です。
King Tubby'sで1074年から77年までに
ミックスされたディージェイの音源を集めた
アルバム「If Deejay Was Your Trade.: The
Dreads At King Tubby's 1974-1977」からの
1曲です。

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Various - If Deejay Was Your Trade.:
The Dreads At King Tubby's 1974-1977 (1994)

このアルバムのカタログ番号は「BAFCD 001」、
つまりBlood & Fireレーベルが一番初めに
リリースしたアルバムがこのアルバムだったん
ですね。
Big Joeはこの70年代に活躍した名ディージェイ
です。
曲は「Satta Massagana」のリディムが使われて
います。
入っているヴォーカルはJohnny Clarkeか?

Big Joe- In The Ghetto (Satta riddim)


2曲目はPrince Jammy & The Aggrovatorsの
「Wreck Up A Version」です。
こちらはKing Tubby And Friendsのアルバム
「Dub Gone Crazy: The Evolution Of Dub At
King Tubby's 1975-1979」からの1曲です。

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King Tubby And Friends - Dub Gone Crazy: The Evolution Of Dub At King Tubby's 1975-1979 (1994)

入っているヴォーカルはLeroy Smart。
こちらも「BAFCD 002」と、Blood & Fireが
2枚目に発売したアルバムです。

3曲目はKeith Hudsonの「Michael Talbot
Affair」です。
ムーディなホーンが印象的な1曲です。
こちらはKeith Hudsonの初期ダブとして
有名なアルバム1974年の「Pick A Dub」を
編集した同タイトルのアルバムからの1曲です。
Blood & Fireから3枚目のリリースです。

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Keith Hudson - Pick A Dub (1994)

Keith Hudson - Michael Talbot Affair


4曲目はBurning Spearの「Institution」
です。
こちらはBurning Spearの78年のアルバム
「Social Living」からの1曲です。

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Burning Spear - Social Living (1994)

私の持っているのはIsland盤ですが、Blood &
Fire盤では曲順が多少入れ替わっているよう
です。
こちらも94年で、4枚目のリリースです。

5曲目はYabby U & King Tubby'sの
「Jah Love Dub」です。
こちらは95年にリリースされたYabby U
(Yabby You)のKing Tubbyのミックスした曲
を集めたアルバム「King Tubby's Prophesy
Of Dub」からの1曲です。
Blood & Fireから5枚目のリリースです。

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Yabby U - King Tubby's Prophesy Of Dub (1995)

Yabby U & King Tubby - Jah Love Dub


6曲目はHorace Andyの「Government Land」
です。
こちらはHorace Andyの77年のアルバム
「In The Light」と、同年に発売されたその
ダブ・アルバム「In The Light Dub」を1枚
にまとめたアルバムです。
Blood & Fireから6枚目のリリースです。

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Horace Andy - In The Light / In The Light Dub (1995)

7曲目はTappa Zukieの「Dub MPLA」です。
こちらはTappa Zukieの76年のアルバム
「Tapper Zukie In Dub 」のBlood & Fire盤
からの1曲です。
Blood & Fireから8枚目のリリースです。

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Tappa Zukie - In Dub (1995)

8曲目はThe Congosの「Children Crying」
です。
こちらはThe CongosのLee Perryプロデュース
で有名なファースト・アルバム77年の
「Heart Of The Congos」からの1曲です。

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The Congos - Heart Of The Congos (1977)

私が持っているのはVP盤で、残念ながら
Blood & Fire盤ではありません。
Blood & Fireから9枚目のリリースです。

9曲目はJah Stitchの「African People
(3 In 1)」です。
リディムはAbbysiniansで有名な
「Declaration Of Rights」。
歌っているのはJohnny Clarkeか?
ディージェイJah Stitchの音源を集めた
アルバム「Original Ragga Muffin (1975-77)」
からの1曲です。
Blood & Fireから10枚目のリリースです。

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Jah Stitch - Original Ragga Muffin (1975-77) (1996)

African People (3 in 1) - Jah Stitch


10曲目はKing Tubby & Soul Syndicateの
「Ethiopian Version」です。
こちらはKing TubbyのSoul Syndicateを
ミックスしたダブを集めたアルバム「Freedom
Sounds In Dub」からの1曲です。
入っているヴォーカルはRod Taylorのようです。
Blood & Fireから通算11枚目のアルバム
です。

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King Tubby & Soul Syndicate - Freedom Sounds In Dub (1996)

King Tubby & The Soul Syndicate - Ethiopian Version


11曲目はScientistの「One Man Dub」です。
こちらはScientistのミックしたRoots Tradition
レーベルのダブを集めたアルバム「Dub In The
Roots Tradition」からの1曲です。
こちらも「Satta Massagana」のリディムが
使われています。
Blood & Fireから通算12枚目のアルバム
です。

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Scientist - Dub In The Roots Tradition (1996)

12曲目はKing Tubbyの「King Tubby's In Fine
Style」です。
リディムはHorace Andyの「You Are My Angel」。
歌っているのは誰かイマイチ特定できません
でした。
King TubbyとPrince Jammyのダブを集めた
アルバム「Dub Gone 2 Crazy: In Fine Style
1975-1979」からの1曲です。
Blood & Fireから通算13枚目のアルバム
です。

King Tubby's In Fine Style


13曲目はPrince Allaの「Bucket Bottom」
です。
こちらは
Prince Allaの音源を集めたアルバム「Only Love
Can Conquer 1976-1979」からの1曲です。
リディムはSlim Smithの「My Conversation」です。
Blood & Fireから通算14枚目のアルバム
です。

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Prince Alla - Prince Alla - Only Love Can Conquer 1976-1979 (1996)

14曲目はGlen Brown & King Tubbyの「Assack
Lawn No.1 Dub」です。
こちらはKing TubbyのGlen Brownの音源をミックス
した音源を集めたアルバム「Termination Dub
(1973-79) 」からの1曲です。
個性的な音楽を残したGlen Brownですが、やはり
King Tubbyのミックスが大きな力になっているん
ですね。
Blood & Fireから通算15枚目のアルバム
です。

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Glen Brown And King Tubby - Termination Dub (1973-79) (1996)

Glen Brown & King Tubby-Assack Lawn No. 1 Dub


15曲目はI Royの「Look A Boom」です。
こちらはI Royの音源を集めたアルバム「Don't
Check Me With No Lightweight Stuff [1972-75]」
からの1曲です。
ジャマイカで10年間トップを維持し続けたと
いう伝説のディージェイの1枚です。
Blood & Fireから通算16枚目のアルバム。

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I-Roy - Don't Check Me With No Lightweight Stuff [1972-75] (1997)

I Roy - Look A Boom


16曲目はMorwell Unlimited Meet King Tubby's
の「Concord」です。
3人組のコーラス・グループThe Morwellsの
バックを務めたMorwell Unlimitedは、Roots
Radicsの前身のバンドとい言われ、「Dub Me」
という素晴らしいダブ・アルバムを残して
います。
その「Dub Me」を編集したのがこの同名
アルバムです。
Blood & Fireから通算17枚目のアルバム。
こういうちょっと光の当たらないバンドに、
ちゃんと目が行き届いているところがこの
レーベルのスゴイところです。

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Morwell Unlimited Meet King Tubby's - Dub Me (1997)

17曲目はHorace Andyの「Good Vibes」です。
こちらもHorace Andyの音源を集めたアルバム
「Good Vibes」からの1曲です。
Blood & Fireから通算19枚目のアルバム。

ざっと追いかけて来ましたが、このBlood & Fire
のコレクションの素晴らしさには目を見張るもの
があります。
そのひとつひとつがどれも素晴らしく、ルーツ・
レゲエが好きな人なら持っていたいアルバム
ばかりなんですね。
すべてのアルバムが「聴けば解る」という、
素晴らしさがあります。

ただ聴けば解るという事は、反面聴かないと
解らないという危険があります。
内容は本当に素晴らしくても、聴いてもらわ
ないと良さが解らないアルバムもあるという
事なんですね。
例えばMorwell Unlimitedのアルバム「Dub Me」
は、ルーツ・レゲエが好きな人だったら絶対
シビレるKing Tubbyの最高傑作の1枚とも
いえるアルバムですが、それは聴かないと
解らない事なんですね。

彼らの情熱は今も多くの人が愛していると思い
ます。
このレーベルの残したものは今も私たちの宝物
です。
出来ればまた新しい夢を見させてくれることを。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Various
○アルバム: Dubwise & Otherwise: A Blood And Fire Audio Catalogue
○レーベル: Blood & Fire
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1997

○Various「Dubwise & Otherwise: A Blood And Fire Audio
Catalogue」曲目
1. In The Ghetto – Big Joe
2. Wreck Up A Version – Prince Jammy & The Aggrovators
3. Michael Talbot Affair – Keith Hudson
4. Institution – Burning Spear
5. Jah Love Dub – Yabby U & King Tubby's
6. Government Land – Horace Andy
7. Dub MPLA – Tappa Zukie
8. Children Crying – The Congos
9. African People (3 In 1) – Jah Stitch
10. Ethiopian Version – King Tubby & Soul Syndicate
11. One Man Dub – Scientist
12. King Tubby's In Fine Style – King Tubby
13. Bucket Bottom – Prince Alla
14. Assack Lawn No.1 Dub – Glen Brown & King Tubby
15. Look A Boom – I Roy
16. Concord – Morwell Unlimited Meet King Tubby's
17. Good Vibes – Horace Andy