今回はThe Morwellsのアルバム

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「Crab Race」です。

The Morwellsは70年代から80年代にかけて
活躍した3人組のコーラス・グループです。
Maurice Wellingtonと80年代からはRoots
Radicsのギタリストとして活躍したEric
'Bingy Bunny' Lamont、それにLouis Davisの
加わったヴォーカル・トリオです。
このBingy Bunnyの居たグループという事で、
販売サイトなどでは「Roots Radicsの前身の
グループ」という書き方をしているところも
あります。
Discogsなどで調べてみると、1975年の
ファースト・アルバム「Presenting The
Morwells」から80年代の初めの頃まで、
数枚のアルバムを残しているグループのよう
です。

The Morwells - Wikipedia

今回のアルバムは1978年に発売された
アルバムです。
Discogsの履歴から見ると、彼らのセカンド・
アルバムではないかと思われます。
ちなみにファーストの「Presenting The
Morwells」と、「Swing And Dine」と
「Reality」、「Bit By Bit」など3曲ぐらい
がダブって収録されているようです。

今回手に入れたのは、ここのところ意欲的な
アルバム発売が目立つBurning SoundsのCD
でした。
ちなみに初CD化!なんだそうです。

全12曲で収録時間は37分25秒。

ミュージシャンについては以下の記述があります。

Musicians:
Drums: Eric 'Fish' Clark, Lowell 'Sly' Dunbar
Bass: Lloyd 'Sparks' Parks, Robert 'Robbie' Shakespear
Guitar: Eric 'Bingy Bunny' Lamont
Piano: Franklyn 'Bubbler' Waul
Organ: Errol 'Tarzan' Nelson
Percussion: Uzziah 'Sticky' Thompson

Producers: Maurice 'Blacka Morwell' Wellington, Eric 'Bingy Bunny' Lamont

Recorded & Mixed at:
Randy's Studio 17
Engineer: Errol 'Errol T' Thompson
Channel One Recording Studio
Engineer: Joseph 'Jo Jo' Hookim

となっています。

ミックスはRandy'sはErrol Thompson、Channel
OneはJoseph Hookimが担当しています。

バックはSly & RobbieやLloyd Parksなどが参加
しています。
このルーツの時代にしては多少地味目な布陣か。

このバック・バンドはMorwell Unlimitedという
事になるのでしょうか?
このThe Morwellsは自分たちのレーベルMorwell
Recordsを作っていたようで、そのレーベルから
はバック・バンドMorwell Unlimitedのダブ・
アルバム「Dub Me」が発売されています。
これはThe Morwellsのファースト・アルバム
「Presenting The Morwells」のダブ・アルバム
なんですね。
Discogsなどではこの「Dub Me」の制作年は不詳
となっていますが、おそらくファーストの作られ
た75年あたりのアルバムだと思います。

そのダブ・アルバムは後にあのレゲエ・リイシュ
ー・レーベルBlood & Fireから再編集された
「Morwell Unlimited Meets King Tubby: Dub Me」
というタイトルで発売されているんですね。

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Morwell Unlimited, King Tubby - Morwell Unlimited Meets King Tubby: Dub Me (1997)

という事でThe Morwellsは3人組コーラス・
グループ、Morwell Unlimitedはそのバック・
バンドという関係のようです。

さて今回のアルバムですが、これがヴォーカル・
トリオのアルバムとしてはなかなか良いアルバム
なんですね。
リード・ヴォーカルはEric 'Bingy Bunny' Lamont
なのかMaurice 'Blacka Morwell' Wellingtonな
のかよく解りませんが、スウィートで心地良い
ヴォーカルで、それにコーラス・ワークが絡むと
何とも言えない快感があります。
かなり魅力的なヴォーカル・グループだと思い
ます。

またバックのMorwell Unlimitedの少し荒削りの
演奏も、このアルバムの魅力のひとつになって
います。
このバンドSly & Robbieを除くと当時は2軍的
な扱いを受けていた人達ですが、その粗削りな
演奏がけっこう魅力的なんですね。
Roots Radicsの母体となったバンドというのも
あながち間違っていないのかも。
80年代のダンスホール・レゲエで、メローな曲
にヘヴィーなバックを付けていたRoots Radicsの
片鱗が何となくうかがえる演奏なんですね。

今回のアルバムではメローでスウィートなヴォー
カルに、ハードで粗削りな演奏という組み合わせ
がものすごくカッコいいです。
70年代後半の円熟期のルーツのアルバムとして
は、聴きどころも多く魅力的なアルバムだと思い
ます。

1曲目は「Baby Why Did You Leave Me To Cry」
です。
ソフトなヴォーカルにコーラス・ワークが素晴ら
しい1曲です。
ホーンなども入った、ちょっと雑然とした演奏も
イイ味を出しています。

The Morwells - Baby why did you leave me to cry


2曲目は「Swing And Dine」です。
ピアノに乗せたヴォーカルとコーラス・ワークが
冴える曲です。
どこかで聴き覚えが…と思ったんですが、ロック
ステディの時代のThe Melodiansのヒット曲
でした。
甘い蕩けるようなメロディに、完全にヤラレ
ちゃう曲です。

The Morwells - Swing & Dine


3曲目は「Reality」です。
こちらもピアノのメロディに乗せたスウィートな
1曲。

4曲目は「Come On Little Girl」です。
こちらはギターの刻むようなリズムに乗せた
曲です。
ユッタリしたリズムに合わせて、シッカリと
歌い込んでいる印象。

5曲目は「Got To Be Witty」です。
刻むギターにオルガンの演奏も入った曲で、
シャウトするヴォーカルに低音のコーラスも
絡む、短いながら凝った曲です。

6曲目は「Movie Star」です。
Errol Dunkleyも歌っている曲です。
荒々しいドラムから粘り付くようなヴォーカル
が、何とも魅力の曲です。

Movie Star - The Morwells.


7曲目は「Got To Find Somewhere To Live」
です。
この曲はリード・ヴォーカルが入れ替わって
いるようです。
少し低音のヴォーカルとファルセット気味の
コーラスの絡み合いが面白い曲です。

8曲目は「Bit By Bit」です。
ちょっとゴツッとしたドラムの音から入る
曲で、ユッタリと刻むギターに乗せた
しっかりした歌いぶりの曲です。

The Morwells - Bit By Bit


9曲目は「Give Me Power」です。
語りから入り、ヴォーカルからコーラスへと
流れて行く曲です。
何故か最後がポツッと終わってしまう、ちょっと
編集が荒い曲です(笑)。

10曲目は「Music Is So Divine」です。
この曲はロックステディ時代のThe Heptonesの
ヒット曲「Get In The Groove」のリディムが
使われています。
こちらの最後がポツッと終わってしまうのが、
気になります。

リズム特集 Get In The Groove/Up Park Camp (ゲット・イン・ザ・グルーヴ/アップ・パーク・キャンプ)

11曲目はRoman Stewartの「See Me Again」
です。
ここでどういう訳かRoman Stewartの曲が
入っているんですね(笑)。
曲が足りなかったとか、何か事情があるんで
しょうか?
曲自体はしっかりした歌いぶりで良い曲です。

12曲目は表題曲の「Crab Race」です。
この曲もリード・ヴォーカルが入れ替わって
いるようです。
ちょっと荒いドラムに乗せたミリタント・
ビートの曲で、最後を気持ち良くシメています。

The Morwells - Crab Race


ざっと追いかけて来ましたが、スウィートな
コーラスとちょっとザラッと荒いバックの演奏が
この時代のレゲエの空気感をよく出していて、
なかなか魅力的なアルバムだと思いました。

ここのところ意欲的なリリースを重ねている
Burning Soundsですが、このレーベルのリリース
は、すごく光っているアルバムというよりは
今ではちょっと忘れられている一番のアルバム
というよりは2番目3番目というビミョ~に
欲しい(笑)というリリースが多いんですが、
その中でもこのアルバムは内容が濃く、イチ押し
の1枚だと思います。
このアルバムには当時の生のレゲエが詰まって
いるんですね。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: The Morwells
○アルバム: Crab Race
○レーベル: Burning Sounds
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1978

○The Morwells「Crab Race」曲目
1. Baby Why Did You Leave Me To Cry
2. Swing And Dine
3. Reality
4. Come On Little Girl
5. Got To Be Witty
6. Movie Star
7. Got To Find Somewhere To Live
8. Bit By Bit
9. Give Me Power
10. Music Is So Divine
11. See Me Again - Roman Stewart
12. Crab Race

●今までアップしたMorwells (Morwell Unlimited)関連の記事
〇Morwell Unlimited, King Tubby「Morwell Unlimited Meets King Tubby: Dub Me」