今回はLinton Kwesi Johnsonのアルバム

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「Bass Culture」です。

Linton Kwesi Johnsonは70年代後半から
UK(イギリス)を拠点に活躍するダブ・ポエト
の詩人です。
ジャマイカで生まれ11歳の時にイギリスに
移住した彼は、そこで人種差別の問題に苦しめ
られた事から、レゲエの音楽をバックに社会の
不正を訴える「ダブ・ポエト」というスタイル
を生み出し、注目される存在になって行くん
ですね。

リントン・クウェシ・ジョンソン - Wikipedia

今回のアルバムは1980年に発表された
彼の第3作目のアルバムです。
ダブ・ポエトというレゲエのディージェイとは
ちょっと違うスタイルを生みだした彼ですが、
このアルバムをきっかけに世界的にも反体制の
詩人として認められていくんですね。

全8曲で収録時間は31分13秒。

ミュージシャンについては以下の記述があります。

Bass: Floyd Lawson, Vivian Weathers
Drums: Jah Bunny, Winston Curniffe
Guitar: John Kpiaye
Keyboards: Dennis Bovell, Webster Johnson
Alto Sax: James Danton
Tenor Sax: Buttons Henry Tenyve
Trumpet, Flugelhorn: Dick Cuthell, Patrick Tenyve
Trombone: Rico
Harmonica: Julio Finn
Percussion: Clinton Bailey, Everald 'Fari' Forrest, Jah Bunny
Engineered by John Caffrey, Mark Lusardy, Dennis Bovell
Mixed by Dennis Bovell
Recorded at Gooseberry Sound Studios
Tape Op, Sid
Concept & Design: Dennis Morris

All Words and Music Written by Linton Kwesi Johnson
Produced by Linton Kwesi Johnson and Blackbeard

となっています。

プロデュースはLinton Kwesi Johnson本人と
BlackbeardことDennis Bovellが務めています。
Dennis Bovellはバックの演奏にも参加して
いますが、Linton Kwesi Johnsonは詩人なので
音楽的な事はこのDennis Bovellが指揮を取って
いるんですね。
Linton Kwesi Johnsonの発する言葉とDennis
Bovellの作る音楽で成り立っているユニットと
見る事も出来ます。

ドラムで参加しているJah Bunnyは、Dennis
Bovellが在籍したレゲエ・バンドMatumbiの
ドラマーです。
他にトロンボーンでRicoが参加しています。

さて今回のアルバムですが、正直なところ
どう評価して良いかすごく迷うアルバムです。
こうしたダブ・ポエトというスタイルは、音楽
の要素もありますが、言葉がすごく重要なん
ですね。
ところが私自身は英語があんまり堪能では
ありません。
そうなると私自身言葉を理解しないで、この
アルバムを理解しているのかという悩みが
あります。

ただ今回の「Bass Culture」は、実は私が
若かった20代の頃東芝EMIから出ていた
日本盤のLPを買っていて、そこには
ライナー・ノーツに山名昇さんという方の
解説文と山本安見さんという方の訳詩が
載っていたので、何とか内容が解るんですね。

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Linton Kwesi Johnson - Bass Culture (LP)

こういう訳詩を付けるという事は最近はあまり
行われていないようですが、当時はレゲエという
音楽を理解する上で重要な役割を果たした側面
があります。
とくにこういうLinton Kwesi Johnsonのような
アーティストは、今でも訳詩を付けた方が良い
ような気がするのですが…。

さて話を戻しますが、そうしただいぶ昔に
LPで聴いたアルバムを、今回もう一度聴き
直してみようとCDを購入してみた訳です。
実際に聴き直してみると、こういうアルバム
だったかな?という再発見のようなものが
ありました。

実際に聴き直してみると、当時は本当に
詩を朗読しているという感じで聴いていた
んですが、意外と音楽に合わせて歌うように
しゃべっているところも見受けられるんですね。
ディージェイほどではないけれど、たとえば
あのPrince Far Iの自らは「チャンティング」
と読んでいたスタイル、特に初期のスタイル
はこのスタイルに似ていると思いました。
おそらくPrince Far IはLinton Kwesi Johnson
と同じ発想を持っていたんですね。

もうひとつはやはり音楽的にDennis Bovell
の果たす役割が大きいという事です。
この人は出身がバルバドスの為か、音楽のセンス
がけっこうポップなんですね。
そうしたセンスの人のバックの音楽の為か、詩の
内容はけっこうディープでもポップで聴き易い
サウンドなんですね。
このDennis BovellとLinton Kwesi Johnsonの
コンビがけっこううまくいっている事も、成功
の要因だと思います。

1曲目は表題曲の「Bass Culture」です。
「血から産まれた音楽―
蓄積された黒い苦悩と
私たちの心のルーツを表す音楽」
まずはこのアルバムのコンセプト、UKに
対する移民の苦悩が現れたような詩です。

Linton Kwesi Johnson - Bass Culture


2曲目は「Street 66」です。
ディープ感のある静かなメロディの中で語られる
詩です。
I Royのトースティングを聴いてくつろいでいる
時に、警官がやって来た情景を詩にしています。

Linton Kwesi Johnson - Street 66


3曲目は「Reggae Fi Peach」です。
軽快なメロディで語られるのは、デモに参加した
教員ブレア・ピーチの死です。
スペシャル・パトロールによって殺されたと
警察を批判する内容なんですね。

ロンドン警視庁 - Wikipedia

Linton Kwesi Johnson - Reggae Fi Peach 1980


4曲目は「Di Black Petty Booshwah」です。
オープニングにRicoと思われるトロンボーンが
入ります。
こちらはホーン・セクションが印象的な曲
です。
歌うように語られているのはパトワ語のよう
です。

5曲目は「Inglan Is A Bitch」です。
「イギリスは売女(ばいた)だ」
一生懸命に働いてもけっして認めてくれない
イギリスの社会を批判した曲です。

Inglan Is A Bitch(イングラン・イズ・ア・ビッチ) - Linton Kwesi Johnson

6曲目は「Loraine」です。
こちら雨の日に出会った女性に片思いした歌
のようでありますが、実は裏の意味があり、
いくら恋焦がれてもけっして受け入れてくれない
イギリス社会を比喩的に歌った内容です。

Loraine(ロレイン) - Linton Kwesi Johnson

7曲目は「Reggae Sounds」です。
「ドラムが刻むのは 血塗られた物語
ベースが弾きだすのは 黒い苦悩の物語」
黒人の権利を主張する音楽、レゲエを讃えた曲
です。

Linton Kwesi Johnson - Reggae Sounds


8曲目は「Two Sides Of Silence」です。
サックスのアドリブに乗せた詩です。
生きる苦悩が語られています。

ざっと追いかけて来ましたが、こうして詩の
内容をあらためて見てみると、すごく痛い言葉
が並んでいる詩なんですね。
まだこの当時、70年代から80年代のUKを
はじめとする社会は白人優位の社会であり、
黒人の移民である彼は良い職にも付けずに
苦しんだ経験を詩にしているんですね。
そうした彼の力になったのは、レゲエという
音楽であり、思想だったのは間違いがあり
ません。
また彼自身もこうして詩で訴える事で、社会を
変えて行った人物のひとりなんですね。

のちに彼の努力は認められ、文学賞なども
受賞してるようです。

この「Bass Culture」は、そうした彼が世界
で認められるきっかけになったアルバムなん
ですね。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Linton Kwesi Johnson - Making History - Live 1984



○アーティスト: Linton Kwesi Johnson
○アルバム: Bass Culture
○レーベル: Mango
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1980

○Linton Kwesi Johnson「Bass Culture」曲目
1. Bass Culture
2. Street 66
3. Reggae Fi Peach
4. Di Black Petty Booshwah
5. Inglan Is A Bitch
6. Loraine
7. Reggae Sounds
8. Two Sides Of Silence