今回はMichael Prophetのアルバム

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「Gunman / Righteous Are The Conqueror」です。

Michael Prophetはルーツ・レゲエの時代から活躍
するシンガーです。
初めはYabby You(Vivian Jackson)の子飼い
のアーティストとしてキャリアをスタートさせた
Michael Prophetですが、80年代のダンス
ホール・レゲエの時代になってもその評価は
衰えず、初期のダンスホール・レゲエをけん引
したVolcanoレーベルの主催者Henry 'Junjo' Lawes
からもその才能を認められ、ダンスホール・
レゲエでも活躍したシンガーなんですね。

アーティスト特集 Michael Prophet (マイケル・プロフェット)

今回のアルバムはそのMichael Prophetの
ダンスホール・レゲエの時代のアルバム
1980年の「Righteous Are The Conqueror」
と、その翌年の81年のアルバム「Gunman」を
1枚にまとめた2in1のアルバムです。
1991年にGreensleeves Recordsより2in1の
アルバムとして発売されています。

全20曲で収録時間は75分22秒。
初めの10曲が81年のアルバム「Gunman」の
曲で、残りの10曲が80年のアルバム
「Righteous Are The Conqueror」からの曲です。

ミュージシャンについては以下の記述があります。

All Tracks Written by M. Haynes, H. Lawes
Tracks 1-10 Recorded at Channel One
Mixed by King Tubby's by Scientist
(Except 9 by Barnabas at Channel One)
Tracks 11-20 Recorded at Channel One
Mixed by Barnabas at Channel One

Roots Radics Band:
Bass: Errol 'Flabba' Holt
Drums: Style Scott, Santa Davis
Organ: Winston Wright
Lead Guitar: Bo Pee, Adan Bassford
Piano: Gladdie Anderson
Percussion: Sky Juice, Skully
Sax: Dean Fraser
Trombone: Nambo Robinson

となっています。

プロデューサーはどちらもHenry 'Junjo' Lawesで、
バックはRoots Radicsが担当しています。

ドラマーにStyle ScottとSanta Davisの名前があり
ますが、おそらく80年の「Righteous Are The
Conqueror」のドラマーがSanta Davisで、81年の
「Gunman」のドラマーがStyle Scottなんじゃないか
と思います。
Henry 'Junjo' LawesプロデュースのScientistの
「漫画ジャケ」シリーズなどを見ると、80年は
Santa Davisがレギュラーのドラマーで、81年
になるとStyle Scottがレギュラーに切り替わって
いるんですね。

ジャケット・デザインの記述がありませんが、
ネットのDiscogsなどの記述を見ると、Scientist
の「漫画ジャケ」シリーズなどで知られる
Tony McDermottがどちらのジャケットも担当して
いるようです。
特に80年の「Righteous Are The Conqueror」の
廃墟を歩くドレッドの絵柄などは、いかにもTony
McDermottらしい絵柄だと思います。

さて今回のアルバムですが、最も良い時期の
Michael Prophetの音源が集められたアルバムで、
内容的には文句なしのアルバムだと思います。
やはりこの時代のMichael Prophetのヴォーカル
は、高音に独特の伸びがあり、傑出しているん
ですね。

あとRiddimgudeでこのアルバムの曲のリディム
を調べていて、面白い事が解りました。
なんとこの2枚のアルバムのいくつかの音源が、
同じくVolcanoレーベルから出ているScientist
の81年のダブ・アルバム「Rids The World
Of The Evil Curse Of The Vampires」の曲に
使われている事が解りました。
Scientistの「漫画ジャケ」シリーズの中でも
強い印象を残すこのアルバムですが、この
Michael Prophetの曲が使われていたんですね。
比較的明るいイメージのMichael Prophetの
曲が、ちょっとホラーなイメージのアルバムに
使われていたというは意外な発見でした。

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Scientist ‎– Rids The World Of The Evil Curse Of The Vampires (1981)

1~10曲目までは81年のアルバム
「Gunman」の曲が収められています。
表題曲「Gunman」は、このダンスホール・
レゲエの時代の有名リディムのひとつになって
いますから、いかにこの曲が人気を博したかが
よく解りますね。

1曲目は「Hold On To What You Got」です。
この曲はScientistのダブ・アルバム「Rids The…」
の中で、「Cry Of The Werewolf」という曲で
使われています。
「狼男の叫び」というダブも、もともとはラヴ・
ソングだったというのは、面白いところです。
この時期の一番脂の乗り切っていたRoots Radics
の演奏はやっぱりイイですね。
Michael Prophetの少し甲高いヴォーカルも
グッド!です。

Michael Prophet - Hold On To What You Got 1981


2曲目は「Guide And Protect You」です。
ユッタリしたリズムに乗せたMichael Prophetの
気持ち良さそうなヴォーカルが素敵な曲です。
ユッタリしていても、演奏にスキが無いのが見事。

3曲目は「Youthman」です。
こちらもユッタリとしたリズムで、シッカリと
聴かせる曲です。
Michael Prophetのヴォーカルの魅力が、よく出た
曲だと思います。
重いベースがよくこの演奏を支えている印象です。

4曲目は「Gunman」です。
書いたようにこの時代の人気リディムのひとつに
なった曲です。
よいタイミングで入って来るホーンが、心地よい
アクセントになっています。

Michael Prophet - Gunman


5曲目は「Turn Them Round」です。
重いベースの音を中心とした曲です。
Michael Prophetの甲高いヴォーカルとの対比
が面白いところ。

6曲目は「Up Side Down」です。
ホーンとヴォーカルの掛け合いのような感じが、
ちょっと面白い曲です。

7曲目は「Love And Unity」です。
こちらもダブ・アルバム「Rids The…」で、
「Your Teeth In My Neck」というタイトルで
使われている曲です。
ダブ・アルバムではドラキュラの吸血イメージ
として使われていますが、今回のアルバムでも
Scientistのミックスは冴えわたっています。

Michael Prophet - Love And Unity


8曲目は「Never Leave Me Lonely」です。
ホーンに乗せた親しみやすいメロディの曲です。
Michael Prophetの明るく前向きな印象の個性が、
よく生きた曲という気がします。

9曲目は「Help Them Please」です。
このダンスホール・レゲエ期らしい、心地よい
リズムを刻んだ曲です。

10曲目は「Sweet Loving」です。
こちらもScientistの「Rids The…」の中で、
「Ghost Of Frankenstein」というタイトルで
使われている曲です。
「甘い恋」が「フランケンの亡霊」に化けている
のも面白いですが(笑)、原曲は明るい前向きな
ラヴ・ソングという印象の曲です。
間奏に入るホーンやピアノなど、細部まで心配り
された演奏が光ります。

11~20曲目までが80年のアルバム
「Righteous Are The Conqueror」からの曲
です。
このアルバムの成功によって翌年に「Gunman」
が作られたそうで、販売サイトなどのアルバム
評などを見てもかなり評価が高いアルバムです。
「Gunman」がラヴ・ソングと思われる曲が多く
収められているのに対して、こちらのアルバム
ではラスタファリズムについて歌われている曲
が多い印象です。
その辺もちょうど時代の変わり目に、作られた
アルバムという事なのかもしれません。

11曲目は表題曲の「Righteous Are The
Conqueror」です。
ラスタファリズムの「ジャー賛歌」といった曲
ですが、今回のアルバムの中でも出色の1曲
です。
ルーツ・レゲエからダンスホール・レゲエと
いう、時代の変わり目が刻まれたような曲です。

MICHAEL PROPHET - RIGHTEOUS ARE THE CONQUEROR


12曲目は「You Are A No Good」です。
こちらもScientistの「Rids The…」で、ドラ
キュラのテーマ曲「Dance Of The Vampires」
として使われた曲です。
ホーンのサウンドもキマった、かなり強い印象を
残す曲です。

Michael Prophet - You Are No Good


13曲目は「Long Long Tribulation」です。
こちらも12曲目「You Are A No Good」と
似たリズムを持った曲です。
あえて似たリズムの曲を続ける事で、アルバムに
より重厚感をプラスしています。

14曲目は「Conscious Dreadlocks」です。
Michael Prophetの伸びのある高音が生かされた
曲です。

MICHAEL PROPHET - Conscious Dreadlocks


15曲目は「Make Me A Romance」です。
華やかなホーンから始まる曲で、Michael Prophet
のヴォーカルもノビノビと冴えわたっています。

16曲目は「Cassandra」です。
全体にエコーのかかったようなサウンドが、
ダンスホールといった空気感をうまく出して
いる曲です。

17曲目は「Originally」です。
気持ちのよいワン・ドロップのリズムに乗せた
曲です。

18曲目は「What Is The Difference」です。
こちらもバックのしっかりした演奏に支えられた、
Michael Prophetのヴォーカルが素晴らしい曲です。

19曲目は「Gipsy Woman」です。
タイトルからソウルの名曲を思いだしますが、
それとは別の曲です。
彼の高音の伸びが素晴らしいです。

20曲目は「Happy Days」です。
こちらは明るいホーンの音色から入る曲で、
タイトル通り明るい感性に溢れた曲です。

ざっと追いかけて来ましたが、Michael Prophet
の伸びのある高音がすごく魅力的な2枚の
アルバムです。
特に11~20曲目のアルバム「Righteous Are
The Conqueror」の方は、アルバム全体に
何とも言えないグルーヴ感があり、出色の
出来のアルバムだと思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Michael Prophet
○アルバム: Gunman / Righteous Are The Conqueror
○レーベル: Greensleeves Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1981, 1980

○Michael Prophet「Gunman / Righteous Are The Conqueror」曲目
●Gunman
1. Hold On To What You Got
2. Guide And Protect You
3. Youthman
4. Gunman
5. Turn Them Round
6. Up Side Down
7. Love And Unity
8. Never Leave Me Lonely
9. Help Them Please
10. Sweet Loving
●Righteous Are The Conqueror
11. Righteous Are The Conqueror
12. You Are A No Good
13. Long Long Tribulation
14. Conscious Dreadlocks
15. Make Me A Romance
16. Cassandra
17. Originally
18. What Is The Difference
19. Gipsy Woman
20. Happy Days

●今までアップしたMichael Prophet関連の記事
〇Michael Prophet「In Disco Showcase」
〇Michael Prophet_ Various「Michael Propheit & Friends」
〇Michael Prophet「Certify」
〇Michael Prophet「Reggae Music All Right」
〇Michael Prophet「Serious Reasoning」