今回はJah Thomasのアルバム

jah_thomas_01a

「Greensleeves 12" Rulers: Midnight Rock 1981-'84」
です。

Jah Thomasは80年代のダンスホール・レゲエ
の時代にディージェイ、プロデューサーとして
活躍した人です。
ディージェイとしても有名人ですがプロデューサー
としても優秀な人で、まだ若かったTriston Palma
を夜中にたたき起こして、彼の一番のヒット曲
「Joker Smoker」を録音したというエピソード
が残っています。
おもにRoots Radicsを起用して、ダンスホール
の多くのヒット曲を生みだした人だったん
ですね。

アーティスト特集 Jah Thomas (ジャー・トーマス)

今回のアルバムはGreensleeves Recordsから
出されている「Greensleeves 12" Rulers」
シリーズの1枚です。
このシリーズはダンスホール・レゲエの12
インチ・ディスコ・ミックスに焦点を当てた
シリーズです。
今回のアルバムはJah Thomasが81年から
84年にプロデュースした12インチが
全11曲収められて、2008年に発売されて
います。
Triston PalmaやToyan、Little Johnなど当時の
ダンスホール・レゲエで活躍したミュージシャン
が多く収められています。

全11曲で収録時間は72分54秒。

ミュージシャンについては以下の記述があります。

Produced by Nkrumah Jah Thomas
Backed by Roots Radics
All Tracks Recorded and Mixed bat: Channel One Studios
except tracks 6 mixed at King Tubby's
Mixing Engineers: Soldgie (tracks 3,4,10,11),
Peter Chemist (tracks 2,8,9), Barnabas (tracks 1,5,7),
Scientist (tracks 6)
Design / Illustration: Tony McDermott

となっています。

この81~84年頃というのは、Roots Radics
がダンスホール・レゲエのバンドとしてもっとも
活躍した時代だったんですね。
ミックスはSoldgieが4曲、Peter Chemistが3曲、
Barnabasが3曲、Scientistが1曲担当しています。
そのうちScientist(6曲目)のみがKing Tubby's
でのミックスで、残りはChannel One Studiosで
行われています。
ScientistがまだKing Tubby'sに居た当時のミックス
という事らしいです。

ジャケット・デザインはTony McDermottです。
Tony McDermottというと、Scientistの「漫画
ジャケ」シリーズやMad Professorの「Dub Me
Crazy」シリーズなど、けっこうゴチャゴチャ
したイメージがありますが、こうしたスッキリ
したデザインも出来る人なんですね。

さてまずは12インチ・ディスコ・ミックス
とはどういうものなのか?
説明したいと思います。

CDになる以前は音楽はビニールのレコード盤で
提供されていましたが、その規格には45回転と
33回転があります。
45回転は7インチシングルのEP盤用の規格、
33回転は12インチLP盤の規格として覚えて
いる人が多いんじゃないでしょうか。
当然回転数の早い方が音質が良くて、その分
録音できる時間が短い…そう思っていました。
ただネットで調べてみたところ実際はそう単純
ではないようです。
実は溝が直線に近いほど音質がイイんだそう
です。
そういう意味では7インチより12インチの
方が、音質が良いという事になります。
7インチの方が回転数が早いのは、むしろその
音質の差を解消する為なんだとか。
実際に回転数の違いで音質に際立った差はない
らしいです。
(あくまでネットに書いてあった事で、本当の
ところは解りません。)

さて45回転の7インチシングルのEP盤と
33回転は12インチLP盤というのが一般的
ですが、45回転12インチシングルEP盤
というのもあるんですね。
これだと33回転のLPほどは曲が入りません
が、7インチよりは長い時間の録音ができます。
33回転と較べると音質も少し良さそうです。

その長く録音できるという特性を利用して、
ジャマイカではディスコ・ミックスという形式
が流行ったんですね。
ディスコ・ミックスとは12インチだと曲が
2曲分ぐらい入る事を利用して、前半が歌
だとしたら後半はダブかディージェイなど、
2曲を1曲に繋げてしまうミックスの事を
言います。
これだとロング・ヴァージョンなので、ダンス
ホールやディスコなどで曲をかけ替える手間が
少なくて済むんですね。
そういう実利的な面以外にも、同じ曲で全く
空気感の違う音楽が楽しめるという効果も
あります。
そうしてこの時代には多くのディスコ・ミックス
の素晴らしい曲が作られたんですね。

さて今回のアルバムですが、そのディスコ・
ミックスのJah Thomasのプロデュースした
アルバムですが、1曲で2曲分の曲が収め
られていて、かなりコッテリしたボリュームが
あります。
ただその濃いエネルギーこそが、このダンス
ホール・レゲエの時代が持っていたパワー
なんですね。

ちなみにJah Thomasは自分のレーベルMidnight
Rockを持っていて、そのレーベルを中心に活動
をしていたようです。
レーベル名は彼のヒット曲から付けられたんだ
とか。

レーベル特集 Midnight Rock (ミッドナイト・ロック)

1曲目はTriston Palma, Jah Thomas & Ranking
Toyanの「Entertainment (12" Mix)」です。
この曲が出来たいきさつは上にあげたレゲエ
レコード・コムのJah Thomasのページに書か
れていますが、この曲を「自分が作曲した中で
一番の曲」とJah Thomas自身が語っています。
リディムはロックステディ期に作られた
「Heavenless」が使われいます。
Triston Palmaの歌にJah Thomas & Ranking
Toyanのトースティングというなかなかの
内容です。
ミックスはBarnabas。

リズム特集 Heavenless (ヘブンレス)

2曲目はMichael Palmer & Jim Brownの
「Ghetto Dance (12" Mix)」です。
いかにもダンスホールといった、濃密な空気感が
たまらない曲です。
Michael Palmerの歌に続いての、Jim Brownの
シングジェイ・スタイルのトースティングも
カッコイイです。
ミックスはPeter Chemist。

Michael Palmer & Jim Brown - Ghetto Dance 12" 1983


3曲目はTriston Palmaの「Joker Smoker
(12" Mix)」です。
これもJah Thomasのページに書かれていますが、
UKのダンスホールで出会った男にたばこ→
マリファナとねだられたエピソードを、リリック
としてTriston Palmaに渡した事で出来上がった
曲なんだそうです。
彼とTriston Palmaにとっての、最大のヒット曲
となった曲です。
12インチ・ディスコ・ミックスなので前半は
Triston Palmaの歌、後半はダブという構成です。
ホーンの奏でるリズムがディープなメディテー
ション空間に誘うような曲です。
ミックスはSoldgie。

Triston Palmer - Joker Smoker


4曲目はPapa Bruceの「Loafter Smoker (12" Mix)」
です。
こちらもTriston Palmaの「Joker Smoker」の
リディムを使った曲です。
こちらはPapa Bruceのシングジェイのトース
ティングに、後半はダブという構成の曲です。
ミックスはこちらもSoldgie。

5曲目はAnthony Johnson, Jah Thomas & Toyan
の「Gunshot (12" Mix)」です。
この「Gunshot」で流行ったリディムのひとつの
ようです。
前半はAnthony Johnsonの歌、後半はJah Thomas
& Toyanのトースティングという構成の曲です。
念のために書いておくとToyanとRanking Toyanは
同一人物です。
こうしたディージェイの掛け合いも、この80年
代のダンスホールで流行ったスタイルなんですね。
華やかに賑やかに盛り上げるというのが、レゲエ
流のやり方なんですね。
ミックスはBarnabas。

6曲目はLittle John & Toyanの「Jah Guide I
(12" Mix)」です。
リディムはロックステディ期の名リディム
The Royalsの「Pick Up The Pieces」のようです。
前半はLittle Johnの歌、後半はToyanのトース
ティングという構成。
ミックスはScientist。

リズム特集 Pick Up The Pieces(ピック・アップ・ザ・ピーシズ)

7曲目はBunny Lie Lie & Lee Van Cleefの
「Mr. Dynamite (12" Mix)」です。
リディムはCornell Campbellの「oxing」が
使われているようです。
こちらは前半はBunny Lie Lieのヴォーカルに、
後半はLee Van Cleefのトースティングという
構成です。
ミックスはBarnabas。

Bunny Lie Lie Ft. lee Van Cliff - Mr. Dynamite


8曲目はMichael Palmerの「I'm Still Dancing
(12" Mix)」です。
前半はMichael Palmerの歌、後半はダブという
構成。
寂寥感のあるヴォーカルがシブい!です。
ミックスはPeter Chemist。

Michael Palmer - I'm Still Dancing 1984


9曲目はPeter Metro & Zu-Zuの「Calypso
Calypso (12" Mix)」です。
リディムは「Answer」。
こちらはメチャクチャ明るいノリの曲です。
前半はPeter Metro & Zu-Zuのシングジェイの
楽しい掛け合い、後半はダブという構成です。
ミックスはPeter Chemist。

Peter Metro / Zu-Zu - Calypso Calypso


リズム特集 Answer (アンサー)

10曲目はLittle Johnの「Joker Lover
(12" Mix)」です。
こちらはLittle Johnの丁寧な歌いぶりが
心に沁みる1曲です。
後半はダブ。
ミックスはSoldgie。

11曲目はBilly Boyoの「Scandal (12" Mix)」
です。
まずはBilly Boyoについて説明しておくと、
この80年代のダンスホール・レゲエの時代に
「子供ディ-ジェイ」として人気を博した人
です。
曲を聴けば解りますが、声が幼いですよね。
曲は10曲目Little Johnの「Joker Lover 」
のリディム。
ミックスはSoldgie。

ざっと追いかけて来ましたが、11曲でも
2曲分のボリュームがあるので73分近くと
長く、かなりコッテリとしたボリュームがある
アルバムです。
例えれば大盛の肉丼に、さらに増し増しで
肉を追加したようなボリューム感です(笑)。
そんな「増し増しの曲」で踊りまくるパワー
が、このダンスホール・レゲエの時代の
ジャマイカにはあったんですね。
そうした熱い空気が伝わって来るアルバム、
それがこのアルバムなんだと思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Jah Thomas
○アルバム: Greensleeves 12" Rulers: Midnight Rock 1981-'84
○レーベル: Greensleeves Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2008

○Jah Thomas「Greensleeves 12" Rulers:
Midnight Rock 1981-'84」曲目
1. Entertainment (12" Mix) – Triston Palma, Jah Thomas & Ranking Toyan
2. Ghetto Dance (12" Mix) – Michael Palmer & Jim Brown
3. Joker Smoker (12" Mix) – Triston Palma
4. Loafter Smoker (12" Mix) – Papa Bruce
5. Gunshot (12" Mix) – Anthony Johnson, Jah Thomas & Toyan
6. Jah Guide I (12" Mix) – Little John & Toyan
7. Mr. Dynamite (12" Mix) – Bunny Lie Lie & Lee Van Cleef
8. I'm Still Dancing (12" Mix) – Michael Palmer
9. Calypso Calypso (12" Mix) – Peter Metro & Zu-Zu
10. Joker Lover (12" Mix) – Little John
11. Scandal (12" Mix) – Billy Boyo