今回はWayne Smith, Prince Jammyのアルバム

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「Sleng Teng / Computerised Dub」です。

Wayne Smithは80年代のダンスホール・レゲエ
で活躍したシンガーです。
彼の活躍の中で一番大きい成功は、やはり今回の
アルバムにも収められている初のコンピューター・
ライズドのヒット曲「Under Me Sleng Teng」の
大ヒットを飛ばした事です。
友人のNoel Daveyが購入したカシオトーンを
イジっている時に偶然に発見したフレーズは、
後の大ヒット曲の元となったフレーズでした。
さっそく録音してPrince Jammyの元に持ち込んだ
この曲は、Prince Jammyによってミックスされて
「Under Me Sleng Teng」という曲になるん
ですね。
その曲が85年にジャマイカで大ヒットして、
彼はコンピューター・ライズドの旗手として
スターダムへ登りつめて行くんですね。

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Riddim | Wayne Smith / Under Me Sleng Teng - Overheat

Prince Jammyはレゲエのミキサー、プロデューサー
として知らている人です。
70年代のルーツ・レゲエの時代にダブのミキサー
King TubbyのスタジオKing Tubby'sでミキサーの
助手としてキャリアをスタートさせた彼は、
そこで数多くのアーティストのミックスや自身の
ダブ・アルバムの制作などで多くのキャリアを
積み、独立して自身のスタジオを構えミックスや
プロデュースの仕事をするようになります。

そしてWayne SmithとNoel Daveyという二人の
若者の持ち込んだカシオトーンの楽曲から、
「Under Me Sleng Teng」という曲を作り、
ジャマイカ初のコンピューターによる楽曲の
大ヒットを記録するんですね。
その大ヒットをきっかけに名前をPrince Jammy
からKing Jammyに改名し、ジャマイカ全土に
コンピューター・ライズドの大ブームを巻き
起こします。
コンピューター・ライズドでレゲエの歴史を
すべて塗り替えた大プロデューサーがこの
Prince Jammyという人なんですね。

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今回のアルバムそのWayne Smithの大ヒット曲
「Under Me Sleng Teng」を収めた、翌86年に
発売された記念碑的アルバム「Sleng Teng」と、
同86年に発売されたアルバム「Sleng Teng」
のPrince Jammyによるダブ・アルバム
「Computerised Dub」の2枚のアルバムを
1枚にカップリングした2in1仕様のアルバム
です。

元の2枚のアルバム(LP)は86年に発売
されていますが、今回の2in1仕様のアルバムは
1992年にGreensleeves RecordsよりCDで
発売されています。

全20曲で収録時間は75分56秒。
1~10曲目までがWayne Smithのアルバム
「Sleng Teng」で、11~20曲目までが
Prince Jammyによる「Sleng Teng」のダブ
「Computerised Dub」になっています。

ミュージシャンについては以下の記述があります。

Produced & Arranged by: Prince Jammy
Recorded & Mixed at: Prince Jammy's Studio
Musicians: Steely, Clevie, Wayne Smith, Super Power All-Stars

となっています。

ミュージシャンとしてSteely & Clevieと
Wayne Smith、Super Power All-Starsの名前が
あります。
Super Power All-Starsは、Prince Jammyの
サウンド・システムの名前がSuper Powerなので、
そのオールスター・メンバーという意味でしょう。

なお今回のアルバムのジャケット・デザインは
書かれていませんでしたが、Tony McDermottで
間違いありません。
2004年にアルバム「Sleng Teng」の曲順を
再編集したアルバム「Under Me Sleng Teng」
には、似たジャケットでTony McDermottの名前が
あります。

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Wayne Smith / Prince Jammy - Under Me Sleng Teng (2004)

さて今回のアルバムですが、「Sleng Teng」と
「Computerised Dub」の2枚のアルバムが1枚に
なったお得なアルバムで、内容的に文句なしの
アルバムだと思います。
特に「Sleng Teng」はレゲエの歴史の中で
エポック・メイキングなアルバムなので、レゲエ
を聴く人間にとってはぜひ手に入れたいアルバム
だと思います。
今は手に入れにくいアルバムだと思いますが、
中古CD店などを探すと見つかる事もあるので
その時は迷わずゲットです。

私自身もアルバム「Under Me Sleng Teng」の
方はだいぶ前に手に入れていたのですが、
この2in1仕様のアルバムは最近池袋の
disk unionで中古で見つけて手に入れました。
やはりPrince Jammyの「Computerised Dub」
の方も聴いてみたかったんですね。
意外と見過ごされがちですが、この80年代
半ば以降のデジタルのダンスホール・レゲエに
なってからのPrince Jammyのダブは注目です。
けっこう良いサウンドを作っているんですね。

もうひとつ良かった事がありました。
書いたように手に入れた「Under Me Sleng Teng」
はオリジナルの「Sleng Teng」と曲順が変わって
いるんですが、こちらはオリジナルと同じで、
その方が曲の流れがイイんですね。
そういう発見があったのも、ひとつの収穫
でした。

1~10曲目まではWayne Smithのアルバム
「Sleng Teng」の曲が収められています。
やはりこのアルバムの特徴は、それまでの曲と
違ってデジタルのサウンドを大々的にフィー
チャーしている点です。
今と較べるとこの当時のデジタル・サウンドは
だいぶチープで融通が利かない側面があると思う
のですが、それでも当時の人々にとっては
それまで全く聴いた事の無い刺激的なサウンド
だったんですね。
その刺激的なサウンドに、多くの人が魅了された
事は間違いがありません。

1曲目は「E20」です。
オープニングを飾るにふさわしいブイブイした
デジタル・サウンドがカッコいい曲です。

WAYNE SMITH - E20 (E20 RIDDIM)


2曲目は「Like A Dragon」です。
ちょっとチャイニーズ風のイントロからWayne Smith
のヴォーカルも冴えを見せる曲です。
バックの無機質なサウンドに対して、ヴォーカ
リストにヒューマンな味わいが要求されるように
なったのもこの時代からなんですね。

3曲目は「Hard To Believe」です。
デジタル以前のダンスホールの香りも残す曲
です。
80年以降はレゲエはそれまであったような
思想性は捨て、快楽性の強い音楽へと変わって
行くんですね。
そうしたダンスホールの香りが強くする曲です。

4曲目は「Leave Her For You」です。
Wayne Smithのヴォーカルが冴える、デジタル・
バラードといった曲です。

5曲目は「Walk Like Granny」です。
バックのデジタル音も面白い曲です。

6曲目は「Under Me Sleng Teng」です。
言わずと知れたデジタルのファースト・ヒット。
この曲から現代のレゲエが始まったと言っても
過言ではありません。

Wayne Smith - Under Me Sleng Teng


7曲目は「In Thing」です。
デジタルのスピード感のあるサウンドに乗せた
曲です。
一言でデジタルといってもPrince Jammyは、
そのデジタルのサウンドに変化を付けるのが
とてもウマいんですね。
その音作りのウマさが、彼が王者に君臨出来た
ひとつの要因であることは間違いありません。

8曲目は「Love Don't Love Me」です。
Wayne Smithのファルセットから入る陰影のある
1曲です。

9曲目は「My Lord My God」です。
Dennis Brownのデジタル期のヒット曲「The Exit」
のリディムを使った1曲です。

10曲目は「Icky All Over」です。
重いオルガンのようなシンセ音をバックにした
Wayne Smithのヴォーカルが聴かせる曲です。

11~20曲目までが「Sleng Teng」のダブ
Prince Jammyによる「Computerised Dub」です。
こちらはWayne Smithのヴォーカルが抜けている
分、よりデジタルのサウンドが実感できる
アルバムになっています。
タイトルに「32 Bit Chip」や「Megabyte」、
「256K Ram」など、パソコン用語が使われて
いるのが面白いところです。
おそらく当時はパソコンで使える容量も少な
かったので、容量をやりくりしながら作って
いたんじゃないかと思います。
今ではチープに聴こえるサウンドも、そうした
努力の賜物として生まれたサウンドなのかも…。

11曲目は「Synchro Start」です。
「Sleng Teng」の1曲目「E20」のダブです。
ブイブイいうシンセ音がカッコイイ1曲です。
Prince Jammyという人のセンスや音作りの
ウマさが光る曲です。

12曲目は「Interface」です。
「Sleng Teng」の4曲目「Hard To Believe」
のダブです。
グルグル動き回るように鳴る電子音が面白い
ダブ。

Prince Jammy - Interface


13曲目は「32 Bit Chip」です。
「Sleng Teng」の2曲目「Like A Dragon」
のダブです。
ちょっとチャイニーズ風のフレーズが盛り
込まれたダブです。

Prince Jammy - 32 Bit Chip


14曲目は「Auto Rhythm」です。
「Sleng Teng」の7曲目「In Thing」の
ダブです。
ヴォーカル抜きの曲だけ聴いていても、飽き
させない魅力があります。

Prince Jammy - Auto Rhythm


15曲目は「Peek & Poke」です。
「Sleng Teng」の5曲目「Walk Like Granny」
のダブです。
比較的ユッタリしたリズムの中にも、退屈
させない音作りのウマさがあります。

16曲目は「Megabyte」です。
「Sleng Teng」の4曲目「Leave Her For You」
のダブです。
比較的静かなメロディの曲に、シンセとピアノで
うまくアクセントを付けています。

17曲目は「Wafer Scale Integration」です。
これはオリジナル曲か?
「Sleng Teng」の中にそれらしい曲は見当たり
ませんでした。
ちょっとチャイニーズ風のフレーズが面白い曲
です。

18曲目は「Cross Talk」です。
「Sleng Teng」の3曲目「Hard To Believe」
のダブです。

19曲目は「Modem」です。
こちらの曲も「Sleng Teng」のダブでは無い
ようです。
遊び心の溢れる曲です。

20曲目は「256K Ram」です。
こちらもオリジナル曲か?
この曲もちょっとチャイニーズ風なフレーズを
盛り込んだ曲で、面白い味わいがあります。

ざっと追いかけて来ましたが、2枚が1枚に
まとめられたアルバムで、かなり充実した内容
だと思います。

この80年代から90年代にかけては、音楽に
限らずいろいろな産業でコンピュータ化が
進んだ時代だったんですね。
それまで職人的な技術に頼っていた世界が、
一気にマニュアル化データ化されて行った
時代だったんですね。
もちろんその事による功罪はいろいろあるとは
思いますが、それが時の流れという側面もあり
ます。

もちろんその中で音楽が失っていったものも
たくさんあります。
ただその中で得た、あるいは変わったものも
たくさんあるんですね。

今回のアルバムはそうした時の流れの中の、
音楽史におけるエポック・メイキングな
アルバムであることは間違いがありません。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Wayne Smith, Prince Jammy
○アルバム: Sleng Teng / Computerised Dub
○レーベル: Greensleeves Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1986

○Wayne Smith, Prince Jammy「Sleng Teng / Computerised Dub」曲目
●Wayne Smith: Sleng Teng
1. E20 – Wayne Smith
2. Like A Dragon – Wayne Smith
3. Hard To Believe – Wayne Smith
4. Leave Her For You – Wayne Smith
5. Walk Like Granny – Wayne Smith
6. Under Me Sleng Teng – Wayne Smith
7. In Thing – Wayne Smith
8. Love Don't Love Me – Wayne Smith
9. My Lord My God – Wayne Smith
10. Icky All Over – Wayne Smith
●Prince Jammy: Computerised Dub
11. Synchro Start
12. Interface
13. 32 Bit Chip
14. Auto Rhythm
15. Peek & Poke
16. Megabyte
17. Wafer Scale Integration
18. Cross Talk
19. Modem
20. 256K Ram