今回はMad Professorのアルバム

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「Dub You Crazy With Love」です。

Mad Professorはイギリスの自身のスタジオ
Ariwaを拠点に活躍するプロデューサーであり、
ダブののクリエイターである人です。
80年代の初めから自身のレーベルAriwaで、
KofiやSandra Crossといったラヴァーズロック・
レゲエのアーティストのプロデュースや、Beastie
BoysやRancidといった多ジャンルのアーティスト
まで幅広いプロデュースをしています。
また彼自身のダブ「Dub Me Crazy」シリーズや
「Black Liberation Dub」シリーズなどの
作成など、それまでにない新しいダブを作り
続けています。

レーベル特集 Ariwa(アリワ)

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Mad Professor - Dub Me Crazy (1982)

今回のアルバムは「Dub You Crazy With Love」
シリーズの第1作目のアルバムで、1997年の
作品です。
タイトル通り原曲はプロデュースしたラヴァーズ
ロックの曲が使われているようです。

82年に第1作が作られた「Dub Me Crazy」
シリーズは92年までに第12作まで作られて
いて、94年に第1作が作られた「Black
Liberation Dub」シリーズは98年までに第5作
まで作られています。
その「Black Liberation Dub」シリーズが作られ
ている間に始まった今回のシリーズですが、
2009年までに3作が作られています。
Ariwaというとラヴァーズロックのレーベルと
して有名ですが、その割には少ないのが面白い
ところです。

実は初めの頃のAriwaは意外とルーツ系の
アルバムなども出していたんですが、それが
商業的には成功せず、ラヴァーズロックの
レーベルとなって行ったようです。
Mad Professorの音の好みは、もう少しルーツ
寄りなのかもしれません。

一応ラヴァーズロック・レゲエについても書いて
おくと、70年代中頃にイギリスで誕生した
ラヴ・ソングを中心としたレゲエの1形式です。

ラヴァーズ・ロック - Wikipedia

全16曲で収録時間は70分40秒。

ミュージシャンについては以下の記述があります。

Recorded & Mixed at Ariwa Studios
Drums: Robotiks
Bass: Black Steel, Preacher, Kofi
Keyboards: Black Steel, Victor Cross, Fish
Guitars: Black Steel
Hornes: Rico Rodriguez, Michael 'Bammie' Rose, Eddie 'Tan Tan' Thornton
Vocals: Sandra Cross, Carroll Thompson, Kofi, Black Steel, Jocelyn Brown,
Intense, John McLean, Slim Linton

Produced & Mixed by Mad Professor at Ariwa Studios

となっています。

ホーンにRico RodriguezやEddie 'Tan Tan' Thornton
の名前があります。

ヴォーカルにSandra CrossやCarroll Thompson、
Kofiの名前がありますが、そうしたアルバムの
音源が今回のアルバムに使われたのは間違いが
無いでしょう。

さて今回のアルバムですが、正直なところ
レゲエの中でもラヴァーズはあまり得意分野
ではありません。
個人的にはレゲエって、ルーツ・レゲエにある
ようなビターなテイストが好きなんですね。
それと正反対なスウィートなラヴァーズは…
正直ちょっと解らないところがあります。

ただ矛盾するようですが、Mad Professorは
けっこう好きなんですね(笑)。
彼の音楽に自由で、新しいダブを創造して行く
パワーが好きです。
そうしたMad Professorを聴く事でだいぶ
ラヴァーズに対する偏見は無くなって行ったん
ですが、やっぱり良さが今ひとつ理解出来て
いないというのが本当のところです。

今回のアルバムではそのラヴァーズのスウィート
さを生かしながら、さらに濃厚な味付けにした
アルバムという気がしました。
一見甘い甘いサウンド、しかしその中に
ちょっとだけMad Professorの「毒」が仕込まれ
ています(笑)。

それが良く解るのがこのアルバムのヴォーカルに
かけられたエコーのかけ方で、通常は言葉の語尾
にエコーがかけられるところを、このアルバム
では言葉の頭にエコーがかけられています。
語尾にかけられると自然に消えて行く感じなん
ですが、頭にかけられるとすごく違和感を感じて
心に引っかかるんですね。
そうしたあえて心地よくないかけ方をしている
「いたずら心」がこのアルバムにはあります。
その辺はいかにもMad Professorらしいところ
です。

1曲目は「Dub My Heart」です。
ユッタリしたサウンドに、木琴か何かが使われた
ダブです。
少し男性ヴォーカルが入っています。
今回のアルバムでは、けっこうヴォーカルが
入っているのも特徴です。

2曲目は「Pya」です。
シンセに女性ヴォーカルという取り合わせの曲
です。
ちょっと気持ち悪いエコーの使い方が、変に
面白いところがあります。
ただのラヴァーズにしないところが、ただ者じゃ
ないんですね(笑)。

3曲目は「The Other Side Of Dub」です。
アコースティック・ギターの入りから女性
ヴォーカルというに男性コーラスという展開の
曲です。
一見ユルく甘い曲なんですが、女性コーラスの
言葉の頭にかけたエコーが違和感があり、ただ
ただ甘く流れ出してしまうのをうまく堰き止めて
います。

4曲目は「Lovers Rock Dub」です。
テープの逆回しのようなエフェクトから刻む
ようなギターに乗せた女性ヴォーカルという曲
です。
このヴォーカルはSandra Crossか?
ユッタリしたリズムの中、歌のウマさが際立ち
ます。

5曲目は「Daydreaming About Dub」です。
囁くような落ち着いたじゃ性ヴォーカルに、
木琴か何かの付けるアクセントが印象に残る
ダブです。

6曲目は「Truly In Dub」です。
こちらは男性コーラスを中心としたダブです。

7曲目は「Make Love To Dub」です。
いかにもラヴァーズといったイントロから
エコーのかかった女性ヴォーカルという展開の
曲です。
やはりエコーのかけ方の気持ち悪さで、もう
一度かみ砕かせるところがMad Professor
らしい曲作りという気がします。

8曲目は「Dub In The Sun」です。
シンセに女性ヴォーカルにエコー(笑)。
こちらも甘く流れない不思議な感覚があります。

9曲目は「Say What!」です。
このアルバムの中でも一番長い6分17秒の曲
です。
ファルセット気味の男性ヴォーカルのスウィート
な曲です。

10曲目は「Fantasy Dub」です。
ユッタリしたラヴァーズのサウンドに、時折入る
女性コーラスだけという曲です。

11曲目は「Stop, Listen To Dub」です。
こちらもユッタリとしたメロディに、時折入る
男性コーラスというシンプルな構成の曲です。

12曲目は「Dubbing In Love」です。
こちらも凝った音使いに、男性コーラスという
取り合わせ。

13曲目は「Loving You In Dub」です。
ドラムを中心とした淡々としたメロディに、
男性コーラスという曲です。

14曲目は「Looking Over Dub」です。
女性の笑い声のエフェクトからホーン、ピアノ、
女性ヴォーカルと構成が見事な1曲です。

15曲目は「Standing By Dub」です。
一見可愛らしいサウンドの入りながら、知らずに
Mad Professorのエコーの効いたダブ・ワールド
に迷い込んでしまうような1曲です。

16曲目は「On My Dub」です。
最後は男性ヴォーカルに女性コーラスの
エコーという曲です。

ざっと追いかけて来ましたが、一見ラヴァーズ
の「キラキラ・サウンド」と見せておいて、
こっそりと「毒」を仕込むMad Professorの
あくどさが見事です(笑)。
ラヴ・ソングという言葉に騙されて、実は
毒リンゴを食わせようとしているような、一筋縄
ではいかないのがこのMad Professorという人
なんですね。
その毒リンゴを食べたらあなたは二度と目覚める
事が無いのかもしれません、Mad Professorの
作るダブという魔力から…(笑)。

そう、あなたが狂おしいほど愛しているのは、
人ではなくダブなのです。

機会があれば聴いてみてください。


○アーティスト: Mad Professor / Ariwa Artists
○アルバム: Dub You Crazy With Love
○レーベル: RAS Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1997

○Mad Professor / Ariwa Artists「Dub You Crazy With Love」曲目
1. Dub My Heart
2. Pya
3. The Other Side Of Dub
4. Lovers Rock Dub
5. Daydreaming About Dub
6. Truly In Dub
7. Make Love To Dub
8. Dub In The Sun
9. Say What!
10. Fantasy Dub
11. Stop, Listen To Dub
12. Dubbing In Love
13. Loving You In Dub
14. Looking Over Dub
15. Standing By Dub
16. On My Dub